ARKナイツ   作:エドレア

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久しぶりに書いたら筆が乗ったので今回から焦土の話をちょくちょく出していきます


焦土編
Case1:餓え渇く荒地


 

 

 

 

 

 どこまでも茶色の景色が広がる大地。容赦なく地を焼く大陽。

 荒涼としていて水の気配が僅かにしか感じられないが、しかしそこには生命の息吹が確かに根付いていた。

 

 

 

 

 

 一頭の草食獣が水辺に近づいていく。水辺と言ってもそれは辛うじて雨が降る事で生まれる小さな水溜まりのようなものだ。そんな小さな水溜まりでも、ここでは大事な命を繋ぐ場所。草食獣は大事な水に縋りつくように飲み始める。

 不思議な姿をした草食獣であった。体長はおよそ3m程だろうか。嘴を持つ頭部に背中にはラクダのような二つのコブが付いている。砂地や岩場に紛れそうな体色は、どこをとっても既存の生物に似ているようで誰とも似つかない姿をしていた。

 それは、僅かな水溜まりをあっという間に飲み干さんとする勢いでグビグビと水を飲んでいる。いくら水が貴重な世界とはいえ、たった一個体の生物がここまで水を飲めるものなのか。それを可能にする特殊な能力を持つのであろうが、しかしそんな至福の一時は遠く鳴り響く遠吠えによって切り裂かれた。

 

 遠吠えを聞いた草食獣が異変に気付いて周囲を見渡す。岩の陰から複数の光る目が草食獣に狙いを定めている。草食獣は急ぎその場から離れる事を選択した。この遠吠えは自分達を狩る時に響くものだと経験則として知っているからだ。

 覚えている群れの場所へひたすら逃げようとする。だが、遠吠えの主である狼達が逃走の邪魔をする。あちらこちら、岩の隙間から爪と牙で追いたてられ気付けば知らない場所に出てしまっていた。

 気付けば周囲の狼達の気配が消えている。諦めたのだろうか。それが草食獣の最期の思考となった。

 

「はい。おーしまいっと」

 

 死角から一閃。最期に草食獣が見たのは後ろにたなびく美しい銀髪であった。

 

 

 

 

 

「この世界にも慣れてきたし、そろそろ何か刺激が欲しいところだね」

 

 美しい銀髪の持ち主────ラップランドはそう呟いた。

 双刀の血を払い事も無げに嘆息する姿はどこかつまらなそうであった。

 配下の狼達はせっかく狩ったはずの獲物に手を出さない。無断で手を出すとどうなるか、彼らはラップランドにテイムされたその日にしっかりと躾られていた。

 

 ラップランドはこの世界に来て日は浅い。まだ数日、気付けば見知らぬ土地にいたのを適当に見かけた生物を狩り続ける事で凌いでいた。そんな彼女に、気紛れにテイムや建築などの知識を教えたのはモスティマである。ここが特殊なシステムやルールで運用されている世界であることを教えたモスティマは、相方のフィアメッタに急かされて名残惜しむ事も無くラップランドから離れていた。

 ラップランドとモスティマ・フィアメッタらの間にこれ以上の関係は無い。トライブシステムに則って徒党を組む事は出来るがヒトリオオカミを自称するラップランドにとってその選択肢は有り得なかった。

 

 草食獣から得た肉をその場で焼いているラップランド。食べる分だけ得れば後は配下の狼達にあげていた。そうしていると、ラップランドの背からくぅくぅと別の生物の鳴き声がする。見ればちょうど肩に乗るサイズの、耳の大きいげっ歯類と思われる生物がラップランドの髪の隙間から空に向かって鳴いていた。

 

「あーあ、せっかく遠出しようか考えていたのに。幸先悪いなぁ」

 

 急ぎ撤収の準備を進めるラップランド。だが面倒な事に獲物の匂いを嗅ぎ付けた野生生物が彼らの前に現れてしまった。人が乗れる程の大きさもあるサソリや明らかに10m以上の長さがある巨大ヘビ、しまいにはどこか興奮した様子のハゲワシまで襲いかかってくる。珍しく舌打ちをしたラップランドは狼達と乱戦を切り抜ける羽目になった。

 

 先に拠点にさえ帰られれば良かったのだがそうもいかなくなった。砂混じりの轟風が吹き込んでくる。空を見れば日中のはずなのに、大陽は遮られ視界はせいぜい数mほど見えない。この世界で特に危険な天候である砂嵐が焦土に全体に吹き荒れていた。

 砂嵐が吹きつつもようやく最後の一体を倒したラップランド達ではあったが限界だった。吹き付ける砂はいくら払おうとも体に重みを与えまともに動くこともままならない。狼達も死んだ者こそいないが全員満身創痍であった。

