ありふれぬ悪魔狩人は世界最強 アフター   作:クラウディ

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今回はスタイリッシュ痴女が登場します。


Mission4 召喚

「I`ll be ba――」

 

 魔法陣の中にジャックの体が消えていく。

 皆が、その事実に固まっている間に、ジャックを飲み込んだ魔法陣は消えていく。

 

 事の始まりは数分前に戻る。

 

 

――――――――――――

 

 

 ジャックとハジメが武器について語った日から数日経ち、学校で授業を受けている時間だった。

 

「ここはですねぇ――」

 

 教壇に立つのは我らが愛子先生。

 小さい体を大きく動かして、黒板に文字を書いていく。

 書かれている言葉は日本語で、外国人のジャックには難しいのかもしれないとハジメたちは思っていた。

 しかし、

 

「そこは、――です」

「正解です! ジャック君!」

 

 そんな心配など、どこ吹く風というようにジャックは淀みなく答えていく。

 今までさんざん驚かされてきた生徒達も、「ああ、やっぱり」と諦めの境地に入っていた。

 あの規格外の息子なら、こんな事平然とできるよな、と。

 

 ジャックが何故日本語を理解できるのかについても本人が直接話してくれたのだが、

 

「俺の体の中には、悪魔が一匹住んでるんだよ。そいつをぶっ殺して吸収したあたりから、なんかわかるようになった」

「……ちなみにいつ頃だ?」

「えっと確か……十三歳の頃!」

 

 ジャックの口から出た言葉にまたもドン引きする生徒達。

 そして、心の中で思う、

 

―― 十三歳の頃から悪魔と戦わせてたとか、あの人はダメ人間に鬼畜まで追加されたいのか!

 

 ダンテが聞いたら笑いながら「なぜなら俺は悪魔(Devil)だからな」と、言うだろう。

 

 まぁ、そんなことがありつつも、いつも通りの学校生活を満喫していたのだ。

 

 

 その時であった。

 

 

 

『邪悪なる竜よ!』

 

「!?」

 

 

 

 突然教室中に女性の声が響き、ジャックが立ち上がる。

 

「ど、どうしたんですかジャック君!?」

 

 どうやら今の声は他の人達にも聞こえたようで、辺りを見回している。

 この学校に来てから大分まともというか、善人な愛子先生が心配してきた。

 いきなりのことに困惑するクラスメイト達をよそに、ジャックは虚空へ話しかける。

 

「ッ! ベヨ姉さん! なんでこのタイミングなんですか!?」

 

 少し困惑したものの、明らかに知っている相手に対するような口調で虚空に語り掛けるジャック。

 

 そんなことをしている間に教室には、膨大な魔力が吹き荒れる。

 

「ッチ!」

 

 真っ先に気付いたハジメがドンナーを抜き、何かが起きた時のために警戒した。

 が、それをジャックに制止される。

 

「せ、先生! すみません! 急用が入りました! 多分十分後ぐらいには戻ります!」

 

 そう言ったジャックの足元には無限に続く闇のような魔法陣が展開されている。

 明らかにヤバそうな魔法陣なのに、警戒心は魔方陣というよりもその向こう側にいるであろう何かに向けられていた。

 そして遂には、魔法陣から黒い髪のようなものが現れ、ジャックの体を絡めとっていく。

 引きずり込もうされている状況の中、ジャックはハジメに笑いかけ、

 

 

「ハジメ! I`ll be ba――」

 

 

 なんか言いかけて、そのまま魔方陣に引きずり込まれていった。

 というか、ター〇ネーターの名台詞を言いかけていた。

 その様を表すなら、溶鉱炉に沈んでいく途中に鎖が切れてしまった、かっこ悪いターミ〇ーターである。

 

「「ジャ、ジャックゥゥウウウ!?」」

 

 ジャックと仲の良かった男子が引きずり込まれた先に手を伸ばす男子。

 中野と斎藤である。

 ジャックとは「どんな女がタイプだ?」という質問から意気投合したのだ。

 

「落ち着けお前等。愛子、ちょっとアーティファクトを使うけどいいよな?」

「え? あ、はい! どうぞ!」

 

 教師の了承を得たハジメは、ジャックが日本に来るまでの道中を映したモニターを使って、ジャックがどこに行ったかを探し当てる。

 数秒後に、真っ黒だったモニターに映像が映る。

 いつの間にか、ハジメの周りには生徒達が集まっていた。

 もちろん隣はユエ達である。

 

 映ったのはどこかの雲海。

 その遠くに見える影がジャックだと分かる。

 そんなジャックは、

 

 

 

『ああああああああああああああ!!??』

 

 絶賛、落下中だった。

 

 

 

「「「「「「「「「「は?」」」」」」」」」」

 

 いきなりのことに間抜けな声を出すハジメ達。

 それもそのはず。

 クラスメイトが謎の魔法陣によって誘拐されたかと思えば、お空に放り出されてフリーフォール中である。

 彼らの頭の中では、

 

―― もしかして、ジャックは天乃河光輝(勇者)と同類なのか?

