ダンテ達が全力を出せば、流石のハジメ様でも負けます。
「……んで、一悶着ありながら、そのナグモって少年が魔界と人間界をつなげて、それに俺とバージルもついていって、人間界に戻ってきたわけだ」
「なるほどなぁ……道理で帰ってくるのが早かったわけだ」
「そういうことだ」
殺気を向けてきた少年――南雲ハジメとしばらく話して(その途中上級悪魔が襲ってきたが、ダンテとバージルにバラバラにされた)、ハジメが魔界と人間界をつなげるという離れ技を使いそれに乗じてダンテとバージルは帰還したのだと話す。
ダンテが話し終えるのとほぼ同時にキッチンからジャックがハムの乗ったトーストを手に持ち現れる。
「親父、なんか話してたのか?」
「ああ、お前が行くところに知ってるやつがいるみたいでな」
「マジか……どんな奴?」
「南雲ハジメって少年だ」
「ナグモ……ハジメ……あぁ! ハジメか!」
「なんだ、ジャックも知ってたのか」
ジャックがダンテとモリソンの話していたことが気になり聞いてみると、ダンテのように納得のいった声を上げる。
「知ってるよ! ハジメにはジャパンの〝マンガ〟や〝アニメ〟なんかを教えてもらったからな!」
「へぇ……それはいつのことだ?」
ジャックが嬉しそうに話していることが気になったダンテからも質問が飛ぶ。
「大体、今から五年ぐらい前だったかな。親父がいなかった時に、ジャパンから依頼が来たんだよ。その時の依頼先の公園で泣いてる子供を見つけたから気になって話しかけたのさ。それがハジメだったってわけ」
「なるほどねぇ……」
「いやぁ…楽しみだなぁ…覚えてくれてるかなぁ…いやいや帰って来て早々に電話かけたんだから覚えてるはずだろ……」
顔をにやけさせながらトーストを頬張るジャック。
友人と出会うことが楽しみで仕方ないと言った感じの様子だ。
「ふぅ……んじゃ、俺はすぐ行くから! あっ、親父! キャバリエーレ使ってもいいか?」
「ん? ああ、いいぞ」
「よし! それじゃあ支度してくる!」
そう言ってジャックは二階に駆け上がっていく。
それを見る二人の目は微笑ましげだった。
二階に上がったジャックは自室の隣にある倉庫に入って、そこらにおかれていた〝商売道具〟を体に吸収していく。
「えぇっと、パンドラは必須で、ギルガメスは持ってる……ニコ姉に作ってもらった魔具もあるし……それと…〝ファフニール〟!」
商売道具の中でも不穏な気配を纏っていた物は吸収し尽くしたジャックはまるでここにはいない誰かに呼び掛けるように、虚空に話しかけた。
『』
「起きてるんならなんで話しかけなかったんだよ…」
『』
「その方が面白そうだったから? まぁいいや。早く準備してジャパンで豪遊するぞ!」
『』
「そうだよ! 飯も一杯食えるし、漫画だって読み放題だ! どうだ?やる気は沸いたか?」
『』
「決まりだな! ちゃんと働いてくれよ!」
誰かと話し終わったのか、また駆けだすジャック。
今度は自分の部屋に入る。
一階の段ボールやピザの空箱が積み上げられたごみ屋敷のような場所と違って、この部屋は比較的にきれいだ。
そう、比較的だ。
おそらく学校で使うと思われる教科書類は部屋の奥にある学習机の上に散らばっており、衣服もタンスからこぼれそうになっている。
潔癖症の人には辛いであろう空間がそこにはあった。
ジャックはそれを気にした様子もなく、ベッドの近くにあった引き出しを開けて中からとあるものを取り出す。
それは二つあって、その両方ともL字型をしており、片方には穴が開いていた。
疑いようもない拳銃である。
