ストーブの薪が爆ぜ、パチパチと音を鳴らす。雪はまだしんしんと降り続き、シェイプは何も言わずにただその様子を窓から眺めていた。
「寒かっただろう。お茶でも淹れようか。」
返事は無い。だが俺は蛇口を捻り、ケトルに水を入れてストーブの上に置く。戸棚の引き出しを開けて紅茶の葉を探していると、シェイプが小さく呟いた。
「そこじゃない。隣の棚の一番上、右側の扉だ。」
言われた通りに戸棚の扉を開けると茶葉の入った缶と白磁の茶器。クラッカーやジャムの入った瓶なども並んでいた。
ポットに茶葉を入れていると、ケトルの笛が鳴る。
「さあ、飲もうか。」
そう言ってポットにお湯を注ぐと、シェイプが怒鳴った。
「お前何してんだよ!紅茶は蒸らすのが基本だろうが!それに茶漉しはどうした!葉っぱの浮かんだ紅茶を飲めって言うのか!」
「ああ、すまない。お茶の淹れかたを教えてくれないか。」
そう返事をすると、シェイプは更に憤る。
「なんだよ!!お前もジジイと一緒か!!そうやって……、そうやってひとごとみてえにしやがって!!お前も怒鳴れよ!!ムカつくだろ!!オレばっかり怒鳴って、これじゃあ、オレがガキみてえじゃねえかよ!!」
そこまで叫ぶと、シェイプは幼い子どものようにわんわんと泣き始めた。
シェイプが泣き止んでから、茶漉しを使って紅茶を淹れる。
「ここに置くぞ。ミルクと砂糖は?」
「よこせ。」
ミルクと角砂糖を差し出すとシェイプはそれをドボドボとカップの中に入れ、スプーンでグルグルとかき混ぜてから音を立てて啜った。
「行儀が悪いぞ。」
「茶の淹れかたも分からねえヤツに言われたくないね。」
「確かにそうかもしれんな。」
同じように俺も音を立てて紅茶を啜る。
「きったねえ。」
そう言ってシェイプが腫れた目を細めて笑った。
「なあ、聞かねえのかよ。昨日のこと。」
空はだんだんと白み始め、雪がその光を反射する。冬の朝は眩しく、黄金色の光が窓を通じて彼女の栗毛を輝かせた。
「話したいのか?」
「んな訳ねえだろ。代わりにお前が何か話せ。」
よくわからない論理で話すことを強要される。だから俺は訊ねてみたいことを聞いてみることにした。
「シェイプ、走ることは好きか?」
「今は走りたくねえ。」
「じゃあ、逃げるっていうのはどうだ?」
「お前は話聞いてたのか?逃げだろうと追込だろうと今は走りたくねえんだよ。」
「そういうことじゃないさ、走ることから逃げるんだ。」
「そうかよ、そういうことかよ。ジジイにドヤされても知らねえからな。」
立ち上がり、彼女の手を取る。だがそれはすぐに振り解かれてしまった。
「ひとりで立てるわバカ。」
紅茶のカップもそのままでクラブハウスの扉を開ける。ドンには申し訳ないが、俺に任せてしまったのが運の尽きだ。
真新しい雪の上に足跡がふたつ並ぶ。
「どこに行こうか。欲しいものとかあるか?」
「コヴェントガーデン。」
「淑女にはぴったりの場所だな、花でも摘んで売りに行こうか。」
「くだらねえ、マジでくだらねえよ、バカ野郎が。てめえの日本訛りのクソ英語治してから言いやがれ。」
シェイプがこちらに肩をぶつけてくる。思ったよりも強く、俺は盛大に雪の中へダイブした。
冷たさに目が覚める。顔を上げると寒さで赤くなった手が差し伸べられていた
「……ん」
そっぽを向きながらも、こちらに手を差し伸べる姿はどこか可笑しい。彼女の尻尾は恥ずかしそうに脚に巻きついていた。
「いいよ、ひとりで立てるから。」
「朝は混むんだよ、急げバカ。」
「
手を取ると照れ隠しのように力いっぱい引き上げられた。
信頼関係を描かないと先に進めないのでまだまだ展開伸びるよ
更新速度上げていきます