ありふれぬ悪魔狩人は世界最強 アフター   作:クラウディ

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修学旅行編最終回。


Mission8 修学旅行 4

 とある二人の生徒が漢女になりかけて、新人バスガイドさんが気絶して、ジャックの取り出した天使の使う武器をハジメに放り投げられた次の日。

 今日は自由行動の日であり、それぞれ思い思いの場所へ向かっていた。

 

 そんな中……

 

「ぬぉぉおおおおお!?」

――ほらほら、こんなものですか?スパーダの血族は!

 

 ジャックは町の外れにある山で巨大な狐と戦っていた。

 しかもただの狐ではなく、全長が尻尾を含めて十数メートルという巨大さで、尾は九本もある。

 ちゅ……博識な人ならこの化物を〝九尾の狐〟〝玉藻の前〟だと呼ぶだろう。

 

 事の始まりは約三十分前にさかのぼる。

 

 

――――――――――――

 

 

「さぁて、どこに向かうんだ?」

「俺としては行ってみたい場所が多すぎて目が回りそうなんだけどな」

 

 ジャックは同じ班である中野と斎藤、それに健太郎の四人で京都の街を回っている。

 異国情緒あふれる街並みに、ジャックは目を輝かせていた。

 それもそのはず。

 今までジャックはレッドグレイブや日本以外の悪魔関係の仕事で行った場所しか見たことがなかったので、そうして仕事で行った先からはすぐさま帰っていたから、このようにゆっくりと観光することはなかったのである。

 仕事先は様々な宗教関連の場所だったりするので、場所によって建築物やその土地特有の名産などが違い、不満はほとんどなかったのだ。

 悪魔に言いがかりをつけられて、殺しにかかられるのを除けばだが……。

 

「それにしても……はぁ~……悪魔のいない旅行なんて久しぶりだぜ」

「そんなにか?」

「おうよ。そもそもうちは借金まみれだし、旅行に行くとしたら前金ありの仕事で手に入れた金で現地に向かったり、一番いいのは費用を全額負担してくれるっていう仕事ぐらいでしか旅行に行けない。更に、そういった仕事は大抵きな臭いヤツばっかだし、上級悪魔と戦わされることなんてのもあるからな」

 

 ジャックの言うことにドン引きする班員達。

 海外に何度も行ったことがあるからと、必ず幸せというわけではないという現実に、被害者であるジャックの肩を叩いた。

 暗くなった空気を晴らそうと、しばらくいろんなところを回った。

 今まで見ることのなかった景色を見て回り、美味い食べ物を両手に持ち、今回の修学旅行で一番楽しんでるんじゃないかと思うほど、満喫しているジャック。

 まさしく至福のひと時といった様子のジャックを苦笑いしながら先導する班員達。

 

 

 しかし、世界はそんなひと時ですら許してくれないようだ。

 

 

――聞こえますか?

「!?」

 

 

 突然、ジャックの頭の中に声が響いた。

 空耳にしては、いやにはっきり聞こえたその声には、慣れ親しんだ悪魔達のような気配を含んでいる。

 歩みを止めたジャックを不思議そうに見る班員達。

 

「ん? どうしたジャック?」

「……わりぃ、なんか呼ばれたわ。先に行っててくれ! すぐ追いつく!」

「お、おい!」

 

 班員達に背を向けて走り出すジャックは声のする方向に向かって駆けだす。

 時季外れとはいえ、普通に観光客もいる街中を凄まじい速度で駆けていき、建物の上に飛び乗り最短距離を駆けていく。

 だが、誰もそのことに気付いたものはおらず、ジャックが駆け抜けた場所に風が吹くだけであった。

 

 実は先程、〝プルガトリオ〟と呼ばれる空間に入っていたのだ。

 この空間……というより世界は、この世界にある三つの世界、その狭間にある場所で、天使たちはこの空間を利用して人間界に下りてくる。

 プルガトリオでは、生物が干渉することはできないという特徴があり、ジャックはその特徴を利用することでだれにもバレずに移動できているのだ。

 

 しばらくして、電波塔に上ったジャックは辺りを見回して声を探る。

 

(声の発生元は……あっちか!)

