天皇賞・春は向正面からの発走となる。
私は菊花賞でここから仕掛けて勝利した。視野は狭窄し、息も絶え絶えの中、見つけた小さな赤い炎が私を導いた。
呼吸をするようにゆっくりと明滅するそれは、彼が吸っていたタバコの火にそっくりだった。私に『来い』と言っているようで、私はそれを信じて駆けた。
もちろんそれは彼ではない。ウマ娘以外がレース中にターフの上に立てるわけがない。疲弊した私が見た幻覚であり、そのときの私はそんなこともわからないまでに意識が朦朧としていた。
彼は導いてなどいない。ならば、私は彼が居なくとも勝てる。私はそう自分に言い聞かせて、ゲートに入った。
心細さにチクチクと胸が痛み始める。脚はまだ震えたままで私を嘲笑うかのようにして裾が揺れている。
レースとは、こんなにも恐ろしいものだっただろうか。ただ、その恐怖心があるだけ、私はまともだ。
まだ敗北に慣れてはいない。悔しさがあれば、何度だって立ち上がれる。この脚がダメになるまで、私は彼を追い続けよう。
私は『天馬』ではない。翼はすでに失った。それでも私にはこの脚がある。この2本の脚で大地を蹴って進むのだ。
ゲートが開放されるまでの時間は、バラードのようにゆっくりと進む。この合間に、ウマ娘は何を夢見るのだろうか。
ウイニングライブでセンターとなることか、それともスターとなり、何本ものマイクを向けられることか。
私は彼の姿を夢見ていた。彼の前で、もう一度勝利することだけを。
こんな私を夢想家だと笑う人も居るかもしれない。ウマ娘の全盛期はとても短く、GⅠ戦線で戦える者など、その中でもひと握りしか居ない。
この勝利を逃せば、もう一度彼の前で走ることなどできない。そして、相手立つのは歴戦のステイヤー達。
勝利が難しいことは分かっている。だが夢想家は私だけではない。夢や希望を捨ててしまっては、現実を変えることは叶わない。
もう一度だけでいい。もう一度だけ私に夢を与えて欲しい。夢見る力を与えて欲しい。
ここへおいでよと、ひとこと言ってくれるだけでいい。私は脇目も振らずにまっすぐ駆けていこう。
思えば、トゥインクルシリーズは長い旅のようだった。風に帆を張り、船を滑らせていく。灯台の灯のように彼が道を照らしてくれていた。
どんなに荒れても、最後には彼の元に戻って来れた。その安らぎがあるから、私は何度でも舟を進めることができた。
ずいぶんと遠くまで来てしまったなと、少しだけ自嘲する。私はひとりで遠洋に出てしまったようだ。
灯台はすでに地平線の彼方消え去って、見ることは叶わない。それでも私は舟を漕ぐのだ。波間に見えるあの光を目指して。
バラードが終わり、私は夢から覚める。
楽しげなあの頃の幻はもうどこにもありはしない。喧騒と荒波だけが私に襲いかかる。
加熱する先行争い。私は集団から弾き出され、後方への位置どりを余儀なくされる。
それでも、それでも、私は進もう。
彼が私を待っているから。
ステップを踏むように、私は地面を蹴る。
彼が歌っていたあの歌を頭に思い浮かべながら。
初めてTwitterで読了報告を見た
うれしいね
追記
今日はダービーめでたいな
以下読まなくて良い愚痴
読者にひとこともの申す!
感想消すのやめてくれ!
消しても新規感想の通知はこっちに来るんだから!
もしそれが褒め言葉だったらと思うと読みたくてしょうがないだろ!!
一件割と辛辣な返事返してるのあるけど、あれはわりと複雑な事情があったヤツだから!!
作品を面白くするエッセンスになるかどうかを吟味して、悩み抜いた末に削いだ部分を揶揄されるような投稿されてブチ切れただけだから!
(アレに関しては有ったとして面白くなりますかね?そこから話広がりますか?舞台設定はもう前半でやりましたよね?そういう方向に広げてどう着地するんですか?という脳内会議を何度も行いました。結果として読者の想像に任せるという結論に至ったわけです)
解釈はどれだけあっても良いのよ
有るとも無いとも書いてない部分は自分で想像してもらえばいいスタンスなので。
お前の文章力が無いだけだろと言われたらぐうの音も出ない。
ただそう言う部分を「これが無いのはおかしい」とか言ったり、見当違いな想像をさも真実のように話されるのだけはやめてほしいだけで。
んで、読んでて『いやここちょっとな……』って思ったら、筆を執ろう。自分で考えて、自分が思った通りにすればいい!それが創作の第一歩だ!
正直なところウマ娘は大好きだが、『いやここちょっとな……」と思う部分がちょこちょこあった!(だからアンチ・ヘイトタグつけてる)
だから筆を執った!
お前も物書きになるんだよ!!