ありふれぬ悪魔狩人は世界最強 アフター   作:クラウディ

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前回の続き

遂に、あの女と男達が……






Mission15 陰陽師騒動その5

 一先ず、大物達を倒し終えて一息ついていたところを襲撃されたジャック達は、その襲撃者〝影法師〟達を容易く無効化した。

 しかし、その後、龍が復活しようとしているところまで進む。

 

 皆が龍を復活させまいと奮闘する中、

 

「あ、くぅっ、がぁっ……!」

 

 ジャックは胸を抑えて倒れていた。

 

 別にダメージを負ったわけではない。

 むしろ、今回のメンバーの中では一番消耗していなかったともいえるだろう。

 

 なにせ、ジャックがやったことといえば、陽晴達が拘束していた九尾を一方的にボコボコにしたぐらいで終わっている。

 

 消耗なんてあるわけがない。

 

 さらに言えば、ジャックは帰還者達と比べても相当タフな男である。

 実際、ここに来る前に地球半周をしてきたのだから。

 

 なのに、何故ジャックが苦しんでいるのか?

 それには理由がある。

 

 それは現在戦っている敵〝龍〟の影響であった。

 

 龍は自らの分御霊を召喚した際、伝承に語り継がれる()も再現とはいえ召喚していた。

 日本では、龍=蛇という認識もあるため、今回のようなことが起きたのであろう。

 

 ここまではいい。

 状況としては疲弊しているところに敵戦力が増えるという全く良くない状況だが。

 

 肝心なのは、これらが〝龍〟によって召喚され、〝龍〟の願い――〝龍〟の復活を成し遂げるために動き始めたということ。

 実際、この場だけではなく世界中の様々な所で竜が暴れまわっている。

 

 蛇を召喚し操るということは、龍を操っているということと同意味。

 

 なら、

 

「ぐっ! 落ち着け……! ファフニール……!」

『クソッ……! これは、俺でも、制御、出来ねぇ……! 奪われるっ……!』

 

 体に竜を宿すジャックにとっては、特効ともいえる能力であった。

 そのため、体の内側から破裂しそうな痛みに襲われながらも、ジャックは必死に魔力を抑えているのである。

 

 もちろん、ジャックの体に宿るファフニールも全力で暴走しかけている自身の力を抑えているが、意識を奪われそうになっていた。

 まだ、〝龍〟の分御霊が召喚される前から感じていた微弱な力は、ファフニールが制御することで活動に支障が出ることはなかったが、〝龍〟が本格的に活動を始めようとしていることで龍であるファフニールが乗っ取られそうになっているのだ。

 

 それは本体であるジャックにも影響が及ぶ。

 

 ただでさえ少なかった魔力をファフニールによって補っているのだから、ジャックが保有する魔力のほとんどはファフニール――龍由来だ。

 なら、乗っ取られそうになるのも理解できる、ということである。

 

 そして、ジャックは敵の本拠地ともいえる場所で戦っているのだ。

 その支配の力は尋常ではないだろう。

 

 はっきり言って戦えそうにない。

 それがジャックの状態であった。

 

 だが、敵がそんな状態の敵を待ってくれはしない。

 

「ジャック! 避けろぉ!」

「っ……!」

 

 遠藤達が相対している八岐大蛇が放った不可視の衝撃が這いつくばったままのジャックに襲い掛かる。

 他の者達は、各々が持つ防御手段で防ぐことができているようだが、体の中で暴れまわる魔力を制御するだけのに精一杯なジャックにはどうしようもできなかった。

 

「がはぁっ!?」

 

 回避も出来ずに、吹き飛ばされたジャックは壁にたたきつけられてしまい、ずるずると音を立てて崩れ落ちてしまう。

 

「ジャック様!? くっ……! 近づけない……!」

 

 クラウディアが悲鳴のような声を上げるが、ジャックには届かないし、届かせることができない。

 そして、八岐大蛇の攻撃に手一杯である彼女達にはジャックの救出を優先できずにいた。

 

「厄介でありんすねぇ!」

 

 緋月が吐き捨てるように言うが、状況は一向に良くならない。

 むしろ、状況は時間を経るにつれて悪くなっていく。

 

 なにしろ、相手は世界に流れるエネルギーを吸収しているのだ。

 

 要するに、ジャック達が相手しているのは〝地球〟そのものともいえる。

 

 持久戦なんて言葉じゃ区別できない、ジャック達からしてみればふざけすぎている戦いだ。

 

 相手の限界に底はない。

 こちらは規格外とはいえ、限界は存在する。

 

 それに、この場で逆転の一撃を放てる者もいない。

 それは倒れているジャックも同じだ。

 

「……ラナ、南雲に連絡を。あと十五分は無理だ」

 

 こんな絶望的な状況の中、小声で伝えられた内容は、卿らしくもない。

 客観的に聞けば弱音に聞こえただろう。

 実際に、触れる距離にいる大晴は息を呑んでいる。

 

