この話こそ最初に投稿すべきだったかもしれない
────…………
────…………?
海岸に一人の人間が倒れている。全身黒ずくめで顔をフードですっぽり覆ってしまっているので見た目では性別や容姿の判別がつかない。長い間気を失っていたのだろう、ゆっくりと体を起こしバキバキと関節を鳴らしながら辺りを見回した。
────ここはどこだ?
黒ずくめの人物────ロドスにおいて通称ドクターと呼ばれている彼、或いは彼女は困惑していた。
────少なくとも外出した覚えは無いのだが。
ドクターの海岸で目覚める前の最後の記憶は山のような書類を執務室でこなしながら机に突っ伏した、ただそれだけである。一見可愛らしい姿の、その実仕事に対して一切容赦の無い子うさぎなCEOの手腕たるや鬼畜な物で、任務など仕事の名目で無い限りはロドスから外出することは無く執務室で仕事に追われているのがドクターの日常だった。
────何だ、これは?
ふと左手を見ると手首にひし形の物体が埋め込まれていることに気付いたドクター。ドクターにはこんなもの埋め込んだ覚えが無く、状況から何から何まで首を傾げて思考に埋没していたがそんなドクターの元に近づく影があった。
鳴き声を上げて近づいてくる者、トカゲが二足歩行したような体に顔には立派な襟巻きが付いている。少なくともドクターはこんな生物を見たことが無かった。半ば放心状態でいるドクターが無防備に近づいてくるそれを眺めていると────。
────痛っっっ!? 前が見えない!
一際甲高い鳴き声を上げたと思ったら次の瞬間には何らかの液体を吐きかけられていた。強制的に覚醒させられたドクターは慌ててエリマキトカゲ? から逃走する。前後不覚に陥りながらも幸い足はそこまで早くは無かったようで、視界が晴れた時にはエリマキトカゲ擬きはもういなかった。
────一体全体何だと言うのか……
脇目も振らずに逃げたドクターは林の中から元いた海岸の様子を観察した。よくよく見れば同じ姿の生物が他にも複数いるではないか。少なくともあそこに戻ることは無いだろうと冷静に考えたドクターは、改めて今の状況について考察したがどれだけ思慮を重ねても答えは出ない。ドクターはあくまで戦術指揮や鉱石病の研究を生業にしているのであって、それ以外の事は素人でしかなかった。
案ずるより産むが易し、とばかりに行動起こそうとしたドクターの足に何者かが突っかかる。見れば丸々とした翼の短い鳥がいるのを見てドクターは情けない悲鳴を上げて後退った。先ほど未知の生物に攻撃を喰らったばかりなので慎重に警戒したドクターだったが当の鳥はドクターなんぞ我関せず、とばかりに草を突ついて果実らしき物を食べていた。
どうやら害意は無いようだと安堵したドクターは改めてその鳥を観察する。これも先ほどのエリマキトカゲ擬き同様ドクターの知識には無い生物だった。BSWの訓練生辺りなら分かるかもな、と一人で茶化したところでこのままでは一人でサバイバルする羽目になることに気付き青ざめた。
とりあえず食料を確保しなければと、適当に林を歩き回るドクター。先ほどの丸い鳥が食べていた赤い果実を試しに一口含んでみて、いけることが分かったドクターは手当たり次第に生えている果実を食べその結果黒と白の果実には二度と手を出さない事を心に誓った。
赤青黄紫四色の果実が食用に適していることを把握したドクター。これら果実はそこらじゅうに生えているため衣食住の"食"の問題はしばらく考えなくても良さそうだが、今度は"住"の問題が発生した。見れば日が傾きかけ空は赤く霞んでいる。鬱蒼と繁った林の中はもう大分暗かった。
林と海岸の境目に向かったドクター。海岸線を辿って行けばいずれは河口に着き河口から川を遡って上流に向かえるはずだと当たりを付ける。古来より川は生活の生命線として近くに村などがあることが多いものだと知っていたドクターは予想通り河口を発見したがそこで異様な物体を目撃する。
上流へと視線を映した先、日は完全に落ちてしまっているがそんな暗闇の中でもはっきり分かるほど巨大な黒い柱が上流の先で緑色の光を放ちながら浮いていた。明らかに人工物。あそこに行けば助かるための手掛かりがあるかもしれないと心と足がはやるドクターは意気揚々と向かっていった。
しかしながらそんなドクターをまたしても苦難が襲う。やたらと大きい足音が後ろから迫ってきたのを聞いて振り返ったドクターはまたも悲鳴を上げて今度は全速力で走った。最初に会ったエリマキトカゲ擬きと良く似た姿をした全長4mはあろうかという巨大トカゲが、どうみても捕食目的で追ってきたのだ。必死になって逃げるドクターだったが距離はじわじわと縮められている。やがてドクターに追い付こうとしたところでドクターは一か八か川の中に飛び込んだ。
川に飛び込んだドクターを追って同じく川に飛び込んだ巨大トカゲだが、川の中ではその俊足を活かせないのだろう。何とか引き離す事に成功したドクターだったがこのまま対岸に上陸する訳にもいかなかった。何しろ地上ではあっという間に追い付かれるのだから、下手に上がるのは自殺行為だ。巨大トカゲが諦めるまで川の中を泳ごうとしたドクターだったが、休むことなど許さんとばかりに肉食魚がドクターに噛みついてきた。さっきまでの冷静な思考を失い痛みで慌てて対岸に上がるドクター。まだ巨大トカゲが川の中にいる内に出来るだけ走って逃げたかった。
だが走って逃げた先にいたのは巨大トカゲよりも更に大きな角トカゲであった。牛のような角が二本、額から前に向かって生えている。体の大きさに対して小さ過ぎる前肢が目を引くそんなこと今のドクターに考える余地は欠片も無かった。
ドクターに気付き自慢の角を振りかざして突進する角トカゲ。後ろからは猛スピードで爪牙を立てて追い縋る巨大トカゲ。もう一度川に飛び込むのも間に合わない。絶体絶命のピンチ、最早ドクターの命運はこれまでか────。
────だ、誰か助けてくれぇぇぇぇぇ!!!???