 

 頭に響く声が一際強く感じた場所を探し当てると、ジャックは電波塔から飛び降り、空中で魔人化してその方向まで飛んでいく。

 

 近づいていくにつれて感じる魔力も大きくなってきた。

 久しぶりの大物に、思わず口角が吊り上がってしまう。

 

 やがてたどり着いたのは、町からかなり離れた山の中。

 そこだけ木が生えておらず、ぽっかりと穴が開いていた。

 

 上級悪魔に匹敵する魔力が辺りに満ちているが、それとは別に神秘的な空気も漂っている。

 

 

 その原因と思われる存在が、空間の中央に佇んでいた。

 

 

 十数メートルはある全長。

 純白のような金色のような色をした全身を覆う体毛は風になびいており、その金色に輝く瞳は細く開かれていた。

 そして、ひときわ目を引く大木のように太い九つの尾。

 

 ハジメ辺りが見れば「キャ〇狐だ!」といいそうな見た目の化け物がジャックを見据えていた。

 

「……で、あんたが俺を呼んだのか?」

――ええ、そうです。私があなたを呼びました。スパーダの血族よ。

 

 ジャックはその手に魔剣ファフニールを召喚しつつ、化け狐を警戒する。

 そんなジャックとは対照的に化け狐の方は、友人に会ったかのような声色で語りかけてくる。

 ジャックの警戒心が跳ね上がった。

 上級悪魔レベルの魔力を持ちながら、明らかな意思と言葉を利用することが可能な思考を持つ存在。

 警戒しないわけがない。

 そんなジャックの様子を察したのか、言葉を続ける化け狐。

 

――そんなに警戒しなくとも、私はあなたを殺そうとしているわけではありませんよ。

「……どうだか……少なくとも、あんたを無害だと判断するには情報が足りなすぎるんだよ」

――そうでしたね。では、自己紹介から始めましょう。私の名は〝玉藻の前〟、気軽に玉藻と呼んでくれてもかまいません。

「玉藻ねぇ……随分とかわいらしい名前じゃないか。そんな図体と合ってないってことに目を瞑ればな」

――ありがとうございます。

「……ッチ!」

 

 皮肉ったのに全く堪えてない様子の玉藻を前にして、隠そうともせずに舌打ちを打つジャック。

 ジャックは契約している魔女の都合上、様々な悪魔を見てきた。

 その中には、ちゃんとした意志を持っていて無理やり契約されたわけじゃなく、自ら喜んで魔女と契約している悪魔も存在している。

 そういう奴らとはジャック自身、仲が良く、共闘することだってあるのだ。

 そして目の前にいる玉藻もそういう奴らの一人だとジャックは認識してしまったのである。

 

 先程の挑発に乗って、襲い掛かってきたのならば〝悪魔〟として処理しきれたのに、今の理知的なやり取りだけで玉藻のことを〝人〟だと思いかけてしまう。

 

 ジャックは情に流されやすい人間なのだ。

 それでもやる時はやるが。

 

――私があなたを呼んだのはあなたと契約を成したいからです。

「……へぇ……その理由は?」

 

 流されかけた心を押し戻し、玉藻の言葉に耳を傾けるジャック。

 

――理由としては……スパーダとの契約ですかね。力のあるスパーダの血族には力を貸せ、スパーダからそう言われていたので。

「……そんな、理由でか……それじゃあ無理だな」

 

 ジャックは玉藻の誘いを断ってしまう。

 ジャックとしては、そんなことで仲間になられるより、自らなってもらった方がジャック自身助かるからだ。

 そんなジャックを見て玉藻は溜息を吐くと、再度口を開いた。

 

――……そう言うと思っていましたよ。ならば本当の理由を言えばいいのですね……

「本当の理由……?」

 

 そう言った玉藻は細められていた目を開き、真剣な顔で告げる。

 

 

 

 

 

――ぶっちゃけ、私も、今の女の子みたいにおしゃれとかしてみた~い!

