ありふれぬ悪魔狩人は世界最強 アフター   作:クラウディ

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Devil May Cryの舞台、レッドグレイブ市を観光する回です。


Secret Mission レッドグレイブ市 観光

 ジャックが仲間になって日が経ち、連休を数日に控えたある日。

 

 仕事もなく、自宅でダラダラと過ごすのももったいないと思ったジャックはハジメの家に来ていたのだ。

 

 そんな時、ハジメの娘であるミュウが言ったのである。

 

「ねぇパパ~、ミュウもジャックお兄ちゃんの家に行ってみたいの~」

「え?」

 

 突然の提案に間抜けな声を出すジャック。

 それもそうだ。

 友人の娘がいきなり実家に行きたいというのだ。

 ミュウの提案を聞いたハジメは、引き攣った笑みを浮かべながらも理由を聞く。

 

「ミ、ミュウ、どうしたんだ? 突然、行きたいって言いだして……」

「ミュウは今まで日本の中しか行ったことなかったの。……パパが危ないからって……」

「ぐっ……ほ、本当に危ないんだぞ? ジャックが言うには、今も悪魔がいるって……」

 

 愛娘のわがままに渋るハジメ。

 ジャックという現地の人間がいるとはいえ、未だ悪魔が蔓延る魔境に連れて行くのはどうにも気が引ける。

 しかし、ジャックは違った。

 

「あ~……、まぁ、大丈夫だとは思うよ? いるって言ってもハジメ達だったら十分対処できそうな雑魚ばっかりだし、ミュウちゃんにはデモンレンジャー? がいるんだろ? だったら大丈夫だろ」

 

 正論を言われて口を閉じるハジメ。

 確かに、ダンテ達と出会ったあの事件に遭遇したの悪魔達の強さは、せいぜいが上級下位の悪魔程度。

 現在のレッドグレイブ市には、強くても中級の悪魔しかいないため、ハジメ達の戦力なら観光に行くくらいわけないだろう。

 まぁ、大量破壊兵器の類は使用禁止だが……。

 

「ハジメ! 父さんも海外にいってみたいぞ!」

「私もよ! 海外になんて行ったことなかったからね!」

 

 二人仲良く庭先でジャックの持ち込んだ珍しいものを見ていた、ハジメの両親である〝南雲愁〟と〝南雲菫〟もミュウの意見に賛成する。

 だって海外である。

 それも悪魔というファンタジーな生き物がいる町だ。

 厨二……特殊な感性を持つ二人は気になって仕方がない。

 自分たちの息子が異世界で頑張って来ていて、その異世界に行ったことがある二人だが、地球の海外には行ったことがない。

 異世界を存分に楽しんできたとはいえ、やはり海外には行ってみたいものだ。

 

「……ハジメ、私も気になる」

「私もですよハジメさん!」

 

 キッチンから出てきたユエとシアも同意する。

 生まれ育った場所を離れて、この地球に来て様々なものを見てきたが、悪魔という自身の恋人ですら見たことがなかった存在を、恋人の親友が長い間関わってきたというので、あのバチカンでの事件の時からかなり気になっていたのだ。

 それと、日本の景色もいいが、一度でいいから海外にも行ってみたいのである。

 

「私もじゃ、ご主人様」

 

 いつものだらしない顔を引き締めて、ちょっと気持ち悪いほどに真面目な顔をしているティオ。

 しかし、いる場所がいる場所だった。

 ハジメの足の下にいて、踏みつけられている状態だ。

 見た目完全にSMプレイの真っ最中である。

 

 南雲家にいる全員から行きたいと言われれば、折れてしまわないといけないのが旦那というもの。

 溜息をついたハジメはミュウの目を見つめて告げる。

 

「……はぁ、しかたねぇな……明日にな?」

「! ありがとうパパ!」

「うふふ。よかったわねミュウ」

 

 ハジメの言葉に喜ぶミュウ。

 キッチンの方から料理の載せられた皿を手に持ったレミアが微笑む。

 これから、南雲家とジャック、後から白崎家と八重樫家に畑山家も来て、食事会を開くのだ。

 その時にそれぞれの家にも誘いをかけると、全員が参加することになる。

 

 

 こうして決まった〝海外旅行 inレッドグレイブ市〟は明日に行われることになった。

 

 

――――――――――――

 

 

 ここはレッドグレイブ市の外れにある、何でも屋〝Devil May Cry〟。

 その扉の前にある男が立っていた。

 男の服装は黒いシャツに赤いコートを着ており、レザー生地のズボンを穿き、そこらの店で買えるような茶色のブーツを履いていた。

 この男は〝Devil May Cry〟のオーナー、ダンテの一人息子である〝ジャック=レッドグレイブ〟だ。

 

 そんなジャックは先ほどから最近買ったスマホでしきりに時間を確認し、キョロキョロと辺りを見回している。

 まるで恋人との待ち合わせに早く来すぎてしまった人のようだ。

 実際に、ジャックは待ち合わせ時間の三十分前に来ていた。

 何故かというと、ジャック自身今回の観光で自慢の友人や従兄を紹介できるのが楽しみだからだ。

 あれだ。

 自分のことではないけど、なぜか友人に自慢したくなるあれだ。

 

