アプリゲーム版ウマ娘プリティダービーにおいて新キャラクター、カツラギエース実装に伴い、本文の修正を行いました。
当作品において登場していたオリジナルキャラクターであるプライクルクラウンはモデルをカツラギエースとしており、ジャパンカップや京都新聞杯、有馬記念にて、当作品の主役であるミスターシービーと幾度となく対戦してきたキャラクターです。
変更するか否かについて十分に検討したところ、「名前のみの登場が全てであり、キャラクター像等の表現が存在しない」ということで、変更するという決定をさせていただきました。
なお、キャラクター像に明確な描写があり、プレイアブルキャラクターとして実装されたミスターシービー、
史実の競走馬をモデルにし、キャラクター像に明確な描写があるスインギーウォーク、シェイプオブユー、ビトウィーンシーツに関しては、当作品のみにおけるキャラクター像としてこれまで通り受け止めていただければ幸いです。
多大なるご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。
『先頭はユトー!!シェイプオブユー2番手!!後続とは5バ身!6バ身と離れている!!3番手アルターピースは届かない!!』
『ユトー粘る!!ユトー!!ユトーだ!!ユトーが逃げ切ってゴールイン!!』
『ユトーとシェイプオブユー2名によるマッチレースの様相となりましたがユトーが半バ身のリードを守り──』
そこで私はモニターの電源を切った。
残暑が残る時期ではあるが、未明の冷え込みは老体に響く。
リモコンを操作する指が軋むように痛む。衰えというものは恐ろしく、今ある自分が自分でなくなったかのように感じられてしまう。
かつての私は
『引退』という言葉がモニターとそれが反射する私の姿と重なった。髪は白髪になり、皺もずいぶんと増えた。
「さて……」
言うことを聞かない体を引きずりながら、私は棚の一番上の戸に手をかける。
そろそろ、彼女たちがクラブハウスにやってくる頃だ。暖かい茶を入れて出迎えてやらねばならない。
曲がった腰を懸命に伸ばすと、茶缶に指先が触れる。しかし、それをつかもうとすると、乾燥した皮膚がつるりと滑る。
「おっとと……」
ようやく掴んだと思うと、おぼつかない足が悪さをした。
ドスンと尻餅をつくとガランガランと大げさな音を立て、缶が転がっていった。
今一度、衰えとは恐ろしいものだと知る。そして私の情けなさを思い知った。
茶を淹れることすらままならない爺が、彼女たちに何を言えようか。そして彼女、シェイプオブユーは若くしてその衰えの真っ只中に居る。
栄光を掴めば掴むほど、衰えは牙を研ぎ澄ます。そしてひとときの夢を見させたあとで、傍らに立ち肩を叩く。
この苦痛は耐えがたい。うら若き少女はこの苦しみを知り何を思うのだろうか。
どうして、よりにもよって、今、彼女が、そうあらねばならないのか。
彼女の体を鑑みれば、セントレジャーに出走させることはできない。だがそれは、彼女が望むものではないだろう。
シェイプは優しい子だった。私を信じ、ここまで来てくれた。だが私には、どうすることもできない。
ダービーにも、凱旋門賞にも出走させることは出来なかった。
この夏が終われば、彼女はターフへ別れを告げなければいけない。せめて、その最期に彼女が望むものを贈りたい。
窓からは朝日が差し込み、鳥のさえずりが聞こえ始めた。
ふと窓辺に目を遣ると、砕けた蹄鉄がそこにあった。
やはり、シェイプは優しい子だ。
私はこの子のトレーナーであることを誇りに思う。
「おう、ジジイ。」
茶を淹れ終えた頃に私を呼ぶ声が聞こえてきた。
「今日はやけにシケた面してんな。」
彼女と交わす軽口も、数えるほどしか残されていないだろう。
「確かに、今日の私は特にひどい顔をしているのかもな。」
そう言うと、彼女の口角が上がる。
「だが、シケた面なのは君もだな。」
彼女のまぶたが腫れていた。