「靴はどうだ、シービー。」
「悪くは無いよ、悪くは無い。ただ……。」
シービーの京都新聞杯は敗戦に終わった。
終始ハナを取ったアーハをカツラギエースとツルノヨイチが追走し、ミスターシービーはいつも通り最後方からのレースとなった。
最終直線で叩き合いをするアーハとツルノヨイチを尻目に、大外からカツラギエースが並ぶ間もなく抜き去っていく。
誰もがシービーの末脚に期待した。だが彼女の足は火を吹かなかった。
カツラギエースがアーハに6バ身もの差を付けて入線した。ミスターシービーはそのさらに1バ身半後ろの4着となった。
原因は俺にもある。
京都新聞杯の前、シービーのライバルと目されていたメジロモンスニーが神戸新聞杯で故障し、菊花賞出走を断念することになったのだ。
そのことで、俺は臆病風に吹かれた。
シービーのトレーニングはいつになく慎重に行った。その結果、十分に追いきれず、秋川理事長の予言をそのまま体現させてしまった。
「ふわふわしすぎて、落ち着かないかも。」
シービーが笑いながら靴のソールを指でつつく。ソールは指の形にへこんだり、跳ね返したりを繰り返していた。
彼女の履く靴は最新式の厚底ソールを使用している。軽くて柔らかい素材は足への負担を減らし、反発力でストライドを拡張する狙いがある。蹄鉄を取り付ける部分にはゲル素材が挟み込まれ、しっかりと芝に食いつきながらも、離れが良い。
勝負服用の靴は、同じデザインのものを購入し蹄鉄部分に改造を施して貰った上で、それと同じ効果が期待できる中敷きを用意した。
「蹄鉄、もうヘタってきたよ?レース鉄を常時付けるなんて、大丈夫なの?」
「金のことなら心配すんな。俺は二冠ウマ娘のトレーナーだぞ?」
「遊園地にはちゃんと連れて行ってよね?」
「分かってる。だけど、遊園地はもうちょっと先になりそうだ。」
異動の期間まではまだ少し猶予がある。シービーが菊花賞に勝てば、俺の能力も見直されるはずだ。理事長の言った『猶予』とは、そう言う意味なのだろう。
理事長も不器用な御人だ。既に決まったことならば、そんなことを言う必要はない。
欧州では、好位抜出型のレースがよく見られる。シービーを世界に羽ばたかせるために、それは必要不可欠だ。
これまではシービーの強さを活かせるようにとトレーニングを重ねてきた。だがそれでは弱点の克服とは言えない。カツラギエースやマルゼンスキーのような快速ウマ娘に逃げ切られてしまえば、彼女の末脚は意味を成さなくなってしまう。
「シービー、もう上がっていいぞ。」
「じゃあまた明日ね、トレーナーさん。」
シービーは靴を履き替えて寮へと歩いていく。履き替えたのは出来るだけ蹄鉄をすり減らさないためだ。
その姿を見届けてから、俺は南坂に電話をかける。
電話はすぐに繋がった。
「先輩!ウチのトレーナーから聞きましたよ!!シービーさんの菊花賞はどうするんですか!!」
「そのことだが、お前とスインギーの力を借りたい。カマリの部室に来てくれるか。」
なんか微妙
変えるかも