ARKナイツ   作:エドレア

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前回より間が空いての投稿、また前回の投稿ミスを深くお詫びします。大変申し訳ありませんでした

さてアンケートの結果も出ましたしGenesis編をスタートさせていきます。Genesis編は少々特殊で本来なら二つマップがGenesisにはあるのですが都合により全てGenesis編で統一します
また今回の話にはアークナイツ本編のネタバレが含まれています。11章まで進んでない方はあらかじめご了承下さい




Genesis編
Mission1:Genesisシミュレーション


 

 

 

 

 

 

 ふわふわ、と浮いている。そんな感じがする。

 夢を夢と認識できるのは極稀な事らしい。確か明晰夢といっただろうか。

 

 恩師であり大切な仲間であり共に働く同僚でもあり、そして家族とも呼べるフェリーンの女性を、ふと思い出した。確かそんな話を、いつか教えてもらった気がする。

 白と黄緑色のそんな慈しみを、私は知っている。

 

 あの人は、大丈夫、なのだろうか。確か、サルカズの摂政王────テレシス。彼に斬られて。

 そう、テレジア殿下もだ。直接会う事は叶わなかったけど、彼女のアーツを介して見たイメージは今でも脳裏に焼き付いている。あんな風に佇むケルシー先生を私は見た事がない。あれじゃ、まるで、ケルシー先生が、恐ろしい敵のような。

 

 そこまで考えて、夢と考えるのにどうも意識がはっきりし過ぎている事に気付く。

 

 どうして、私は眠っていたんだっけ。

 

 目を開くのがこんなに億劫だっただろうか。しっかりと意識して覚醒する。

 どうしてか、苦労して目を開けた私の視界に飛び込んできた景色はただひたすらな蒼。

 

 遅れて気付く。浮遊感というより、これは────。

 

「……なんで私は、空から落ちてるんですかぁぁぁ!?!?!?」

 

 全く、意味が分からない現象に私────アーミヤは襲われているようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(アンジェリーナさんならここから助かるんでしょうけど!)

 

 私にはサルカズ由来の特殊なアーツがある。けれど、それはこの状況を打破できるようなものじゃなく、仰向けに落ちている私は風の抵抗で身を翻す事すらできない。

 

 上手いことチェンさんの剣を真似て影霄を壁か何かに突き立てればいけそうではあるけれど、周囲にそんな物体、見えやしない。自分の取れる手札で成せる事が、全く無い。

 

(私、こんな訳の分からないところで死ぬんですか)

 

 せめて痛み無く逝けるように。ギュッと目を閉じていると、こんな状況で話しかけてくるような声がする。ああ、とうとう幻聴まで聞こえてくるようになったのかな。

 パトリオット、彼の死に際にフロストノヴァさんの幻を見せてひどく怒らせてしまったけど、私が私自身に幻を見せる事なんてできやしないのに、声はまだ私に語りかけてくる。

 

……しもーしあのサバイバーさん? ねぇサバイバーさんったら聞こえてます? サバイバーさん!!! 聞こえてますか!!! 

「は、はい!? え、なんですかこれ!? 空飛ぶ謎の円盤!?」

『Unknown Flying Objects、略してUFOとは的外れな表現ですね。地球では1947年にアメリカの実業家が発見して以降そう呼ばれるようになり数々のロマンを多くの人に見せたそうですが……』

「今そんな雑学聞いている場合じゃないんです! このままだと私は死んでしまいます!」

『死ぬ……とは?』

「見て分からないんですか!? 下は見えませんけど、なぜか高いところから落ちてるんです! 地面に激突して落下死するんですよ!」

『あー、なるほど。状況は理解しました。どうやら初期位置の転送座標に不具合があったようです。……おやおや? 不具合は確認出来ているはずなのに修正したことになっていますね。少しお待ち頂ければリスポーンシステムは正常に動くかと』

「半分くらい話が理解出来ないんですがそんなことしたところで私が今落下している現状から助かりませんよね!」

『落下死の心配なら必要ありませんよ。ここ、下は海ですから』

 

(海……!?)

