Fate/All For ASINA 作:youyouyouyou
冬木の聖杯戦争。
7人の
その冬木市、柳洞寺。
サーヴァントキャスターによる神殿と化したその場所に、
1騎の槍兵が侵入した。
石段の登った先の山門。
そこで待受けていたのは、キャスターではなかった。
和装。
鎧兜を身に着け、
右手には大太刀を持ち、
背中には大弓。
若い、精悍な顔つきの、美丈夫である。
「お前さん、なんのサーヴァントだ?」
ランサーは問いかける。
大太刀を見るならセイバー。
背負う大弓は、五人張りはあろうか。ならばアーチャー。
その姿は、この国の戦士、サムライそのもの。
馬に乗れぬなどということはあるまい。
だったら、ライダーか。
その答えは、
「アサシンだ」
「アサシンだぁ?」
思わず聞き返すランサー。
「とてもそうは見えねえな」
「俺も忍びと戦ったことはあるが、忍び仕事をしたことはないな。いれぎゅらーと言うやつだ」
なるほど、確かにイレギュラーだ。
そもそも、聖杯は西洋のもの。故に呼び出せる英霊は西洋のものに限る。
そういう触れ込みではなかったか。
「まあ、どうでもいいか。どうせやることは変わらないだろ」
そう言って、槍を構えるランサー。
「是非も無し」
アサシンも太刀を構える。
戦いの火蓋は、切って落とされた。
♢♢♢♢
先ず、先手を取ったのはランサー。
赤き神速の槍が、駆ける。
飛び散る火花。
防ぐはアサシンの黒き諸刃の大太刀。
「シィッ!」
獰猛な笑みを浮かべたランサーが、突きの乱舞を見舞う。
アサシンはただ、防ぐ。
「どうした、サムライ!」
挑発めいた言葉にも黙したまま、耐え忍ぶのみ。
そも、槍と刀では圧倒的に槍が有利である。
まして、その槍を操るは、ケルト神話の大英雄、クー・フーリン。
この槍の嵐をかいくぐり、反撃に出れる存在がどれほどあろうか。
ギィン!
一際大きく響く金属音。
アサシンの刀が、槍を強く弾いた。
これは、「弾き」という技術。完璧なタイミングで、武器を叩き付け、相手の体幹を削る技。
アサシンの故郷では、一兵卒ですらこの技術を習得していたが、
これを
即座に放たれる切り返し。
並の存在であれば、反応すらできず切り捨てられたであろう一撃。
しかし、最速のサーヴァントであるランサーは、傷一つ負うことなく、躱してみせた。
距離が開く。
アサシンは背負った大弓を素早く構える。引き絞られる弓。
対してランサーは、正面から突っ込んだ。
「なに!?」
驚愕するアサシン。
顔面目掛け放たれた矢は、
矢避けの加護。使い手を視界に捉えた状態であれば、余程のレベルでない限りランサーに対しては通じない。
隙。
「がぁ!」
槍が、アサシンの脇腹を抉る。
そして、再び突きの嵐。
防御を固めるアサシン。しかし、全てを防ぎきれない。
和装が、血に染まっていく。
頬から血を流しながら、ランサーは攻める。
内心は、予想以上の弓の威力に冷や汗を流していたが、おくびにも出さない。
「ちいぃ!」
圧に耐えかねたか、アサシンが下がる。
「逃がすかよ!」
槍の射程は長い。大きく踏み込んだ一撃がアサシンを襲う。危。
アサシンの眼がギラリと光る。
「!?」
伸ばされた槍を、アサシンが踏みつける。
一瞬の見切り。猛攻に耐えながら、この瞬間を狙っていた。
槍を引き抜くランサー。刀を振り下ろすアサシン。
「グッ」
初めてアサシンの刃が届く。
それだけでは終わらぬ。流れるような七連撃。
奥義・浮き舟渡り。
