最も不器用な三冠ウマ娘   作:Patch

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私が至らない高みへ

 ミスターシービー猛追。次走天皇賞・春で雪辱へ。

 

 「Web版月刊トゥインクル」の号外記事にはそんな見出しが踊っていた。ビビットな黄色と緑で書かれたその文字は言葉通りに踊るかのような鮮やかさで私の目に刺さる。

 記事の内容はミスターシービーがサンケイ大阪杯(GⅡ)に出走したこと、そして後方からの猛追の末にハナ差2着に敗れたことが記されていた。

 私は同日に中山で開催されていた日経賞(GⅡ)に出走していたためにレースを見ることはできなかったが、彼女の復調を見せたことには大きな喜びを感じた。

 

 私とシービーは天皇賞・春で3度目の直接対決となる。これまでの成績は私が勝ち越しており、雪辱というのは私のことを指すのだろう。

 記事の中では私が日経賞に勝利したことと、海外遠征の計画を発表したことと奇妙な噂話がわずかながら触れられていた。

 

 私が海外遠征の計画を発表した後、ミスターシービーも海外遠征するのではないかと噂されていた。

 しかしそれは彼女と私のライバル関係と彼女の人気から生じた単なる噂話である。

 

 私が有馬記念でミスターシービーを下して勝利してもなお、彼女の人気は衰えることを知らない。

 片や私は、三冠を無敗で制覇したときにはシービーの三冠に水を差した者として扱われ、勝利を積み重ねてもなお、退屈であると言われた。

 しかしながら、もちろん私のことを応援する者も多い。ダービー制覇時には幼いウマ娘が記者会見に紛れ込むといった微笑ましいアクシデントも起きた。

 トウカイテイオーと名乗った少女は『私のような強くてカッコいいウマ娘になります』と断言していた。私はひとりのウマ娘に夢を与えられたのだと、嬉しく思った日が少しだけ懐かしい。

 

 

 

 私とミスターシービー。どちらが強いのか。どちらが勝つのか。そんな単純な次元は既に超えてしまっていた。

 三冠ウマ娘となった私達は多くの人々に夢を与える存在なのだと、今なら理解できる。

 そして私は、その点でミスターシービーに未だ勝てていない。

 

 マイラーやスプリンターと評されたウマ娘が、3000mの長距離レースでセオリーを逸した走りを見せ、並いるステイヤーを撫で切りにするなど誰が予想できただろうか。

 阿鼻叫喚の悲鳴と怒号の中、ミスターシービーは3バ身もの差をつけて1位入線を果たした。

 私は彼女の走りに魅せられた。あの時の興奮は忘れることができない。その時の私はただ夢見る少女、叫び出したいほどの熱狂を抑えることに精一杯だった。それこそ、かのトウカイテイオーのように。

 そして、必ず彼女を倒さねばならないと決意した。

 

 

 天皇賞・春は3200mの長距離レースとなる。

 菊花賞こそ勝利したが、シービーにとって不利であることには変わりない。

 

 それでも、ミスターシービーならば。

 

 そう夢を見させる彼女は紛うことなき三冠ウマ娘であり、そして私も三冠ウマ娘であった。

 

 

 

 

 

 

 

 




会長強すぎて扱いに困ってる
会長下げしたいわけじゃないんだけどね
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