 

 話しかけてくる謎の浮遊物体に文句を言おうと、口を開いたところで私の言葉を続けられなかった。目一杯の水が、私の眼前に流れ込んでくる。

 海。知識として、知ってはいる。シエスタにロドスのみんなと一緒に遊びに行って、そしてそこに潜む陰謀を解決して。

 シエスタのそれは海と呼ばれてはいたけど、実際には巨大な湖なのだそうな。だとしたら、目の前に広がるこれこそが本物の海なのだろうか。

 

(────すごい)

 

 色とりどりの、あお。

 たくさんの生き物が泳いでいて、それらが自由気ままに生きている。

 海の中には、とてもカラフルな岩が見えていて、それが私に色彩豊かな景色を感じさせてくれた。よく見るとぶつぶつとした人の脳のような模様があってそれが普通の岩と違うのが分かる。これは一体何なのだろうか。

 息をするのも忘れて、というよりしたくてもできない状態だけど、そんなことが気にならないほど本物の"海"の壮大さに私は飲み込まれていた。

 

『サバイバーさん? 固まってしまってどうしましたか? 落ちた衝撃で今度は意識プログラムにバグが発生したんでしょうか』

(……ハッ!? そうだ、おかしな状況だったんだ)

『早く動かないと、後ろのメガロドンに食べられてしまいますよ。あれだけ死ぬのを嫌がっていたのに、どうしたんですか?』

(メガロドン?)

 

 後ろを振り返ってみると、明らかに敵対的な意思を表して牙を剥き出しに私へ迫ってくる何らかの生物が見える。でも、その速度は獰猛そうな見た目に反してひどく遅い。私は別に水泳が得意なわけではないけど、ちょっと泳ぐだけで簡単に引き離せてしまった。ただ執念深いのか、円盤がメガロドンと呼んでいた生物はどれだけ距離を離しても追ってくる。

 どういう訳だが、こんなにも息が続くはずないのにまだ息苦しく感じない。とはいえ、いつまでも泳いでいるわけにはいかないので手近な陸地に上がりたいのだけど、どこを探しても断崖絶壁の岩ばかりで私じゃ登れそうにない。困った私は浮上してあの円盤に話を聞いてみる事にした。

 

「ぷはっ。あの、円盤さん。どこか上がれそうな陸地はありませんか。いい加減休みたいですし、あのメガロドン? っていうのもずっと追ってきています。気付いたら数も増えてますし……」

『私は円盤さんではなくHLN-A、あなたのフラクタルパーソナリティAIなんですが……そのあたりも含めて落ち着けるところで説明しなければなりませんね。もう少しあのメガロドンの群れから離れられますか? 説明の順番が前後しちゃいますが、私には特定の座標への転送機能がありましてそれを使えばこの海バイオームでも陸地に転送する事ができます。ただし、転送待機中に敵性生物などから攻撃を受けてしまうと転送が解除されてしまいますので……』

「その待機中にこちらから攻撃を仕掛けるのは問題ありませんか?」

『転送範囲内から離れなければ問題はありません。しかし、あなたは丸腰では?』

「転送をお願いします。私は大丈夫ですから、なるべく早めに」

 

 謎の円盤、HLN-Aと名乗ったそれは私を中心に青いドット絵のようなドーム上の空間を形成してくれる。その外側からさっきのメガロドンが押し寄せてきた。私は彼らに手をかざしてアーツの弾丸で掃討する。あまり頑丈ではなかったみたいで、頭を撃ち抜くだけで全滅できてしまった。しめて六発。一直線に向かってくるなら楽な作業になる。

 

 倒し終わったところで目の前が一変する。水中に浮いていたはずの体は重力を感じる陸地に着地した。体が濡れていて若干気持ち悪いけど、今は仕方ない。そんな事よりもHLN-Aとかいう円盤から話を聞かなきゃいけない。何だってこんな事になってるんだろう。

