最も不器用な三冠ウマ娘   作:Patch

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東京 第11R 芝1800m 共同通信杯

 東京1800m、日本ダービーと同じ府中のコース。この世代の誰かが今年のダービーを獲る。

 

 トレーナーとしても、観客としても魅力的なコースだ。クラシック期の嚆矢となる重賞。コースは広く、まぎれも少ない。最後に迎えるのは長い直線と坂。ウマ娘の実力を見定めるには最も効果的なコースだろう。

 

「今日もよろしくね。」

 

 前走で一緒になったヤツが言葉をかけてきた。なんと言えばいいのだろうか、こいつは腹が立つほど爽やかだ。

 この余裕、この表情。私は必死になってここまでたどり着いた。細くて長い脚も、黒くて大きな丸い目も、私にはない。何度も砂を被って充血した目に、太くなった脚しかない。でも、これは勝負に必要なものだ。

 

 ゲート入りが開始される。こいつの弱点はゲートだ。府中の最終直線は長いけれど、近年は先行ウマ娘の勝ちも目立ってきている。ここで勝てれば、皐月もダービーも夢じゃない。

 閉塞感がある。鼓動がうるさい。その音の中からわずかに聞こえる金属音を探り出す。その音とともに、芝を蹴り上げた。

 

 

 

 絶対に負けられない。

 

 ダービーは最も運のあるウマ娘が勝つという。大外枠に入って勝ったものは居ない。最終コーナーを10番手以内に回らなければ勝てないというジンクスもある。

 それが何だって言うんだ。

 

「くそッ……!!」

 

 大外の不利はやはり大きい。内側へ入れない。外を回れば回るほどスタミナを浪費してしまう。

 だが、減速するわけにはいかない。先頭では逃げるふたりが争っている。距離にして8バ身ほど。

 

 そして、あいつは最終直線で『飛んで』来る。

 逃げを打ったふたり、ボールドライツもツルノヨイチもそれを恐れているのだろう。

 まともにやり合えば勝てるわけがない。そう言った絶望から私は逃げなければならない。

 

 向正面、ここではじりじりとポジションを伺いながら、脚を貯める。

 

「!」

 

 外から誰かが私の前に出た。

 こいつはポリスカレージだ。私のすぐ後ろにつけていた。

 

 

 

 

 だが、なぜここでポジションを上げた?

 まだ向正面の直線だ。

 

 

 胸の中に冷たいものが走る。

 

 なんだ、そういうことか

 私の半バ身後ろにヤツが迫ろうとしていた。

 

 

 

 

 後ろからグイグイと押される。

 それに合わせて、隣のウマ娘が加速し始めた。

 

 コイツを抜け出させてはいけない。そうすれば、勝ち目は無くなる。

 気合いを入れろ。

 気合いを入れろ、ピーチシャロー。

 

 脇を締める。そして肘で脇腹を強く打った。

 負けるのが怖い。痛い。痛い。

 

 

 

 全員がスパートに入る。

 

 

 ダービーを獲りたい。ダービーウマ娘になりたい。そうなるためには脚を止めてはいられない。

 ただ真っ直ぐに、ただ一番にゴール板を駆け抜ければいい。

 誰にも邪魔はさせない。誰にも、誰にもだ!

 

 コーナーを抜ける。逃げたふたりはもう一杯だ。

 根性なら、根性なら負けない。

 ついてくるな、ついてくるな!!

 残り300、ポリスカレージを競り落とした。

 いける、いける。

 

 

 だが、必ず最後にヤツが来る。

 

 

 

 直線では観客の歓声がこれでもかと浴びせかけられる。ダービーなら、これよりも大きくて、もっと派手な歓声が上がるのだろう。

 だがその声は、私に向けられたものではないのだと思い知る。

 

 

 半バ身、手を伸ばせば触れられる1.2mという距離は、どんなものよりも遠かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




うーん、書き直すかも

今回はピーチシャローちゃんの視点でお送りしました。
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