ありふれぬ悪魔狩人は世界最強 アフター   作:クラウディ

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前回の続き

デビルメイクライ組とベヨネッタ組が大暴れ。






Mission16 陰陽師騒動その6

 

 

 

 

 

「えぇ……誰ですか、あの人達……痴女におっさん達がボコボコにしてるんですけどぉ……」

「あれって、ベヨネッタさんだよね? 他にもいろんな人がいるけど……」

「うっわ、ダンテさんもいますよぉ……龍を滅多切りに……めっちゃ悪魔してますぅ……」

 

 ベヨネッタ達が参戦したことにより、状況が好転したところから数分後。

 遅れて到着したシア達が目にしたのは、想定外の援軍によりボコボコにされていく〝蛇龍伝承の影〟だった。

 

 なんて言うか……本来だったら、敵である〝影〟の圧倒的な力により押されている遠藤達がいると思って駆け付けたのだが、実際はそうではなかった。

 

 二人ほど見覚えのある人物がいたが、彼等は彼等で戦闘に集中しているようだ。

 

「ハァッ!」

 

 漆黒の月とも表現できる美しさを持つベヨネッタは、自身の髪を触媒に召喚した悪魔達の攻撃により、所詮はオリジナルを模した程度でしかない〝影〟を消し飛ばしていく。

 

 ある時には巨大な蛇を、召喚した無念のうちにこの世を去った高貴な女性が地獄で転生した姿とされる悪魔〝マダム・バタフライ〟を召喚して殴殺し、他にも様々な大魔獣を召喚して〝影〟を消し去っていった。

 

 いかに〝世界の目〟を喪失し、膨大な魔力を失ったとはいえ、その積み重ねた実力は健在。

 〝影〟如きに後れを取るはずなど無いのだ。

 

「ハァ……退屈だわ」

 

 これが、最強と呼ばれたアンブラの魔女。

 〝闇の左目〟の正統後継者の力だ。

 

 その力には一切の陰り無し。

 

「私と遊びたいの? なら、もっとスマートにならなくちゃ」

 

 相手を煽る余裕さえあるようだ。

 そんなベヨネッタに〝影〟達は襲い掛かる。

 

 が、

 

 真っ先に向かっていった〝影〟は、踏みつけついでにヒールに取り付けられている拳銃〝ラブイズブルー〟による銃撃で頭部を爆散させられ、続いて呪詛を放とうとした〝影〟達は、ベヨネッタの銃撃により攻撃のできぬまま霧散する。

 

 一種の踊りのように流れるが如く繰り出されていくその攻撃は、戦場に居る者達を魅了していく。

 

 その戦いはまるで、戦いの神のようであり、舞踏の神のようでもあった。

 

 実際そうだ。

 ベヨネッタは〝影〟なんぞよりもっとおっかないものと戦ってきたのだから。

 それこそ、この世界に君臨していたとされる〝神〟でさえも……

 

「イィヤァッ!!」

 

 だが、こちらも負けていない。

 

 裂帛の気合と共に突き出した剣先で以て、〝影〟達を蹴散らしていく男。

 

 ベヨネッタとは違い妖艶さの欠片もないが、その一撃の重さは、魔獣を召喚して戦っているベヨネッタよりも、人間の姿で地盤をひっくり返すほどの一撃を放っているこちらの方が非常に派手だ。

 月光の代わりに迸る魔力によって照らされたその姿が分かる。

 

 赤コートを翻し、自身の背丈ほどもありそうな大剣を片手で振り回す銀髪の男。

 

 彼こそ、ジャックの父親である〝ダンテ〟であった。

 

 そんなダンテは、先ほどから襲い掛かってくる〝影〟達に大立ち回りを演じている。

 

 呪詛を放たれる前に、両手に握った拳銃〝エボニー&アイボリー〟で弾丸をばらまき、相殺もしくは頭を吹っ飛ばすことで術の無効化と殲滅を行い、近づいてきた敵には、背負っていた大剣〝魔剣ダンテ〟を抜き放って両断する。

