ありふれぬ悪魔狩人は世界最強 アフター   作:クラウディ

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レッドグレイブ市、観光。

第二弾。


Secret Mission レッドグレイブ市 観光 2

 Vの口から告げられたことに信じられないといった様子である今回のレッドグレイブ観光の参加者達。

 それはダンテも同じようだ。

 しばらく黙っていたが、やがて口を開く。

 

――……悪魔退治の依頼人って奴は…まぁ大概が大げさで嘘つきなもんだ。

 

 世間話をするかのように話していくダンテだが、それを見ている者達は背筋が粟立つような感覚に陥った。

 

――それに毎度腹を立てるほど小さかねぇ。嘘をつくのはいい。どの道、俺は悪魔をブッ殺すだけだからな。

 

 指を動かしながら話していくダンテ。

 もう隠そうともしない殺気が漏れている。

 

 

――だが、

 

 

 

 

――作り話に使う名前くらいはさすがに選べよ。

 

 

 

 

「「「「「「「「「「ッ!!??」」」」」」」」」

 

 過去の映像であるダンテから放たれた殺気だというのに、現在のハジメ達はあまりの強大さに無意識に構えてしまった。

 それはVも同じなようで、戦慄に表情を染めている。

 だが、それでも告げることがあるのか、殺気を向けられながらも口を開く。

 

――……疑うのは構わない。レッドグレイブが魔界化すれば証明できることだ。

――レッドグレイブ? あいつはレッドグレイブにいるのか?

――疑うわりには信じ始めている顔だ。……ニュースをよく見ておくといい()()()までそう時間はかからない。

 

 そう言ってVは踵を返して扉へと向かった。

 

――楽しみにしておけ。ご希望通りあれは手強い。

 

 Vが振り返ると、

 

――…………バージル……

 

 そこには信じられないといった顔のダンテがいた。

 

 そこで映像は途切れる。

 ユエが魔法を止めたからだ。

 みんなが一斉に呼吸をする。

 あまりの殺気に呼吸を忘れるほどだった。

 真っ先に復活したハジメがジャックに言う。

 

「……おいジャック、こんなもんか?」

「そうだな。こんなもんだろ。……皆さん大丈夫ですか?」

「ああ……一応……」

 

 ジャックの問いかけに答えたのは、ジャックを投げ飛ばした八重樫鷲三の息子である八重樫虎一だ。

 他の皆もかろうじて大丈夫なようだ。

 それを見てジャックは苦笑いを浮かべる。

 

「仕方ないですよ。俺も初めてです。あんなに親父がキレてたのは」

「おいジャック。何で知らなかったんだよ」

「いや、その時の俺って仕事に行ってた所為でいなかったんだもん」

 

 そう答えるジャックにハジメは頭を抱える。

 

「仕方ないだろ。悪魔ってのはこっちの事情なんて知らないといわんばかりに現れるからな」

 

 ジャックはぶっきらぼうにそう言う。

 

 しばらくして回復した皆を連れて事務所を後にした。

 

 

――――――――――――

 

 

 ジャックに案内されるままついた場所は、事務所のあった場所とは違い、人の気配がある町だ。

 時折、すれ違う人たちはみんな特徴的な衣装をしており、日本人であるハジメ達は少し奇異に映っているようだ。

 

 ここは、城塞都市フォルトゥナ。

 世界的にもほとんど知られていない、まさに秘境と呼んでいい小都市だ。

 この街には、一部の国や地方でしか御伽噺として語られる悪魔スパーダを神と崇める独自の宗教が存在し、住民は近代文明とはかけ離れた古生活主義者(アーミッシュ)のような暮らしを送っている。

 

 そして、ジャックの従兄が住む街でもある。

 

 ジャックが言うには、今から約五年前にも悪魔関連の問題があったらしく、そちらの方も急遽調査に入れたのだ。

 

「ここが、ネロ兄の住んでいる孤児院です」

 

 やがて着いたのはある建物、ジャックが言うには孤児院らしい。

 小綺麗な建物の裏にはガレージがある。

 いつもならガレージから入って、飯をたかりに行ったりするのがジャックの日常だが、今回は訪問なのだ。

 そんなことをせずとも真正面から行けばいい。

 

「すみませ~ん! ネロさんはいらっしゃいませんか~?」

 

 そう扉をノックしながら大きい声で呼び出すジャック。

 普通なら騒音被害だなんだといわれそうだが、いたずら心でやってるわけでもなんでもなく、いつもの様子でやってることからこれが平常運転なんだろうと理解するハジメ達。

 やがて、誰かがあるいてくる音がしてジャックは扉から二歩後ずさる。

 

「はいはい、取材はお断りですよ……って、なんだ、ジャックか」

「よっす、ニコ姉。遊びに来たぜ」

 

 出てきたのは、浅黒い肌に、ウェービーな黒髪と眼鏡を掛けている。

 露出の高い服装をしているが、それが過度に卑猥に見えない健康的なプロ―ポーション。

 顔も悪くはない。

 絶世の美女ではないが、愛嬌のある顔をしている。

 