 意外と今回の観光を楽しみにしていたのはミュウではなくジャックだといえる。

 

 そんなジャックの前に、荘厳(演出)なゲートが現れ、そこから見知った人たちが現れる。

 お馴染み南雲一家とその関係者達だ。

 

「よう、ハジメ。レッドグレイブにようこそ。あるとしたら悪魔ぐらいしかねぇけどな」

「ああ、しばらくの間、よろしく頼む」

 

 そう言って握手を交わす二人。

 

 ハジメと一緒に来ていた者たちは事務所を見上げている。

 働いているとは聞いていたが、このようなゴーストタウンで営んでいるとは思っていなかったからだ。

 

「っと、はじめましての人もいたな。俺の名前はジャック=レッドグレイブ。ハジメの友人です。しばらくの間宜しくお願いします」

「これはこれはご丁寧に……」

 

 ジャックの挨拶に応じたのはこのメンバーの中(異世界人を除く)で最年長の八重樫鷲三だ。

 にこやかにジャックに握手を求め、ジャックもそれに応じる。

 

 互いの手を握り合った瞬間、

 

 

 ジャックが宙を舞った。

 

 

「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」

 

 みんなが呆けてる中、ジャックは空中で身を翻し安全に着地する。

 着地したジャックは猫のように体を縮めて、鷲三に向かって飛び出した。

 そしてジャックは拳を突き出して鷲三を攻撃するが、鷲三はそれを真正面から受け止め、あまりの力に後ろに向かって勢いよく滑る。

 数メートル後ろに後退した鷲三は、痛む手を振り、ジャックに近づいていく。

 

「っとと、大丈夫ですか?」

「ふぅ……中々いい拳だ。ぜひうちの門下生に来てもらいたいものだ」

「それは無理っすね。親父は目を離しているとあっという間に借金を積み重ねていきますからね」

「そうか……筋がいい、いや良すぎるほどなんだがな」

 

 鷲三の誘いに、ジャックはやんわりと断る。

 未だ借金を返し終わっていないのに、あのダンテを野放しにしておいてはいつまで経っても生活が苦しいままだからだ。

 

「何やってるのお爺ちゃん!?」

「ぬっ!?」

 

 ジャックに断られて残念そうな顔をする鷲三の背後に彼の孫、〝八重樫雫〟が忍び寄り、その脳天へと手刀を振り下ろす。

 当たり前だ。

 いきなりクラスメイトを自身の祖父が投げ飛ばしたらこんな反応をしても仕方はないだろう。

 

「雫……強者がいたなら試してみたくなるのは男の性だろう?」

「そんな性なんて捨てて! お願いだから!」

「しかしだな……」

「はい! 速くジャック君に謝って!」

 

 そう言って、祖父の頭を無理やり下げさせる雫。

 彼女の苦労人性はここでも続くようだ。

 

 そんな雫を他の皆は憐れむような視線で見る。

 

「いや大丈夫ですよ雫さん。あの程度、親父にボコされた時よりマシですから」

 

 いきなり問題があったが、レッドグレイブ市の観光が始まった。

 

 

――――――――――――

 

 

 まずは、ジャックの実家である事務所〝Devil May Cry〟の案内から始まった。

 

「……つっても、ほとんど何もない場所なんですけどね」

 

 そうジャックは苦笑い気味に言う。

 確かに、Devil May Cryの内装はそこらの家と変わらない。

 だが、今回の用事はこれだけではなく、悪魔関連、特に今年の六月に起きた〝災害〟についても調査に入っている。

 そのため、ジャックとダンテがその事件に向かう原因となった〝V〟と名乗る男についても調べることとなったのだ。

 

「それじゃあ、ユエさん。過去の再生をお願いします」

「……ん、頼まれた」

 

 そう言ってDevil May Cryの真ん中に立ったユエが魔法を発動する。

 そこに映し出されたのは真っ暗なDevil May Cryの中だった。

 過去を再生したのに、いきなり真っ暗である。

 時間を間違えたのかと思った白崎香織の父である智一がジャックに話しかける。

 

「……えぇ~っと、ジャック君だっけ? これはどうなってるんだ?」

「……この時は電気もガスも水道も止められてました……」

「……」

 

 ジャックの口から出てきた言葉に押し黙り、ジャックを憐れんだ目で見る智一。

 他の皆もジャックのことを憐れんだ目で見ている。

 ジャックは涙を流した。

 

 真っ暗だった光景に変化が現れる。

 ユエが調整したようだ。

 

――ノック位しろモリソン。

――そうか、そりゃ失礼。

 

 部屋の真ん中にあるデスク、そこにジャックと似たコートを着た男性――ダンテが座っていて、扉から黒人男性――モリソンが現れる。

 

――いい知らせと、悪い知らせがあるが、どっちから聞くか選べよ。

――ふぁ……あぁ……どっちでもいい。

――じゃあ悪い方から。

 

 投げやりな答えに動じず、悪い知らせから話し出すモリソン。

 

――パティお嬢様がお怒りだぜ? 誕生日パーティーにお前を誘いたいのに、電話がちっともつながらないとさ。

――フフッ……電話は止まった。ついでに言えば電気も水道もな。

 

 オーナーであるダンテ自身から止められた発言。

 憐みの視線が強くなった。

 

――そんなこったろうと思った。

――……いい知らせは?