 

(……サイッコーな気分だね)

 

 気分は最悪だがとりあえず岩陰に身を隠すラップランド。この砂嵐の中では叫んだところで口の中に砂が入ってくる始末である。あまりにも運の無い状況だが更に悪くなるのはここからだった。

 重低音を響かせる足取りが徐々に近付いてくる。狼達とは違う唸り声も聞こえてきた。音の主に狼達が応戦しようとしていたが、ラップランドは岩陰から出る事も無くその末路を予感していた。一匹一匹、断末魔が聞こえてくる。最後の一匹が狩られたところでようやく静かになった。だが気配は消えていない。ラップランドはそっと、砂嵐の中僅かに身を乗りだし気配の主を凝視した。

 狼達の死体を貪るそれは暴君とも呼ぶべき威容であった。多くの生物が足を止めるこの砂嵐の中、平然としている。

 ラップランドは独りほくそ笑んだ。ヒトリオオカミにはこれが似合いなのだと、自嘲した彼女はあろうことか暴君の前に立ちはだかった。

 

「君が食べてるそれさ、僕のなんだよね。仇とかそういうのじゃないんだけどさ、ムカつくんだよ、君」

 

 暴君────ティラノサウルスは別にラップランドの言葉を理解した訳ではないが、臨戦態勢に入った。食事の邪魔をする不届き者には鉄槌を、然らば当然の如く咆哮する。ティラノサウルスの咆哮を受けてラップランドは毛ほども揺るがなかった。ちょうど、咆哮と共に砂嵐が晴れていく。砂嵐があろうが無かろうが挑むつもりでいたラップランドはせせら笑った。勝ち負けに拘りは持たないが、やるのなら勝つつもりで挑むのが彼女の主義ではある。だが彼女のその気骨は、砂嵐が晴れていくと共に困惑へと変わっていった。

 一人と一頭、ラップランドは相対しているティラノサウルスの後方に視線が固定されていた。微動だにしない彼女に大口を開けていたティラノサウルスであったが遅れて背後の気配に気付く。

 岩の塊が立っている。岩がちょうど人に近しい姿で直立している。背は10mを越えているであろうか。ラップランドは過去の戦闘経験からロドスにいた頃のこれに近しい存在を思い起こしていた。確かアーツで岩を操り動く巨像を作る者がいたような────。

 

「友よ、我らが敵を押し潰せ」

 

 凛とした女性の声。その声と共に人型の岩がティラノサウルスへ向かって手近な岩を投げつける。突然の攻撃に痛打と共に仰け反ったティラノサウルスであったが直後に突貫し、人型の岩に噛み付いていく。だが岩は岩であった。どれだけ噛み付こうが傷らしい傷は付かない。攻めあぐねているティラノサウルスを無視して人型の岩は強烈なアッパーを決めティラノサウルスを地に沈める。起き上がろうとしたティラノサウルスだったが、無慈悲に首を足に踏まれ頸椎がへし折られる最期となった。

 

「……はぁ?」

 

 流石のラップランドも呆気に取られていた。絶体絶命のピンチのつもりでいたのに、訳の分からない存在があっという間にティラノサウルスを一蹴してしまった。そんな彼女に近付いていく人型の岩。次は自分の版かと思わず身構えたラップランド、だが岩の頭上から優しい声をかける者がいた。

 

「無事か?」

「君は……ロドスにいたサルカズの傭兵だっけ」

「そうだ。名をマドロックと言う。初めましてになるのか、ラップランドさん」

「あ、僕のこと知ってるんだ。敬称は無しでいいよ。そういうの慣れてないしね。ともかく、助けてくれてありがとう」

 

 人型の岩から降りてきたマドロック。砂嵐に耐えるためかいつもの耐爆スーツを着ていたようだが、流石に暑いのか今は脱いでいる。モスティマ以外の既知の存在にようやくラップランドも平静を取り戻した。

 

「それで……この大岩はなんだい? 君のアーツで作った物かな?」

「それは違う。確かに私のアーツでの被造物によく似ているが、これはこの地の生き物だ。初めてここに来た時、一番最初に仲良くなったんだ」

「生き物、ねぇ……」

「えっと、ラップランドは一人……なのか?」

「そうだよ。まだここに来たばかりでね。そろそろ一週間くらいかな。そう言う君は?」

「私も大差無い。ただこちらには、同じロドスに所属する仲間がいるんだ。良かったらラップランドも共に来ないか? 一人では不便が多いはずだ」

「嬉しいお誘いだけど、遠慮するよ。助けて貰っておいて言う事じゃないけど、群れるのは好きじゃないんだ」

「そうか……。無理強いはしない。もし気が変わったら、あの青い光を放つ柱の近くに来てくれ。そこに、私達の拠点がある」

「もし近くに寄る事があればお邪魔させてもらうかもね。覚えておくよ」

「ああ、その時は是非歓迎しよう」

 