 

 その余りの威力に、大地は割れ、〝影〟達はバラバラになっていった。

 

 ベヨネッタの最低限な動きで攻撃を繰り出すのではなく、周りのことなどお構いなしに魔力を吹き荒れさせながら魔剣を振るう姿は、まさしく悪魔だ。

 

 幸い、周囲に味方がいなかったからか、巻き込まれて負傷するような者達は出ていなかった。

 むしろ、ダンテが「ちょっくら一人で暴れさせてくれ」と言っていたからというのもある。

 

 実は、今のダンテは機嫌が悪い。

 分かりやすく言うなら、『プッツン』している。

 

 何故なら、息子であるジャックが(ふざけた奴)に苦しめられていたからだ。

 ダンテは、ジャックにウザく絡みに行ってよく殴り飛ばされるか蹴り飛ばされるかしているのだが、そのジャックにかまう行動の数々は、悪魔にはない人間が持つ〝愛情〟から来ているのだから。

 

 幼少の頃に家族が離れ離れになったという経験を持つダンテは、思いのほか、家族というものを大切なものだと思っている。

 

 あの時――バージルと雌雄を決した戦いの時にも、バージルは力を求めたのに対し、ダンテは父親であるスパーダの遺志――心を継いだのだ。

 それがきっかけで、父親であるスパーダの振るっていたとされる〝魔剣スパーダ〟を使いこなすことができ、魔帝をも倒す力を身に着けたのである。

 

 悪魔でありながら、人間の心を持つダンテ。

 そんな彼は、心があるからこそ人間は強くなったのだと、ある科学者に言ったのだ。

 

 事実、人間は強い。

 力だけ見れば悪魔に軍配が上がるだろうが、感情という不確かなものを使いこなし、それを爆発させ強者を打ち倒す者などこの世界には大勢いる。

 ダンテはその筆頭だ。

 

 そんなダンテが今は〟キレている〟のである。

 それも、その怒りは計り知れないほどにだ。

 

 だがしかし、ダンテから噴き出す膨大な魔力を見れば察することはできるであろう。

 

 地は割れ、暴風が吹き荒れ、〝影〟達はバラバラになっていく。

 

 そのどれもが、この場にいる誰よりもキレていると証明していた。

 

Die(死ね)!!」

 

 言葉も荒々しくなっていく。

 だが、太刀筋はどこまでも綺麗だった。

 そんなダンテの姿は、スパーダのことを知っている者が見たならばこう言うだろう。

 

「アイツはスパーダの息子だよ、間違いなく」と。

 

 そんなダンテが他の〝影〟を攻撃している隙を突いて、一体の〝影〟が突撃する。

 まるで飛び交う弾丸のように戦場を縫って接近してきた〝影〟にあわや貫かれる――前に上半身を逸らし、魔剣ダンテを滑らせて〝影〟を開きにしてしまった。

 

 そんなダンテに背金は悪手と判断したのか、遠く離れた所から呪詛を撒き散らしている〝影〟もいたが、

 

「ダンテ様! 大丈夫ですか!」

「安心しな嬢ちゃん。この通りピンピンしている」

 

 ダンテにはその程度の攻撃は効かず、むしろ、ダンテに気が逸れている間にベヨネッタ達に倒されている。

 

 もう、戦況は人間側に傾いていると言ってもいいものだ。

 

 だが、戦場を暴れまわっているのはベヨネッタとダンテだけではない。

 

「フッフッフ……久しぶりの祭りだ。俺も思いっきりいかせてもらうぜ」

「あ、あなたは……」

「ん? あぁ、俺の名はロダン。ただのバーテンダーだ」

 

 そう戦況を見ながら一体の〝影〟を片腕でつかんでいるのは、ベヨネッタ達が入り浸るBAR「ザゲイツオブヘル」のバーテンダーロダン。

 近くには、陽晴の父、大晴だった。

 おそらく、術の展開に気を取られている隙に〝影〟の大群に攻撃され、そこをロダンが救出したのだろう。

 

