ラップ主人公でやると言った手前速攻で公約破りするスタイル。タイトルの龍はタツではなくリュウ読みです
副題:チェン、子持ちになる
ラップランドがフォリニック達から指導受けている中、焦土の西側で途方に暮れる姿があった。
「まさかここに来て早速ピンチに陥るとはな……」
焦土の西側において南北に細長く伸びる谷、そこは前足に翼膜が生え、空を悠々と飛び、ブレスを吐く大蜥蜴────ワイバーンの生息地に他ならない。この焦土で最も苛酷かつ危険な地域だ。
その谷底で現状を嘆くのは元龍門近衛局特別督察隊隊長・現ロドスのオペレーターであるチェン・フェイゼその人であった。
ラップランドがウォルモンド組三人と接触する少し前、チェンは焦土に降り立った。チェンもまたウォルモンド組と同様Extinctionを根拠地としていたが、独断でロドスから離れ単独行動をしているのだ。一応ケルシーには離れる旨を伝えているためあちらで困る事は無いだろうという判断である。
(ケルシーの話ではロドスのメンバーだけじゃなくレユニオンのメンバーも現れているらしい。もしタルラも来ているのなら……)
実の姉であり、かつてのチェルノボーグにおいては敵対したタルラ・アルトリウス。彼女を探すつもりでチェンは行動を起こした。本当なら先に焦土へ来ているウォルモンド組と合流するつもりだったのだが、焦土へ来てすぐにその目論見は外れた。焦土に来た直後のチェンをワイバーンが空から
「ざっと見ても100m以上はあるな……」
谷底から上を見上げたところで現状は変わらない。チェンではこの壁を登る技能を持たないのだ。溶岩が冷え固まったようなゴツゴツとした黒い壁は上では綺麗に六角形の柱が垂直を成して連なっている。柱状節理と呼ばれるそれを知ることのないチェンはワイバーンの巣の中で周囲を見渡した。巣はちょうど鳥の巣のように枯れ枝がお椀の形をしていてその中央に、チェンを拐ったであろうワイバーンの物と思われる赤色の卵があった。谷底の中央には未だ冷え固まる事のない溶岩の川が流れていて近づくだけでも躊躇われた。
(しばらく飢えそうにはないだろうが……)
意外にも谷底は植生が豊かだった。地上よりまばらだがベリーの取れる草がそこそこ生えている上に、かつては葉を生やしていたであろう枯れ木がそこかしこに立っている。緊喫の課題となるのは水の確保である。チェンは谷底にたまたま降りて来た水を抱えたジャグ・バグを即座に捕まえた。焦土に来る前ExtinctionでARKの基本はおろか、特殊な生物やシステムについても叩き込まれている。
(嘆いていても仕方がない。まずは生存圏を確立して、それから出る方法を考えよう)
時間が経てばその内戻ってこないチェンを探しにやってくる者もいるかもしれない。チェンは目の前で鎌のような前足を振りかざした人間ほどの大きさもある巨大な虫を一閃しながらそう考えた。暑い地域を好むのか大きなサソリもいる。肉を狩れそうな生物はこの谷底だとこれくらいしかいなかったが無い物ねだりなどチェンが考えるはずもなかった。ARKのシステムの手前、どんな生物から出ようが肉になれば皆同じである。今さら虫を食べる事に抵抗など無いチェンであった。
しばらくの間チェンは自分を拐ったワイバーンの巣の中で過ごす事にした。その気になれば意外と集まる木材から拠点を建てるくらいは出来るのだがワイバーンの巣のど真ん中でそんなものを建ててしまえば目立つどころの話ではない。どうもワイバーン達はお互いの巣には不干渉なようでいて、普段から飛ぶ事で移動しているワイバーンにとって目下の虫けらの事など眼中に無いようだった。
食料はともかくジャグ・バグ以外ではどうにもならない水分のため、チェンは徹底して行動を最小限にした。Extinctionからある程度食料水分共に持って来てはいるがすぐ合流する事を想定していたために数は多くない。チェンは巣に放り込まれて半日、ようやく空が暗くなりだしたのを見て巣の中で一息、眠りに着いた。
「……ギャッ……ギャ……ギャ」
「んん……」
「ギャォーン、ギャッギャッ」
「なんだ、うるさ……い……な……?」
「ギャッギャッギャ」
翌朝、チェンは自ら目覚めるのではなく起こされた。近衛局で働いていた手前、決められた時間に起床するのは文字通り朝飯前の事であったし、自ら率先して動く彼女が他人に起きるよう急かされるのは後にも先にもどこぞの虎に冷や水をぶっかけられた時くらいだ。
そんなチェンを起こしたのはまだ人間の膝よりも小さな、いや幼いワイバーンだった。そばには覆っていたであろう卵の殻が散乱している。起きたチェンを見て喜ぶように鳴き声を上げるワイバーンの幼体。チェンは状況が信じられず呆然としていた。
「おまえ……まさかとは思うが私を親だと思っているんじゃないだろうな?」
「ギャォン」
