今回は短め。というかペンギン急便周りはなるべく短くしたい
『オラオラ、じゃんじゃか働けぇい!時はは金なり、鉄はいくらあっても困るもんじゃねぇぞ!』
北西に浮かぶ流氷の群れ。本来なら耳に痛いほどの静寂が包むはずの空間であったが、ここには今やたらと声の良い男の声が響いていた。
不規則に連なる氷山ばかりだが平らな立地もちゃんとある。そこに鉄で出来た建築物を大量に使い建てられたそれは、どこからどう見てもライブ会場の舞台にしか見えなかった。
その壇上にマイクを片手に囃し立てる者の姿は人間ではなくてペンギン。ネックレスやTシャツ、帽子などを被っていてまるでラッパーのような姿をしている。シュールな姿にも見えるが、彼は壇上から観客席に当たるような部分へ檄を飛ばしていた。
「あの~、ボス?テンション上がってるとこ悪いんですがもう採取した金属鉱石が底を尽きそうです……」
「そりゃそうだ。あんだけ採ったのをさっさと溶かしてインゴットに変えりゃ、あるだけ消える」
「えっと、インゴットそのものはどうするんですか?」
「赤い柱んとこの嬢ちゃん達のとこへ運んだり俺達で色々使ったり使い道には困りゃしねぇだろ」
「工業炉を動かすためのガソリンも尽きそうなんですよ……」
壇上のラッパーペンギン────エンペラーは、部下の一人であるバイソンから受け取った報告を茶化して再び下段のペンギン達へ視線を移した。
壇上の下に広がる光景はここが氷海であることを忘れさせるような工業地帯であった。幾つもの工業炉が立ち並び、エンペラーとはまた違った姿をしたペンギン達がせっせと鉱石を運ぶなどして働いていた。中には現場監督であろうか、ヘルメットを被ったペンギンも見られる。
「ガソリンか……。モスティマが砂漠から帰ってくるのを待つしかねぇな。こっちで採れる量とあっちじゃ雲泥の差だ。どうしても欲しいなら、ちまちま原油を採掘してきてくれよ」
「そうなりますよね。はぁ……頑張るか……」
言うやいなや、バイソンは壇上の裏手にいる刺々しい装甲と尻尾の先に瘤がある鈍重そうな生物に乗り、トボトボと氷海から島本土の雪原地帯へ向かっていった。
「おうエクシア、俺だ。バイソンが真面目な事に原油の採掘に行ってな、アンキロじゃあ輸送が不安だからおまえのアルゲンで迎えに行ってやってくれ。……モスティマ?もう少ししたら帰ってくるだろ。じゃあな」
無線機を片手にもう一人の部下へ指示を出すエンペラー。こういうところのケアを怠らないところが、皇帝とも呼ばれる由縁なのかもしれない。
『ボス』
「テキサスか。どうした?」
『ボスの指示通りに緑の柱へ行ってきた。予想通り確かに人がいたが……』
「なんだ?問題発生か?」
『ロドスのドクターがいた。それは良いんだが、一緒にいたのがレユニオンの幹部だった。それも一人ではなくて、三人いる』
「あの小うさぎはいねぇのか?」
『見覚えの無い者もいるが、少なくともドクターの周りには私の知る限りロドスに所属している者の姿が確認できない。今はまだ接触を控えている』
「ナイスだ、テキサス。それで、ドクターの様子は?弄られてるとかそんなのはないか?」
『……遠くから偵察した限りでは不仲には見えない。概ね、良好な関係を築けているように思う。特に、白いコータスの女とはほぼ四六時中一緒にいる』
「へぇ、ロドスのドクターはコータスが好みなのか。良い趣味してるなぁ。そいつらはこっちに来て日が浅そうなのか?」
『ああ、まだわらの屋根と木で出来た小さな小屋を中心に活動している。ドクターを含めた四人の拠点として考えるなら小さすぎる拠点だ。仲間にしている生物もいない』
「その様子じゃ、テイムがどうのとかはまだ知らなさそうだな。よし、そのまま監視任務だ。動きがあるなら教えてくれ」