脅威を前に身を伏せて体を固くすることしかできないドクター。しかしいつまでたっても体を引き裂く爪牙はやってこない。代わりに聞こえたのは────。
────…………これは……歌……?
恐る恐る顔を上げたドクターの目に飛び込んだのは氷の彫像と化している角トカゲと巨大トカゲの姿だった。今にもドクターに襲いかからんとしたその姿勢のまま制止している。
────……この歌は……!
忘れるはずが無かった。忘れるなど彼女と彼女の家族に対する侮辱に他ならなかった。あの日、龍門で最後まで見届けた彼女の怒り────。
「久方ぶりに人間に会えたと思えばロドスのドクターとは。一体どんな縁を、私達は紡いだんだろうな」
彫像が砕かれ、白銀が舞い散る。
その奥から白い姿が現れる。彼女の名は────。
────ふ、フロストノヴァ……!!!
「全く、随分と情けない悲鳴を聞かせてくれたものだ。龍門で私を抱き止めた格好を崩さないでくれ」
彼女のアーツによるものか、真夜中でも輝く銀色ではっきり認識できた。
レユニオン幹部・スノーデビル小隊の頭領フロストノヴァ。いつぞやの龍門にてロドスと対峙し己の命運を自ら絶った白うさぎがそこにいた。
「なるほど、つまり私のように死んでここに来た訳ではないのだな」
フロストノヴァがドクターを助けたその後、黒い柱近くの小さな小屋で二人は互いの状況を確認し合った。
フロストノヴァはドクターが海岸で目覚める一週間ほど前からこの世界にいたらしい。目覚めたドクターと同様、困惑しながらもドクターと違い戦う術を持っていた彼女は西北氷原にいた頃の経験もあって自力でサバイバルをしていた。
────体は大丈夫なのか
「不思議な事に、いくらアーツを使っても今の体は冷たくならないんだ」
────それは、喜ばしいことだな
「出来れば兄弟達と触れあってみたかったものだが、おまえ以外の人間には出会えなかった。それどころか見たこと無い生き物が襲いかかってくるものだから探すことも儘ならなかったな」
────この小屋はフロストノヴァが作った物なのか?
「そうだ。と言ってもノコギリや旋盤などで成形した訳じゃない。木を切り出すのは原始的にやったが、左手首にあるインプラントを見てみろ、結構色々出来るんだぞ」
そういって手首に埋め込まれた謎のひし形の物体に分かる範囲で解説していくフロストノヴァ。彼女に習ってドクターも試しに触れてみると何らかのウィンドウが開きPRTSシステムをいじるかのようなメニュー画面を開くことが出来た。どうやらここで、手に入れたアイテムや自分のステータスを確認することが出来るらしい。重量さえしっかり計算できればどんな量でもインプラントの中に収納して手ぶらで運べるというのだから優れものだ。
────これからどうするべきか
「さぁな。私もあそこの巨大な柱が何なのか分かっていない。ここにいるのもドクターと似た経緯だ。あの柱以外に人間の存在を感じさせる物など無いからな」
────他に手掛かりが無いものか……
「実はな、柱は一つだけじゃなく他にも2つあるんだ。ドクターは今日来たばかりで気付かなかっただろうが、赤い光を放つものと青い光を放つものが遠くにある。旅の準備を整えたら他の柱にも向かう予定だったんだ。もしかしたら私達以外の人間が、あそこに同じ経緯でいるんじゃないかと」
────自分も連れていって欲しい
「勿論だ。というか、今の貴方には従えるロドスのオペレーターがいない。如何に優秀な指揮官と言えども部下か居なくては裸も同然だな」
────それはそうだな
フロストノヴァの様子がやけに嬉しそうに見えるドクター。いや嬉しいというよりもこれは、面白そうなのか。
「ドクター、あの日龍門で戦う前、私が言った事を覚えているか」
────覚えている。確か私達が勝てば────
ドクターに対して改めて姿勢を正すフロストノヴァ。そこには、有り得て欲しかった、けれども消して有り得ることの無かった彼女の姿があった。
「元レユニオン幹部・スノーデビル小隊が長、フロストノヴァ。約定に従いドクターの元へ参上した。どうか貴方のためにこの身を感染者の敵と戦わせてくれ」
微笑みを湛えてドクターに手を差し出し握手を求めるフロストノヴァの手を取るドクター。