「なんてことだ、流石にこの状況は予測がつかないぞ……」
「ゥゥオン」
「……おまえ、私の言葉を分かっている訳じゃないだろう」
「ギャォォォン!」
「元気が良くて、何よりだな……」
困った事にこの子ワイバーンはチェンと一緒にいる事を好んだ。チェンが食料を確保しになるべく隠密に徹して狩りに出掛けようとするのを陽気に鳴き声を上げながら着いて来てしまう。これでは狩りどころではなかった。好奇心旺盛なのか気になるものにはフラフラとそっちへ行ってしまう。谷底の鉱石や虫などはまだ良いとして、溶岩の川へ平気で近づきあわや落ちそうになるなどチェンとしては気が気でなかった。
「おまえな、もう少し大人しくするくらいできないのか」
「ギャォォン?」
「可愛く首を傾げたってダメなんだぞ」
「ギャォ~ン」
「……世の中の母親というのは偉大な者なんだな」
「ォォォオン!」
「返事だけは優秀なんだがな……」
チェンとしては子ワイバーンを見捨てる選択は無かった。別に親ワイバーンを殺した罪悪感というのはない。感染者達の戦いがそうであったように、生存において善悪の優劣は無い。今さらチェンがこの程度の事に足を止める事など無いのだ。
焦土について予習を済ませてあるチェンは当然ながらワイバーンについても知っている。単にその脅威性だけでなくそのテイム方法についても。子ワイバーンが成体になればその背に乗り飛んでワイバーン谷から脱出が出来る。本来ならブリーディングは安全な拠点内で行うのが大前提だが、状況が状況なだけにこれ以外手が無いのだ。
チェンはその辺の石を砕き木から入手した藁などで弓と矢を作る。麻酔薬作りも欠かさない。偶然にもラップランドと同じ時間に同じ作業を行っているチェンであったが目的は違っていた。
「いいか、これからおまえのごはんを取りに行ってくる。くれぐれも巣から離れるんじゃないぞ」
「ギャォォォン!」
「……頼むからこのオモチャで気を紛らわせてくれ」
何とかして集めた虫の肉、その残った甲殻の残骸が気に入ったらしくカプカプとまだ未成熟な歯で噛んで遊んでいる子ワイバーン。子ワイバーンが夢中になっている間にメスのワイバーンを見つけて幼体の餌になるワイバーンミルクを確保しなければならない。幼体のワイバーンは母親から与えられるミルクのみで育てられるのだ。龍人であるチェンだがワイバーンミルクを作る能力は無いため他のワイバーンから奪ってこなくてはならない。それも、死んだ個体からは取れず生きているメスワイバーンを眠らせる事でしか入手できないために、殺せばよかった今までとは違って難易度が上がっている。刀ほど覚えはないが向いていなくても麻酔矢でやらねばならない。
チェンはここに来て困難が連続している事にようやく気付いたが特に腹立だしく思う事は無かった。チェルノボーグのあの一件、あれよりはどんなものも大分マシだと考えられてしまうからである。チェンは思わず苦笑した。
(ヴィクトリアでバグパイプと共にいたと思えばExtinctionなどというものに迷い出て、またロドスに助けられ行った先でワイバーンの子育てか。我ながら波乱万丈だな)
ようやく一人になれたチェンは望遠鏡で隈無くワイバーンを探す。ARKシステムの恩恵か、見たい生物を望遠鏡で覗くだけで雌雄の区別やレベルが分かる。狙うは比較的レベルの低いメスだ。レベルが低いほどステータスが低いのは当然で、眠らせるのに必要な矢もそれだけ減る。
(そういえばあの幼体のステータスを見た事はなかったな。黒い見た目のせいで種類もよく分からない。ステータスが低いと世話の手間もかかると聞いたが)
谷の中を複数で飛んでいる事の多いワイバーンだが別に群れの意識があるわけではない。いくら手頃なメスを見つけても複数近くにいるのなら矢を当てるどころか射程距離に近づくだけでも危険である。なるべく孤立している個体を狙う。
(レベル30……。こいつにするか。死ぬわけじゃないんだ。悪いが眠ってくれ)
チェンが目を付けたのは壁の中ほどから突き出している橙色の巨大な結晶に身を休ませている個体だった。谷底から矢を当てて気を引き付ける。チェンが思っていたよりも早く吐き出したブレスは濃緑色のガスを弾のように噴出していた。ポイズンワイバーンである。ブレスの速度はここにいる三種の中で最も遅いが代わりに射程は随一である。やすやすとブレスを避けたチェンのさっきまでの位置には毒ガスが充満していた。
学習能力が無いのか動きまわるチェンにブレスを連発するポイズンワイバーン。単調な動きにチェンはあの子ワイバーンも同じように頭が悪かったら困ると考えていた。程無くして、ワイバーンが墜落する。溶岩の川に落ちないよう位置も問題無い。本当なら建築物で罠を作ってそこに誘い込むのが定石なのだが、チェンの高い身体能力はワイバーンが相手でも容易に張り合えた。