「……うん! やっぱ手に馴染むな~ロダンさん製の拳銃」
先程吸収した商売道具の中で、スーツケース型の魔具〝災厄兵器パンドラ〟に拳銃を収納していく。
パンドラは本来の使い方としては兵器の役割が非常に大きい。
しかし、この魔具の特性として性能を変えることが出来るという他にはない特徴を持っているのだ。
「あとは……着替えも入れて……歯ブラシとか…コップとか…」
他にも日用品を詰め込んでいく。
その量は明らかにスーツケースの容量を超えているのに、まるで穴が開いているかのように入っていった。
……先ほどから〝魔具〟という言葉が出てきているが、分からない人に感嘆に説明するなら、〝悪魔が作り出したもの・悪魔の力そのもの〟といえばわかりやすいだろう。
悪魔という不可思議なものが作り出したから、その道具も不可思議なものになるのは当たり前だ。
「よし! 準備万端!」
準備を済ませたジャックはパンドラを再度吸収し、部屋を出て一階に下りていく。
一階では、ダンテとモリソンが待っていた。
ジャックの姿を見たダンテが、口を開く。
「ふぅん、しばらく見ない間に様になったんじゃないか? 俺に比べたらまだまだだがな」
「んなこた分かってるんだよ親父。……それじゃあ、行ってきます!」
「おう、行ってこい」
「頑張って来いよ」
まるで挑発するような激励を聞きつつ、事務所を出ていくジャック。
異世界にて魔王と呼ばれるまでになった友人と再会するまで、
約一週間。
――――――――――――
ここは日本の南雲家。
その一室にある少年が座っていた。
彼の前には大きなモニターのようなものがあり、そこにはごついバイクに跨り道路を疾走するジャックの姿が映っている。
道中、この世のものとは思えない生物のようなもの〝悪魔〟が立ち塞がりジャックを殺そうと攻撃してくるが、ジャックは笑いながらバイクで轢き殺していく。
「……そんな顔があったなんてな……ジャック」
彼はそんな様子のジャックを見て、そう呟いた。
彼の名前は――南雲ハジメ。
異世界【トータス】にて、落ちこぼれと言われながらも奈落から這い上がり、その世界を支配していた神を名乗る存在〝エヒトルジュエ〟を滅ぼし、仲間と共に地球に戻ってきた〝帰還者〟と呼ばれる者達の筆頭だ。
そんなことを言っている間にもモニターに映る光景は変わっていく。
今度はバイクから飛び上がり、拳を構えるとその腕を金属のようなものが覆っていき、そのまま悪魔を殴りつける。
空間を揺るがすほどの衝撃が吹き荒れ、周りに破壊をもたらす。
幸いにも、周囲に人はおらず、誰かが怪我をすることもなかった。
「……ダンテ……あいつの親父」
モニターから目を離さず、ジャックの父親であるダンテの名を呟く。
ハジメは数日前にダンテ達と会っていたのだ。
と言っても、ハジメは馬鹿みたいな魔力を纏った男達がいきなり現れた所為で、銃を突きつけた状態で殺気を浴びせてしまったが。
しかし、ダンテ達は剣を向けることなく、穏便に済ませてくれた。
いろいろとありながらもハジメが〝クリスタルキー〟を使い魔界から脱出した後、落ち付いて話をしようと思ったが、その後がいろいろと問題だった。
――――――――――――
ジャックが日本に向けて出発する数日前。
荘厳(演出)なゲートをくぐり、人間界に帰還を果たしたダンテ達。
ダンテとバージルはたった一個人が世界をつなげる道具を持っていることに驚愕する。
彼らの父親であるスパーダが世界を分かち、人も悪魔も早々に干渉することはできず、よっぽどのことがないと繋がらない魔界と人間界を繋げるという魔帝でもなし得なかったことに。