『分かった』
テキサスから来た報告に指示を返すエンペラー。彼を筆頭とするペンギン急便は最も早くに謎の世界に放り込まれ適応したトライブだ。何だかんだノリと勢いで生きながら、一瞬の判断にシビアさを併せ持つペンギン急便はこの世界への適応も早かった。
「青、赤、緑。それぞれに対応した面子が揃ったってことか?何にせよこれで事が動く訳だ」
エンペラーは一人、この後の展開に思考を向ける。テラの世界ではラッパーとして高名を轟かせる彼だが、同時に龍門の最有力者である龍門近衛局長官ウェイや龍門最凶の極道【鼠王】と互角に渡り合う立場も持っている。盤上の駒の一人ではなく、盤上を動かす側のプレイヤーの一人としての自覚を持つ彼が視線を向ける先にはこの島で最も高い山の頂が見えていた。
「大蜘蛛に大猿、そしてドラゴン。あんたらはこいつらを乗り越えて行ったのか」
壇上で独りごちるエンペラーの足元には乱雑に散らばった手記が幾つもある。その手記の一つには、ヘレナ・ウォーカーの名が記されていた。
登場した古生物紹介
カイルクペンギン
今から2700万年前のニュージーランドにいた古代のペンギン。体長は130cmほど、つまり姿がオウサマペンギンだと思われるペンギン急便のエンペラーよりでかい(カイルクが人間の仕事っぽいことしてる描写があるがここだけの創作。ARKでもやれない。エンペラーなら言うこと聞かせられそう)。
ARKではペンギンらしく寒冷地帯に出現する。ただ寒いだけではなく水場があるところに出現する。条件さえ満たしていれば山の小さな池とかにも群生している。ARKの生物では唯一野生で子供が出現する。見た目は単に大人を小さくしただけの姿なのでモフモフな姿を堪能することは出来ない(残念)。子供をテイムするとテイムした瞬間からブリーディングに移行する。テイム時の能力にカイルクペンギンから一定範囲内の味方の生物の温度耐性を上げる能力があるがぶっちゃけ雀の涙。範囲も相当狭いので素直に毛皮の装備を着た方が耐寒できるだろう。倒した時にドロップするアイテムに有機ポリマーがある。クラフトで作るポリマーと同じ役割を果たせるアイテムだが1スタック100個の通常ポリマーに対して有機ポリマーは僅か10個でスタックしてしまう。また生物由来であるためか時間経過で腐敗し消滅する。作りたいアイテムや自分の採取状況を考えどちらを使うか考えよう。有料DLCに登場する一部の生物にはカイルクペンギンよりも有機ポリマーがドロップする生物がいて有料DLC以降を遊んでいるサバイバーにとってはドードーと変わらない存在になっている
アンキロサウルス
全身を覆う装甲と化した皮膚とハンマーのような瘤を尻尾に持つ曲竜類。別名は鎧竜。あまりの皮膚の頑丈さに皮膚が化石として残るほどで彼らの仲間は比較的保存状態の良い化石が発見されることが多い
ARKでは主に山岳地帯に群れている事が多い。本来の体長は9mから11mにもなる巨体だがARKに登場する本種は大体4~5m程のサイズ。見た目通り鈍重ではあるが初期実装組の草食生物としては中型肉食生物に匹敵するくらい攻撃力が高い。ちなみに地上を走るより泳いだ方が早かったりする。採取生物としての能力こそが本領で攻撃することで破壊可能な石・岩オブジェクトから多くの鉱石系アイテムを採取できる。金属鉱石の重量を85%軽減する能力も持っていて金属を効率良く集めたいなら本種のテイムは必須となる。有料DLCマップの一つジェネシス1にてようやく本種以来となる金属鉱石掘りに特化した生物が実装されたが他のマップでは依然としてアンキロサウルスが筆頭として上がるだろう。一家に必ず一匹はいてほしいARK界の鉱夫である