真面目に読んだら負け
次はパロディ多めのネタ回です
カフェテリアではダービーの特集が流れていた。
大注目はミスターシービー。ターフの演出家、トゥインクルシリーズのニューヒロイン。
ライバルのメジロモンスニーにも目が離せない。
いい気がしないわけではないが、ここまで言われるとさすがに少し恥ずかしい。
今日の朝、トレーナーは授業後にカフェテリアで待っていて欲しいと言っていた。だから、こうして羞恥心にも耐えながらここに座っている。それなのに、アイツは来ない。顔を見たら一回蹴りをお見舞いしてやろう。
「『トゥインクルシリーズのニューヒロイン誕生!ターフの演出家、ミスターシービー!』だとよ、ずいぶん人気者になったなあ。」
後ろから声がした。
キャンディーを咥えながら、ニヤニヤとトレーナーが話しかけて来た。片手には先日私が取材を受けた雑誌を持っている。
いつもの黄色いシャツにヨレヨレのベスト。ボサボサの髪に泥のついたパンツと革靴。
だが、今日はいつもと違って蝶ネクタイをしていた。
「やめてよ。そんなのみんなが勝手に言ってるだけでしょ。」
「そんなヒロインにパーティの招待状だ。」
二つ折りのポストカードを手渡してきた。
開いてみれば、本日16時、チーム『カマリ』部室にて、皐月賞ウマ娘ミスターシービーの祝勝パーティを行う。と書かれている。
ご丁寧に、『御出席・御欠席』とまで書かれていた。
「返事を書くときは『御出席』の『御』は消すんだぞ?あと、ひとことだけメッセージを書くのもマナーだ。書けたらポストに投函しておいてくれ。」
「いや、パーティの日付け今日だし、もう少しで4時だよ。ふざけてるの?」
「もちろん。」
「じゃあ、はいコレ。」
私はすぐにペンを取り、招待状を突き返した。
トレーナーが笑い始める。
「そんなに笑わなくても良くない?」
| 皐月賞ウマ娘 最強の三冠ウマ娘
すごくつよいミスターシービー様
超 御出席 御欠席 |
|---|
ひとことには「バーカ」と書いた。
「超御出席ってなんだよ!はっはっは!」
「そこ、そんな面白い?」
ツボに入ったらしく、歩きながらもトレーナーが笑っている。三冠を笑わないところはトレーナーらしくもあり、少しだけ嬉しい。
もしも三冠が取れなくても、今日だけは楽しく過ごせたらいいな。そう思いながら、扉を開ける。
「うわーん!!もうやだああああああああああ!!!!」
「スインギーさん!!落ち着いてください!!ここはカマリの部室で──」
そっと扉を閉じた。
「どうした?シービー。中に入らないのか?」
「いや、なんか……、南坂さんとスインギーが……。」
「???」
トレーナーがまた扉を開けると、ジェンガのブロックが飛んできた。
「もう走りたくないいい!!やだあああああああ!!!」
「先輩!!助けてください!!!」
「どうした!!スインギー!!」
スインギーウォークは地面に寝転がり、ひっくり返った虫のように手足をジタバタとさせている。
「スインギーさん、昨日の新緑賞で負けたことが悔しいようで、ケーキを見てからずっとあの調子なんです……」
「そうか……。」
「やだあああああああ!!!学校やめるぅぅ!!!!」
大暴れするスインギーの手が机の脚に当たった。その衝撃で机の脚は
ホイップクリームが飛び散る。中身はケーキだった。
「うわあああああああああん!!!!ごめんなさいぃいいいいい!!!!」
スインギーが泣き止んだかと思うと、また大きな声で泣き始めた。
「本当にすみません……。シービーさんの祝勝会なのに……。」
南坂さんは深々と頭を下げる。
「いいよ、負けて悔しいのはわかるから。ケーキだって、ちょっと潰れただけなら食べられるでしょ。ね?トレーナーさん?」
幸いにも、ケーキが箱から飛び出したりすることは無かった。
もしケーキが箱から飛び出していたとしても、3秒までならセーフだ。
これを3秒ルールと言う。
この前テレビで見たのだが、地面に3秒間落ちていたものと、地面に30分落ちていたものでは付着している雑菌類の数に大きな差は無いという。
ならば、床に落ちたものも30分まではセーフなのだ!!!
「トレーナーさん?」
「南坂、スインギーはなぜ負けた。」
私の声は届いていないようだった。
「前を塞がれ、パスしようとしたときに大外を走るウマ娘に内側に押し込まれてしまいました。」
「そうか……。シービー、明日は出かけるぞ。南坂とスインギーもついて来い。」
「唐突だね。何するの?」
トレーナーがこう言うときは、だいたい面白いことが待っている。
「シービー、ゴーカートは好きか?」
「ゴーカート?あんまり好きじゃないな。」
ゴーカートといえば、遊園地によくある乗り物だ。幼い頃に乗ったことがあるけれど、遅くてとても退屈だったことを覚えている。
「それでいい。明日は楽しくなるぞ。」
今回のトレーニングは退屈なものになりそうだ。観覧車に乗っていたほうが幾分かマシだ。
「スインギー!!ダメじゃないかぁー!!ケーキが台無しになるところだったぞぉー?」
「ごめんなさい、おじちゃん……。」
トレーナーがわざとらしい棒読みの声で叱る。なんだろう、すごいキモい。
「罰としてー、明日は遊びに出かけるからなぁー?だからー今日はーケーキもいっぱい食べてーおなかいっぱいになって寝ること!」
「どこに行くの……?」
「ヒミツっ!!」
「ほらほら!!お前らも!!今日は楽しく騒ごうや!!ご馳走もケーキもゲームもあるんだ!!」
ケーキは案の定崩れていた。チョコプレートの文字は消えている。それでもケーキは美味しい。ケーキが美味しくないはずがない。
お腹いっぱいまで食べ、喉が枯れるまで騒いで、目が乾くまでゲームした。
スインギーも今は泣き止み、腫れたまぶたで笑いながらゲームしている。
「うわ、スインギーめちゃくちゃ強くなってるじゃん」
「どんなもんだい!」
心配は全て杞憂に終わった。
スインギーウォークはいいこだから…
みんな嫌わないでくれー!!!!
スインギーはいいこだからー!!!!