最も不器用な三冠ウマ娘   作:Patch

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 私は走った。ただ全力で、何もかも考える余地すら与えぬように私自身を追い詰めた。

 ただそれは、幸福とは言えない。自由であるとも言い難い。

 逃避。私の行動はそう呼ぶことが相応しかった。

 

 ただひとり、自ら課した『役目』に囚われ、そしてそれを恐れ、疑い、逃げ惑う。滑稽としか言いようがない。

 幸福とは何なのか。私がただ無邪気に信じてきたものは、唐突に(もや)がかかり、雲散霧消した。

 

 

「ッ……、ッハァ……ハァ………。」

 

 走り終えても、未だ息が戻らない。乱れた心の内も、ひとつにまとまることはない。

 あたりは既に夕闇が覆い尽くし、空には青白く顔色の悪い月が浮かんでいた。

 

「ルドルフ。」

 

 私の名を呼ぶ声がした。それと同時に、秋風は雲を散らし、夜空の月は曇り、霞掛かる。

 

 

「何を焦っているの。」

 月光とは対照的に、その言を発する唇はルージュに彩られていた。

 

 

「無念無想を求めて、走っておりました。もう、上がります。」

 

「何をしていたかを尋ねた覚えはないわ。」

 

 

 柵で区切られた紛い物の草原に、冷たい風が吹いた。

 硝子の向こうにある双眸は、ただじっと私を見下ろしていた。

 

 

「……私たち(ウマ娘)は、何なのでしょうか。」

 

 

 ひとたび言葉にしてしまうと、思いが堰を切ったように溢れ出てゆく。

 

 

私たち(ウマ)は、ヒトではありません。ですが私たち(ウマ娘)はヒトであることを求められる。ウマ娘がウマ娘であることを求められるのは、ここにしかない。ただここを走ることでしか、私たちは、ウマ娘ではいられない。」

「そしてここで、苦しみ、悲しむ者が居ます。レースが、勝利が、誰かを苦しめ、傷つけている。」

私たち(ウマ娘)は走ることで、ウマ娘で居られる。しかし、走ることさえも、既に歪められてしまった。」

「ただ自由に走りたい。そんな思いさえも許されない。レースと勝敗が、それを許さない。」

 

私たち(ウマ娘)の幸福は、どこにあるのでしょうか。」

 

 

 

 また、風が吹いた。その音はただ徒らに私を孤独にさせた。

 しばらくして、私のトレーナーは諦めにも似た表情で、ため息をついた。

 

 

 

「それでも貴女(ルドルフ)は、勝ち続けてきた。そうよね。」

 

「それが、幸福ではないと言うのであれば、私にできることは無いわ。」

 

 

 

 

 

「貴女に話したことが、間違いでした。」

 

 

 言ってはならない。そんな言葉が私の口をついて出た。だが私のトレーナーはただ悲しげに微笑むばかりで、それが私のしてしまったことの愚かさを物語っていた。

 

 

「ヒトである貴女に、私の気持ちはわからない。」

 

 

 私はトレーナーに背を向けた。捨て台詞、そう形容するにふさわしい。私はここでも逃げようとした。だがそれは許されなかった。

 

 

 

「そうよ。」

 

 

 

 静かでありながら、力強い声が私の歩みを止めた。

 

 

 

「私の使命は、貴女を勝たせることよ。そして貴女は、その勝利をもって、為すべきことを成し遂げなさい。私には、それしか出来ないの。」

 

 

「悲しいけれど……、それしかできないのよ……。」

 

 

 

 

 

 

 私は話しかけられながらも、振り返ることが出来なかった。

 私はまだ青かったのだ。それを、こうして突きつけられてしまった。

 そしてその青さを心の底から憎んだ。

 

 




映画、公開初日に最速で観てきました。
でも、内容あんまり覚えてません。
脳の処理量超えるとこうなるんですね。

1日経って、ようやくいろいろ思い出せるようになってきたんですが、ネタバレ予防と観に行ってほしいので、とりあえずRTTT路線で、アニメ路線ではないと名言しておきます

RTTTを美味しくいただける方は映画も美味しくいただけると思います。
めっちゃ語りたいけど、語るのはガマンしておきます。
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