ミスター
『ヴェルスカーラ!!相手立つのはアングスティ!!ふたりの追い比べです!シェイプオブユーは3番手!!アルターピースは未だ後方!!』
クラブハウスに置かれたモニターからは歓声と熱狂が波のように押しかけてくる。
『ヴェルスカーラか!?ヴェルスカーラか!?ヴェルスカーラだ!!』
『いや!!シェイプオブユー伸びる!!3名並んだ!!並んだ!!並んでゴールイン!!』
『グループⅠ*11000ギニーの大舞台でこれ以上無い大接戦が──』
実況が話し終わる前に映像が止まる。この後に続く結果は既に知っていた。
「シーツ、次はオークスステークスを頼む。」
傍らに居たシーツがうなづき、モニターがまた映像を映し出す。
緊迫した空気の中で、ウマ娘たちがゲートに入っていく。シーツはその様子を何も言わずに見届けていた。
退院こそしたものの、彼女はまだ走れない。画面を見つめるその目は、日本でも見たことがあるような気がした。
緊迫した空気は突如として弾け飛ぶ。ゲートが開放された。罵声とも歓声とも言い難い声がスピーカーから流れてくる。
『スタートしました。オートマトンドクター飛び出して行った。後続はアルターピース。』
『ここでコンフェッションがオートマトンドクターを躱して先頭に立った。2番手外シーヴ、内イデアルプレイ、続いてシェイプオブユー、アーティフィシャルダンサーと言った展開。アルターピースは中団へ位置を下げました。』
『依然として先頭はコンフェッション、シーヴとイデアルプレイが追走、4番手にアーティフィシャルダンサー、ピッタリと外にオーバーグレード。シェイプオブユーは良い位置に取りました。中団にはヴェルスカーラ。位置を下げてオートマトンドクター、アルターピース、プレイインマティン、と続いて最後尾にナーヴェアとレザベイユとなりました。』
早口の英語、それも日本ではあまり聞く機会のないキングスイングリッシュ*2とコックニー*3の混在する独特の発音が英語に馴染みのない俺を混乱させる。*4
しかしそんなことはどうでも良かった。注目するべきはシェイプのレース運びだ。
オークスステークスの舞台はエプソムレース場。左回りでありながら、緩やかな右コーナーが存在する独特な形状である。馬蹄形に歪んだそのコースは世代の頂点を決めるにふさわしいとも言える。
コーナーは緩やかな右を含めて3つ。1000m地点にある2つ目のコーナーまでが坂となっており、高低差は40mほど。日本とは異なるタフな馬場もありながら登坂力とスタミナが要求される。そして急カーブの4コーナーからゴール前50mまで1200mかけて高低差30mの降りがあり、ゴール前でまた上り坂がある。
それだけではない。最終直線では外ラチから内ラチにかけて傾斜が付けられている。まるで自動車レースのバンクだ。無論脚への負担は並大抵のものではない。この直線でウマ娘全員がラストスパートに突入する。
『坂を下って先頭はシーヴ!!アルターピースも追ってきた!!コンフェッションは後退した!!』
『アルターピース先頭だ!!アルターピース先頭だ!!2番手シェイプオブユー!!3・4番手はレザベイユとヴェルスカーラ!!』
『シェイプオブユー並ぶか!?並ぶか!?』
歓声が巻き起こる。はためく緋色のドレスが観客の視線を釘付けにした。
『並ばない!!抜けた!!抜けた!!シェイプオブユー先頭だ!!1バ身!!2バ身と引き離していく!!』
理不尽なほどの強さ。圧倒と言うのも生ぬるい。
スピードは天賦の才。スタミナは鍛錬で克服できる。かつて俺がチーム『ScoAH』に居たころのトレーナーが言っていた言葉だ。
シェイプはおそらく2400mが適正距離のステイヤー。だが彼女は1マイル直線勝負の1000ギニーでも勝ち星を上げた。
名伯楽と謳われた好々爺。彼がドンと呼ばれる所以など、聞かなくても理解できる。これが世界レベルなのだ。
彼を見て思うことがある。俺がトレーナーにならなければ、シービーはさらに勝ち星を挙げられたはずだろう。
俺ではなく、東条ハナがトレーナーになっていれば。ゲート難を矯正させ、追込ではなく先行させていれば怪我をすることも無かったかもしれない。
だがもう遅かった。全て終わってしまったことだった。
『シェイプオブユー!!5バ身差の圧勝ゴールイン!!!2冠を手にしました!!』
彼女が単独でゴールを通過すると同時に、アナウンサーが高らかに叫ぶ。
「ミスター、いかがでしたか?私も中継を見ておりましたがシェイプさんすごい走りでしたね。」
「私もリハビリを頑張りたいです!ミスター!!私来年には凱旋門に行ってシェイプさんと走りたいです!!」
ミスター、ミスターと興奮気味にシーツが話しかけてくる。俺はそのミスターという呼び名を恥じた。
ロンドン発祥ということで、上流階級の耳にも入る言葉であることから汚い発音と批判されることが多かった。
劇中にモチーフとして登場する劇「マイフェアレディ」は言語学者ヒギンズが友人のピッカリング大佐と「下町の花売り娘イライザを一人前のレディに仕立て上げることができるか。」という賭けを行うシーンから始まり、イライザのコックニーを容認発音に矯正するシーンがある。
また、イギリスは島国であり、ウェールズ語や北アイルランド、ゲール語などの影響もあり方言が多い。
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早口の英語、それも日本ではあまり聞く機会のないキングスイングリッシュとコックニーの混在する独特の発音が英語に馴染みのない俺を混乱させる。(筆者含む)
どうしてウマ娘二次創作書いてるだけなのに言語学の本を読まなきゃいけないんですか
ちなみに設定ですが
シェイプオブユー
アイルランド英語+コックニー 対外的な場所では完璧なキングスイングリッシュ
ビトウィーンシーツ
河口域英語
ドン
キングスイングリッシュ
トレーナー
日本語訛りがキツいアメリカ英語