最も不器用な三冠ウマ娘   作:Patch

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崩れる幻影

「いやシービー先輩を占うだなんてとてもとても!!もしも悪いものが見えたらと思うと!!」

「でも、占いって絶対当たるわけじゃないんでしょ?」

 

「確かに厄除けやその時々の行動によって日々運勢は変わりますから絶対は無いのですが……。」

「じゃあ、大丈夫だよ。」

 

 

「むぐぐ……。正論過ぎて言い返せません……。」

 

「これまでのことを当てるだけでもいいよ。それなら悪いものは見えないでしょ?」

 

 

「むぐぐぐぐ………。」

 フクキタルは腕を組んで唸っている。

 

 

 

「聞こえてる?」

 私の声は届いていないようだった。

 

 

 

「わかりました!!占いましょう!!(わたくし)の全身全霊をもって!!シービー先輩を福へと導きますッ!!」

 

 フクキタルは突然立ち上がり、大声で叫んだ。耳が痛い。声は足にも響いた。

 

 

 

「ただ、ひとつ覚えておいて頂きたいのですが、占いにも、レースにも、『絶対』はありません。たとえ今日の運が悪くとも明日はハッピーラッキー100点満点という可能性もあります!実力が運を超えることだってあるんです!!」

 

 

「じゃあ占いは意味無いってこと?」

「むぐぐ……、そこはノーコメントで……。」

 

 

 フクキタルは面白いウマ娘だ。からかい甲斐がある。

 

 

「まあでも安心してください!今日はちょっと運が悪かったみたいですが、シービー先輩はダービーを勝っていますからね!明日はハッピーラッキー100点満点に違いありませんよ!」

 

「そうかな。」

 

 

 ダービーは『最も運の良いウマ娘が勝つ』と言われている。私は本当に運が良かったのだろうか。

 2400mという距離をふらふらになりながら走った。それでも私はこうして批判の的になっている。レース中に転倒しなかっただけ運が良かったのかもしれない。その不運の埋め合わせがきっと今日行われたのだろう。

 

 

「ではでは気を取り直して、シービー先輩の運勢を占っていきますよ〜!!」

 

 

 そう言うと、フクキタルは手をわきわきと動かし始めた。なんとも言えない気持ち悪さと可笑しさがある。

 

 

「エコエコアザラシ……エコエコオットセイ!!……、ラッキー……カムトゥユー!!!!!!」

 

 

 

 へんてこな呪文だ。思わず吹き出しそうになった。

 

 

 

 

「あっ……。」

「何か見えた?」

 

 

 

「えぇっと……、ふたり、ふたり見えますね。ひとりはシービー先輩と、もうひとりは男性……、トレーナーバッヂをつけています。」

 

 

 

 やはりどこかインチキ臭い。二冠ウマ娘のトレーナーともなれば顔は割れているし、それらしいことを言っているだけなのだろう。

 彼女には残念だが、拍子抜けだ。

 

 

「……木のブロック。これはなんなのでしょう?積み上げて行ってますね。」

 

「えっ?」

 

 

「あっ!ジェンガです。ジェンガのタワーをふたりで積み上げています!」

 

 

 部室でジェンガをしていたことは彼女に言っていない。そもそも言う必要が無かったからだ。

 

 

「なんで分かるの……?」

 

 フクキタルの顔は真剣そのものだ。私の声はまたしても届いていないようだった。

 

 

「トレーナーさんとシービー先輩はジェンガを引き抜いています……。あっ!3つ目?それとも4つ目?ジェンガが崩れてしまいました!!」

 

 

 

 

 フクキタルの手はピタリと動きを止めた。

 

 

「終わった………?」

 

 

 

 

「火が………。」

 小さく呟く声がした。

「火が見えて……消えました……。」

 

 

 

「なんだったんでしょう、アレ。」

 フクキタルは顔を上げて私を見る。

 

「でもすごいね、さっきまでジェンガしてたことが分かるなんて。」

 

「へ?私はこれからのことを占ったのですが……。」

 

 

 

「あれ?」

 

 

 

 気まずい空気が流れる。3つ目、あるいは4つ目で崩れるジェンガ、そして最後に見えたという火。アレは何かの比喩なのだろうか。

 

 

 

「と、とりあえず火事には注意ということで!!ケーキに蝋燭はダメ!ということですね!!火事避けのお守りを差し上げます!!」

 

 ずずい、と『開運☆金剛杖』が差し出される。その上端には手作りのお守りが結びつけられていた。

 

「いいの?」

「はい!もちろん!アンハッピーは分け合えばとってもちっちゃくなりますし、ハッピーは分け合えば2倍にも3倍にもなるんです!!シラオキ様がそう仰ってました!!」

 

「素敵な神様だね、シラオキ様って。」

 

 

「えへへ、それほどでもないですよ。案外ぐうたらですし、ジャンクフードも好きですし。」

「それはフクキタルでしょ。」

 

「あはは、そうでした。」

 

 

 

 そのとき、校舎の鐘が鳴った。これは午後のトレーニング時間の終了を知らせるものだ。トレーニングが終われば、スインギーと南坂さんがトレーニングを終えて部室にやってくる。

 

 

「それじゃあ、行くね。」

「またフクキタルを見たときは、声をかけてあげてください。」

 

「うん、わかった。ありがとね。」

 

 

 

 足はまだ痛む。だが、先ほどと比べると幾分か引いていた。いただいた杖をつきながら部室へと足を進める。

 

 

 

「うん…………?」

 

 言い表せないような違和感がある。

 

 トレセン学園の時間割は、午前が座学授業。午後は教官ごと、あるいはチームごとに分かれてのトレーニングとなっている。

 私達のチームはトレーナーが謹慎となったことで、トレーニング施設が使えない。だから部室で暇つぶしをしていた。

 

 

 本来ならば、他のウマ娘は全員トレーニングをしているはずだ。マチカネフクキタルは何故あそこに居たのだろう。怪我をして練習に参加できないのだろうか。

 

 

「ハッピーを分け合う、ね……。」

 

 

 そう思うと、途端に彼女の言葉が重く感じられた。

 

 

 

 

 

 

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