 ロダンの表向きの素性はただのバーテンダーなのだが、ベヨネッタ達など彼の素性を知っている者や彼と直接戦った者は、ロダンのことをこう呼ぶ。

 

 「無限の者」と。

 

 彼は、〝影〟を掴んでいる腕とは反対側の手に、ある〝紙切れ〟を持っていた。

 それを破ると、紙切れ――プラチナチケット(ジャックのヘイロウ貯金を勝手に持ってきた)は魔力の塊となり、ロダンに吸収されていく。

 

「フンッ! オォオオオオオオオオ!!」

 

 掴んでいた〝影〟を握りつぶし、裂帛の気合と共にキレているダンテに勝るとも劣らない膨大な魔力が放出され、ロダンの姿を覆い隠した。

 

 ただそれだけで、戦場にいた小さい〝影〟は消し飛び、それ以外の〝影〟も輪郭が崩れかける。

 地面はめくれ上がり、周囲に台風が来た時のような強風が吹き荒れる。

 たった一人の魔力放出だけで、これだけの規模になるなど誰が予想できたであろうか。

 

「くっ、話には聞いていたが、これほどとは……!」

「フフッ、やはり、今の世も捨てがたいでありんすなぁ……!」

 

 宙を浮かんでいた卿が風にあおられ、緋月は楽しそうに笑う。

 

 やがて、魔力が晴れた先には、

 

「さぁ、龍殺しとしゃれこもうか!」

 

 凄まじい魔力を持った〝堕天使〟がいた。

 姿は変わっていないが、存在感が明らかに大きくなっている。

 

「く、ロダン殿! 〝影〟がこちらに!」

 

 さっきまで、ただの男だと思っていたのであろう〝影〟達がロダンのことを脅威と認めたのか大勢向かっていく。

 ロダンの傍で息を整えていた大晴が警告と共に術を展開するが、ロダンは関係ないと言わんばかりに歩みを進める。

 そんなロダンの行動に、ギョッとしたような目を向ける大晴。

 

「ロダン殿!?」

「安心しな、俺はそう簡単には――」

 

 言い切る前に〝影〟達によって、ロダンの姿が覆い隠されていく。

 勢いよく飛んできた蛇や呪詛を放っている蛇。

 普通なら即死するはずの攻撃だ。

 

 しかし、

 

「ぬぅん!!」

 

 気勢一発で蛇達は吹き飛ばされ、あっという間に消え去っていく。

 それだけでなく、ロダンを中心として爆発するかのように力が放出されたのだ。

 それにはさすがの大晴も目を剝く。

 

 やがて風が収まると、

 

「ふぅ……俺はそう簡単には死なねぇよ」

 

 無傷のロダンがタバコをふかしていた。

 

 蛇達によるゴンズイ玉とも言うべき状態で、あれほどの攻撃を受けてなお無傷。

 それも、日本最強の神秘、その末端とはいえ大群の攻撃にさらされているのにだ。

 

 びっくりする光景ばっかりで、そろそろ驚かなくなってくる。

 たぶん、この事件が解決してしばらくの間は、ホラー映画を見ても驚かないのであろう。

 

「いつまでのんびりしているつもりだロダン! お前もさっさと来い!」

「おっと、呼ばれたみたいだ。じゃ、後は頑張れよ」

 

 ベヨネッタとコンビネーションを組んでいるジャンヌから呼び出され、ロダンは最前線へと駆けだす。

 

「……私も負けていられないな」

 

 その後ろ姿を見送った大晴は、頬を張り、気を引き締め直して戦場へと戻っていった。

 大晴も大晴で、様々な術を行使し、確実に数を削っていく。

 

 大人達が活躍する横で、この男も活躍していた。

 

『オラァアアアアアア!!』

 