それを目の前に立つ、自身の半分もいかない年齢の少年がだ。
「おい、ハジメって言ったな」
「ああ、そうだ」
「世界ってのは早々に繋げられるもんじゃねぇんだがな、お前さんがどうやってこんなにもスムーズに繋げられたのか気になってな。どうなってるんだ?」
「……俺もその鍵のようなものに興味がある」
ダンテが顎を擦りながらハジメが〝宝物庫〟にしまった〝クリスタルキー〟に興味を示し、バージルもそれに同意する。
「なんで、怪しいおっさんたちに言わなきゃなんねぇんだよ」
「おっと、怒らせちまったか。なに、奪おうとしてるわけじゃねぇのさ。ただ、俺の知る限り一番のクソ悪魔が欲しがりそうな代物を、お前みたいな若いのが持ってるのが気になってな」
「……魔帝が聞けば、そこらに湧く雑魚であろうとも嗾けて奪いたくなるようなものだ」
「……なぁ、質問で返すようで悪いが、まず、あんた達のことを聞かせてくれよ」
周りにいる男女、その中でも影の薄い少年――遠藤浩介とウサミミの生えた少女――シア・ハウリアが「あの、南雲(ハジメさん)が!?」と驚く。
あの、身内以外には鬼のようなハジメが、だ。
明らかにヤバそうな二人に向かって、先ほどバラバラにした悪魔のように兵器を向けずに話し始めたのだ。
「俺達は……まぁ、兄弟喧嘩をしていた。だろ、バージル?」
「……ああ」
「……そんな馬鹿みたいな魔力を持って、あんな地獄……あんたらが言うには魔界だっけか? でやってることは兄弟喧嘩かよ……」
「この兄貴の息子に『殺し合うな』って言われてるもんでな」
「…………」
てっきり、道中で襲ってきたやつらみたいにシアを狙っているのかと思ってたら、やってることは、魔界に来てまで兄弟喧嘩である。
見たとこ、四十位の年齢の男性二人が喧嘩。
溜息をついても仕方がないであろう。
ダンテとバージルの魔力を感じれる者達の中でも異世界に居た遠藤とシアは自分たちが思う最強の人間が振り回されている光景にまたも驚愕する
「で、本当のことを言えよ。あんたら悪魔だろ」
「ん? そうだが……お前たちに言ったか?」
「いや、〝視た〟だけだ」
「……その作り物の瞳か」
「あぁ、そうだ。んで話せよあんなところにいたんだ……巻き込まれた、は通用しないぜ」
ある程度の確信をもって追究するハジメ。
ダンテがバージルをチラリと見やる。
バージルの方は聞かれても問題はないと言った様子だ。
「んじゃ、俺達はだな――!」
ならば、と話し始めようとしたダンテだったが、ゲートの先――人間界側から悪魔の匂いが大量にしたことでその手に魔剣ダンテを召喚する。
「すまねぇな、坊主……この先に悪魔どもがうようよしてやがる。ゴミの掃き溜め見てぇな匂いだ」
「……ッチ、あとで聞かせろよ」
「おう、聞かれても困るもんじゃねぇからな」
そうしてゲートを抜けた先では……
――王よっ、お答えくださいっ。なぜ、そのような矮小な人間の小娘を姫などとっ
「貴様等っ、やはり悪魔の手先だったかっ」
「ち、ちがうの~! 悪魔とか、ミュウは知りません! 本当なの! 嘘じゃないの! ミュウに嘘を吐かせたら大したものなの!」
顕界し、明確に姿を持った強力な大悪魔。
そして、その大悪魔の背後や空に蔓延る凄まじい数の悪魔の群れ。
頭から血を流しながらも、悪魔より悪魔的な形相のダイム長官。
そして、彼の後ろに控えるオムニブスの全戦力。
わたわたと手を振りながら、何やら必死に弁解しているミュウ。
そして、その背後に控えつつも「あちゃ~」という感じで、片手で顔を覆って天を仰いでいる大罪戦隊デモンレンジャー!
