英国から届いた荷物には、“
彼らしいクリスマスプレゼントだ。ツリーもケーキもない、そしてトレーナーもいない病室にはぴったりだろう。
「全くアイツは……。」
荷物を届けてくれたおハナさんは呆れたようにため息をつく。
「もっとマシなもの寄越しなさいって言っておくわ。」
「いえ、まあ……彼らしいと思いますよ。」
「火災報知器が作動するから、火はつけないようにね。」
おハナさんが窓際に置かれたオイルライターを指差して言う。これは彼から奪ったものだ。そのライターにはオイルが入っていない。火を灯すことすらできないキャンドルは、目の入っていない眼窩で私をじっと見つめていた。
ぽっかりと空いた目で一体何が見えるのだろうか。盲目となった
「彼を許してあげて、アイツは女心ってモンが分かってないのよ。」
「それは重々承知しています。」
近寄れば拒み、離れれば求める。心を御すというのは随分と難しい。私はそれに振り回されて、彼すらも袖にした。
愚かと言うより他に無い。『行かないで』とひとことでも言えさえすれば、こうはならなかった。
もう私を理解してほしいなどという贅沢は言わない。私が海外に追いやったくせに、そばに居てほしいと言うのは都合が良すぎる。
私はどうしようもなく女だった。そして、
「これ、置いて行くわね。アイツから貴女の好物だと聞いたから。」
『eclipse』と箔押しされた、小さな白い箱が目の前に差し出される。トレーナーがいつもケーキを買っていた駅前の洋菓子店のものだ。
「貴女も苺が好きなのね。」
中には見慣れた苺のショートケーキと、プラスチックのフォークが入っていた。
だが私はあまり食べる気にはなれなかった。
「本当は、あまり苺が得意じゃなかったんです。」
「それはどうして?」
「酸っぱくて、見た目も少しグロテスクで。でも、誕生日とかのお祝いのときはいつも苺のショートケーキがあって……」
おハナさんは何も言わず、私の声に耳を傾けている。だからそのままゆっくりと続けた。
「お祝いのときはショートケーキを食べるものだと思ってました。だから、メイクデビューを勝ったときに大きなホールでトレーナーに買ってもらったんです。それがなぜかすごく美味しくて、忘れられないんです。」
「それがすごく不思議で……、何故か分かりませんか?」
「わからないわ。」
おハナさんは首を横に振る。
「わかったとしても、それを言うのは野暮ってものよ。」
「じゃあ、私は行くわね。高かったんだから、好き嫌いせずに食べなさいよ?」
微笑みながらチクリとトゲを刺す。そのやりとりは彼と軽口を叩き合ったときを思い出させた。
「すみません、そういうわけじゃなかったんです。」
「わかってるわよ、トレーナーを甘く見過ぎ。」
おハナさんは背を向けて歩いていく。だが彼女は病室の扉の前で立ち止まった。
「ジャパンカップ、彼がイギリスで担当しているウマ娘が出走登録を行うそうよ。出るかどうかは、貴女が決めなさい。」
扉が開き、病室には静寂だけが取り残された。