 ジャックの言った名前に心当たりがあるハジメはジャックの目の前に立つ人物が誰かわかった。

 

 あのジャックが持つ拳銃〝ストーム&サイクロン〟の原型ともいえる拳銃〝エボニー&アイボリー〟を作製した女性、〝四十五口径の芸術家〟と呼ばれた〝ニール・ゴールドスタイン〟の孫であり、本人は〝兵器芸術家(アーティスト)〟を自称している〝ニコレッタ・ゴールドスタイン〟だ。

 

 ハジメはすぐさま彼女に話しかけたい衝動に襲われた。

 何故ならば、今までジャックの話の中だけでしか知らなかった、〝天才〟と呼ぶにふさわしいことを成し遂げてきた相手だからだ。

 魔具と呼ばれるアーティファクトのようなものを作り出し、使い捨てとはいえ悪魔に対抗できる義手型兵器を作りだすといった偉業レベルのことを成し遂げたニコと、異世界で一から様々な兵器を作りだしたハジメ。

 ジャックが言うには、彼女も兵器オタクだというから、きっと話が合うだろうと思ったのである。

 だが、いきなり話しかけては第一印象が悪くなると理性が押しとどめてくれた。

 深呼吸をして落ち着いていると、ジャックとニコが交渉をしているようだ。

 

「……というわけでさ、ニコ姉、孤児院に入れてくれないか?」

「そんな大所帯で何しに来たんだと思ったが、そういうことだったらまぁいいぞ。ネロがなんて言うか分からねぇけどな。あっ、ネロはガレージにいるぞ」

 

 どうやら交渉は成功したようだ。

 扉を開けて中に入れと催促してくるニコに、おどおどしながらも入っていく保護者組と、調査と人の家に入ることを少しだけ楽しみにしていたハジメ達に分かれる。

 

 中の様子は、外観と同じようにきれいに整理されていた。

 ここは普通だ。

 何やら、子供たちの視線を感じるが……。

 

「ほぉ……これが本場の孤児院か……」

「意外と普通だ……こんなところにデビルハンターが住んでいるとはだれも思わないだろう……」

「ちゃんと綺麗にされているわね。ジャック君の事務所とは大違い」

「……まぁキリエ姉と子供たちが毎日掃除していますからね」

 

 そんなことがありつつも、ジャック達御一行はガレージへと下りていく。

 だが、ここから先は少しショッキングな光景が再生されるかもしれない、というジャックの言葉に従ってミュウやお母さん組は孤児院に残った。

 

「お~い。ネロ兄~、遊びに来たぜ~」

「ん? なんだジャックか。遊びに来たって、昼飯はまだだぞ」

「いや飯を食いに来たんじゃなくて……」

 

 ガレージには改造された大型のトレーラーがあり、その側面には〝Devil May Cry〟のネオンサインが取り付けられている。

 ジャックはそれを見ることもなく、トレーラーの下で整備をしていた男性に声を掛ける。

 彼が、ジャックの言ったネロ兄こと〝ネロ〟だろう。

 

「紹介するよネロ兄。俺の親友である南雲ハジメとその恋人達、それとその父親たちだ」

「……なんかどう反応すればいいのか分からねぇ箇所があったが……取り敢えず、ネロだ。よろしく頼む」

 

 外国人らしく、白い肌にジャックと同じく白髪碧眼の青年。

 ジャックとの違いは、短髪にしていることだろう。

 来ている服は赤いシャツにジャックとは対照的な青色のパーカー。

 下にはジーンズを穿いている。

 

「これはどうもご丁寧に……痛っ!」

「お父さん、投げ飛ばさないでね?」

「おいジャック。投げ飛ばすってどういうことだ?」

「あはは……」

 

 ネロに手を伸ばそうとしたのは、虎一である。

 そしてそれを雫に止められた。

 それを訝しそうに見るネロと苦笑いするジャック。

 このままじゃ話が終わりそうもないと判断したジャックは要件を言う。

 

「ネロ兄……実はさ……」

 

 

 ハジメ達の事情を説明するのはカットする。

 

 

「……まぁ……なんだ、苦労したんだなとしか言えないが……」

 

 人間の右腕で頭をかきながらネロは、今まで経験してきた物以上に奇妙な出来事を経験してきたハジメ達にそう言った。

 確かに、親友でもなんでもなく、弟分の友達が苦労してきたことを聞かされてもそんな反応をするしかないのが普通だろう。

 

「んで、今日の用事は、ハジメが数か月前に悪魔の事件に出くわしたらしいんだよ。それで悪魔の事件はどんなものなのかの調査と、観光をしに来たんだって」

「こんな時期に観光か……時季外れとしか言いようがないぞ。仕事があったばかりだし、話すこともほとんどないが……」

「まぁ、ネロ兄はそうだよね……俺はこんな知り合いがいるんだって自慢したかったんだけど……」

「んじゃ、好きにしとけ。俺は上で休んでくる」

「お疲れ~~」

 