「は?」

 

 

 

 

 

 なんか予想していたものと斜め九十度違う答えに間抜けな声を出すジャック。

 真剣な顔からは想像もつかないような口調と願望に呆けてしまうのは仕方ないことだ。

 

 

 というのが今から数分前にあったことなのである。

 

 

 現在は、

 

 

――ほらほら! 燃えてしまいますよ!

「だぁぁああ! なんで鬼ごっこをしなくちゃならないんだぁ!」

 

 

 二人仲良く遊んでいた。

 遊んでいるように見えるのはガワだけで、実際は即死級の火球が雨霰とカッ飛んできているのだが……。

 

 遊んでいる理由としては、玉藻の運動不足の解消とジャックの実力を見て、どの程度なら力を貸せるのかを計っているという大分真っ当な理由なのだ。

 一つ目の理由は、ここ最近まで封印されていた玉藻から申し出てジャックが了承したもの。(まさかこんなものだとは思っていなかった)

 二つ目も玉藻から申し出て、これまたジャックが了承したのだ。

 はっきり言って、安全を確認しなかったジャックのせいである。

 

 それからさらに数分後。

 

――ふぅ……すっきりしました!

「ゼェ…ハァ…ゲホッゴホッ! そうですかい……で、契約するんだろ? とっととしようぜ」

――えぇ、早速しましょうご主人様!

「ごしゅ……まぁいいか」

 

 そうして二人は契約し、玉藻はその体を変化させていく。

 家のような大きさだった体は、光と共に収縮していき、やがて手で持つことが出来る大きさの結晶になる。

 これが悪魔の魂そのものであり、その力の結晶だ。

 

 ジャックがその結晶に手を伸ばすと、吸い寄せられるにして手に収まる。

 もう一度結晶が光り輝き、今度は魔具へと変化した。

 

 玉藻の毛並みのような色合いの狐面。

 ジャックが被るのにちょうどいい大きさだった。

 

――ここに契約はなります。我が魂はいついかなる時であろうともあなた様のお傍を離れません。どうぞ末永く宜しくお願いしますね、ご主人様?

「……分かったよ、これからよろしくな?〝玉藻〟」

 

 そうしてジャックは玉藻が変化した狐面〝呪面 玉藻の前〟を体に取り込む。

 これで用事は終わった。

 そう思ったジャックはその場から離れようとした。

 

 が、

 

「……ジャック……今のは何だ?」

 

 なんかハジメがいた。

 その後ろにはハジメの嫁~ズ(+新人バスガイドさん)もいる。

 その反応からして見られていたのだろう。

 近くには一般人がおり、全員が虚ろな目をしていた。

 どうやら、鬼ごっこに熱中するあまり人のいるところまで来ていたのだろう。

 

 

 このあと、滅茶苦茶説明&説教した。

 

 

「あふんっ……」

 

 

 ついでに、バスガイドさんも気絶した。

 

 

――――――――――――

 

 

 そんなこんなで、時に楽しみ、時に発狂し、時に現実逃避し、時に騒動を全力で隠蔽しながら修学旅行の予定を消化していったハジメ達は、現在、帰りのバスで静かに思い出を反芻していた。

 

 幾人かの生徒はぐてぇ~と体を弛緩させて浅い眠りに入っている。

 愛子先生は完全に夢の世界に旅立っていた。

 口元をむにゃむにゃしながら、涎を垂れ流して爆睡している。

 心労を重ねていたのだろう。

 

「それにしても、あの人、いったいなんだったんですかね?」

 

 最後部の席の窓側で、シアが話題を振った。

 

「ああ、あの宇治橋で話しかけてきた女か」

「……すごく美人だったけど、ちょっと香織に似てたかも」

 

 自由行動の際、宇治橋を通ったハジメ達。

 仲睦まじい様子のハジメ達に、いつの間にそこにいたのか、見知らぬ美女が暗い眼差しを向け、「妬ましい……」と呟きながら近づいてくるということがあった。

 

 十人中十人が振り返るだろう美貌の女だったので、香織は、ユエの発言にちょっと照れたようにはにかむ――

 