 だが、ラナは予測していたように頷いた。

 弱音ではなく、現実的な結論だと理解する。

 

 卿モードのくせに、言動が普段と同じで、らしくもない無表情。

 それが何より雄弁に、彼の内心が悔しさで溢れていることを示していた。

 

「そんな顔しないの、こうくん。たった一人で、女神さえ退けるあの化け物を相手取ったのよ? 胸を張っていいの」

「……」

 

 卿の顔が、なんとも言えない表情になる。

 

 それにウインクで応え、連絡を入れようとするラナ。

 

 と、その寸前、天が咆えた。

 

 そう錯覚するような咆哮。

 〝龍の影〟が放ったそれは、明らかに今までよりも遙かに強力だった。

 また、力の位階が上がったのだ。

 

「――ッッ!?」

 

 分身を通して流れ込む圧倒的な呪詛に、意識がスパークする。

 刹那の瞬間に、全ての繋がりを自ら切断していなければ危うかった。

 

 だが、それでも喰らった呪詛は人一人を呪い殺すに十分で、大晴だけでは抑えきれるものではなく。

 

「こうくん!?」

「えん、どうさまっ」

 

 血反吐を吐く浩介。

 陽晴が必死に氣力を練ろうとするが、疲弊の極致にある体は指一本動かない。

 

 そして、相対する者がいなくなった空から、〝龍の影〟の意識が地上へと向く。

 

 誰もが、蛇に睨まれたカエルの気持ちを味わった。

 

 浩介が手を掲げる。

 死力を振り絞って〝黒天窮〟を盾代わりに発動しようとする――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――その瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪い子ね」

 

ドグシャアッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 轟音を立てて、殴打音がその場に響いた。

 

 原因は分かる。

 

 〝龍の影〟が虚空に現れた巨大な黒い腕で殴り飛ばされたのだ。

 

 あまりの威力に、緋月の攻撃と同じように消し飛ぶ〝影〟。

 

 

 

 

「は?」

 

 思わず呆けたような声を出す遠藤。

 それもそのはず。

 

 なにせ、いきなり現れた魔法陣から出てきた腕に、強大な〝龍の影〟が殴り飛ばされたのだから。

 他の者も目を白黒させている。

 心なしか、他の〝龍の影〟も「え? 何が起こった?」という雰囲気を漂わせていた。

 

 そんな彼等の間に降り立つ者がいる。

 

 抜群のプロポーションと美しい黒髪、背中の大きく割れた黒いボディスーツを身に纏った美しい女性。

 その姿は、緋月とはまた違った妖艶さを醸し出している。

 

 ただ、同じく〝月〟という印象をなぜか受けたのは分からない。

 

 そんな彼女は周りを見回したかと思うと、溜息を吐いてこう言った。

 

「ハァ…………愉快なパーティーが始まってるって聞いてたんだけど、こんな辛気臭いところじゃ気分が乗らないわねぇ……。誰か、音楽をかけてくださる? それもとびっきりダンスにあうような音楽を」

 

 いや無理です。

 ってか、愉快なパーティーなんて始まってません。

 辛気臭いとか文句言わないで下さいよ。

 それよりあなた誰ですか?

 

 そんな感想が遠藤達の間で流れる中、いち早く正気に戻った〝龍の影〟が彼女に攻撃を仕掛ける。

 先程と同様に呪詛を撒き散らそうとしているのだろう。

 今度こそ食らえばお終いだ。

 

 凄まじい威圧感に正気に戻った者達が防御を固めようとする。

 しかし、間に合わない。

 混乱していたせいで、術の展開が間に合わないのだ。

 

 諦めのムードがまた広がっていく。

 

 が、

 

「ハアッ!」

 

ドグシャア!!

 

 また、殴打音が響き、呪詛を放とうとした〝龍の影〟を消し飛ばす。

 

 今度は白い腕だった。

 

 流石に二度目だったため場に居る者達の混乱はなかったが、動揺は広がる。

 

 おそらく、先ほどの黒い腕の一撃は目の前にいる女性が放ったものだろうということは分かった。

 しかし、目の前の女性は動いてない筈なのに、似たような攻撃がまた発生した。

 今度は白い腕でだ。

 

 何故……

 その答えは存外早く分かった。

 

 先程の女性と同じく、遠藤達と〝龍の影〟の間に割って入るようにもう一人女性が降り立ったからだ。

 先に降り立った女性とは対照的に、銀髪で赤いボディースーツを身に纏い、黒い女性の妖艶の雰囲気とは違って、キリッとした雰囲気の人物だった。

 

「おい〝セレッサ〟! でしゃばるなと言ったはずだろう!」

「あら、ごめんなさいね〝ジャンヌ〟。ロダンがあまりにも急かすから飛び出してしまったわ」

 

 そんな赤いボディスーツの女性――ジャンヌは、先に降り立った女性――セレッサに声を掛ける。

 その声色には少しだけ怒りが含まれていた。

 だが、この状況に焦りを覚えている様子はなく、〝龍の影〟の大群を気にした様子もない。

 

 というより、この場でその声の調子はどうなのか?