 ジャックだ。

 もう、己を縛るものはないと復活してからずっと〝竜魔人化〟の状態で戦い続けている。

 ジャックはその巨体と翼を生かして、大物と空を飛ぶ〝影〟を次々に切り裂いていった。

 

 その数、もはや百はくだらない。

 

 相手が瘴気の集合体である〝影〟ではなかったら、そこらに大量の死体の山が転がっていただろうほどに、ジャックは奮闘している。

 

 一応言っておくが、ジャックは本来〝竜魔人化〟の状態で戦闘を続けるとおよそ三分ほどで強制的に解除されてしまう。

 それ以上は危険と本能が判断して解除するため、ジャックは三分以上戦い続けることはできない。

 

 だが、ジャックが〝竜魔人化〟になってから、もう五分以上経過している。

 

 なら何故、未だに〝竜魔人化〟が解除されないのか?

 

 それは、ロダンが駆けつけた時に、ジャックにかけた回復役の効果である。

 あれには、魔力の活性化だけではなく、一種の興奮剤が入っているのだ。

 言うなれば、麻薬――否、魔薬というべきものをかけられたことで、ジャックはリミッターを解除した状態で戦っている。

 そのため、普段以上の魔力が解放でき、〝竜魔人化〟の効果時間の延長に繋がっているのだ。

 

 もちろん、これは一時的なものであるため効果が切れた瞬間、無茶した分だけ反動が体にのしかかるのであろう。

 この事件を生き延びれたなら、ジャックは半月の間、筋肉痛で動けなくなるはずだ。

 

 だが、

 

『んなこた分かってるんだよ!』

 

 そんなこと分かっていながら関係ないと叫び、また〝影〟に向かっていく。

 目指すは、一番大きい〝龍の影〟だ。

 〝影〟が空を覆う数ほどいたとしても、その中で、目立つほど大きな個体ならば何か重要な役割を果たしているはずだ。

 そう判断したからこその馬鹿みたいな突進。

 

 しかし、そうはさせぬと進路を妨害するように小さい蛇達が集まってくる。

 

『邪魔だぁあああああああ!!』

 

 魔力を纏った剣を振ることで斬撃を飛ばし、壁のようになっていた蛇を蹴散らしていくジャックだが、あまりの数に押され気味になる。

 

『!? マズイ!?』

 

 そして、呪詛を放とうとする蛇を見つけたことで焦りだす。

 いかに回復薬の効果で傷が癒え、〝竜魔人化〟を行使し続けられるとはいえ、ダメージを負うのは非常にマズい。

 今のジャックの状態は、表面上の傷は癒えても疲労は抜けきっておらず、魔薬で誤魔化している状態なのだ。

 

 そのため、攻撃を食らうのはマズい。

 もしかしたら、魔薬の効果が切れて気絶してしまうかもしれない。

 そうなったら、今、空中にいるジャックは落下の衝撃で即死するだろう。

 

 それだけでなく、他の皆まで危険にさらされる。

 ベヨネッタ達がそういう蛇を潰しているが、はっきり言ってキリがない。

 

 ならばと、ジャックは呪詛を放とうとする蛇を切ろうとしても、大量の蛇によって前に進めない。

 

 一巻の終わり。

 

 その言葉が非常に似合う状況だった。

 

 だが、

 

――させません!

 

 呪詛が放たれた瞬間、ジャックの体から誰かの声が聞こえてその呪詛を吹き散らす。

 周りにも、その声が聞こえたようで、一瞬気を取られた。

 

――さすがの私でも、今回ばかりは許しては置けません! ええ! 許しませんとも! 例え月が見逃しても、お天道様は見逃してませんからねぇ!