アサシンが攻め、ランサーが防ぐ。
「ツァ!」
裂帛の気合いと共に放たれた切り上げが、ランサーの胸を切り裂いた。
「てめえ・・・」
ランサーは嚇怒した。
致命傷ではないが、決して浅くはない傷。
「俺の槍を踏みやがったな・・・!」
しかし、それは傷を刻まれたからではなかった。
常時しかめっ面をさらしていたアサシンが、嗤う。
挑発であることは明らか。
しかし、これを許せるランサーではない。
「シャア!」
ランサーが駆ける。
速い。手加減無しの一撃。
アサシンはこれを弾───けない。
逸らし切れなかった攻撃が、肩を削る。
「オラァ!」
蹴り。辛うじて柄で受けるが、吹き飛び、石段を転がる。
ランサーの追撃。即座に距離を詰める。休ませない。反撃の機会など与えない。
そこからは、一方的。切り刻まれ、血塗れになるアサシン。
最早嬲り殺しとも言える状況で、
アサシンは、嗤っていた。
「なにがおかしい、アサシン」
ランサーが、攻撃の手を止める。
「俺が望む死闘が、ここにあるからだ」
こいつ、俺と同じか?
ランサーが聖杯にかける願いはない。
強いて言うなら、おもしろい戦いがしたいだけだ。
否。
アサシンは違う。
アサシンの鋭き眼光。そこには情念が宿る。
死闘は手段であり、願いは別にある。
「お前を超えて、俺は高みへと昇る」
「ハ、舐められたもんだな。俺を踏み台にしようってか?お前にゃ無理だよ、アサシン」
ランサーが槍を構える。槍に魔力が渦巻いていく。
「終わりにするか」
宝具解放。サーヴァントの切り札。必殺の一撃。
アサシンもまた、己の宝具である大太刀を構える。
大太刀から、黒い瘴気が炎のように立ち昇る。
破裂寸前の風船の如く気が張り詰め、
「止めだ」
ランサーが、引いた。
「女狐に隙をみせたくはないからな」
アサシンの背後の空間を睨みつける。
「あら残念。続けてくれてもよかったのに」
何もない空間から、女が現れる。
サーヴァントキャスター。神代の魔術師。
アサシンとういうイレギュラーを召喚した張本人である。
「もとから偵察のつもりだったからな。魔術師の神殿で、サーヴァント2騎を相手するなら、それなりに準備がいる」
そう言って背を向けるランサー。
そこに隙は無い。
最後に振り返り、
「じゃあなアサシン。縁があったらまたやろうぜ」
そう笑って消えた。
♢♢♢♢
「よけいな真似を」
アサシンが眉間にしわを寄せる。
「その様でよく言うわね。」
キャスターが嘲るように言う。
「わたしが介入しなきゃ、あなた確実に負けてたわよ」
ランサー。あの実力。赤い槍。
おそらくアルスターの猛犬、光の御子クー・フーリンだろう。
ならば宝具はゲイ・ボルク。確実に心臓を穿つ。必中の槍。
キャスターが熱心に解説するが、アサシンには魔術だの呪いだのは解らぬ。
だから、心臓を確実に貫くという事実だけを受け入れる。
それが避けられぬのなら、
「心臓を生贄に、奴の首を刎ねるしかあるまい」
強がりでもなんでもなく、本心で言っていると理解できたから、
「ふん」
これ以上一緒にいるのはごめんだとばかりに、キャスターは去った。
アサシンは月を見上げる。
冬木の地では、渦雲は見えぬ。
代わりとばかりに、アサシンは、
葦名弦一郎は月をずっと睨み続けていた。
サーヴァントステータス
【CLASS】アサシン
【マスター】キャスター
【真名】葦名弦一郎
【性別】男性
【属性】秩序・中庸
【ステータス】
筋力B 耐久A++ 敏捷C 魔力D 幸運E
次回、「奥義・不死斬り」