最も不器用な三冠ウマ娘   作:Patch

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紫陽花

 今回の祝勝会は派手なものにしようと決めていた。なんと言ったって日本ダービーを勝ったのだ、小さくとも最高峰にふさわしいものを用意しなければならない。

 

 これで年度代表ウマ娘が決まったようなものだ。菊花賞を勝つことができれば誰も文句をつけられまい。

 年度代表ウマ娘に選出されればURA主催のパーティーに招待される。チームの祝勝会とは比べることすらできないほど豪勢なそれに出る前に、あと何回祝勝会を開けるだろうか。

 

 

 菊花賞の前哨戦はセントライト記念を予定している。セントライトとはURA史上初の三冠ウマ娘の名だ。言わば俺たちが目指すところであり、シービーの大先輩にあたる。

 菊花賞は京都3000m、3コーナーには高低差4mの『淀の坂』が待ち構える。距離適正からしてもシービーには辛い。

 三冠を達成できたらケーキをもうひとつ増やしてやろう。三つのケーキを4人で分けて、苦しくなるまで食べよう。

 今日はシービーの好きなショートケーキと、苺がたくさん乗ったタルトがある。もうひとつ増やすのならば苺のミルクレープにでもしようか。

 

 

 流石にケーキ3つは胸焼けがしそうだ。チーム『リギル』の面々も呼んだほうがいいかな。シービーとルドルフは仲が良いみたいだからな。

 チーム対抗ツイスターゲームを行った日が思い出される。あのときのおハナさんは怪訝そうな顔をしていたが、みんな最後には笑っていた。

 カマリとリギル、ミスターシービーとシンボリルドルフ。これからきっと良いライバルになっていくだろう。

 

 

 トレーナーにとってウマ娘の成長ほど嬉しいことはない。ルドルフのデビューこそ一年遅いが、シニアクラスに上がれば存分に戦える。そしてシービーはきっと勝ってくれる。『ターフの演出家』はきっといつもの大逆転を見せてくれる。

 

 だから今日はたくさん遊んで、もりもり食べて、ぐっすり寝てもらおう。夏を越えれば、天高くウマ娘肥ゆる秋が待っている。

 

 秋が楽しみだ。その前に長距離用の練習メニューも用意しよう。

 

 

 そっとケーキが崩れないように持ち運ぶ。俺のせいでケーキが台無しになるのは勘弁だ。スインギーも少しづつではあるが心身ともに成長している。この前のようなことにはならないだろう。

 

 南坂はもう着いただろうか。七面鳥とにんじんハンバーグの受け取りをお願いしてある。きっとこの豪勢さにシービーは驚いてくれるはずだ。

 

 

 

 しとしとと降り注ぐ雨は、シービーと出会ったときを思い出す。あのときとは違い、紫陽花は花開き、水たまりには嬉しそうな男が写っていた。

 

 

 帰ろうか。きっと今日は楽しくなる。

 

 歌いながら軽くスキップをしてみた。両手に箱を持っているから、傘は差していない。

 

 雨に濡れる。こんな日があってもいい。

 黒い雲の下で紫陽花は晴れ渡った青空と同じ色をしていた。

 

 

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