「……いかにも病んでる感じが」

「病んでないよ! 健全だよ!」

 

 ハジメを挟んで両サイドに座るユエと香織が、ハジメ越しに手四つ状態で組み合う。

 

「それより、ハジメ。本当にあの人を知らないの? 向こうは知ってる様子だったけど」

 

 雫が物理で友情を育むユエと香織を放置してハジメに尋ねた。

 

 その言葉通り、剣呑な様子で近づいてきたその美女は、手が触れそうなほど近づいた際、何かに気が付いたように目を見開いてハジメを凝視し始めたのだ。

 そして、困惑するハジメ達をそのままに、美女は何か納得したように頷くと「こんなところで会うとは……」と呟やいたのである。

 

「いや、まったく覚えがないな。ただ、あれの最後の言葉からするとなぁ」

 

――あの子の手前、見逃そう

 

 あの子……ハジメに関係する〝あの子〟である。

 

「実は、結構前にミュウ用に劣化版クリスタルキーを作ってやったんだ。何かあっても直ぐに帰ってこられるようにな。それで、いつだったかミュウの奴、京都特集の番組を見た翌日に、『そうだ! 京都に行こうなの!』って言って、一人で散策に行ったことがあってな」

「……そ、そう。っていうか、一人で行かせたの?」

「正確には、そういう置き手紙だけを残して、勝手に行っちまったんだが」

「なんてフットワークの軽い」

 

 雫が乾いた笑いを浮かべる。

 と、同時に、ハジメの言わんとするところを察した。

 

 つまり、その時、また変な奴を引き寄せたうえ、友好関係をあっさり結んできたのだろう、と。

 

「気になるのは、だ。あの女、人間だったのかっていう点だ」

「や、やめてよ。ちょっと鳥肌立ったじゃない」

 

 雫だけでなく、組み手していた香織や、シアまでぶるりっと体を震わせる。

 

「だってお前、不穏な空気を纏う奴を、あの距離に近づくまで察知できなかったんだぞ? この俺が」

「そ、そういえば、私も分からなかったですぅ!」

 

 ぞぞぞっと雫と香織が背筋を震わせる。

 ユエだけ、特にどうとも思っていないようだったが。

 

「まぁ、仮にミュウの〝おともだち〟だったとしても、それを理由に身を引いたんだから、そこまで問題にする必要はないと思うけどな」

 

 そう締め括ったハジメだったが、内心では頭を抱えている。

 子供に「そんなもの拾ってきちゃいけません! 元の場所に戻してきなさい!」というセリフは、割とありがちなセリフであるが、ミュウの場合、本当に〝そんなもの〟である。

 未だに正体が掴めない〝何か〟ばかりなのだ。

 

 パパとして、娘の奇怪な友人関係にどこまで介入すべきか。

 どうやって介入すべきか。

 ものすごく頭の痛い問題だった。

 

 そんなハジメの内心を察してか、ユエが慰めるようにハジメの頭を撫で始める。

 

 まったりし出した車内の空気。

 

 そのまま穏やかに時間は流れ、もう一時間もすれば到着するという頃、不意に健太郎が叫んだ。

 

「せ、先生! 愛ちゃん先生ぇ! 浩介がいません!」

「なんですってぇ!?」

 

 爆睡していた愛子が飛び起きた。

 

 このタイミングで、またか!? と車内が騒然となる。

 

「あ、あの畑山先生? 生徒さんが一人いない感じですか?」

 

 うつらうつらとしていた新人バスガイドさんも、焦ったように尋ねる。

 愛子は新人バスガイドさんに「確認します!」と一言伝えると声を張り上げた。

 

「みなさ~~ん! 周りをよ~く見渡して! もしかしたら、隙間とかに遠藤くんいませんか!? あるいは、隣にいるけど気付いてないとか! 屋根の上に掴まってたり、車体の下に張り付いていたりしませんか!?」

 

――新人バスガイドさんのSAN値 49

 

