Fate/All For ASINA 作:youyouyouyou
「待っていたぞ、セイバー」
山門で待ち構えていたのはアサシン。
アサシンを召喚したキャスターは、既に敗退している。
ならば主を失ったアサシンも消滅しているのが道理。
本来ならありえぬ光景を見ても、セイバーに動揺はなかった。
予感があった。
再戦の約束。
その決着を果たす為、彼は待ち続けていると。
「アサシン。この冬木の聖杯は汚染されている。この聖杯では、貴方の願いは叶わない」
セイバーの告げる聖杯の真実にも、アサシンは動じない。
「そうか。ならばこの戦いの勝利をもって、此度の聖杯戦争の収穫としよう。いくぞ、セイバー」
「ええ、決着をつけましょう。アサシン」
多くの言葉は要らない。
ただ、雌雄を決するのみ。
♢♢♢♢
セイバーが構える。
不可視の剣。
だが、その間合いをアサシンは既に見切っている。
セイバーとの戦いの記憶を何度と無く振り返り、心中で戦いを繰り返した。
来い、セイバー。その剣、全て弾き返してみせよう。
セイバーが、動く。
疾───
「がっ!?」
斬撃。
防げず、袈裟懸けに斬られる。
なんだこの速さは!?
追撃。
頸に剣が迫る。
「おおおお!!」
寸前で弾く。
下がるセイバー。
「セイバー、貴様・・・!」
斬られ、使い物にならなくなった鎧を脱ぎ捨てる。
なんという鋭さ。
鎧がなければ、己の身体は両断されていただろう。
以前、戦った時より遙かに強い。
「マスターが代わったことで、弱体化は解消されました。」
「ぐっ・・・!」
なんという間抜け!
力量も見抜けず、弱体化した相手に勝利の確信を得ていたとは。
立てていた対策を全て捨てる。
もはや、小細工は通用すまい。
死に物狂いで食らいつくしかない。
「もうこれは必要ないようですね」
セイバーが風の鞘を解く。
現れる黄金の剣。
「行くぞ、アサシン」
セイバーが、来る。
即座に放つ弓。
だが弾かれる。
かつてセイバーの体勢を崩した強弓は、通用しない。
ぶつかり合う剣と刀。
腕が痺れる。
敏捷だけでなく、筋力でも負けている。
鳴り止まぬ剣戟音。
セイバーはこのまま決める気だ。攻撃を止めない。
アサシンが弾く。ひたすらに弾く。
だが、無傷のセイバーと深傷を負っているアサシン。
どちらが先に崩れるかは明らか。
削られる体幹。
ここで崩れれば敗北は確定する。
だが打つ手がない。
焦るアサシン。
喝ッ!!
頭の中に、祖父の声が響く。
「おあぁ!!」
渾身の力で剣を大きく弾くと、アサシンは背筋を伸ばし、上段に構えた。
セイバーが警戒し、一瞬動きを止める。
強く踏み込み、ただ無骨に振り下ろす。
葦名一文字。
「ぐっ・・・!」
防ぐセイバーに、さらにもう一発。
一文字・二連。
堪らずセイバーが下がる。
刀を振るう際、強く踏み込んだことで、アサシンの体幹は既に回復していた。
幼き頃、市中より引き取られたアサシンに、祖父 一心が初めて手すがら教えてくれた技。
それが葦名一文字である。
祖父との思い出が、アサシンを救った。
アサシンが大太刀を構え、念を込める。
刀から漆黒の瘴気が噴き出す。
セイバーの直感が閃く。
あの刀は、自分の持つ竜の因子に致命的な悪影響をもたらすと。
セイバーも剣を構え、魔力を込める。
剣が黄金に輝く。
アサシンが、更に念を込める。
自分の執念を、覚悟を。
葦名は俺の全てだ。
葦名を守る為なら、全てを捧げよう。
全ては葦名の為に!
大太刀から溢れる瘴気はもはや瀑布の如し。
それを、解き放つ。
「秘伝・不死斬り!!」
同時にセイバーも放つ。
「
黄金と漆黒がぶつかり合う。
そこにアサシンが、更に斬撃を重ねる。
秘伝・不死斬りは二連にて成る。
黄金を切り裂き進む漆黒は、やがて光に呑み込まれ、
光の奔流はアサシンを山門ごと押し流した。
【宝具】
『不死斬り・開門』
黒の不死斬りの持つもう一つの能力。竜の因子を刀身に取り込み、冥界の門を開く。そこに生贄を捧げることで、死者を黄泉がえらせることができる。このことから、竜及び竜の因子を持つものに特攻ダメージを与える。
次回、最終話、「巴流 葦名弦一郎」