 ここ実家じゃないですよ?

 

 そんな二人の登場に静まり返っていた場にある声が響いた。

 

「ベヨ、姉、さん……? ジャンヌ、さん、も……。なんで……?」

「ベヨ姉さん!?」

 

 倒れていたジャックの声だ。

 弱々しいながらも、静まり返っていた場には驚くほど響いた

 

 その声にいち早く反応したのは、ジャックのクラスメイトである遠藤だ。

 思わず、深淵卿モードが解ける。

 

 何故なら、あのベヨ姉さんである。

 

 ジャックを授業中であろうと無断で呼び出し、天使とかいう物騒な連中と戦わせるおっかない魔女。

 天使を平気な顔して地獄行きにさせるおっそろしい痴女。

 強さ的に言えば、魔王と呼ばれるハジメ以上の力を持っているとジャックが評するほど。

 そんな人物がなんでここにいる!?

 

 遠藤の頭の中ではこう言ったものが巡っていた。

 

 そんな遠藤だったが、一先ずは考えを切り替えて敵を見据える。

 

「(おそらく、ベヨネッタさんはジャックの援護に来た。なら、気にするのは目の前にいる〝龍〟達だけ!)」

 

 そう自分に言い聞かせて、戦闘準備を整えた。

 他の者達も戦闘準備を整える。

 そして、戦闘は再開した。

 

「砕け散れ!」

「ハァッ!」

 

 だが、先ほどまでの劣勢を覆すように、援軍である魔女の二人が加わったことで大群だった〝龍の影〟の数はどんどんと減っていく。

 ある時には、先ほどと同様に魔法陣から腕を召喚し、〝影〟をぶん殴り、またある時には、巨大な魔獣を召喚して〝影〟を喰い殺していった。

 ……少し、過激だが……

 

「凄まじい……!」

「すごい……!」

「あちらの方達は……!」

「ほぉう……」

 

 ジャックの知り合いで、裏の事情も知っている人物が来たのなら事件の大本を叩きに来たのだろうことが容易く予想できたため、戦ってくれるだろうことは予想していたが、ここまでの強さは予想外だった。

 

 思わず、遠藤は卿モードで称賛する。

 他の皆も同様だった。

 

 このままなら勝てる……!

 そんな予感が漂うほどに、たった二人の増援の力はすさまじかった。

 

 しかも、良いことはそれだけでなく、更に状況は好転する。

 

 ジャックの傍に魔方陣が現れそこからある男性が出て来たからだ。

 

 褐色肌の巨体でサングラス。

 黒を基調にした服装のその男性は、知る人ぞ知る大物だった。

 

 その男性はジャックを見つけると、懐から緑の薬品が入った容器を取り出し、ジャックにぶっかける。

 〝龍の影〟による攻撃と、暴走する魔力により傷だらけだった体は見る見るうちに治っていき、ジャックの魔力暴走も収まっていく。

 

「おいジャック、随分と大変そうじゃねぇか」

「〝ロダン〟さんまで……! どうして……?」

 

 ジャックが男性――ロダンに、驚いたような表情を向ける。

 どうやら、ジャックも予想外だったようだ。

 

 そんなジャックにロダンは事情を告げる。

 

「俺もあの後独自に情報を探ったんだが、今回は、流石に俺達も出はらなければいけないと思ってな。ベヨネッタ達を呼んできた。文句は言うなよ? 俺だってあいつらを探すのは骨が折れたんだからな」

 

 そういうロダンは、指の骨を鳴らしながら構える。

 構えた瞬間、膨大な魔力が吹き荒れ、戦場に動揺が走った。

 

 今度は何が来たんだ、と。

 だが、それを気にしている暇もないため、〝龍〟に属するもの以外はすぐさま前を向く。

 もうすぐ勝てるんだ、と気を一掃に引き締めて。

 

 もう、体に痛みが走らないことを確認したジャックは、手に魔剣ファフニールを呼び出し調子を確認する。

 何故先ほどまで、支配の力に苦しめられていたジャックが動けるのかについては、ロダンの正体が『アレ』だからといっておこう。

 

「大丈夫かファフニール?」

『そこの、海坊主のおかげですこぶるいいぞ。お前こそ大丈夫か?』

「もちろんだ! 回復薬ぶっかけてもらったからな!」

 

 互いに状態を確認したジャックとファフニールは駆けだそうとする。

 

 だが、

 

「ちょっと待てジャック」

 

 ロダンが引き止めた。

 

「なんかあるんですかロダンさん? ってか、早くみんなのところに行かないと……」

「焦るのも分かるがな、状況が状況だ。戦力はあるだけあった方がいいと思ってな。だから……」

 

 

「俺が来てやったぞジャック?」

 

「!?」

 

 

 状況は急速に解決に向かっていく。

 

 







なぁにこれ?


というわけで、作者の稚拙な文章力を振り絞ってここまで書きました。

最後の人物はもちろんアイツです。



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