 生徒達があちこち見渡す。

 「アビィの奴またかよ」とか「っていうか、修学旅行中、あいついたっけ?」「あれ、そういえば遠藤君のこと見かけなかったような……」「卿は流石だな」というざわめきが聞こえてくる。

 

 結論、

 

「愛ちゃん先生! 浩介はいません!」

「えぇ!? どうしよう! そういえば、点呼したとき、遠藤君の名前を呼んだ記憶がない! うぅ、先生の責任です……」

 

 点呼さえ忘れられた卿。

 責任を感じて青くなった愛子が、テンパったまま、衝動的に引き返してほしいと運転手さんに言いかける。

 

 その寸前、ハジメが声を上げた。

 

「取り敢えず、電話でどこにいんのか聞いてみよう。必要なら俺が連れ戻すから」

「ハジメくん……面倒をかけます」

 

 涙目で、救世主を見るような目を向ける愛子。

 それに手をひらひらと振って「気にすんな。深淵卿相手じゃ忘れるのも仕方ない」と伝える。

 

 ハジメがコールした。

 一拍して、浩介が電話に出たようだ。

 

「おい、遠藤。お前、今どこにいる――え? なんだって? なんかすげぇ騒音でよく聞こえない。は? 何を言って………………」

 

 しばらくの沈黙の後、ハジメはおもむろにスマホをスピーカーモードに切り替えた。

 

 途端、電話の向こうから爆音が響いてきた。

 

『だからっ、今、正体不明の連中と交戦中なんだ! くそっ、なんなんだよ、こいつら!』

「「「「「……」」」」」

 

 ハジメだけでなく、クラスメイト達が一斉に「うわぁ」という表情になった。

 

 直後、何やら幼さを感じさせる女の子の声が響いてくる。

 

『遠藤様! わたくしのことはいいのです! 彼等の目的は、わたくしです! どうかお逃げください!』

『こんな状況で、はい分かりましたなんて言えないだろ! って、なんだ? お札? そんなもの取り出してどうする気――嘘だろ!? 陰陽師かっ、陰陽師なんですか!? 前に映画で見たよ、こんな光景! どわっ危ねぇ! てめぇ、ファンタジーなんて卑怯だぞ!』

 

 どの口で言うのだろう、というツッコミを、ハジメ達は心の中で入れた。

 

『くそっ、更に増援か!』

『遠藤様、わたくしはもう……』

『いいから黙ってろ! びっくりしたけど、この程度なら問題ない――ククッ、事情は分からんが、よってたかって子供を襲うその性根、実に気に入らん。貴様等には、少々教育が必要なようだな』

『遠藤さま?』

『ふっ。遠藤ではない。俺のことはこう呼べ。コウスケ・E・アビ――』

 

 そこでブツッと通話が切れた。ハジメが切ったのだ。

 

 シンッとした車内の中、ハジメは丁寧にスマホを懐にしまうと何事もなかったかのように言った。

 

「先生。問題なしだ」

「そうみたいですね。はぁ、よかったぁ」

 

 愛子先生は、そのままちょこんと座り直した。

 生徒達もやはり、何事もなかったように座り直した。

 

 

 だがしかし、トラブルは連続して発生するものだ。

 

 

『邪悪なる竜よ!』

「え!? まさかのタイミングですかベヨ姉さん!?」

 

 

 今度はジャックが頭上に出来た魔法陣から出てきた黒い髪によって誘拐される。

 

「ちょま、はや――」

 

 クラスメイト達が以前目撃した時よりも、速く持ってかれた。

 随分と急いでいたのだろう。

 その事態に生徒達は、「まぁ、ジャックだから大丈夫だろう」と特に気にしていなかった。

 

 穏やかな空気を取り戻す車内には、ただ一人、

 

「……うぼぁ」

 

 聞いてしまった電話向こうの何かと、生徒が何かに誘拐される光景。

 それを常識のように受け止める奇妙な雰囲気に精神的ダメージを負う新人バスガイドさんの、奇怪な呻き声が残るのだった。




次回からは、SecretMission レッドグレイブ市を観光する回になるので、更新が遅れるかもしれません。
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