ワイバーンミルクを戦利品に、巣に戻ったチェンを出迎えたのは子ワイバーンの催促の声である。臭いで餌が分かるのだろうか。早く早くとチェンに飛びついてせがんでいた。
「こら、待てだ。待てだぞ。我慢の出来ないやつにはあげられないからな」
「ギャォッオッオ~ン」
「いいか、よし、と言ったら飲んでいいんだ。おまえは我が儘が過ぎるからな。この調子のまま大きくなられたら困る」
「……ゥゥゥォン」
「まだだぞ。そんな悲しそうな声で鳴いたってダメだ。ちゃんと人の言うことを聞く子になって貰わないと。………………よし!」
「ゥゥゥゥぅンンンン……!」
「そんなにがっつくな。ミルクは逃げやしないぞ。……いつまでもおまえ呼びは変だな。そうだな、ステータスを見るついでに名前も決めるか。……ん? レベルが190? これって確か一番高いレベルじゃなかったか? それに、黒いファイアワイバーンか……」
テイムできる中でも最高峰のステータスを持つ子ワイバーンだが、今の姿はたらふくミルクを飲んだお腹を晒して仰向けに寝る野生を忘れた姿でしかない。黒と龍と炎でタルラを連想していたチェンだったが、こんな気の抜けた姿で一体どこが似てるというのか。
「本当、可愛らしいな、おまえは。いやおまえじゃない。そうだな……。こういうのは名付けられる方も覚えやすいシンプルな名が良い。おまえには故国の名を与えよう」
将来、その黒き翼をはためかせ火炎を吐く様子を想像する。今はまだ幼くともその身に秘めたる資質があるはずだ。
「
チェンの願いもよそに、ぐーすかといびきをかいて寝る
登場した生物紹介
カマキリ
何の変哲も無くまんま現代にいるあのカマキリ
ARKでは焦土から初登場。例によって巨大化していて後ろに人を乗せられるくらいに大きくなっている。虫嫌いな人にはトラウマものかもしれない。積極的に生物を狩る敵性生物で、主に焦土外周の砂漠や洞窟内に生息している。テイムは手渡しテイムだが、上述のようにサバイバー相手でも敵対してくる上にテイムに必要な餌が、強大かつ稀にしか出現しないデスワームの角のみとテイム難易度はかなり高い。テイムするとサドルとは別に人間の武器を装備できる項目がある。鎌や斧などを装備させる事で対応した資源を採集できるようになる。虫らしく重量は低いので資源採集で使いたい場合は荷物持ちの生物を別途用意しよう。余談だがなぜか武器以外の物も装備できるが、カメラや松明など装備させたところで意味の無い物も多い
ワイバーン
ワイバーンの説明その2
本来多くの野生生物のレベル上限(公式サーバーのみ。ローカル等では設定で変更可能)は150までだがワイバーンを含めた一部生物は190まで出現する。ワイバーンの卵は焦土では西側にある巨大な渓谷に巣と共に出現する。渓谷の一部壁面は綺麗に内側にへこんだ箇所があるのでそこを重点的に探そう。卵は必ず親と同種で同じレベルで表示される。渓谷付近をレベル190のライトニングワイバーンが飛んでいたら近くに同じ190のライトニングの卵があるかもしれない、ということである。親がいるからといって必ず卵が出現するわけではないので注意されたし
ブレスは種類ごとに特性が違う。ファイアは火炎放射器のように扇状に放たれ当たった生物に炎上による継続ダメージを与える。複数の敵に連続して当たるので雑魚掃討に便利。ライトニングは射程内の全てを巻き込む雷のビームを一定の距離まで一直線に放つ。全種類中一発当たりのブレスの火力は最高の威力。実は当たった生物の昏睡値を上げる能力をあるが普通は昏睡させる前に永眠している。ポイズンは毒ガスを弾の形にして吐く。地形、生物問わず当たった場所に毒ガスが充満し範囲内にいる生物全てに毒ガスによる継続ダメージを与える。アイスは概ねファイアと攻撃範囲は同じだがブレスが炎から冷気に変わっており当たった生物に炎上ではなく鈍足のデバフを与える
またテイムされたワイバーンと敵ワイバーンでは同種のブレスは受け付けない。通常の噛みつき攻撃は通るが、例えば自分のファイアVS野生のファイア同士でブレスを撃ち合ってもどちらもダメージを負わない。あくまでも自分のファイアVS野生のライトニングのような異種相手でブレスが通るので自分のワイバーンVS野生のワイバーンの戦いが起き得るのであれば種類は把握しておこう
今回の描写、ワイバーンの卵が勝手に孵化してますが通常のARKではありえません。ここだけの表現です。卵を孵化させたい場合は卵にとって適正な温度を保った空間に卵を置く事で孵化が進みます。一番手っ取り早いのはGenesis2で取得できるエングラムである孵化装置の中に入れる事。入れるだけで勝手に温度管理してくれる超便利施設です
あと赤ちゃんワイバーンがかなり能動的ですがこれもここだけの描写です。普通のARKじゃ指示しない限りどんな生物も勝手に歩き回る事は無いので……