――ああ……でかい仕事だ。前金でな。

――前金か、そいつは結構。流れねぇ便所にも飽きてきたところだ。

 

 強くなっていく憐みの視線。

 きっとみんなの心の中は、「この年で借金を持つとか、不憫すぎる」といったところだろう。

 画面の中ではモリソンが紙を渡している。

 渡された紙は明細書のようだ。

 何の明細書か?

 決まってる。

 

――水道、ガスに電気代。立て替えて置いたぞ。お前さんの取り分でな。

 

 そう言った直後、事務所全体に明かりが点いた。

 そのことに一安心する間もなく、デスクの上にあった電話が鳴りだす。

 ダンテが溜息をしつつ電話をとった。

 

――デビルメイクライ……

――ダンテ! ちょっとダンテ! 今まで何回掛けたと思ってるの!? やっとつながった! 今夜は私のバースデーパーティーなのよ! なんと十八歳になるの! もう――

 

 嬉しそうな女性の声が電話の向こうから聞こえる。

 どうやらダンテの知り合いのようだ。

 それもかなり親しい女性からの電話である。

 内容は聞こえた限りで判断すると、十八歳の誕生日だからダンテも来てほしいといったところだろう。

 

 だが、そんなことなど知ったこっちゃないといわんばかりに電話を切るダンテ。

 

 しかし、その直後にまたも電話がかかる。

 そして、今度は電話線を引っこ抜いて修理しない限り二度とならないようにした。

 

――OKモリソン、仕事の話だ。そうすりゃ、お嬢ちゃんの誕生日会に出ずに済むからな。

――フフッ……いいだろう。欠席と伝えておくさ。

――よし……!

 

 人の誕生日をめんどくさいからと断る悪い大人達。

 ダンテを見る目が氷点下へ突入した。

 

――あれが依頼人だ。

 

 そうこうしている間に事務所へ誰かが入ってくる。

 

 全身に刺青を入れていて杖を突いた男。

 片手に本を持ち壁に寄りかかっている。

 

――話を聞いとけ。俺はレディとトリッシュを連れてくる。

――あぁ? 待てよ、俺一人で十分だろうが?

 

 その言葉に頷くハジメ達。

 その力を目にした者達としては、あの男が一人いるだけで大抵の問題は解決するだろう。

 だが、ジャックが否定した。

 

「まだこの時の親父はハジメ達が見た時のような力は持ってなかったんだよ」

 

 その言葉に信じられないといった表情をするハジメ達。

 映像に視線を移したジャックにつられて、ハジメ達も視線を戻す。

 

――言っただろう……でかい仕事だ。人手がいるのさ。

 

 モリソンはそう言って事務所から出ていった。

 溜息をついたダンテはその依頼人の方を見る。

 

――……まず、名前は?

 

 いかに働かないダメ人間とは言え、常識のあるダンテはまず名前を聞いた。

 

 それに対し、依頼人はこう返す。

 

――……『名前など無い。まだ生まれて二日目だもの』

 

 沈黙が場を支配する。

 依頼人の年齢は明らかにそんな歳ではない。

 みんなが疑問に思っていると、依頼人が口を開く。

 

――冗談だ。〝V〟と呼んでくれ。

――分かったV。頼みたい仕事ってのは何だ?

 

 冗談だと分かった皆が胸をなでおろす。

 冗談だったとはいえ、何故だかその言葉が嘘ではないように感じてしまったからだ。

 

――強大な悪魔が甦ろうとしている。……力を貸してくれ。

――へへへへへへッ……その手の話か。今までもそんな依頼ならごまんとあったが、どいつも肩透かしだったぜ。

 

 ハジメ達は納得する。

 あの時のような力はなくとも、それでも強大な力を持ってるだろうダンテには悪魔退治など、ちょっとした運動レベルだろう。

 

――今回は……違う。

 

 だが、Vが否定する。

 

――違う? どこが? 根拠でもあるのか?

――……その悪魔は、お前の〝戦う理由〟だ。

 

 ダンテの空気が変わる。

 そう言われると、思い当たる節があるのだろう。

 

――悪魔の名は?

 

 ダンテが身を乗り出して聞く。

 そしてVはその名を口にした。

 

―― 『バージル』

 

「えっ?」

 

 誰かの困惑した声が事務所に響いた。

 

 それもそのはず。

 

 その名はあの時に出会ったダンテの兄だからだ。

 




次回も遅れると思います。
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