『玉藻!』

 

 声の正体は、ジャックが契約している妖魔(同じ匂いを感じたけど悪魔じゃなかったらしい)〝玉藻の前〟だ。

 そんな彼女は、ジャックの胸から飛び出し、その姿を顕現させる。

 

 その姿は、いつもの子ぎつねといった姿ではなく、ジャックが倒した九尾の狐の姿だった。

 

 金色の毛並みに、体表に描かれた赤い文様。

 十数メートルはあるジャックの巨体に並び立つその妖狐は、()()()()()()()()()

 

 諸説あるが、九尾の狐こと玉藻の前は日本の神――〝天照大神〟の分御霊と言われている。

 人間に興味を持った天照大神が、自身の存在の一部を人間に転生させ、生まれてきたのが中国のあるお姫様だと言われているとのこと。

 それからなんやかんやあって、日本に渡ってきた際、名乗った名前が〝玉藻の前〟。

 

 そのため、玉藻の前=天照大神という方程式が成り立つのだ。

 さらに言えば、太陽というか〝火〟というものは、邪悪なるものを祓うと言い伝えられている。

 

 ならば、太陽の化身でありその力を行使できる玉藻の前は、

 

――ご主人様が力の大半を持っていた分御霊をぶっ飛ばしてくれたおかげで私のパワーは全盛期! この程度の呪詛など祓って見せましょう! 光あれ!

 

 呪詛を祓うことができるのだ。

 

 玉藻が甲高く遠吠えをすると、背負った太陽が輝き、辺り一帯に浄化の日を放っていく。

 これにより、戦場を覆っていた呪詛及び雑魚の群れは諸共に消え去っていった。

 

 更に、

 

「な、なにこれ!」

「傷が……!」

「力もみなぎってくる……!」

 

 光を浴びた人間側の者達の傷が瞬く間に癒えていく。

 これも、玉藻の力、その一つである。

 

『ナイスだ玉藻!』

――いやん! 褒めても光しか出ませんよご主人様!

 

 称賛するジャックの言葉に照れ臭そうに体をくねらせる玉藻。

 普通だったら、「リア充爆発しろ!」と言いたくなるが、その場にいるのは翼の生えた巨人に、でかい狐だった。

 ちょっと人外が集まり過ぎである。

 

「Hahaha! どうしたジャック! 新しいガールフレンドでも作ったのか!」

「フフフッ、案外仲がよさそうね」

「全く……戦いに集中しろお前達!」

「へっへっへ、こいつぁ面白いものが見れた。やっぱり出てきてよかったぜ」

『うっせぇぞそこ! ちゃんと真面目にやれ!』

 

 大人たちのからかいに、顔を赤らめながら(〝竜魔人化〟したらいかつい顔になるし、そもそも顔の色が変わったところが分かり辛い)振り払うように戦闘に集中するジャック。

 

 そうして、人間側が優勢のまま、戦闘は続いていった。

 

「……………………はっ! 急がないと!」

「そうでした! 私達助けに来たんでしたね!」

「エガリさんが目立てないよ~~! こんな場所じゃ~~!」

 

 正気に戻ったシア達が戦線に参加するが、はっきり言って「もう、アイツ等だけでいいんじゃないか?」と思わんでもない。

 だが、やらねばならないのだ。

 キャラの濃さに押し流される前に!

 

 

 

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 シア達も戦闘に加わり、一部の者と交代とはいえ休憩も挟めるようになってきた頃。

 戦闘が続き、勝利のビジョンが見えそうになってきた時に朗報が届く。

 

『この星の氣力は、ご主人様が完全に掌握したのじゃ。もはや〝龍〟は無限ではない』

 

 ハジメが口にした根本的な解決。

 

 それこそが、王樹より流れ込むこの星の力――氣力の完全コントロールだ。

 

 〝龍〟の覚醒も、復活も、氣力を喰ってなしえるもの。

 当然、無尽蔵の力も星の力を喰っているから。

 

 ならば、日本に流れ込む前に、一度、全て源泉から奪ってやればいい。

 

 そう、〝宝物庫〟の中の世界――〝箱庭〟に。

 

 星一つ分の莫大なエネルギーでも、箱庭の世界の成長に回してしまえば持て余すことはない。

 ついでとばかりに、箱庭の大樹――宝樹と神霊の成長加速にも流用できる。

 

