あともうひと伸び。足りなかったのはそれだけだ。以前ならば得意な11
はじめての敗戦。不思議と涙は出なかった。だが、胸にぽっかりと穴が空いたようで、どこか夢見心地である。どうにも現実として受け入れることはできない。
明日目覚めて練習場に向かう時には、また変わりなくチームのみんなが明るく話しかけてきてくれるのだろう。何も変わらない。それでいい。そうであってほしい。
ベッドの中で丸まりながら、私はただあのときのことを思い返していた。
私の名前は呼ばれなかった。噴き出る汗も、顔についた泥も拭わずに、勝利に沸くスタンドを眺めていた。
叫ばれる誰かの名前が何度もリフレインする。控室に戻る際も、その名前が遠くで響いていた。
音がしているというのに、通路はむしろ空虚で、静けさが際立っていたように思える。
それがとても寂しくて、切なくて、心細かった。
ふらふらとその通路を歩いていると、突然私の名前が呼ばれた。彼が、通路で私を待っていた。
久しぶりに聞く私の名前は、私を妙な気分にさせた。
私は負けた。
競り合うことも許されないその一瞬で、差し切られた。
それなのに、彼は私の名を呼び、優しく抱きしめた。
汗の匂いと、キャンディーの甘ったるい匂いがした。
不思議と、嫌ではなかった。
彼はぎこちない微笑みを浮かべながら、帰ろうか、と優しく声をかけた。私は彼に手を引かれて控室に向かった。
もう一度、私の名前を呼んでほしい。
もう一度、勝ったときに、私の名前を呼んでほしい。
偽りの微笑みではなく、心からの喜びを与えたい。
そう思った。
思ってしまった。
「オレ……負けたんだな…………。」
独りごちても、それは宵闇に飲まれて何処かへと消える。ここにあるのは、握りしめられ、皺になったシーツだけだ。
偽りの微笑みは、優しさだった。
私はそれに報いることすらできない。
たくさんのものを受け取ったのに、私が欲しがった栄光を掴むチャンスをくれたというのに、報いることはできなかった。
私が、また台無しにしてしまったのだ。
夢などではなかった。全て、私がしてしまったことだった。
視界がぼやけ、シーツを握る手に血が滲む。
優しさに報いたい。それでもきっと私はかなわない。
私の能力は、既に落ち始めている。
このレースの結果が、何よりの証拠だった。
更新遅れてすみません
今更ですが
辛すぎて吐きそう