日本のレース場は綺麗なオーバル型をしているものが多い。スクーリング*1の際にミスターがそんなことを言っていた。欧州のものとはまるで違う。芝は茶色に変色しており見た目は荒野と言っても遜色ない。しかしその内部にはしっかりと根が張り巡らされているようで、弾みがあり固い。植物として欧州の芝とは全く性質が異なる。少し走れば硬い葉がちぎれ飛び、チクチクと肌に刺さる。
日本のウマ娘たちはそれを気にする様子も無い。悠々とウォーミングアップをこなし、馬場に戸惑うウマ娘を尻目に余裕の表情をしていた。
その中でも一際目立っていたのが、シンボリルドルフとミスターシービーだった。ふたりが少しでも歩けばそれだけで歓声があがる。観客席には横断幕が下げられており、1と12という数字が読み取れた。ふたりの出走番号だ。
私はミスターシービーに次ぐ2番人気。だが、ふたりが強敵であることには変わりない。それに加えて、ミスターは人気薄のウマ娘、カツラギエースにも気を払うように言っていた。
カツラギエースは先行策を得意とするウマ娘。だが堅良の馬場は私の得意とする舞台でもある。2400mという距離は易々と逃げ切れる距離ではない。500mにも及ぶ直線では前だけのレースで終わることはない。
垂れてきたカツラギエースも交わし、シンボリルドルフとの根性勝負に持ち込めば、私が勝てる。
私は規約によって英国G1への出走権を得ることが出来なかった。*2それをわかっていてもドンは私をスカウトしてくれた。険しい道だった。海まで超えてようやく掴んだ大舞台への招待状。ドンは私の勝利のために尽くしてくれた。ミスターも一緒になって、ここまで私を導いてくれた。
ずっと自信をなくしてもじもじとしていた私はもう終わりにしたい。私はG3を3連勝している。今の私はきっと強い。
私には月桂樹の冠はいらない。
歓声が上がる。1度、2度と足元の芝を踏みつける。それに合わせてこの心臓が拍動し、レース場が揺れた。
芝が、汗が、思いが、全てがここに散らばり、消える。
私の