 

『特に方角の指定はありませんでしたので最も近いE座標へ転送しました。お体に異常はありませんか?』

「はい。私は大丈夫です。……それで一体何なんですかこの世界は。さっきの生き物も私がここにいる理由も全く心当たりがありません。HLN-A……そう名乗るあなたの事も何もかも分からないです」

『何も分からない? 私はともかく、さっきのメガロドンも? あなたはARKで生き延びた実績からこのGenesisシミュレーションにアクセスしているのではないのですか?』

「ARK? 生き延びた? Genesisシミュレーション? 何の話ですか?」

『……えー、ちょっと待ってください。Genesisシミュレーションへのアクセス時に転送座標だけじゃなく人格データにも異常があったようで……? え、あなたどこからアクセスしてるんですか? データが破損しているというか一部の文字がデータベースにある既存のどれとも一致しない? 私は地球のあらゆる言語に精通したプログラムが組まれているはずなんですが……。サバイバーさんは自分がどこの民族でどの年代に生きていてどこ出身でどの人種とかってそういうのは覚えています? 自身のルーツになる話です。簡単に自己紹介してください』

「えっと、私の名前はアーミヤです。民族というのは分かりませんが種族はコータス、出身はレム・ビリントンになります。年代……というと1098年のヴィクトリアでとある作戦を行っていたはずなんですが……」

『ふむふむ……。見事に私のデータベースに一致する内容がありませんね! ヴィクトリアというのは1837年から1901年のヴィクトリア朝時代のイギリスの事でしょうか?』

「イギリス? いえ、そんな名称は聞いた事がありませんが……」

『年代が合っていないようなのでおそらくそうだろうとは思いましたがますます分からない事だらけですね。作戦と先ほど言っていましたけど軍人などの戦闘職に従事されていたんですか?』

「私の職業はロドス・アイランド製薬のCEOです。ロドスでは鉱石病(オリパシー)の抜本的な治療を目指した研究を行っていて、それに付随する感染者問題の恒久的な解決を模索しています。作戦と言ったのは感染者問題の解決が時に武力を用いる事があるからです。私もCEOとは別に戦闘指揮を行うドクターの命令の元、戦闘オペレーターとして多くの作戦に従事してきました」

『ロドス・アイランド? オリパシー? 感染者問題? ……うーんこちらもデータベースに無いですねぇ。申し訳ありません、まだお時間を頂けますか? もう少し深くあなたのデータについて精査しますので』

「は、はぁ……」

 

 突然始まった面接のようなやり取り。私も混乱しているけど、あっちとしても私は想定外の存在らしい。彼女、女性の声をしているからとりあえずそう呼ぶけれどHLN-Aは少し高く浮いたまま静止している。円盤の中央の、おそらく目のような部位に目まぐるしく多数のコードが行き交っているのが見える。ちょうどクロージャさんが徹夜している時の状態に雰囲気は近い。私は何もできる事がないので呆然と立ち尽くしている。

 

(これからどうすればいいんでしょう)

 

 辺りを見回すと、ここは小さな島になっているようで足が見えないほど深く草が茂っている。外は私が泳いできたように海が広がっていて色んな生き物が泳いだり空を飛んでいるのが見えた。さっきよりは慣れたけど、よくよく見ればどんな生き物も見たことない生物ばかりで見ているだけでも暇が潰せる。

 少し日が傾いた頃、ようやくデータの精査が終わったのかHLN-Aがまた話しかけてきた。

 

『再度の確認になるのですが、ARKについてご存知無いということなんですね?』

「はい、そうですけど……」

『今までサバイバルのご経験はありますか?』

「野営ならしたことある、くらいですかね。本格的に文明から外れたような生活はしたことないです」

『なるほど、つまり全くの未経験と。……わ~っかりました~』

「あの……?」

『今度はこちらの自己紹介ですね。先ほども申し上げましたが、私はHLN-A、あなたのフラクタルパーソナリティAI、そしてこのGenesisシミュレーションにおけるガイドです。どうやら他のサバイバーさんと違ってアーミヤさんは初心者ということで、手取り足取り完全なガイドをお約束しますよ!』