 時間がないので、アワークリスタルとティオの再生魔法で時間加速も行った。

 

 素子変換システムはノガリがつきっきりで制御し、ライラが成長のために眠っている間は、アウラロッドが王樹の女神の代理を務めた。

 

『補給路を潰すのは戦争の定石、とのことじゃな。今のご主人様は、地球のエネルギーを、いつでも任意の場所に、任意の量だけ供給することができる』

 

 つまり、今の日本は完全に氣力を断たれた状態。

 〝龍〟の力は、今内包している量のみの有限となった。

 

 ついでに言えば、世界中で目覚めた術師達も霊地を掌握されたようなものなので、好きに〝龍脈〟や〝龍穴〟から力を受け取ることはできない。

 

 ハジメが口にした根本的な解決とは、まさに〝地球固有エネルギーの完全な掌握〟だったわけである。

 

『そのアーティファクトは、所持者にのみ箱庭の宝樹を通して無限の力を供給するものじゃ。力の種類は問わんぞ?』

 

 ただし、まだプロトタイプなのでハジメが全てを制御しなければならない。

 

 今のハジメは、広大かつ豊かな自然を育んだ箱庭の世界で、宝樹を背に座禅を組むような形で瞑目し、限界突破も使って集中している。

 

 そうして、世界中に散らばっている仲間、配下の悪魔や神霊達へ無限の力を送り続けているのだ。

 

 極限の集中で余力はない。

 だが、創世した己の世界で、世界樹の如き巨樹を背に星の輝きを纏い、母星と無限の力を掌中に、悪魔と神霊を従え、世界中の選んだ者にだけ無限の力を送り続ける姿は……

 

「いや、神じゃん、それ」

「エヒトよりやばいですね! 流石は我が主!」

「正真正銘の魔神ですねぇ」

「ハジメくん、どこまで行く気なんだろう……」

 

 浩介が思わず素に戻り、エガリのテンションが爆上がりし、シアと香織が少し呆れたような顔になる。

 

 なるほど、神域から無数の使徒に無限の力を送り続けていたエヒトと、やっていることにあまり違いはない。

 

 持ち運び可能な星と世界を所持、かつての使徒のほか神と悪魔をも引き連れている分、確かにエヒトよりやばい。

 

『とにかく削るのじゃ! 今、ご主人様は日本が内包する氣力も奪い取っておる! じゃが、それには少し時間がかかる! その間の天変地異は神霊達が押さえ込むが、影を削り続ければ消耗も加速度的に早まるはずじゃ!』

「なるほど。実に分かりやすい!!!」

 

 クルッとターンして香ばしいポーズを取る卿。

 

「無限の魔力にて、我が深淵は更に深まった」

「遠藤君! ふざけてる場合じゃないよ!」

「窮鼠猫を噛むって言いますからねぇ。追い詰められた〝龍〟が何をするか分かりませんよ!」

 

 別にふざけてはいない。卿は、かつてないほど追い詰められた極限状態と、香織からの昇華魔法、そして無限の魔力を得たことで新たなステージに上がったのだ!

 

「ゆくぞっ、ミィーのパゥワァーを感じてエキサイティンンングするが良い!!」

「「香ばしいを通り越してエセ外国人になってる!?」」

 

 やっぱりふざけているかもしれない。

 おかしな方向に精神が飛んでそうな卿だが、しかし、その力は本物だった。

 

――香ば深度 レベルⅥ

 

 もたらされるは、桁が一つ増えた分身体。

 その総数、一万。

 もはや新たな黒雲と見紛う量の卿が天空を駆ける。

 

 そして、

 

「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」「黒天窮!!」

 

 空を奥義の黒星が埋め尽くした。

 

「のわぁーーーーっ!?」

「エガリさぁーーーん!?」

「退避退避ぃ! 地上に戻りますよぉっ」

 

 吸い込まれそうになっているエガリを、シアが途中でキャッチ。

 香織と一緒に空より退避する。

 神霊達まで慌てて戦域から退避していく。

 危うくルーンとチーノも帰らぬ妖精になりかけて、エンティが「あほぉ! やる前に警告くらいしなさいよぉ!」と怒りながら保護する。

 