 

 そんな考えがよぎるが、それはすぐ否定される。

 落下中のジャックに、同じように落下しながら近づいてくる人影があった。

 

『ハァイ! 元気にしてたかしら坊や?』

『ベヨ姉さん!』

 

 声からして女性だろう。

 その影はジャックに追いつくと、友人に会ったかのような挨拶をする。

 ジャックにピントが移っていたからか、よく見えなかった姿が分かってきた。

 

 黒の短髪に、眼鏡を掛け、体のラインが浮き出るような煽情的な衣服を身に纏っている。

 

 ここまでなら、まぁ普通だろう。

 ちょっとばかり刺激が強すぎるが。

 

 だが、このあとが問題だった。

 

 両手に青い拳銃を持ち、足にはヒールに取り付けられるようにして同様の銃が取り付けられている。

 

 そして、後方には化け物を引き連れてきていた。

 

 化け物の見た目は、胴体が顔でそこから蛇のようなものが二本生えている。

 頭上には天使の輪があり、背には純白の翼を持っていた。

 落下している二人を見据えた化け物は、蛇のようなものの口から火球を放って攻撃してくる。

 ジャックは手に召喚した大剣で火球を両断し、女性の方は背中から蝶の羽を生やし回避する。

 

『逃がさぬぞ。アンブラの魔女』

『フォルティトゥード!? なんでいるんだよ!?』

『暇そうに歩いていたから、私が情熱的に誘ったのよ。そしたらこんなにも熱烈に返してくれて』

『ええ! 非常に情熱的ですわ! 暑苦しくて火傷しそうだけどな!』

 

 皮肉を言いながら空中で足場を作り、回避しながら避けれないものを大剣で両断していく。

 女性は焦った様子などなく、優雅に身を逸らし回避していく。

 時折、拳銃で攻撃するが、あの巨体の所為でダメージは期待できそうにない。

 

「何か……大丈夫そうだな……」

 

 クラスメイトの誰かがそう呟く。

 実際、ジャックは突然のことに驚きながらも冷静に対処している。

 悪魔とかいう存在を狩っているのだから、差し詰めあれは〝天使〟だろう。

 

 そう思っている間に状況はまた変わった。

 余裕のできたジャックが女性に向かって叫ぶ。

 

『ベヨ姉さん! 俺を呼んだってことは、〝魔人化〟しろってことですか!』

『あら? ようやく気付いたの? 少しばかり鈍感過ぎないかしら?』

『魔獣召喚とかいう、大魔術を荷物持ちをさせるために使う人の言葉とは思えませんがねぇ!』

 

 なんだか、状況はアレなのにすっごい俗な話が出てきて、警戒心が抜けるハジメ達。

 そろそろ雲海に接触する。

 といったところで、ジャックは天使から姿勢を反転させ、手に持った大剣を振りかぶった。

 

『行くぞ! ファフニール!』

 

 そう叫んだジャックは大剣を勢いよく下に向けてぶん投げた。

 これには目を剥くクラスメイト達。

 いきなり、なんかの呪文を言いながら武器を放り投げたのだ。

 あんな状況の所為でおかしくなったのかと心配するクラスメイト達をよそに、そのまま勢いよく雲海に落ちていくジャック。

 

 

―― その時、不思議なことが起こった。

 

 

 凄まじい勢いで放り投げられた大剣が落ちている途中、急に動きを止めてまるでビデオの逆再生かの如く、ジャックに向かっていく。

 

 そして、

 

 

 ジャックは大剣に胸を貫かれた。

 

 

 クラスメイト達の悲鳴が飛ぶ。

 当たり前だ。

 知人がいきなり死んだのだから。

 

 大剣の勢いに一瞬だけ空中に滞空したジャックだったが、重力に引かれて落ちていき、

 

 そのまま雲海に落ちていった。

 

 ジャックが死んでしまったことに呆然としたハジメ達。

 

 

 

 だが、ジャックは死んだわけではなかった。

 

 

 

 なんと、ジャックの落ちた雲の周辺が紅く光り始め、それに、雷の落ちるような音もし始めた。

 モニター越しに見ているはずなのに、ジャックの魔力が教室にまで感じられる。

 それを見ている全員が困惑し、動きを止めた、

 

 

―― 次の瞬間。

 

 

『ウォォオオオオオオオオオオオ!!』

 

 

 雲を突き破って巨人が現れた。

 現れた巨人はまっすぐに天使へと向かい、握り締めた拳を顔のような部位へ、

 

