二スレ目 裏 その7 『中二少女は魔法使い 前編』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それから、いろいろと異世界へのテンプレ質問に答えていった。
魔物はいたのか? とか、どんな人種がいたのか? とか、倒したといっていた魔王はどんな存在だったのか? とか、勇者はどんな役割だったのか? とか……
中二病だったことに、これほど感謝したことはない。
典型的な中二病だった昔の俺が考えた妄想設定、オリジナリティーがあるわけはなくいろんなアニメから設定をつまんでつなぎ合わせたものだ。
自分で考えたものではなく、それゆえにしっかりと基礎があるものであるからこそ妙な破綻はなく共通の世界観を合わせもつ。
そして一度口に出し始めれば、自分でもこんなに記憶力があったのかと驚くほどすらすらと話すことができた。
あんな黒歴史がこんな形で役に立つ日が来るとは、人生わからないものである。
それにしても、ゆうのちゃんは本当に興味深そうに話を聞いてくれる。
まるで本当にあると確信しているかのように。
当たり前といえば当たり前ではあるのだ。
信じていなかったら、見知らぬ男を家に連れ込もうとは思はない。
でも、俺には信じるというのがよくわからない。
俺は確かに中二病だった。もし自分に特別な力があったら、もし自分がファンタジーな世界に行ったら、そんな妄想は数えきれないほどした。
そして、ありえないとわかっていた。
全て創作物の中の話で、こんな妄想も時間の無駄でしかないとわかったうえで妄想を楽しんでいた。
それでもあれほど心が躍った。
もしそれがあると心から信じられたら、それどころか本当にあったりしたら、それはどれほど素晴らしいことだろうか。
「そうだったのね。リョウさんからすると、この世界はとても不便かもしれないです。」
「不便?」
俺が一通り異世界についての質問に答えると、ゆうのちゃんがこの世界について話し始めた。
正直妙な気分だ。
英吾の授業で日本の紹介ビデオを見せられた時に近いものを感じる。
俺は魔法がないということに驚いて見せたり、設定の自分の世界とはかけ離れた進んだ文明に困惑して見せたり、科学というものに軽い忌避感をもって見たり、それっぽい反応を意識した。
特に何か違和感を持たれてる様子もなかったし、問題ないだろう。
それにしても、よくもまぁここまで信じるものだ。
こうも信じられると欲が出てしまうものである。
実際、ゆうのちゃんのなかで俺は異世界の勇者ということになっているわけで、だとすればワンチャンスあるのではないか?
若い男女(俺は少し怪しい)が一つ屋根の下(使用人は除く)、何も起きないはずもなく……
……何も起きなそうだな。
魔法使いになるという未来は避けられない運命なのだろうか。
ほんとになれるならこの上なく好都合、魔法でも使って見せれば誰でもほら話を信じるようになるだろう。
ただ、手に入るのは不名誉な称号である。
勇者(詐欺師)兼魔法使い(三十歳童貞)の元自宅警備員。
これはひどい。
俺がくだらないことを考えていると、ゆうのちゃんが真剣な表情で、
「さっきまでのはこの世界の表向きの話です」
そう話し始めた。
「表向き、ですか?」
自分の妄想をさんざん垂れ流しておいてあれだが、人の妄想を語られるというのはとてつもなく気恥ずかしい。
自分で言ってるときはそれほどでもなかったのに……
共感性羞恥+さっきの自分を見せられてるようでかなり心にダメージが入ってくる。
「この世界にも魔法はあるんです。昔、魔女狩という大規模な弾圧が起こり身をひそめ表社会から姿を消しましたが、今でも魔法使いは姿を隠し生き残っているんです」
「そ、そんなことが……」
魔女狩り、姿を隠して生き残ってるか。
どっかで聞いたような話だな。
都市伝説の特番か何かだろうか。
ゆうのちゃん、フリーメイソンの世界征服とかも信じてそうだな。
「なので外では魔法とかの話はしない方がいいです。あくまでないものとして、初めに話した世界が真実であると多くの人は思ってますので」
「分かりました」
外で余計なことはしゃべるなと。
ゆうのちゃんも、もしかして共感性羞恥に陥っていたのだろうか?
俺としてもありがたい。
異世界人だという確証を得るために、わざわざ外で恥をかくのはごめんである。
ん?
魔法使いは隠れていて、多くの人はそれを知らずに生きている。
でも、私は知っていてそのうえで秘密にしなければならない立場にある。
この話の流れって……
「実は私、魔法使いなんです」
ですよねぇ、知ってた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
後編は今日の19時に投稿します。
少しでも面白い、続きが気になると思ったら「評価」「感想」お願いします。作者の励みになります。