 砂を払いその場を後にするラップランド。話している内に日が徐々に暗くなっていた。急ぎ拠点に戻らなければ今度は凍えてしまう事になる。マドロックとの会話も尻目に足早に去っていく。そんなラップランドの姿を心配そうに見送っていたマドロックだが、彼女も拠点に戻らなければならないのは同じである。人型の岩に乗り駆け足で彼らも帰路に着くのであった。

 

 

 

 

 

「はぁ……。今日流石に疲れたかな……」

 

 拠点に戻ったラップランド。拠点と言っても藁で出来た通気性の良いとても簡素な小屋である。木材や石で作る事も出来たが昼は灼熱が支配するこの世界では、家の中に熱が籠って住むどころではなかった。

 皮で出来た簡単なベッドに身を横にする。彼女は犠牲になった狼達の事をふと思った。感傷に浸る情は無い。彼女の故郷であるシラクーザではもっとひどい理由で死ぬ者がいた手前、狼達の死に方は彼女の知る限り極めてマシな方であるという認識でいた。

 眠りに着こうとした矢先、もぞもぞと蠢く者がベッドと彼女の隙間から這い出てくる。それは昼間に天候の変化を鳴き声で伝えてくれたあの可愛らしいげっ歯類であった。

 

(ああそうか。まだ君がいたんだね)

 

 一日の最後にまだ独りでない事を知れたラップランドは、それを抱き締めて深い眠りに着くのであった。




登場した生物紹介

モレラトプス
焦土から初登場したARK固有のオリジナル生物。ラクダとトリケラトプスを足して二で割ったかのような姿をしていてARKオリジナル生物の中でも実際にいたかのような完成度の高いデザインを誇る
焦土のほぼ全域に生息している。野生では大体3~4匹ほどの群れでいることが多い。攻撃された時周囲に仲間がいるかどうかで反応が違い仲間がいるなら共に反撃してくるが、一人だと逃走を選ぶ。テイムすると貯水能力を持っていて雨や水辺から最大750の水分値を貯めておける。サバイバーの水分値の初期ステータスが100なので水場の限られた焦土で7回も水分値を完全回復してくれる本種は焦土の序盤に何としてでも欲しい一匹になるだろう

トビネズミ
現実にも同じ名前の生物が存在するがARKに登場するトビネズミは現実のそれとはかなり違う姿をしている。クニダリア同様トビネズミの名を借りたARK固有生物と言える
モレラトプス同様焦土の全域に生息している。大きさは人間の膝くらいまでしかなく無害で殴るだけで気絶させられ簡単にテイムができるので、焦土における実質的なドードー枠(焦土にドードーはいない)。ただドードーとは違い危険な天候が近付いてきた時に鳴き声で事前にそれを知らせてくれる能力がある。天候の種類ごとに鳴き声も違う。焦土の悪天候はどれも活動に直結する危険な物である事が多いので、それを教えてくれる本種は序盤から終盤までずっと助けてくれる縁の下の力持ちのような存在である

プルモノスコルピウス
アイランドにもいる巨大サソリ。上記と違いこちらはれっきとした古生物。恐竜よりも更に古い時代、石炭紀(今から3億5920万年前から2億9900万年前)に繁栄した。この時代は両生類が出現し脊椎動物が地上に進出し始めた時代でそれらに先駆けて地上に完全適応した生物である。体長は70cmほど
ARKでは巨大化していて全長2mほどにもなる。アイランドでは主に洞窟や山岳地帯にいる。焦土では数は少ないがおおよそ外周部の砂漠や洞窟に生息している。積極的に攻撃を仕掛けてくる敵性生物。ハサミと尻尾の毒針での攻撃モーションがあるがどちらにも昏睡効果がある。生身でサバイバーがこれを喰らうと行動不能にさせられあっという間に殺されるので生息域を通る際はなるべく生物に騎乗した方が良い。足音が独特なのと、足自体は遅い方なので接近にさえ気付ければ走って逃げる事でも対処できる。テイム前後で能力に差は無いがテイム後もでも昏睡攻撃を使っていけるのでコストを消費しない昏睡テイムに使用可能ではあるがあまり効率は良くない。餌は肉類を食べるが好むのは通常の肉ではなく腐肉である(腐肉の方が食料値の回復量が多く優先して食べる)

