ありふれぬ悪魔狩人は世界最強 アフター   作:クラウディ

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レッドグレイブ市、観光。

第四弾。


Secret Mission レッドグレイブ市 観光 4

 呆然とした皆を連れて、ジャックが向かった先はレッドグレイブ市郊外のとある大通り。

 そこで過去を再生すると、孤児院にあった移動式店舗〝Devil May Cry〟が法律ガン無視の速度で疾走していた。

 

――ひと月前、レッドグレイブ市内に突如姿を現した、謎の大樹の影響で、周辺の街は完全に機能がマヒしている状態です。

 

 その中では、ラジオから掠れた音が鳴っている。

 内容としては、あのクリフォトの所為で街が機能していないことらしい。

 

――政府はこの状況を……

――悪魔だよっ……! 俺はこの目で見たんだ……! レッドグレイブは悪魔に支配されている……

――……これは我らに与えられた試練です。終末……

 

 何度かチャンネルを変えるネロだったが、面白そうなものも、これからの仕事に役立ちそうな情報も、一つとしてないことに苛立ってラジオを切る。

 

――ッチ、碌な番組ねぇな。で? 気分は?

――気分って?

――親父を殺したやつを助けに行くんだぜ。

 

 目的地へ向かう途中、ネロが車に積んでいたレコードにディスクをかけながら、トレーラーを運転するニコに尋ねた。 

 

――ッハ! 何が父親だ。 私と母さんを捨てたろくでなしだろ? 何の感情もない。

――そりゃ、アグナスがいい父親だとは思ってねぇけどよ。

 

「アグナスの娘、ってマジか……」

 

 二人の会話を聞いたハジメは静かに驚く。

 話の中で出てきたアグナスという男は、五年前の魔剣教団事件に出てきた人物で、はっきり言ってクズとしか言えない男だった。

 研究のために、魔剣教団の団員すらも実験材料とし、そして人の心を捨ててしまった男。

 それでもその知識と技術力はすさまじく、フォルトゥナに流れ着いたある鎧の破片から人工悪魔を作りだしたこともある。

 

 画面では、ニコがタバコを吸い煙を吐いている。

 

――ま、学者としては悪くはないさ。色々役に立った。

――タバコ止めろよ。ヒデェ匂いだ。

――お前が臭いんだろうが。

 

 ネロが窓を開け風を浴びていると、進行方向に悪魔の群れと炎上した車が通せん坊していた。

 ちょうどよく音楽も変わり、先程までのリラックスできるような音から打って変わって、現代風のノリのいいイントロが流れ出す。

 

――おい! ニコ!

――見えてるよ! 突っ込む!

 

 ネロの問いに返したニコは、アクセルをベタ踏みし加速させた。

 右に左にと車体を動かしながら、悪魔を轢き殺していく。

 

――え!? なになに!? 何が起きたの!?

 

 車体の後方にある座席で眠っていたジャックが衝撃で跳ね起きた。

 しかし、それを気にすることもなくニコは車を止めずに大通りを突っ走る。

 

――へぶっ!?

 

 途中、片輪が持ち上がり、ジャックが座席から放り出されて顔面を強打し蹲る。

 

――おい! あんまり揺らすなって! 音が飛ぶ!

 

 そう言いながらも、ネロは窓から身を乗り出し、遠くに見える悪魔達に銃撃を加えていく。

 ネロの持つリボルバーは悪魔を殺すことに特化した物で、二つのバレルがある。

 二つのバレルからは、それぞれ違う弾丸が数十分の一秒というほぼ同時に発射され、一発目は悪魔の外殻を破壊し、二発目は貫通力のある弾丸で中に潜り込み、悪魔を粉砕するのだ。

 もちろん、並の反動では済まないため、ネロ専用なのである。

 

 走ってる最中、轢いた時に死ななかった悪魔が運転席に入り込もうとしたが、ニコにタバコを押し付けられて落下。

 後輪に巻き込まれてあえなくお亡くなりになった。

 

 更に、二体の悪魔が轢かれた時に、吹き飛ぶことが出来ずフロントガラスに血がべっとりと付くことになったが、ワイパーを動かし拭っていく。

 それに合わせて悪魔も動くため、少しコミカルな映像が映っていた。

 

 そして遂に、前方を車で封鎖されている場所まで来てしまった。

 このままでは激突して止まってしまうだろう。

 

 

 だが、このイかれた者達には意味がなかった。

 

 

――……!

――ヘッ! ぬぅん!

