自宅警備員をクビになったので、勇者に再就職する。   作:哀上

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二スレ目 番外 その1 『お手伝いさんと二人の中二病』

 二スレ目 番外 その1 『お手伝いさんと二人の中二病』

 

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「お嬢様、いかがなさいましたか?」

 

 こんな時間にゆうのお嬢様から電話とは、珍しい。

 何か、急ぎの用事でもできたのでしょうか?

 

「車を回して頂戴」

 

「はい、かしこまりました」

 

 車を?

 本当に珍しいわね。

 

 護衛すら毛嫌いして明るい時間帯はつけたがらないのに、車での迎えなんて嫌がりそうなものだけど。

 それとも、やっと心を許してくださったのかしら?

 それならありがたいのだけれど、心当たりがないしきっと違うでしょうね。

 

 そもそも私も使用人の中では気を許されてる方ではあるわけだし、もしかしたらゆうのお嬢様の使用人に対する態度は今の私レベルで上限なのかもしれないわね。

 

「『サーチ』」

 

 結構近いわね。

 こんなことで評価下げられても困るし、なるはやで行きましょう。

 

 死語?

 

 私たち魔法使いは過去に生きるのよ。

 

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 ゆうのお嬢様の前に車を止める。

 

 それにしても、これは驚いた。

 ゆうのお嬢様が男と一緒にいる、お嬢様より少し年上の男と。

 しかも、なかなか楽しそうな様子だ。

 

 本当にゆうのお嬢様だろうか?

 そう思うぐらい、今日はらしくない行動が多いように見える。

 

 色恋というわけではなさそうだが、それでも普段見合いの誘いを相手を調べることすら断るゆうのお嬢様が男と楽しそうにしているというだけで驚きだ。

 さらには家に連れ込もうとまでしている。

 

 それほど大事なお客様、ということなのだろう。

 

 それにしては男の方はかなり混乱していて、現状をあまりできていないようだが。

 なかなか車に乗り込もうとしない。

 

 私がお嬢様のことを詳しく知らず、客観的にこの状況を見たらどう思うだろう?

 間違いなく、肉食系の女の子に喰われる直前の草食系男子にしか見えないと思う。

 

 ゆうのお嬢様は、こんなに積極的なお方だっただろうか?

 芯の強いお方だとは思っていたが……

 

 いや、今は仕事中。

 やめておこう。

 こんなくだらないこと考えているのがばれたら即首が飛んでしまう。

 

「??……ああ、リョウさんこれはただの馬車みたいなものですよ。そんなに危険なものでもないので、ささどうぞ」

 

 いつまでも車に乗ってこない男(リョウというらしい)にお嬢様はそう声をかけた。

 

 え?

 馬車?

 

 え?

 何の話?

 

「あ、す、すいません」

 

 男はその言葉を特に疑問にも思わなかったのか、謝りながら車に乗り込んだ。

 

 え??

 なんで話通じてるの?

 もしかして、隠語か何かですか?

 

 お嬢様は何となく好んで使いそうなイメージあるけど、この男がそういうのを使うイメージはあんまりわかないけど。

 でも、共通の隠語を使えるって……私はこの男初めて見たけど、二人はかなり深い中だったりするのだろうか?

 

「いえ、初めて見る物には誰でもそうなるものだと思います。私の方こそ配慮が足りませんでした」

 

 やはり隠語なのだろう。

 聞いていても、意味が全く分からない。

 

 いや、意味は分かるのだけれど。

 ただの日本語だし。

 

「そ、そうですかね」

 

 そのまま受け取ると、男が車も見たこともない未開人になってしまうという問題点を除けばすんなりと理解できるものではあるのだけれど。

 その問題点を無視するのはあり得ないだろう。

 

 ニイタカヤマノボレといわれて本当にニイタケヤマに登るあほはいないし、通信傍受してそれを本当に登山の命令だと受けとるあほもいないだろう。

 

「あ、あの前に座っている人は?」

 

 え?

 私?

 

 この男は、お嬢様とそれほど親しいわけではないのだろうか?

 いや、そんな男を家に連れ込むなんておかしな話だし……

 でも、私なんかについて疑問に思うってことは、お嬢様の表面すら知らないってことになる。

 松影家ってことだけでも知ってれば、私みたいなのが運転していること疑問にも思わないだろうに。

 

「ああ、御者みたいなものですよ。これ車っていうんですけど、馬にひかせるわけではなくてからくりで動いているので御者も中にいるんです」

 

「そ、そうなんですね」

 

 え?

 

 さっきの疑問も隠語の一部だったんですか?

 それとも、お嬢様もしかして記憶喪失の子でも拾ってきたんですか?

 

 いやまぁ、記憶喪失にとっては馬車も車も同じ未知でしかないだろうけど。

 馬車はわかるのに車知らないとか、どんな未開の地から連れてきたのだろうか。

 いや、連れてくるにしてもここまでくる間にいくらでも見ただろう。

 全く持ってわからない。

 会話の内容も、男がどんな存在かも。

 

「ど、どうも初めまして」

 

「初めまして」

 

 話しかけてきた。

 

 こいつはほんとになんなんだろうか?

 私に挨拶なんて、する必要ないどころかどちらかといえばマナー違反な気がしないでもない。

 

「そんな気を使わなくてもいいわよ。彼女は使用人だから」

 

「え?」

 

 が、どうもお嬢様はそれを見て機嫌を損ねるどころかほほえましそうにしている。

 いつもの気難しいお嬢様はどこに行ったのだろうか。

 

 まぁ、それほど大事な存在というだけなのだろうけれど。

 

 ここで私が返事でもして普通に世間話でもしようものなら……

 あの男がうらやましいような、そんなお嬢様に目を付けられて哀れなような。

 

「ああ、御者って専門職が多いのかしら? このからくり基本的に誰でも動かせるように作られているから、使用人が使うことも多いのよ。もちろん専門職の人もいるけどね」

 

「なるほど。この世界は俺が元居た世界よりずいぶんと進んだ世界らしい」

 

 と思ったら、また隠語同士の会話が始まった。

 これは本当になんなんだろうか、この二人は隠語じゃないと話せない呪いにでもかかっているのだろうか。

 

 会話の流れは続いてるのに、前提条件が意味不明過ぎて会話の方向がどっかに飛んで行っているようにしか聞こえない。

 

 Q車を知らず馬車しか知らないような男をどこの未開から連れてきた?

 A異世界

 

 意味が分からない。

 

 隠語でこんなにすらすらと、どれだけの単語の意味をすり合わせたのだろうか。

 というか、ここまで隠語が多いと普通に日常会話していても別の意味で伝わりかねないと思うんだけど。

 

「進んだ世界ね。そのせいで廃れたものも多いのだけれど」

 

 ただ、2人の会話を聞いていると頭がおかしくなりそうである。

 

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