あと、「え~、なにこの状況……」みたいな顔で、死屍累々に倒れ伏す崇拝者達を背後に、呆然と立ち尽くすユエ達とクラスメイト達。
プラス、ボロボロだけど全員無事なバーナード達。
訳の分からない三つ巴(?)が生じていた。
「え~、なにこの状況……」
思わず呟いたハジメに、一触即発だった三陣営の目がハッとしたようにハジメ達の方へ向いた。
「クレア! それにウィン達も! よく戻った!」
――境界を越えてきただと? 何者だっ
「あーーーー!! パパぁああああああっ」
取り敢えず、デモンレンジャーを残してステテテテテーッと駆けてくるミュウ。
そのままぴょんっと勢いよくハジメの胸元へ飛び込む。
それをしっかり抱き留めながら、胸元にグリグリと顔を擦りつけてくる愛娘を撫でるハジメ。
「ちょ、長官! これはいったい、どういう状況なのですか!?」
命がけで帰ってきたと思ったら、協力関係にあったはずの帰還者サイド、それも幼子を相手に臨戦態勢をとっている仲間がいて、しかも、案の定悪魔達は溢れ出しているのに、何故か暴れることなく何やらもめている様子。
正直、わけが分からなかった。場合によっては、地獄との道が閉ざされるまで即戦闘の覚悟もしていたというのに……
ダイム長官、「貴様等、一人も生かして帰さん!」みたいな鬼の形相で、デモンレンジャーを睨みながら答える。
「帰還者は、コードネーム〝魔王〟の娘は、悪魔と通じていたのだ! おそらく、帰還者達の力の源も、悪魔と何らかの関わりがあるに違いない!」
そこで、ふと思い出すハジメさん。
つけた覚えのないコミュニケーション能力を有するゴーレム――デモンレンジャー。
確か、ミュウは言っていた。名前を付けたわけではないと。つまり、デモンレンジャーは自ら名乗ったのだ。
――〝べるちゃん〟こと、べるふぇご~る
――〝さーちゃん〟こと、さたん
――〝あーちゃん〟こと、あすもでうす
――〝るーちゃん〟こと、るしふぁ~
――〝まーちゃん〟こと、まもん
――〝れびちゃん〟こと、れう゛ぃあたん
――〝ばるちゃん〟こと、ばあるぜぶぶ
「めっちゃ悪魔じゃん」
ハジメさんの呟き。
悪魔が実在するというのは赤青の二人に聞いていたが、まして、異世界トータスで作った生体ゴーレムに地球のお伽噺の存在が取り憑くなんて思いもしない。
とはいえ、ハジメにしては、少々間が抜けすぎているともいえる。
不自然なほどに。
考えられることは一つ。
「……お前等、干渉したな?」
バッと、全力で視線を逸らすデモンレンジャーズ。
おそらく、有名な悪魔と同じ名前だけど、害がないならまぁいいか……と、深く疑わないよう意識を流されたのだろう。
仮に、デモンレンジャーに少しでも悪意や敵意があったのなら、それを無視させる干渉など到底ハジメには効かなかっただろうが、あの時は状況が状況でもあった。
いろいろな偶然も重なり、今の今まで見逃されていたのだ。
とはいえ、悪魔の実在を知った今、もはや目は逸らせない!
ハジメの眼光が、ジッとデモンレンジャーに注がれている。
デモンレンジャーズ、心なしか小刻みに震えている気がする。
(ユエ、簡潔に状況説明を頼む)
(……ん。お任せあれ)
曰く、どうやら、ミュウは崇拝者との戦いでデモンレンジャーを出して参戦していたらしい。
そして、顕界した悪魔達が、デモンレンジャーの中の人が少し前に消えた自分達の〝王達〟であると気が付き、びっくり仰天なにしてんの!? となったようである。
で、その悪魔とのやりとりで、同じく中の人がどういう存在か気が付いたダイム長官が、決死の覚悟を決めちゃったというわけだ。
なにせ、有名な大罪を司る七柱の魔王である。
顕界はしていないとはいえ、理解不能のテクノロジーで完全武装しているのだ。
場合によっては、悪魔達を従えて、このまま現世を蹂躙する気では……
と、思っても仕方のないことだろう。
悪魔絶対殺すマンであるし。
「ま、まじかよ……ミュウちゃん、なんてもん抱えてんだよ……」
浩介の呆然とした声に、ミュウはキリッとした表情で言った。
「魔王の娘なので」
大罪の七柱を従える幼女――確かに、魔王の娘に相応しい。
顕界した悪魔達が、痺れを切らしたように、取り敢えずこの場の人間を根絶やしにしてやろうと動き出す。
ユエ達が目を細め、逆に滅してやろうと魔力を高める。
ダイム長官達が神器を発動させる。
しかし、そんなことなど知らないとばかりにダンテは口を開いて悪魔達を煽り始める。
「何だ、ここは劇場か? 聖職者に大道芸人……随分面白そうだな! おい誰かポップコーンでも持ってきてくれよ!」
――貴様ッ!? スパーダだな!?