「これにはミィも予想外! ソーリー!!」

 

 誰もが思った。

 なんか今までとは別ベクトルで腹が立つと。

 

 〝龍の影〟も、己の力が凄まじい勢いで減じていることを理解したのだろう。

 同時に、もう勝ち目が薄いことも察したのかもしれない。

 

 シアの言う通り、追い詰められたネズミの如く憤怒と憎悪の咆哮を上げた。

 

〝黒天窮〟の乱れ打ちというとんでもない攻撃で、〝龍の影〟は既に余さず呑み込まれている。

 それでも、消滅の力に抗いながら残りの全ての力を、生命を呪い殺す呪詛に変えようとする。

 

 〝黒天窮〟は物理的な破壊としては最強格の魔法だ。だが、呪詛という非物理的な力まで吸引消滅できるわけではない。

 

「ええいっ、往生際が悪い――」

『高天原に神留まり坐す、皇が親神漏岐、神漏美の命を以て、天つ祝詞の太祝詞事を宣れ――』

 

 通信機越しに、凜と響いた幼くも美しい声音。

 直後、地上から純白の光が螺旋を描いて天を衝いた。

 

 卿の頬が不敵に釣り上がる。

 

 最強の陰陽少女が、無限の氣力を得たらどうなるのか。

 

「まったく! 我が姫は最高だな!!」

 

 通信機越しに「んんっ!?」という咳払いと、「ロリコン……」「粛正……」という不穏な言葉が聞こえたが、ハイの極みにある卿には届かない!

 

 地上から轟音が響いた。

 樹海の北側半分が扇状に、三百メートル以上消し飛んだ。

 その根元の部分に、緋色の妖気をプロミネンスのように乱舞させる緋月がいる。

 

 ドヤ顔だ。

 物凄く。

 視線が地上に降りたシアに向けられている。

 どうやら、シアの最初の一撃を見て対抗心を燃やしていたらしい。

 無限の妖気を得て、同じことをしてみたようだ。

 

 陰陽師と影法師も、消耗を気にせず、それどころか自分の力量を大幅に超える術も乱発し放題とあってか、とうとう保安局強襲課やハウリアと同じようなハイテンションに堕ちてしまっている様子。

 

 エクソシストたちの力の増大は言わずもがな。

 

 もはや復活し得ない〝蛇龍伝承の影〟が次々と討滅されて消えていく。

 

 最後に残った〝龍の影〟は最後のあがきとして浄化されるのも覚悟の上で呪詛を放とうとした。

 

 だが、ここで最後(フィナーレ)の準備に入った。

 ベヨネッタとジャンヌが並び立ち、ある言葉を踊りと共に告げていく。

 

 

 

 

 

「「TELOCVOVIM……」」

 

 

 

 

 

 それは、原初の神を召喚するための呪文。

 

 

 

 

 

「「A GRAM ORS……」」

 

 

 

 

 

 最高難度の召喚であり、最も強大な悪魔。

 宇宙が分かたれた時に、魔界と共に誕生した超存在。

 

 

 

 

 

「「ADNA OVOF……」」

 

 

 

 

 

 魔界の宇宙の理を司るといわれ、魔界の一部が形となって現れたものとされる。

 かつて何人もの魔女が召喚を試みたが、逆に魔界に引きずり込まれ命を落として行った。

 

 

 

 

 

 それを現代の魔女が二人がかりで顕現させる――!

