最も不器用な三冠ウマ娘   作:Patch

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タイトル詐欺です
閲覧注意


トレセン学園 EX 飯3000kcal おなかいっ(ぱい)ダービー制覇記念 

 七面鳥は骨だけになり、にんじんハンバーグもすぐに無くなった。毎度毎度、ウマ娘の食欲には驚かされる。

 学園内のカフェテリアでは山盛りのごはんを嬉しそうに口に運ぶウマ娘の姿がよく見られる。最近ではローカルシリーズから移籍してきたという芦毛のウマ娘が特に目立って大盛りの食事をしていた。

 

 食事は体づくりの基本である。よく食べるということはよく走るということにも繋がる。無論、太め残りで無ければという前提だ。

 

 だがケーキ2つは流石に多かったかもしれない。シービーとスインギーは既に食べ終えているが、問題は俺たちだ。胸焼けがひどい。南坂の手は早くもひとつ目のケーキを食べ終わる前に完全に止まっていた。

 

 

 ショートケーキは食べ終えた。残りはタルトが半分ほど。レースで言えば中京の桶狭間ポイント、淀の坂を越えたあたりとでも言える。

 シービーならここらが仕掛けどころだ。豪脚で最後方から末脚でちぎり捨てる。ならば俺も一気に追い上げることにしよう。

 タルトを手で掴み口の中に放り込む。苺の芳醇な香りとバニラが効いたカスタードクリームが苦痛だ。空腹であればもっと楽しめただろう。

 

 暖かいコーヒーで流し込み、なんとか完走、いや完食できた。苦しい。今少しでも動いたら逆走によって失格になる。それだけはマズい。

 視線を戻すと、残ったケーキをスインギーがフォークでつついていた。南坂、お前ズルいぞ。

 

 

 食事を終えてからは、ゲームをすることになった。3人とも腕を上げており、なかなか勝てない。

 

 

「それにしても、よくここまで散らかしたね。」

 

 

 

 

 しばらく経ってからシービーがぽつりと言った。

 床の一面には紙吹雪が散らばり、キラキラと蛍光灯の光を反射している。テレビゲームをするスインギーと南坂の後ろにはクラッカーから出たカラーテープが山になっていた。

 

「トレーナーさん、片付けは頼んだよ?」

 そう言ったシービーの髪にはカラーテープが一本絡まっている。それを取ってやると、シービーの髪が濡れていることに気づいた。

 俺が居ない間に少しだけ走ったのだろう。シービーは雨が好きだからな。

 

 

「そう言うのは、こいつで決めようじゃないか。」

「名案だね。流石、ダービートレーナーは一味違うよ。」

 

 ジェンガのブロックを差し出すと、シービーが笑う。なに、適当なところで俺がタワーを崩せば問題ない。

 

 

「なあ、カノープスのおふたりさんよ。そろそろ片付けをするから手伝ってくれないか?」

 

 

「わかりました。スインギーさん、お片付けですよ。」

「はーい!」

 

 

「まあその前にこいつをやろう。負けたヤツがひとりで片付けだ。」

 

 

 そして、個人対抗ジェンガ大会が始まった。最初は南坂が片付けを手伝うと言って聞かなかったが、俺が適当なところで負けると耳打ちすると『先輩は変わらないですね。」と苦笑いしていた。

 

 

 初手は俺から始まる。次に南坂、シービー、スインギーの順だ。先行であればあるほどジェンガは不利となる。自然に負けやすいということだ。

 一本づつブロックが引き抜かれていく。引き抜いたらそれを上に積み重ねていく。しばらくは真剣勝負を演じよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だんだんと雲行きが怪しくなってきた。想像以上の激戦だ。もう1時間が経とうとしている。

 一本引き抜けば、それだけで小さな歓声と拍手が起きる。これは負け辛い。白熱した戦いに水は差せない。どうしたものか。

 

 

 スインギーがジェンガの周りをぐるぐると回る。目標を定め、上のほうからゆっくりと一本引き抜いた。

 だが油断はできない。本数が少なくなれば上に載せるほうが辛くなってくる。絶妙な慣性で姿勢を保つタワーに余分な力を加えることになるためだ。

 

 震える指に誰もが息を呑んだ。しかしすぐに安堵の溜め息が聞こえた。

 

 

 俺の番だ。心苦しいがそろそろ負けよう。一本だけ残った段に指をかけた。

「そこはダメです。倒れますよ。」

 南坂に強い口調で制止される。いや、俺負けたいんだけど……。

 

 仕方なく他の安定しそうな段からブロックを引き抜く。負けるのは次の回にしよう。

 

 次は南坂の番だ。するとコイツは先ほど俺が指をかけた一本だけ残った段を指で弾いて取り出した。

 ファインプレーに大きな歓声と拍手が上がる。コイツ、やり込んでいる。

 

 

「なあ、シービー。そろそろ余裕がなくなって来たんじゃないか?」

 

 先ほどからシービーは椅子に座ったまま落ち着いてプレイしている。だが、南坂のプレイで戦況が大きく傾いた。他のブロックもズレてしまったのだ。

 

 

「そうだね、そろそろ本気を出そうか。」

 

 

 シービーが机に手をついて立ち上がると、ジェンガが音を立てて崩れていく。

「うわーッ!!シービー!!負けるなよーー!片付けは俺がやろうと思ってたのに!!!!」

 

 

 

 ゲームの決着がついたというのに、何故か盛り上がらない。ゲームのときとは違う嫌な緊張感に包まれた。

 

 

「シービー?」

 返事もない。

 

 

 

「先輩、シービーさんが……。」

 

 振り向くとシービーは足を抑えて倒れていた。

 

 

「南坂!!救急車を呼べ!!」

 

 

「どうしたシービー!何があった!?」

「なんでもないよ……。なんでも……。」

 

 

 額には玉のような汗が浮かび、苦痛に表情が歪む。

 ジャージの裾から見える足首は、ドス黒く紫色に腫れ上がっていた。

 

 

 

 

 




私の作品、だいたいオグリがカメオ出演してる。
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