ありふれぬ悪魔狩人は世界最強 アフター   作:クラウディ

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感想が来なくて寂しい…………






Mission12 陰陽師騒動その2

 

 

 

 

「や、やっと帰って来れた~……」

 

 時間にして、時計の針が頂点を回った頃。

 とあるマンション、その一室の中でジャックは倒れていた。

 それも、残業からやっとこさと自宅に着き、体力が切れて倒れ込んだ中年のおっさんのようだ。

 無理もない。

 彼は先ほどまで()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()()()()()していたのだから。

 

 「自分の翼を使って日本まで来た」

 

 決して冗談ではない。

 ジャックは悪魔の血を継ぎ、尚且つ、上級悪魔ファフニールをその身に宿らせているため姿を人外のものへと変えることができるのだ。

 その時のジャックの姿は、竜と巨人を足して割ったような姿をしているため、竜の要素である『翼』を持っている。

 更に言えば、ジャックのスタミナは国と国を隔てる大海を渡ることなど月一で行うレベルで慣れ親しんだものであるからこそ、普通の人なら日本に来るために時間と大金を支払わなければならないところを、ほぼ多大な時間と金を使うことなく日本へ戻って来れたのだ。

 それでも、怪我を負っていないとはいえ、疲労がたまっていたジャックにはかなり厳しいものだったようで、現在、こうして這いつくばったまま動けないのである。

 

「おにょれ~……ベヨ姉さんめぇ……」

 

 待ちに待った修学旅行を有終の美で飾ることができず、更に、勝手に呼び出してきたことで疲労がたまる原因となった人物にジャックは恨み節を呟く。

 

 ベヨネッタ

 

 裏の世界で走らないものはほとんどいないであろう天使殺し。

 普段は訳ありの死体を埋葬する仕事を生業としており、抜群のプロポーションと美しい黒髪、背中の大きく割れた黒いボディスーツを身に纏った美しくスタイリッシュで超ドSのエンジェル・ハンター。

 その実力は折り紙付きで、多数の上級悪魔と契約し、数多の天使を葬っているほど。

 もっと言えば、今から数年前には文字通りの〝神〟を召喚し、〝神〟を滅ぼしている。

 

 そんな彼女とジャックは契約しているため、天使と戦うときには10回に1回のペースで呼び出されるのだ。

 それは、ジャックの友人であるハジメ達の学校に通い始めてからの時期も例外ではない。

 ある時は授業中、またある時は昼休みの時間、またまたある時には登校している途中に呼び出されることだってざらなのだ。

 

 何故そんなにもジャックが呼び出されるのか?

 

 これには理由がある。

 

 基本的に、悪魔達は契約した者にある〝条件〟を付ける。

 やれ、何かを食わせろだの、やれ、戦わせろだの、やれ――

 

 

――生贄を寄越せだの。

 

 

 こう言った条件――〝契約〟の内容は悪魔によって異なるが、基本的には生贄を寄越せと言うものが大多数だ。

 誰かの眼、誰かの腕、誰かの足、誰かの内臓、誰かの心臓、誰かの脳、誰かの死体……。

 もしくは、

 

――〝天使の魂〟などと言ったものを要求する者もいる。

 

 ベヨネッタは、悪魔に力を貸してもらう代わりに天使の魂を捧げることを契約としている。

 それも毎日。

 もし、1日でも怠った瞬間――

 

――ベヨネッタの状態を問わず、地獄こと魔界へ引きずり込まれてしまうのだ。

 

 そのため、ベヨネッタはエンツォの協力のもと、天使とのダンスパーティー(殺し合い)に興じているのである。

 しかも、ベヨネッタが契約している悪魔は片手で数えられるほどではなく、それも大食らいな者達が多い。

 天使の一体や二体では彼等の腹を満たすことはできないため、一日に数十体は天使を狩らねばならないのだ。

 

 その点、ジャックは低燃費にもほどがある。

 