 

『オラァッ!!』

『グォオオ!?』

 

 

 叩きつけた。

 

 グシャッと何かが潰れる音が周囲に響き渡る。

 もちろんあの天使の顔面が潰れた音で間違いない。

 その証拠に、天使の顔面はひび割れ、鮮血が噴き出していた。

 

『ウォオオオオ!!』

『は、放せ!』

 

 巨人は殴り飛ばした天使を掴み、そのまま下に向かって急降下していく。

 巨人の拘束から逃れようと、火球を放とうとした蛇の頭を、巨人に引きちぎられまたも辺りに鮮血を撒き散らす。

 

 その光景には、異世界で凄惨な光景を見てきたクラスメイト達でさえも少しばかり吐き気を覚えてしまうような光景がモニターに映し出されていた。

 

「もしかしなくても……あれって、ジャックだよな……?」

 

 誰かが口を開いたが、誰一人として同意しない。

 いや、心の中では同意しているだろうが、口に出せないといったところだろう。

 だが、分かる。

 

 あれはジャックだと。

 

 そして、全員が一斉に思った。

 

―― やっぱり、ジャックもおかしかった!!

 

 ジャックが聞けば何とも言えないような顔をするだろう。

 実際、ジャックの周りにいる比較的まともなのは数人ぐらいしかいない。

 従兄にその恋人、モリソンに魔具を預かってもらっている〝エンツォ〟ぐらいだ。

 

 そんなことを思っている間にも事態は進んでいく。

 

 雲海を抜けた先には宙に浮く小島があった。

 

 そこに、ジャックは天使を掴んだまま叩きつける。

 あまりの衝撃に島全体にひびが入った。

 

 天使を叩きつけたジャックはその場から飛び退き、その腕に先ほど胸に突き刺した大剣〝魔剣ファフニール〟を召喚させる。

 巨人になったジャックの頭身に合わせたその大剣は、家程度なら両断できそうだ。

 

 そして巨人になったジャックの姿も確認できる。

 身長はおよそ十数メートル。

 竜の頭に、赤く輝く眼光。

 筋肉により盛り上がった上半身。

 鉤爪を持つ両の手に、大地をしっかりとつかむ足。

 赤黒い体は甲殻と鱗が混ざり合ったような見た目をしている。

 そして何より目を引くのが、その大きな一対の翼。

 悪魔といえば蝙蝠の羽を想像しそうだが、ジャックの翼はまさしく竜の翼であった。

 

『シィィイイッ……!!』

 

 短く息を吐き、大剣を構えるジャックは跳ねるようにして飛び出した。

 衝撃波を撒き散らしながら突進するジャックに、埋もれていた天使は反応することすらできずに両断される。

 

 両断された天使は断面から光を迸らせ、爆散する。

 鮮血が周りに飛び散り、小さい島を真っ赤に染め上げる。

 返り血を全身に浴びながらジャックは体を収縮していき、やがてクラスメイト達がよく見るジャックの姿に戻った。

 一息ついて、周りを見回したジャックはR-18Gな光景になっているのを見て苦笑いする。

 少しやり過ぎてしまったようだ。

 そんなジャックの近くに、先ほどの女性が降り立つ。

 

『ふぅ……ベヨ姉さん、これでいいんですかね?』

『あら? 誰がそれだけといったかしら?』

『は?』

 

 女性の口から発せられたことに理解できないといった様子で呆けるジャック。

 空を見上げるとそこには、

 

 

 多種多様な天使が空を飛んでいた。

 

 

 目に映った現実に顔を蒼褪めるジャック。

 クラスメイト達もその姿を見て、帰ってきたら慰めてあげようと思ったのである。

 あくまで助けるつもりはないようだ。

 

「……愛子、授業を再開しよう」

「あ、はい……そうですね」

 

 モニターを閉じたハジメが授業を再開させることを提案し、愛子先生もそれに肯定する。

 仕方ないね! だってまだ学生だし!

 

 結局ジャックが帰ってきたのはお昼休憩の時間だった。

 

 

――――――――――――

 

 

「いててててて……」

「大丈夫かよジャック?」

「この状態を見て大丈夫と……?」

 

 お昼休憩の時間、制服を真っ赤に染めたジャックが降ってきて(服は再生魔法で戻した)、事情を説明する前にまず飯だといったジャックの言葉に賛成したハジメ達の気遣いでジャックは痛む体を酷使しながら昼食を食べた。

 その後、仲のいい中野と斎藤が話しかけてきたのである。

 

「で、あの姿って何なんだ?」

「あの姿って……あぁ、ハジメの魔道具で見てたのか……」

「そうそう…んでなんかあのセクシーな美女と知り合いだって言うことと、ついでに天使みたいな奴と戦ってたこともな」

 