 

 

 なんと、車を踏み台にし空中に跳びあがったのである。

 

 その瞬間、ネロもトレーラーの外へ飛び出し、悪魔達と戦い始めた。

 ユエが映像をスローにする。

 

 まずはすぐ傍に居た悪魔の頭に一発。

 流石は対悪魔用の兵装、頭を容易く貫通して絶命させる。

 

 そこからネロは空中で身を翻して悪魔の攻撃をかわし、その先にあった宙に浮いた車に足をつけて、攻撃してきた悪魔の頭部を撃ち抜く。

 

 そんなネロを後ろから攻撃しようとした悪魔にも、銃撃を食らわせるが、それは悪魔を狙ったわけではなく宙に浮いた看板だった。

 

 だが、すぐさまもう一発撃ち出し、今度こそ絶命させる。

 

 弾かれた看板は跳びかかっていた悪魔の頭部に突き刺さり、こちらも絶命させる。

 

 この間、わずか一秒足らず。

 

 ハジメもこのような曲芸は出来るだろう。

 しかし、力の大半を失った状態でといわれると首を傾げざるを得ない。

 出来はするだろう。

 だがここまで、遊びも入れつつ頭部を撃ち抜くのは至難の業だ。

 やはりデビルハンターという人種は化け物ぞろいだ。

 この映像を見ている者達はそう考えた。

 

 強い衝撃を受けたレコードがこのスローになった時間でちょうどよくサビに入りそうである。

 

 サビが流れると同時に、銃撃を流れるように決めていき、三体の悪魔を葬る。

 

 ネロがトレーラーの助手席に入ると同時に宙を舞っていた車が大爆破を起こし、悪魔達に止めを刺す。

 古来より、火は浄化の作用があるといわれている。

 悪魔という穢れを焼くガソリンの爆発。

 

 ジャックは、詩人みたいなことを考えている自分に顔をしかめた。

 

 そして、トレーラーは荒っぽいながらも着地し、問題なく進んでいく。

 後方には悪魔達の死体が広がっていた。

 

 車内に戻ったネロはホルスターにブルーローズを収め、ニコは火のついてないタバコを咥えていた。

 仕方なく、ネロが落ちていたライターを使ってタバコに火をつける。

 

 吐き出される紫煙にうざったらしそうにするネロ。

 

 そんな時に、後方から顔を押さえたジャックが近づいてきた。

 

――いててててて……何、もう着いたの?

――いんや、まだだ。もう少しぐらい寝ててもよかったんじゃないのか?

――あんな状態で寝れるとでも?

 

 そう言ったところで画面が途切れる。

 また一つの場面が終わったことで、それぞれが感想を話し出す。

 

「いやぁ……すごいなネロ君は」

「まるでハジメ君のような戦い方だね……」

「それも片腕だから……ハジメ君のような感じがするわ……」

「それにしてもあのブルーローズだったけ? あれを自作するのもすごいな」

「アレの構造……聞いとけばよかった……!」

 

 そんな感想が出てくる中、ジャックは苦い顔をしていた。

 気になったハジメが聞く。

 

「どうしたジャック? 変な顔して?」

「いやぁ~……ね? 俺の出番この後……っていうか、今を含めてほとんどなくて。ネロ兄が褒められてるのは嬉しいんだけど、なんか暇だなぁって……」

「……そうか……それじゃあさっさと先に行くぞ」

「OK~~」

 

 そう言ってハジメが〝クリスタルキー〟を使い、次の場所へとつなげた。

 

 

――――――――――――

 

 

 次に着いたのは、未だ修復されていない橋。

 そこで映し出された光景は、特殊部隊と思われる者達が銃器を使って必死に交戦している様子だった。

 だが、悪魔には効果がないようで、交戦というよりも蹂躙されている。

 

「効いていないのか……!?」

「まぁ、あいつらは雑魚とはいえ悪魔。そこらの豆鉄砲では傷一つつきませんよ」

 

――ッ! 退くんじゃないっ! 死守するぞ!

 

 特殊部隊の一人が、奮い立たせているが、状況は焼け石に水。

 一人、また一人と殺されていく。

 

 ある一人が、仲間の血か悪魔の血か分からないほどの返り血を浴びながら後ずさっている。

 

――なんだこれは……! どうなってる……!?

 

 呟く彼に同意する者はいない。

 もう死んでしまったからだ。

 そんな彼に一体の悪魔が跳びかかり、その命を絶とうとする。

 

――うわぁ!?

 

 訪れる死に少しでも抗おうと腕を盾にする。

 

 が、そんなことは必要なかった。

 

 彼の頭上を飛び越えたトレーラーが悪魔と衝突し、轢き殺したからだ。

 

 そのままトレーラーは天才的なドリフトを見せ、彼の後方に停める。

 そのトレーラーから出てきたのは、隻腕の青年ネロだった。

 

――ハグして欲しかった? でも片腕じゃなぁ……。ほら、行けよ。

――おい、無茶だ! 死ぬつもりか!?

 

 こんな状況に陥ってもなお、他者を気遣える心を持った彼。

 相当いい環境で育ったのだろう。

 だが、そんな善人など悪魔の前では意味を持たない。

 

 横から跳びかかってきた悪魔が彼を殺そうとする。

 

――ハッハァ――!