「生憎のところ、スパーダは俺の親父だ。俺じゃねぇぞ」
「……フン、魔帝ほどの強さを持つ者はいないか……残念だ」
――き、貴様ぁ!!
悪魔達が先程よりも殺気を込めて、ダンテとバージルを睨み始める。
普通の人間なら即死するような圧だ。
だが、二人はまるでそよ風を浴びているかのごとく動じない。
実際、彼らにかかれば一晩の内にこの場にいる悪魔達を滅ぼせる。
デモンレンジャー達も驚愕に顔を染めているのが分かったハジメは、やはりこいつ等は普通ではないと判断する。
だが、聖職者たちがにわかに騒ぎ始めたことで、そっちの方に集中する。
「えっ、スパーダって……もしかして伝説の魔剣士様!?」
「嘘だろ!? あの魔剣士様に子供がいたのか!?」
「で、伝説の魔剣士の血を継ぐ者が二人もいる……私、夢でも見てるのかな…?」
伝説の魔剣士の子供。
聞こえた範囲と悪魔の言っていたことを擦り合わせて、出てきた答えだ。
あの殺気立っていたダイム長官ですら、涙を流し、祈っている光景にただの悪魔じゃないことが分かる。
「ス、スパーダ様の息子!?」
「知ってるのかクレア!」
「はい!私の大好きな物語の一つです!」
そう言ってクラウディアは〝魔剣士スパーダの伝説〟について話し始める。
この世界は元々混沌という形をとっていたが、ある時、三つに分かれた。
それが今の〝人間界〟、〝魔界〟、〝天界〟である。
その一つ、ハジメたちが先程までいた場所、魔界を支配する王である〝魔帝ムンドゥス〟が人間界に侵略を始めたのだ。
人間よりはるかに強力な悪魔達に、人々は祈るしかなかった。
しかし、そんな人類に光が差す。
なんと、今から約二千年前に魔帝の右腕とも言われる力を持った〝スパーダ〟が悪魔を裏切り、魔界の軍勢と戦い始めたのだ。
それも、たった一人で。
「な!?」
「すごいですよね!?」
クラウディアの話を聞いていた遠藤は驚愕する。
実は、ダンテ達と会う前に遠藤達はある悪魔と戦っていたのだ。
それも死力を尽くして。
遠藤達が戦った時は一体だけだったが、クラウディアは軍勢と言ったのだ。
あれよりも強い存在は他にもいる。
現にデモンレンジャーはそんな存在だ。
そんなものに、たった一人で立ち向かったのだ。
無謀としか言いようがない。
だが、伝説になったということは……
「勝った、のか……?」
「そうなんですよ!」
嘘だと思いたくても目の前の少女が嬉しそうに話すし、その息子たちが目の前にいる。
これにはハジメも驚く。
なんせ、ハジメは兵器を使って近づけさせる前に倒していたが、上級の悪魔達は異世界で戦った〝使徒〟と呼ばれる存在以上の魔力を持っていたのだ。
魔力=強さではないが、魔力は強さの指標にもなる。
そんな奴の軍勢に今から二千年前に勝利した存在がいたのだ。
そんな昔なら、ハジメが頼りとする兵器の類は存在しない。
そして、魔剣士という名前から〝剣〟を使うのだろう。
ダンテとバージルも形が違うとはいえ、どちらも剣のカテゴリーに入るものを持っていた。
どんな剣を使っていたのか分からないが、おそらく剣一本で戦ったのだろう。
ハジメの時は異世界に住む者たちの手も借りたが、スパーダは一人で戦った。
驚かないわけがない。
さらに驚くべきことが続く。
なんと魔帝を封印し、己の力で世界を分けたというのだ。
この話が耳に入ったのか、悪魔達が憎々し気にダンテ達を睨む。
そしてハジメも合点がいく。
魔帝を倒しても、残った悪魔達が人間界に行かないとは限らない。