ティタノボア
こちらもちゃんと古生物。恐竜が絶滅した次の時代、新生代古代三紀暁新世のアマゾンに生息した史上最大のヘビ。化石から主に15mほどと推定されている
ARKではアナコンダをそのまま大きくしたかのような姿で登場する。アイランドでは主に湿地や洞窟に出現し、焦土では外周部の砂漠や洞窟にいる。およそプルモノスコルピウスと生息域が共通している。こちらも敵性生物でプルモノスコルピウス同様攻撃に昏睡値を持つ。テイム方法がかなり独特で敵対されていない状態で近くに有精卵を一個ずつ落としてそれを食べさせる事でテイム可能。種類問わず大きい卵ほどテイム効率は上がる(ティラノサウルスの卵など)。テイム後は無精卵でも維持できる。テイム可能ではあるが、特筆した能力が無く特定の餌しか食べず(ヘビなのに肉を食わない)騎乗することも出来ないのでテイムはあまりおすすめしない

ハゲワシ
現実にもいる生物。こちらは名前を借りた別物や実際の体長が違うなどの改変要素が無い一般に知られているあのハゲワシそのものである。所謂スカベンジャー(腐肉食生物)と呼ばれる生物で、嫌われがちだが食う・食われるの生態系ピラミッドの維持に必要不可欠な重要な役割を持つ
ARKでは焦土で初登場した。全域に生息しその辺を適当に飛び回っている。生態カーストが低いのかよく適当な肉食生物と喧嘩になっている。通常ではサバイバーに敵対しないが近くに死体があると凶暴化し誰彼構わず襲うようになる。小型の割りに攻撃の基礎値が高いらしく複数集まった群れならばティラノサウルスすら返り討ちすることがある
テイムは手渡し方式で腐肉を好む。テイム後はハゲワシ自身のインベントリ内の肉類の腐敗速度が四倍遅くなるという能力がある。また死体に近づくと自動でサバイバーの代わりに剥ぎ取ってくれる。他のマップよりも腐敗速度が速いこの世界では食料の維持に一役買ってくれることだろう

ロックエレメンタル
焦土から初登場。ワイバーン以上に古生物要素を投げ捨てているぶっ飛んだ存在。ワイバーンと並ぶ焦土の顔とも言うべき存在である。
焦土のほぼ全域に生息しているが特に山岳地帯で多く見られる。普段はただの茶色の岩石に擬態していてサバイバーが近づくと擬態を解除して襲いかかってくる。擬態の姿は一種類で慣れてくると見分けがつくようにはなるが序盤でこれに遭遇してしまうと助かる術がほぼ無い。数少ない石建材にダメージを通せる存在のため鉄以上の拠点でなければ拠点の放棄すらありえる。サバイバー以外には敵対しない性質のためティラノサウルスのようにヘイトを他に誘導することすら出来ない。擬態している姿でも望遠鏡で覗けば名前が表示されるため怪しそうな岩には片っ端から覗いて対処しよう。また野生の個体は一部の攻撃を除いてほとんどのあらゆるダメージを9割防ぐ能力を持つ。野生の最低体力が25000だが一番弱い個体でも実質250000以上ということになる。通常の手段で戦うのはどう考えても無謀。9割カットを無視できるのは一部爆発物や焦土以降の有料DLCマップに登場する一部生物やアイテムなどだがここでは割愛する。一番手っ取り早いのはアイランドなどから転送してギガノトサウルスで戦う事である(焦土にギガノトサウルスは生息せずギガノトサウルスは9割カットを無視できる)。こんな色々と馬鹿げた存在だがテイムは可能。昏睡テイムと似てはいるが昏睡させる方法が大砲やロケットランチャーの弾を頭に当てる事で昏倒させる事ができる。テイム後は少々弱体化し9割カットの防御バフが5割にまで落ちる。それでもサドルの防御力を含められるため十分硬い。餌は石か硫黄。アンキロサウルス同様を岩石を破壊する事が可能でその辺の石を砕くだけで維持できる。鉱石の重量軽減は持たないため鉱石集めには向かない。攻撃モーションは普通にその場で殴るのと周囲を一回転して薙ぎ払い、そして地面から岩を取り出して投げる三つがある。特に岩投げの威力が非常に高い。野生でもこの岩投げは使ってくるので距離を取っても油断しないように





テキサスとダイアウルフ同様、マドロックとロックエレメンタルの組み合わせはめちゃくちゃやりたい組み合わせでした。マドロックがどうやってロックエレメンタルをテイムしたかなんて聞くのは野暮ですよ。ラップランドは仕方ないね。ヒトリオオカミだもんね。テキサスが来るまでの辛抱だよ
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