────こちらこそ、よろしくフロストノヴァ。君にまた会えて嬉しいよ
今ここに、暖かな奇跡が成し得た瞬間だった。
「さしあたっては、ドクターのための環境を整えなくてはな。この小屋は二人で住むには少々手狭だ」
────指揮以外でどれだけ役に立てるかは分からないが……
「私もまだここに来て日が浅い。分からないことだらけだし二人で一緒にこの世界を調べよう」
────ありがとう、フロストノヴァ……
「眠そうだな、ドクター」
────君に会えて、安心したからだと思う
「そう言ってくれるのは嬉しい。もう夜も遅い。簡素なベッドだがそこで寝ていてくれ」
うつらうつらと舟を漕ぎ出したドクターをベッドに誘導して寝かせるフロストノヴァ。本当ならドクターには山程話したい事があったが聞き心地の良いフロストノヴァの子守唄が徐々にドクターの意識を落としていった。
「おやすみドクター。良い夢を」
登場した古生物紹介
ディロフォサウルス
映画「ジュラシック・パーク」で襟巻き立てて毒液吐いてきたやつ。例に漏れずARKはジュラシックシリーズを大変リスペクトしているためARKのこいつも吐いてくるが実は毒を持った恐竜がいたかどうかは未だに分かっておらず毒液を吐いてくる描写は完全に創作である
本来のこいつは体長6mほどの大型生物だがARKに登場するこいつは中型犬くらいの大きさしかない。サバイバーを見つけると近寄って10秒間鈍足と視界が悪くなる毒液を吐いてくるが所詮は序盤の雑魚MOB扱いでゲームが進めば全く見向きもされなくなるキャラ。敵性生物とはどんなものかを教えてくれるチュートリアル用生物
ドードー
環境の変化などではなく人間の都合により絶滅したとされる飛べない鳥。人間に発見されてから僅か83年ほどで絶滅した。環境保護団体のマスコットとして紹介されることもある
ARKでも変わらずにその辺をただうろちょろするだけの生物で事実上ARK最弱生物の名を欲しいままにしている。殴っても逃げ出すだけで攻撃もしないので初心者が肉や皮を集める適したこちらもチュートリアル用生物
ユタラプトル
アメリカ・ユタ州で発見されたドロマエオサウルス科最大の恐竜。ドロマエオサウルス科はラプトルと名の付く恐竜達が所属するグループであの映画「ジュラシック・ワールド」で登場したブルー達四姉妹(ヴェロキラプトル)もこの内に入る
ARKに登場するこいつは初心者キラー。本来の体長は7mのところ4m程度に小さくなっているが序盤ではトップレベルを誇る俊足と高い攻撃力でサバイバーを見つけ次第的確に狩ってくる。同じ場所に複数湧いていることもありこいつに泣かされてARKの洗礼を受けないサバイバーはいない。テイムするとそれまでの脅威が一転して頼もしい味方となる。戦闘を専門的にこなせる生物では最初にテイムできる戦闘ペットになるのでまずはこいつのサドルが作れるようになるレベル18まで頑張ってみよう
メガピラニア
現生のピラニアの祖先。現生のピラニアと違って肉食ではなく雑食であったとされる。
ARKでは現生のピラニア同様河川や沼地に出現する。単にでかいピラニアとして反映されたのかサバイバーかテイム生物が索敵範囲内に入ってくるとすぐ襲いかかってくる。幸い攻撃力は高くないので襲われてもすぐに陸地に逃げれば危険は無い。単なる河川域における文字通りの雑魚。長らくテイム不可能だったがアベレーションで実装された魚篭を使えばテイムできるようになった。
カルノタウルス
名前の意味は肉食の牛。トカゲを意味するサウルスではない。体長は8mほど
二つの角と体に対して不釣り合いな小ささを持つ前肢が不恰好に見えるがARKに登場するこいつはユタラプトルを遥かに越える攻撃力を誇る。体力面でもユタラプトルより多いので初心者が相手をするにはユタラプトルより無謀な相手だろう。テイムするとユタラプトルを越える戦闘能力で余程危険な相手でもない限り大抵の生物を返り討ちにできる。高レベル個体ならティラノサウルスが相手でも真正面から戦える。また、出血攻撃という特殊な攻撃も持っておりこれは10秒間に体力の5%を削る効果でどんなに体力が高い相手でも必ず200秒で討伐できる。残念ながらボスなど一部特殊生物には効かない