 戦力としては、ベヨネッタの契約している悪魔達と一対一でなら互角に持っていけるほどで、更に契約の代償も軽い。

 なにせ、ジャックが契約した時に言い渡した条件は……。

 

『契約……ですか……? どういったことを言えばいいのか分からないんですけど……まぁ、ぞんざいに扱われなければいいですよ』

 

 はっきり言って、〝無い〟も同然である。

 

 ベヨネッタと契約していて、人間と遜色ない会話能力を持つ者達は「悪魔としてそれはどうなのか?」と疑問に思ったらしいのだが、そこは他人の契約事情。

 基本的にはノータッチの方向らしい。

 

 だが、ここでジャックの不憫なところが働いた。

 

『じゃあ、これからも頑張りましょうね。坊や?』

『へ?』

 

 契約内容をちゃんと確認しなかったということである。

 ベヨネッタは、「力を借りたいときには呼ぶ」とだけジャックに伝えたが、その中にジャック側の都合など考えていない。

 そのため、ベヨネッタが力を借りたいときには強制的に呼ばれるのだ。

 それが学校で授業を受けている時であったり、仕事中であっても、である。

 

 一応言っておくが、悪魔と契約するということは口約束程度のちゃちなものではなく、魂に刻まれるほどの契約なのだ。

 結果として、ジャックはベヨネッタと契約を切ることができずに、いつも鉄火場に連れ出されている(強制)のであった。

 

――大丈夫ですかご主人様?

「大丈夫じゃねぇよぉ……なんで修学旅行が終わったと思ったら、帰っている途中に呼び出されて、天使とダンスパーティー。やっと終わったと思ったら、送ってもらうの忘れてて置いてけぼり。地球半周ウルトラクイズ(クイズ無し)して、やっとアパートに帰ってきた……なんで修学旅行で疲れないといけないんだろ……?」

 

 寝そべるジャックに声を掛けたのは、件の修学旅行で出会った悪魔――〝玉藻の前(たまものまえ)〟だ。

 ジャックの手に炎が灯ったかと思えば、そこから狐面が現れ、更に一瞬発行したかと思えば、次の瞬間、手乗りサイズのふわふわとした毛並みを持つ狐になっていたのである。

 

 玉藻の前。

 

 それは、『絵本三国妖婦伝』によると、最初は藻女(みくずめ)と呼ばれたとされ、子に恵まれない夫婦の手で大切に育てられ、美しく成長した。

 18歳で宮中で仕え、のちに鳥羽上皇に仕える女官となって玉藻の前と呼ばれるようになり、その美貌と博識から次第に鳥羽上皇に寵愛されるようになったとのこと。

 

 しかしその後、上皇は次第に病に伏せるようになり、朝廷の医師にも原因が分からなかった。

 しかし陰陽師・安倍泰成が玉藻の前の仕業と見抜く。

 安倍が真言を唱えた事で玉藻の前は変身を解かれ、九尾の狐の姿で宮中を脱走し、行方を眩ました。

 

 その後、那須野(現在の栃木県那須郡周辺)で婦女子をさらうなどの行為が宮中へ伝わり、鳥羽上皇はかねてからの那須野領主須藤権守貞信の要請に応え、討伐軍を編成。

 三浦介義明、千葉介常胤、上総介広常を将軍に、陰陽師・安部泰成を軍師に任命し、軍勢を那須野へと派遣した。

 

 那須野で、既に九尾の狐と化した玉藻の前を発見した討伐軍はすぐさま攻撃を仕掛けたが、九尾の狐の妖術などによって多くの戦力を失い、失敗に終わった。

 三浦介と上総介をはじめとする将兵は犬の尾を狐に見立てた犬追物で騎射を訓練し、再び攻撃を開始する。

 

 対策を十分に練ったため、討伐軍は次第に九尾の狐を追い込んでいった。

 九尾の狐は貞信の夢に娘の姿で現れ許しを願ったが、貞信はこれを狐が弱っていると読み、最後の攻勢に出た。

 そして三浦介が放った二つの矢が脇腹と首筋を貫き、上総介の長刀が斬りつけたことで、九尾の狐は息絶えた。

 