 

 が、そんなことジャックが許さない。

 機関銃のような勢いで吐き出された弾丸が、悪魔の体をハチの巣にしていく。

 周りに血を撒き散らしながら爆散する悪魔を尻目に彼に駆け寄るジャック。

 

――大丈夫ですか?

――ああ、大丈夫だが……おいそこの君! 危ないから下がりなさい!

 

 ジャックの声を聞きつつネロに警告を飛ばす彼。

 人の好さがにじみ出るどころか、底が貫通している。

 

――やらせてやれ。悪魔退治が趣味なのさ。ほっとけ。

――やめろ! そんな片腕で何をしようってんだ!? 死ぬぞ!

 

 ニコに言われても警告を止めない彼。

 無理やりに止めないのは、体がもう動かないことと、危険な所には近づかないという本能が働いているからだ。

 だが、そこにいるのはただの人間ではない、

 

 デビルハンターだ。

 

 例え片腕を失ったとしても、たとえ魔力のほとんどが奪われたとしても、そこにいるのは確かに凄腕のデビルハンターなのだ。

 

――うるせぇポリ公だな!

 

 そう言って、ネロは腰に提げていたあるものを右腕に装着する。

 

 それは人間の腕の形をしており、一般的に義手と呼ばれるものだ。

 だが、普通の義手は手の形をしているだけで、動いたりはしない。

 

 しかし、それはまるで元の腕のように動き、義手の枠組みに収まっていないだろう。

 これの技術が医療関係に渡れば、一段と発展するはずだ。

 

 だけど、これは医療用なんて言う生易しいものではない。

 

――見てやがれ……!

 

 そう呟いて、すぐ後ろにまで迫っていた悪魔を殴り飛ばす。

 その威力はすさまじく、悪魔を数体巻き込み、乗り捨てられていた車を横転させるほどである。

 更に、門の部分に張り付いていた悪魔を見るや否や、義手が展開し、稲妻を迸らせる。

 

 跳びかかってきた悪魔に、展開した義手を押し付け地面にたたきつけた。

 瞬間、目に見えるほどの稲妻が迸り、悪魔を焼き殺す。

 それを何でも無さそうに見るネロはこう言った。

 

――それじゃ……ゴミ掃除といくかな。……へッ!

 

 そこからはネロの言った通りに〝ゴミ掃除〟が始まった。

 交戦していた特殊部隊の人間達をあっさりと殺していく悪魔をネロは一人で蹴散らしていく。

 

 義手に取り付けられていたワイヤーを伸ばし、悪魔を振り回したり、悪魔の背中に乗ってちょっとしたロデオをしていたり。

 自分達では手も足も出なかった悪魔達が殺されていくのを目にして、呆然としている特殊部隊員の彼にニコが近づく。

 

――な? 奴は悪魔をボコるプロなんだよ。あの義手も悪魔退治専用だ。よくできてるだろ!

 

 そう嬉しそうに語るニコ。

 

――ヘッヘッヘ……あぁっと……。

――おい! このバカ! 人の芸術作品を!

――うるせぇぞ! さっさと避難させろ!

 

 ……途中、ネロが義手を壊してニコがキレていたが……。

 

 そんなこんなで悪魔を倒しながら進んでいくと、画面では道をふさぐ大きな木の根が現れた。

 

――へぇ……趣味の悪い鉢植えだな。

 

 そう呟くネロに向かって根っこが刺し貫こうと、伸びてくる。

 攻撃を避けたネロは、根っこにレッドクイーンを突き刺し、グリップを捻る。

 刀身内で推進剤が燃焼し、その熱を嫌がったのか、振り落とそうと暴れる根っこ――クリフォトルーツ。

 下りるついでに一撃入れたネロはその様子を見て呟く。

 

――なるほどねぇ……マシュマロがありゃ、一緒に焼いたのにな。

 

 レッドクイーンを地面に突き刺し、グリップを捻る。

 

 しかし、意思を持たないクリフォトルーツは単調な攻撃しかしてこず、そこからは準備運動かというようにあっさりと終った。

 

 クリフォトルーツが壊れたことで、繋がっていた根っこも灰となり消えていく。

 道が開けたことでトレーラーも通れるようになった。

 ネロの傍にトレーラーに乗ったニコが近づいてくる。

 

――避難はさせたが、時間の問題だぞ。

――何がだ?

――状況から察するに、今もこの町は魔界化を進めている。しかも、周囲を……巻き込んでな。

――…………閻魔刀の力か……。

――……ですねぇ。

 

「閻魔刀の力……?」

「聞いてないのか? 親父たちに?」

 

 気になる単語が出てきたことにハジメが呟いて、ジャックがそれに反応する。

 

「閻魔刀は、魔剣士スパーダの力の一部で、人間界と魔界を分けたとされる剣だ」

「なるほど……あの刀がそうか……」

 

 ハジメが納得したところで、画面も途切れる。

 

 ここからだ。

 本格的な悪魔が登場するのは。

 

 

 

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