「ガ、ガイドですか……。あの、何となく察しているつもりなんですが私が元の場所に戻れたりとかは……」

『残念ながら全く分かりません! 。このGenesisシミュレーションはARKでのサバイバル実績がある方を対象としたVR空間です。通常とは違いミッションという形でここに来たサバイバーの皆さまにテストを受けて頂く形になります。アーミヤさんの問題を解決するには最低でもこれらのテストに合格して自分の体で起きていただかないと』

「えぇ……。自分の体で起きるというのは?」

『簡単に言いますとここはVR空間なので、現実に元の体があるはずなんですよね。アーミヤさんの接続はこちらで解除できないので自力でクリアしてほしいということです』

 

 なに、これ。

 何となく夢の中にいる気がして、でも気付いたら落ちてて。そしたら変な円盤が話しかけてくる。海に落ちて獰猛な生き物に追いかけ回されて挙げ句の果てにサバイバルしろという。

 

「訳が分かりませんよ……」

 

 気付いたら泣いている。こんな顔、ロドスのみんなに見せられない。私が不安な顔をしていたら、みんなを不安にさせてしまうから。

 でも今はたった一人で。あのHLN-Aとかいうのはいるけどそれすらもどうでも良くて。

 だって私には他にやるべき事があるのに。テレシスに斬られたケルシー先生。ロドスのオペレーター達を指揮するドクター。自救軍として戦うロンディニウムの市民達。未だロンディニウムを掌握するサルカズ軍事委員会────王庭。

 

 気付いたら日は暮れていたけど、私は夜通し泣いていた。それで、多分、自分で思うのは恥ずかしいけど泣き疲れたんだと思う。屋根も無ければ壁もない小さな島の真ん中で草むらのベッドに抱かれて。

 

 今度は夢を見ることなく寝た私は、せめて悪い夢であってほしいと思って目が覚めたけど変わることのない青空が私に現実を突きつけてきた。

 

 

 

 

 

『おはようございます。昨晩はよく眠れましたか? どうやらメンタルに大きな変動があったようで心配していたのですが』

「……おはようございます。よく眠れたかは分かりませんが、ひとまず落ち着きました。それで、私に何をしろと?」

『昨日の説明の続き……と言いたいところなんですが』

 

 途中で言葉を止めてすいーっと近づいてくるHLN-A。顔のすぐそばまで私に寄せてくる。目? と思われる中央の光が舐め回すかのようにじっと見つめてくる。

 

「えっと、何ですか?」

『……説明の手法を変えます。まずはそこの木を殴って下さい』

「はい?」

『木を殴って木材とわらを入手してほしいんです。その後海底に潜って石を入手してそこから石のピッケルをクラフトして下さい』

「は、はぁ?」

『私も一晩考えたのですが、アーミヤさんはまず基礎的なARKの知識が無いため先に全体的な説明をするより一つ一つ課題を提示してそれを達成する形の方が良いと判断しました。最初に話したミッションについてですが、実績がある方と話したように今のアーミヤさんが挑んでも結果は目に見えていますのでまずはご自身の生存圏の確立を目標に頑張ってみましょう! 石のピッケルのクラフトは最初の第一歩です。頑張って下さい!』

「な、なるほど……」

『ちなみに石が取れるほど深い海底は危険な生物が沢山生息しています。通常のARKでこのクラフトは本来初心者が最初に行うものなのですがGenesisシミュレーションでは初心者の活動を前提としていないため通常より難易度が高くなっている事に留意して下さい』

「分かりました。戦闘を念頭に置きます」

 

