自宅警備員をクビになったので、勇者に再就職する。   作:哀上

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二スレ目 裏 その1『中二病なお嬢様』

 二スレ目 裏 その1『中二病なお嬢様』

 

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 ゆうのちゃんが電話を掛け迎えを呼ぶと、すぐに黒塗りの車が俺たちの前に止まった。

 

 俺は車には詳しくない。

 が、なかなか高級感のある車だと思う。

 もしかして、クラウンとかいう奴だろうか?

 

 一瞬これじゃないよな、って目をそらそうとしたがゆうのちゃんが迷いなく乗り込んでいったのでこの車で間違いないのだろう。

 

 この車、確かなかなかの高級車だったような気がする。

 政治家が税金で公用車の名目で買っていて、かなりたたかれていた覚えがある。

 というか、俺も叩いてた気がする。

 

 俺たちの税金を不当に使いやがって(税金なんて払ってない)という正義感に駆られて、正義の制裁を与えるって名目でバカ騒ぎしたのを覚えている。

 

 それにしても、高級車か。

 

 ゆうのちゃん、お金持ちの家のお嬢様なのかもしれない。

 箱入り娘で世間知らずだったから、簡単にだませたのかもしれない。

 

 金持ちの娘っていうのはどうなんだろうか?

 あたらしく寄生する警備先としては文句ないような気もする。

 本人も結構乗り気だし、くいっぱぐれるなんてことも起きないし一度成功すれば前みたいに経済的理由からクビになることもないだろう。

 

 でも、難易度がバカ高い気がする。

 金持ちの子供は騙せても、親は騙せない。

 金を持ってるってことはそれだけいろいろと怪しい嘘がありふれた世界なわけで、俺みたいな自宅警備員が速攻で考えた嘘、しかも異世界の勇者とか言うガバガバ設定一瞬すら持たない気がする。

 

 俺が考え込みながら車を眺めていると、さっさと車にのりこんでいたゆうのちゃんが

 

「リョウさん。さ、乗ってください」

 

 俺に早く乗るようにせかしてきた。

 

 随分と簡単に言ってくれるな、そうはいっても……

 ちらりと運転手の方を確認する。

 乗っても大丈夫なのだろうか?

 

 運転席にはゆうのちゃんのお母さん? が乗っている。

 高校生の母親にしてはかなり若々しいように思うが、金持ちというのは美容に使える金もけた違いだというし、芸能人が実年齢よりずっと若く見えるとの同じ理屈だろう。

 

 ゆうのちゃんが俺を車に乗せようとしてるのはわかってるはずだし、何も言ってこないってことは乗ってもいいということなのだろうか?

 

「??……ああ、リョウさんこれはただの馬車みたいなものですよ。そんなに危険なものでもないので、ささどうぞ」

 

 どうやらゆうのちゃんは、俺が初めて見る車に驚いて警戒しているのだと勝手に解釈したらしい。

 確かに間違ってはいない。

 俺は初めて見る車に驚いてはいるが、それは異世界から来て車というものを初めて見たからではなく、社会の底辺から来て高級車というのを初めて間近で見たからだ。

 

 それに車じゃなく、どちらかといえば君のお母さんにびくついている。

 

 測らずしも異世界人アピールになったなら幸いだ。

 今回のは演技じゃなくガチだから、結構異世界人ポイン稼げたに違いない。

 

「あ、す、すいません」

 

 ま、ここまで来て何も言わないのなら大丈夫だろう。

 乗った瞬間いきなり怒鳴られる、みたいなことにはならないだろう。

 

 俺はゆうのちゃんに誘われるまま車に乗り込んだ。

 

「いえ、初めて見る物には誰でもそうなるものだと思います。私の方こそ配慮が足りませんでした」

 

「そ、そうですかね」

 

 初めてか……

 

 異世界人が本当に初めて車を見たら、どういう反応するんだろうか?

 誰の目にも見てわかるほど驚愕するのか、それとも小さく驚くだけで表面上は平成としているのか。

 もしかしたら魔物やらなんやらいる世界の人のことだ、全く驚かないという線もあり得るのかもしれない。

 

「あ、あの前に座っている人は?」

 

 それより、俺の方を一切見ない君のお母さんが怖すぎるんだけど。

 なんで何も言ってこないのだろうか?

 

 高校生の娘を迎えに行ったら年上の男と一緒にいて、さらに男を車に乗せたのだ。

 普通何か言ってくるものだと思うが?

 

 例えば、娘の彼氏くん? とか。

 部活の先輩? とか。

 ストレートに娘とどんな関係なの? とか。

 

 無言っていうのは、否定されているのだろうか?

 それとも歓迎されているのか?

 

 何もわからない。

 故に怖すぎる。

 

「ああ、御者みたいなものですよ。これ車っていうんですけど、馬にひかせるわけではなくてからくりで動いているので御者も中にいるんです」

 

「そ、そうなんですね」

 

 御者?

 え、運転手?

 もしかして、親じゃない?

 

 運転手さんついてるとか、ガチモンのお嬢様じゃないですかやだ。

 

 それにしても、気を使っての説明なのだろうが果たして異世界人にカラクリは通じるのだろうか?

 日本特有の文化な気がするが。

 

「ど、どうも初めまして」

 

「初めまして」

 

 一応挨拶をすると、普通に返してくれた。

 どうやら俺に思うところがあったわけではなく、ただ単に仕事に集中していただけのようだ。

 確かに、運転手からしても雇い主の娘が男車に乗せたとして、なんて声かけていいのかわからない気がする。

 

「そんな気を使わなくてもいいわよ。彼女は使用人だから」

 

「え?」

 

 それは、どうなんだろう?

 金持ちからしたら、普通の感覚なのだろうか。

 

 いや、失礼な態度とって間接的に親に伝わったら結局俺が存するのでは?

 

 というか、これまでの会話の時点であれだな。

 運転手さんの中で、俺ってかなりヤバいやつ認定されているのでは?

 いや、ゆうのちゃんも話に乗ってきてるし、案外お似合いだと思ってるのかもしれない。

 

「ああ、御者って専門職が多いのかしら? このからくり基本的に誰でも動かせるように作られているから、使用人が使うことも多いのよ。もちろん専門職の人もいるけどね」

 

 あ、俺がその職のプロだから礼儀尽くしたと思ったのか。

 確かに何かを極めた人って、ほかの道氏死んでる人にも礼儀を尽くすイメージがある。

 

 勇者ってまさに道を究めた人だからな。

 

「なるほど。この世界は俺が元居た世界よりずいぶんと進んだ世界らしい」

 

「進んだ世界ね。そのせいで廃れたものも多いのだけれど」

 

 ああ、そういう。

 科学のせいで魔法が廃れた的な考えなのだろうか?

 

 何か怪しい石とかパワーストーンとか集めてそう。

 

 特に金持ちだといろんな人が話合わせて売りに来そうだし、俺もそのままでいてもらわないと困るし、ゆうのちゃんもしかして卒業できない?

 

「詳しい話は家についてからにしましょうか。使用人の前で話すことでもないですし」

 

 どうやら聞かれたくないらしい。

 恥ずかしいもんね。

 気持ちはわかるよ。

 

 でも、さっきまでの会話の時点ですでに手遅れだと思うんだ。

 

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