 これが、玉藻の前の最後である。

 

 しかし、その後、九尾の狐は巨大な毒石に変化し、近づく人間や動物等の命を奪うようになった。

 そのため村人は後にこの毒石を『殺生石』と名付けたのである。

 この殺生石は鳥羽上皇の死後も存在し、周囲の村人たちを恐れさせた。

 鎮魂のためにやって来た多くの高僧ですら、その毒気に次々と倒れたが、南北朝時代、会津の元現寺を開いた玄翁和尚が殺生石を破壊し、破壊された殺生石は各地へと飛散したといわれる。

 

 このように、不可思議な力が広まっており、今と比べるほどもないような実力を持った者達でさえ手古摺った相手が、ジャックと契約している玉藻の前なのだ。

 

「とりあえずぅ……ハジメ達に電話するかぁ……」

――そちらの方がいいでしょう。今のままではやりたいことも出来ませんから。

 

 やる気の全てが殺がれたような状態ながらも、今すべきことは友人への報告だと懐からスマホを取り出すジャック。

 電源を入れて画面を見ると電波は繋がっているようだった。

 早速、通話アプリを開いて、ハジメに電話をかけるジャック。

 数回コール音が鳴ってプツッと言う音とともに電話がつながった。

 

『もしもし?』

「よぉ……ハジメェ……俺だぁ……」

『……オレオレ詐欺は間に合ってます。それでは』

「待って待って! 俺だよ! ジャックだよ!」

 

 疲れまくっている状態で電話に出たら危うく詐欺に間違えられかけるジャック。

 焦ってすぐさま自分の名前を言った。

 

『……本当にジャックだな?』

「ほんとほんと、ジャック嘘つかない」

 

『…………』

「…………」

 

『……この間、一緒に見た映画は?』

「コマンド―&ターミネーターのシュワちゃん祭り」

 

『お前が最近始めたソシャゲとその推しキャラは?』

「ウマ娘。推しキャラはライスシャワー」

 

『そのウマ娘をやっていてお前が泣いたシーンは?』

「ライスの初うまぴょい伝説」

 

『ウマ娘で俺が最低保証した回数は?』

「二百回の内三十回。羨ましいぞこの野郎」

 

『俺の家族は?』

「世界一ィイイイイイイ!!」

 

『……ジャックだな』

「だから言ってんだろ俺だって」

 

 ……なんか変人の会話が繰り広げられていた。

 すぐ傍に居た玉藻が「えぇ……」と引いている。

 それほどまでに変な会話だったからだ。

 

『で、こんな夜遅くにかけてきてどうしたんだ?』

「いやぁ……それがよぉ……」

 

 ジャックが説明を始める。

 

『なるほどな……そこはまぁ、ご愁傷様ってことで』

「冷めてんなぁ……ま、そこは良いんだけど。ところでハジメ。陰陽師関連の話はどうなったんだ?」

 

 ジャックが直球で問題をぶつける。

 それに対しハジメは、

 

『今その真っ最中だが?』

「はい?」

 

 直球で返した。

 思わず間抜けな声を出すジャック。

 しかし、直球で言われたら直球で返すしかないだろう。

 類は友を呼ぶと言ったところらしい。

 

『ちょうどいい。お前も参加してくれ』

 

 そうハジメが言った直後、ジャックの頭上に魔方陣が現れる。

 だが、いつも見るベヨネッタの魔法陣ではなかった。

 おそらく、ハジメの道具かなんかで射程を伸ばした転移魔法だろう。

 

「え、ちょ、待――」

――ご主人様!? あれぇ!? 私も!? 

 

 有無を言わさず、ジャックと玉藻は魔方陣に呑み込まれ、アパートから姿を消した。

 

 そして、ジャックの不幸が始まる。

 

 

 

 








やべぇ……原作で玉藻の前が出ちゃったよ……どうしよう……




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