 

 

 

 

 

「「AVAVAGO!!」」

 

 

 

 

 

 瞬間、今までに感じたことのない強大すぎる魔力がその場に吹き荒れる。

 

「なななななな何が起きるんですかぁ!?」

「ベヨネッタさん達なにしてるのぉ!?」

「こんなマジックパワー、ミーでも感じたことないネー!」

 

 困惑が広がっていく。

 なにせ、もう勝ちは確定しているのに、まだ何かしようとしているのだから。

 

「お前達落ち着けよ。これから面白いものが見れるんだぜ?」

「ッ! ロダン殿、それは一体…………!?」

 

 相も変わらずタバコをふかすロダンに疑問をぶつけようとした大晴であったが、その言葉は途中で止められることになる。

 

 何故なら、今まで見たことがないようなバカでかい魔法陣が展開され、そこから巨人が現れてきたのだから。

 

 ベヨネッタの黒い髪とジャンヌの白い髪が絡みついて魔法陣から引っ張り出されるようにして出て来る。

 それの肉体は女性的で、だがしかし、この場の誰よりも凄まじい威圧感を放っていた。

 

「なに、あれ……」

 

 誰かが茫然と呟く。

 それが聞こえたのか、ロダンは答えを言った。

 

「〝クイーン・シバ〟。宇宙が「光」「闇」「混沌」の三つに分かれた時、闇を司る魔界と共に誕生した超存在。魔界に住んでいるってことから悪魔に分類されているが、詳しい事は分かっちゃいない。魔界の宇宙の理を司るとされ、畏怖の念から誰ともなく「女王」の名を冠して呼ぶようになったんだとよ」

 

 そんな解説が続く中、召喚された存在――〝クイーン・シバ〟は拳に口づけをしてから、力を溜めるようにして体を逸らす。

 

「その姿を見たものはおらず、定まった姿を持たないとも、無限の闇が広がる魔界そのものがこの悪魔だとも言われる。かつて何人もの魔女がこの悪魔の召喚を試みたが、逆に魔界へと引きずり込まれ、命を落としたらしいぜ」

「そ、そんな存在を召喚しているんですか……!?」

 

 ロダンの解説に戦慄するクラウディア。

 周りの者達も同じだ。

 

 言うなれば、あの二人は、今まで自分達が戦っていた〝龍〟以上の怪物を呼び出しているのだから。

 それも、〝龍〟に完全な止めを刺すために。

 明らかに過剰攻撃である。

 

「何故、あのような存在を呼び出したのですか……?」

「何故って? そりゃ決まってる」

 

 この戦場で最もロダンと会話をしたであろう大晴が疑問を投げかける。

 それに対しロダンはこう返す。

 

 

 

 

 

「祭りの最後にはデカい花火を上げるのが基本だろう?」

 

 

 

 

 

 次の瞬間、

 

 空間が、否、()()が揺れた。

 

「きゃあ!?」

「うわぁあああああ!?」

「のわぁ!?」

「ふぎゅ!?」

 

 撤退していた者達の間で悲鳴が飛び交い、〝クイーン・シバ〟の一撃の被害に吹き飛ばされぬよう力を入れることに精一杯だった。

 

 そして、最後に残っていた〝龍の影〟に〝クイーン・シバ〟の拳がぶつかったことで、その仮初の魂を彼方へと飛ばす。

 残った肉体――瘴気は魂がなくなったことで霧散していく。

 

 飛んでいく魂、もはや意思も何も戦意すら残っていない残骸ようなものを待ち受けるのは、

 

「おいジャック、『アレ』覚えているか?」

「覚えてるよ。忘れたことなんてない」

 

 デビルハンター親子だ。

 それぞれ自分の銃を構えて魔力を充填していく。

 

「そんじゃ行くぞ?」

「あぁ!」

 

 接近してくる魂に向かって彼等は『決め台詞』を告げながら、引き金を引いた。

 

 

 

 

 

「「Jack pot(大当たりだ)!!」」

 

 

 

 

 

 吐き出された四つの弾丸は、螺旋を描きながら飛んでいき、

 

 

 

 

 

 魂を消し飛ばした。

 

 

 

 

 









このあと色々と説明を要求された。

シバ召喚と、Jack pot!言わせたのはノリです。

ついでに言えば、バージルとネロさんは地元を守っていました。


次回はいよいよエピローグです。




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