 もうどうにでもなれ、だ。

 言われた通り島に僅かに生えていた木を殴って資材を採取する。これまでの鬱憤を晴らすつもりで思いっきり木を殴り付けた。左手の菱形のインプラントからアイテムを確認する。

 あとは石の採取。また海に飛び込んで適当な海底を探す。話を聞く限りならかなり深いところまで探さないといけないみたい。何とか深そうなところを見つけたけど息が保つかはきっと賭けになる。寄り道せず一直線に上下を行き来するだけならギリギリいけるかもしれない。

 意を決して、海底まで一直線に潜っていく。ふと、ロドスにいるエーギルのオペレーターの事を思い出した。彼らは海に縁があると聞いているけれど、彼らならもっと上手く泳げたのかな。

 そんな事を思いつつ予想より早く海底に到達した。まだ息には余裕がある。石を探すのにそう苦労する事はなかった。ただの石を見つけるのにこんなところにまで来なきゃいけない状況がバカみたい。

 

 上を見上げると私を襲おうとしている生き物達が追ってくるのが目に入る。昨日のメガロドン以外にもバチバチと電気をスパークさせて散らしてくるうねうねとした細長い生き物がいる。再び水中でのアーツの使用。昨日と同じく掃討には手間取らなかった。

 数個あれば十分かな。そう思い急いで浮上しようと思った矢先、今度は群れを成した小さな生物が私を取り囲む。よくみると湾曲した鋭い嘴を持つそれらは先ほどの生き物達と同じように私へ襲いかかってきた。

 

(さっきの生き物より、手強い!)

 

 数えられないほど多い大群が大挙して私へ押し寄せてくる。小さいせいでアーツで狙いを付けようにも定まらず撹乱される。何より四方八方どこから攻撃が来るのか分からないのが辛いところ。ただ小さいおかげか負った傷もかすり傷程度で大事に至っていないのが幸いだった。水中にいられる時間は有限。戦闘は手段でしかないのだから、逃走を選ぶのは必然だ。

 群れは執念深く私を追ってくる。とにかく浮上して元いた島に戻らないと。逃げながら浮上する私に群れ以外にもまたメガロドンや電気を放つ生き物がやってきたけど相手をする暇なんてない。陸にさえ上がれればそれでいい。

 逃げる、逃げる、逃げる。

 何とか海面に浮上できたけど、元いた島からはかなり遠ざかっていた。もう闇雲に泳ぐしかない。そう思って島に近付いたら付近を巨大な何かがゆらりゆらりと漂っている。ちょうど島に上陸できる場所のすぐそばにいるものだから邪魔でしょうがなかった。

 何とか漂う巨大生物の隙間をくぐり抜けて島へ帰還できた私。すると探索中一切口を開かなかったHLN-Aが一区切り付いたかのように話しかけてきた。

 

『お疲れ様です。これで材料は揃いましたね。クラフトそのものは石を採取した時点で可能でしたがあんなに大勢の敵性生物に囲まれては無理があるでしょう。賢明な判断です』

「はぁ……はぁ……。こんなに泳ぐと疲れますね。それにお腹も減ってきました……」

『食料であればそこに生えている草むらからベリーという植物が採取できたはずです。そのまま食べられますよ。赤青黄紫白黒と六種類ありますが黒と白のベリーは食べてはいけません。眠くなったり急激に喉が渇いてしまいますからね。しばらくは休憩を取るのを推奨します』

「えぇそうします。……本当に不可思議な世界ですが、今は生き延びるのを」

『待って下さい、アーミヤさん。メガケロンに何かしました?』

「はい? メガケロン?」

『島の外を回遊していた巨大な亀のような生物です。ほら、アーミヤさんを明らかに目指してこちらに向かっていますよ』

 

 さっき島へ上陸する際に見えた巨大な何か。HLN-Aがメガケロンと呼ぶそれは背中にまるで島のような甲羅を背負う生き物の事みたい。えっちらおっちら、六本の足で島へ上がろうとしている。大きさに見合う鈍足だけどいかつい見た目をしていて迫力はすごい。