 一部の女子からゴミを見るような目で中野と斎藤を見ていた。

 二人の言葉に最初はめんどくさそうにしていたジャックだったが、「減るもんじゃねぇし、いいか」と呟いて話始める。

 

「あれは〝魔人化〟。内に秘めた悪魔の力を解き放つ技だ。っつっても、俺と親父じゃなんでなれるかの大本が違うんだけどな」

「へぇ~……じゃあ、大本が違うってどういうことだ?」

「……俺の親父は、そもそもスパーダの血が濃いから魔剣があれば魔人化できる。でも俺は親父と血がつながってないから、元々人間だった俺に親父が輸血して、他にも魔道具を使って俺を悪魔にした」

 

 一区切りして、水筒の水を飲んだジャックは話を続ける。

 

「んで、そんな血の薄い俺が魔人化なんてできるわけがなかったのにできているのは、上級悪魔を直接取り込んで、体に悪魔を宿らせてるんだよ」

「……悪魔なんて取り込んで大丈夫なのかよ……」

「んにゃ、大丈夫じゃなかった。最初はデカすぎる魔力に一か月間苦しんだ。ようやく慣れたと思ったら、魔人化すらできなかった時は腹が立った」

「お、おう……そんなキレるもんか?」

「当たり前だ。死にかけてまで倒したっていうのに当の悪魔は力を貸さない。むしろデカすぎる魔力の所為で調子が悪くなる。しばらく働けなくて家計簿が赤く染まっていくのを見た時はぶち切れそうだった」

「……なんかすまねぇな、ジャック……」

 

 ジャックの不幸話を聞いた二人はなんだか非常に申し訳ない気持ちになった。

 

「で、力を貸さなかったことに腹が立った俺は、自分に大剣をぶっ刺したんだよ」

「うわぁ……」

「腹立ったって理由で普通刺すか?」

「うるさい。結果オーライだったからいいだろ。腹に刺した後は気合で吸収し、魔人化が出来るようになったんだ」

 

 中野と斎藤だけではなく周りにいた生徒達も、ある生徒を見る。

 南雲ハジメである。

 やはり、類は友を呼ぶのか、魔王の友達はイかれていた。

 少し眠そうにしているジャックは、今、説明しなければ後でいろいろと追及されそうなので言っておこうと目を擦りながら話を再開する。

 

「あの人……〝ベヨネッタ〟さんは、この世界に古くから続く〝アンブラの魔女〟っていう一族の末裔だよ。んで、俺と契約関係を持っている」

「何!? あんな美人なお姉さんと契約してるだと!?」

「くっ! ジャック、お前とは分かり合えないのか……!」

「そんな事ねぇぞ? あの人が俺を呼びだすときは大抵、面倒な天使と戦わせたり、ショッピングの荷物持ちをさせるだけでほぼパシリだぞ?」

「「…………」」

 

 ジャックを仇を見るかのような視線を向けていたが、パシリ発言で黙り込む。

 

「あと、あの人の年齢って五百歳を超えてたとかなんとか。……まぁ、関係ないか」

「いや、なんか重要なことを聞いた気がするんだけど!?」

「五百歳越えとか……ティオさんと同い年の可能性が……!」

 

 中野と斎藤がびっくりしているが、周りの生徒も驚いていた。

 

「最後に、天使のことだが……簡単に言うと、勝手に救済させようとしてくる傍迷惑な連中だ……スマン寝る」

「おぉい!? いきなり寝るなよ! その先を聞かせろよ!」

 

 突然、突っ伏して寝始めたジャックを揺り起こす。

 顔をしかめながらもジャックは目を開けて――開けきることが出来ずにジト目になった状態で口を開く。

 

「そのまんまの意味……私達の楽園の方が……人間達も幸せだろうと……生きてる人間を殺してまで……天界に……連れ去ろうと……するのが……天使なんだ、よ」

「だ、大丈夫か? すっげぇグワングワンしてるけど?」

「……魔人化を……使うと……すっごい……疲れる……だから……お休み……ZZZZZZ」

「ホントに寝ちまったよ……」

 

 机に勢い良く頭を振り下ろして、寝息を立て始めてしまったジャック。

 

 この後は授業だが、色々なことで苦労しているジャックを見たクラスメイト達は、ジャックを保健室へと運んだのであった。




ジャック君の魔人化は、ダンテのようにポンポン使えるものではありません。

反動として猛烈な疲労感がのしかかってくるので、周りに仲間がいないときには使いません。

一応、ダンテ達と同じ大きさになる魔人化を使うときもありますが、今回は巨大な敵だったので、全力の魔人化……言うなれば〝竜魔人化〟という状態になりました。
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