 ネロはそう言って上がっていった。

 

「……ん、ハジメいい?」

「ああ、やってくれ」

 

 ネロにとって辛いかもしれない光景が移るかもしれないとジャックが先に言っていたため、当事者であるネロがいなくなったこと、ユエは過去再生を始めた。

 映ったのは、今とほぼ変わらない光景。

 ガレージの中に改造された、移動式店舗〝Devil May Cry〟のトレーラがあり、夕日に照らされている。

 だが、今とは違って、先ほど上がっていったネロとニコがいた。

 他にも違うのは、ネロの右腕が人間じゃないところだ。

 

 そのことをハジメがジャックに聞く。

 

「おいジャック。あれがそうか?」

「そう。あれがネロ兄の悪魔の力、〝悪魔の右腕(デビルブリンガー)〟だ。ま、今は違うんだけどね」

 

 それを聞いてハジメは視線を画面に戻す。

 

――車の修理までやらせるとは、人使いが荒いな。

――教団の資料を見せてやったろ。ギブアンドテイクって奴だ。

 

 そんなことを言いつつ修理していく二人に上から声がかかる。

 

――ねえ二人とも―! ご飯できたわよー!

――すぐに行くー! おい、先に行ってろよ。俺は後で行く。

 

 そう言われてニコは車の下から出て来る。

 

――じゃあ、おまえの分も食っちまうからな。

 

 そう言って上がっていくニコ。

 車のボンネット部分を開け、修理をしていくネロ。

 

 そんな時に、ガレージのシャッターの前に誰かが立っていた。

 その人物は逆光のせいで、掠れるような声を上げていることしか分からない

 

――なんだ? 何か用か?

 

 謎の人物を気にした様子もなく修理を続けていくネロ。

 

――あぁ? 腹でも減ってるのか? だったらちょうどよかった。飯ならあるぞ。キリエはいつも作り過ぎる。おしゃべりな連中も一緒だけど我慢してくれるか?

 

 世間話をするネロに近づいてくる謎の人。

 流石におかしいと感じたのか立ち上がるネロ。

 

――なんだよ、どこ見てんだよ?

 

 その時であった。

 先ほどまで、何の反応もしてなかった右腕がうっすらと光り、ネロに伝えてきた。

 〝こいつは悪魔だ〟と。

 

――この感じ……お前悪魔か……!

 

 明らかに声色から敵意が漏れるネロを前にして、その悪魔は先ほどからネロの右腕を見つめていた。

 一触即発といった空気の中、上から声が聞こえる。

 

――ネロ? ご飯が冷めるわよ?

――ッ! キリエ! 来るな! そこにいろ!

 

 下りてこようとしているだろう恋人に警告を飛ばすネロ。

 だが、振り返ったネロの隙を突いて、その悪魔はネロの右腕を掴み、投げ飛ばした。

 あまりの勢いに、工具類などを並べていた棚に激突し、そのまま地面に伏せてしまう。

 

 攻撃されたことを理解し立ち上がろうとするが、ネロは突然右腕に走った痛みで視界がゆがんでしまう。

 そして、ネロに攻撃した悪魔は先ほどと変わらずかすれた声を上げながら、何かを持っていた。

 

 

――…………返してもらうぞ。

 

 

 ()()()()()()()()

 

 

「「「「え?」」」」

「「「「なっ!?」」」」

「ッチ!」

 

 それを見ていたハジメ達はそれぞれの反応を見せる。

 あまりに突然のことに呆然とするもの。

 呆然としたものの理解が追い付き驚愕するもの。

 そして、己と似たような状況に舌打ちをするもの。

 

――…………うぅわぁ!? ッグ、グゥウ……。

 

 理解が追い付いたのか右腕を押さえてもだえるネロ。

 そんなネロを尻目に、悪魔は右腕を変化させてあるものを手に持つ。

 

 刀だった。

 

 それもかなり見覚えのある。

 

――ハァ……ハァ……ウッ、ゲホッ、ゲホッ……急がねば……

 

 何度かせき込んだ悪魔は、慣れたような手つきで刀を抜き、空間を斬ってどこかに繋げる。

 その姿を見たネロは、自身の血に濡れながらも立ち上がらうとした。

 だが、腕をちぎられるという並の激痛では済まない痛みに倒れこんでしまう。

 

――待て……待てよ……!

 

 そんなことをしている間にも男は空間の裂け目に入り、その場から姿を消した。

 

――ネロ!?

――おい何があった!? ほんの1、2分だぞ!?

 

 そこで場面が途切れる。

 

「……ん、ネロもハジメと同じだった」

「いやいやいや!? それでまとめていい問題ではないでしょユエさん!?」

「腕が変化したわけではなく、生えた? どうやって生やしたんだ?」

「ハジメさんも冷静に分析しないで下さい!」

 

 シアのツッコミが飛ぶ中、この場に来ていた者たちは「ジャックがあそこまで警告するわけだ」と納得する。

 こうして、また一つ事件の一幕を見ることが出来た。

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