 そのメガケロンという生き物はやがて島へ上陸し私の目の前へ来たところで止まった。なぜか私を見つめている。なんなら緑色でメガケロンという表示がテレビ番組のテロップのように見えている。

 

「なぜ私の方へ来たんでしょう。緑色でメガケロンと確かに表示されていますが、これはVRシミュレーションだからでしょうか」

『緑色ですって? ……もしかしてアーミヤさん、パラキートの魚群と敵対したままメガケロンの近くを通ったんですか?』

「パラキートの魚群?」

『石を採取する時に小魚の群れが襲ってきたじゃないですか。あれですよ、あれ』

「群れ……。ああ、あれですか。確かに襲われましたけど、最後に島へ戻る時はなりふり構わず泳いでいたので群れがどうなったかは……」

『おめでとうございます!』

「はい?」

『全く意図しない形ではありましたがアーミヤさんはこのARKで最も重要な活動の一つであるテイムに成功しました! このメガケロンはアーミヤさんのペット、いえ初めての生物ですから相棒と言っていいでしょう。素晴らしいです、アーミヤさんに仲間ができましたよ!』

「て、テイム? 仲間?」

『テイムというのはですね……』

 

 HLN-Aから再びレクチャーを受ける。どうもこの世界は知らないといけない事が多いみたい。熱心に機械音声がテイムというのを解説してくれる。野生の生物を眠らせて好みの餌を食べさせると仲間にできるシステムがある、と。ただメガケロンはテイムの方法がもっと特殊だったみたい。

 この世界で初めて出来た仲間、それがこのメガケロン。感情が読み取れないぬぼーっとした二対四つの目が私をじっと見ている。メガケロンに乗れるようになるのが長期的な目標らしい。

 

 前途多難としか思えない道行きに、これからこの世界で生きていく事を実感するしかなかった。




登場した生物紹介

パラキートの魚群
Genesis1の海バイオームに生息するARKオリジナル生物の小魚の群れ。これまでのARKの生物では出現時に複数同じ場所で湧き結果として群れになる生物はいたが、パラキートの魚群は多数の群体が一個体としてカウントされる非常に珍しい生物である。同様の生物が沼地バイオームにいる。テイム不可
主に海バイオームの深海に生息している。サバイバーに対して敵対的だがテイム生物には敵対しない。大型の水中生物に乗っていれば脅威として考える事はないだろう。後述のメガケロンのテイム以外では影の薄い存在である

メガケロン
Genesis1の海バイオームに生息する巨大な亀のようなARKオリジナル生物。二対四つの目と三対六本の足が異形さを際ただせている。非常に巨大でテイム可能な生物ではギガノトサウルスやブロントサウルスなどと体高はほぼ互角
主に海面を遊泳している。野生の気質は温厚でこちらから攻撃をしない限り敵対する事はない。テイム方法がかなり特殊で眠らせて餌を与えるのではなく深海に生息するパラキートの魚群を誘導してメガケロンに追従させる事でテイムゲージが進む
テイム後の能力はまさしく生きた島。プラットフォーム生物であり背中に建築物を建てられるが、他のプラットフォーム生物がプラットフォームサドルを必要とするのに対しメガケロンは自前の甲羅にそのまま建築する事が可能になっている。水中だと甲羅の上には常に酸素の気泡が排出されておりメガケロンの甲羅にいる間は溺死する事がない。攻撃は前方に噛みつく事ぐらいしか出来ず旋回性の悪さと鈍足のせいで戦闘には全く向いていない。噛みつくのとは別に口からブレスを放つ事ができるがこれは地上と水中にいる時で能力が異なっており、地上では前方にいる生物にダメージの無い風での吹き飛ばし、水中では泡を連続して吐き続ける。この泡にダメージは無いが生物に当たると一定時間泡の中で拘束する事ができる。テイム後は時間経過と共にメガケロンの甲羅に草が生え小鳥が飛び交う演出が施される
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