なのに、今まで見たことがなかったのはスパーダによって世界が分けられたからだろう。
世界を分けたことについても理解できる。
ハジメが先程使った〝クリスタルキー〟は異世界で〝概念魔法〟というものを付与させた特別製の物だ。
おそらくスパーダも概念魔法を使い世界を〝切り離した〟のだろう。
つくづく規格外な悪魔だ。
世界に平和がもたらされた後、スパーダは姿を消し、人間達は彼を英雄と称えたというところで、クラウディアの話は終わった。
周りを見れば、殺気を二人に集中させる悪魔達、泣き崩れる聖職者たち、困惑する部外者達の三つに分かれていた。
「へぇ……親父のことを知ってるやつがこんなにもいるとはな……」
「……感心している場合か……さっさと終わらせるぞ」
てんやわんやとしている人間達を無視してダンテとバージルは剣を構える。
瞬間、二人から爆発的な魔力が吹き荒れる。
「グゥッ!?」
「きゃあっ!?」
――ぐっ!?
技能を介してない、ただ単純に魔力を放出しただけでその場にいた全員が吹き飛ばされかける。
ハジメはまたしても驚愕した。
「(なんつぅ魔力量だよ!?)」
おそらく、己の数倍はありそうな魔力にハジメはたたらを踏む。
赤と青の魔力が吹き荒れ二人の姿は変わっていく。
魔力の色は違えど、やはり兄弟なのかその姿は非常に似通っていた。
鱗のような甲殻のような皮膚に、二対の翼。
やがて、魔力の嵐が晴れた時には――
悪魔が立っていた。
先ほどまでの人間の姿はなく、人間と言えるのは骨格だけしか残っていなかった。
頭には角が生え、溢れ出る魔力が全身から漏れ出す。
おおよそ、一般的な人たちが想像するであろう悪魔の姿だった。
魔力の圧から立ち直った悪魔達がその姿に警戒しながらも跳びかかる。
だが、魔帝の下に位置する程度の力では、魔帝を封印して見せたスパーダ以上に強いと言われたダンテと同等であるバージルの二人には敵わなかった。
ダンテが魔法陣を足元に浮かび上がらせ、周囲を滅多切りにしていく。
その動きはまるで舞のようでありながら、剣術として成り立っていた。
「You shall die…!」
バージルの方も居合の構えをとったかと思えば、その姿が消える。
と思えば、空間に切れ込みが入り、その上には悪魔達の体がある。
ダンテが剣を構え、バージルが刀を納刀すると、
爆発が起き、数多の斬撃が奔り、悪魔達が消し飛んでいった。
これが、数日前に起きたことの真相だ。
――――――――――――
そして、現在に戻る。
あの後、死人は出ておらず、あれだけ暴れたダンテ達はある紙だけを渡して去っていった。
「……一応、ダンテ達は敵対するつもりはないって言ってたが……」
そう言ってモニターを閉じるハジメ。
「まぁ……なるようになれだな……」
「パパ~! べるちゃん達が引きこもったまま出てこないの~!」
「分かった~。すぐ行くから待ってろ~」
かわいい愛娘に呼ばれて、間延びした声を出すハジメ。
取り敢えず、あの一件以降、〝宝物庫〟に引きこもったままのデモンレンジャーをどうにかしなければとハジメは部屋を後にした。
ハジメとジャックが再会する日は近い。
ダンテはジャックが眠っている間にデビルメイクライに帰ってきて、バージルはネロのところに向かいました。
作中、ロダンの名前が出ましたが、この世界には〝アンブラの魔女〟もいて、元気に天使をぶっ殺しています。
そして、ジャック君はその魔女と契約しています。
いつか、召喚させたい……。