一スレ目 裏 その2『元自宅警備員、ホームレスになる』
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暇というものは想像以上に辛い。
スマホの電源も切れ、お金も心もとない。
当然暇になるが、その暇をつぶす手段が全くない。
引きこもり時代毎日同じようなことをしながら、俺はなんてひまでつまらない人間なんだと思ったことがある。
しかし、今ならわかる。
あの時の俺は暇じゃなかった。
確かに時間はあったし、それを無意味に消費していたが、それでもゲームにアニメ小説とやりたいことできることはたくさんあった。
本当の暇は、やりたいことが全くないもしくはできることが全くない状態。
そしてそれは苦痛でしかない。
今の俺にできることなんて何もない。
スマホの電源が切れたせいで、保存した動画と画像も見れない。
体力がないから長時間の立ち読みも、無意味に歩き回って、気を紛らわすことすらできない。
本当に地獄だ。
だからだろう、俺がこれを買ってしまったのは。
「はぁーー」
レジ袋に入った少し分厚い漫画、そして充電。
立ち読みをしようと入ったコンビニで目に入り、そのまま買ってしまった。
ただでさえ心もとなかった財布の中身がさらに心もとなくなる。
でも暇に耐えられなかった。
財布の中身が自分の寿命に直結すると分かっていても、買わずにはいられなかった。
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公園で暮らし始めて数日、この生活に少しずつ慣れ始めてきた。
夜の寒さも堅いベンチもすべて段ボールが解決した、まさに段ボールは人類の発明した最も偉大な発明品だと思う。
そして財布の中の野口様も順調に数を減らしていた。
このままいけばもって数週間、家から出るんじゃなかったそう心の底から後悔し、そしてそんな自分が情けなくて、一人寂しく涙を流す。
俺は家を出た、でも本質は何も変わっていない。
家に引きこもるニートは外に出て、公園で暮らすホームレスになった。
社会のごみはどこに行っても社会のごみだ。
「兄ちゃん、こんなところで真昼間から何してるんだい?」
突然、見知らぬ人から声をかけられた。
人のよさそうな笑顔を浮かべた男性、公園のベンチでうなだれる俺を遠くから眺めるやつは何人もいたが、直接話しかけてきた人は初めてだ。
少し安心し、そして嬉しかった。
俺に笑顔で話しかけてくれる人なんて、ここ数年いなかったから。
「い、いえ。何にも」
でも俺のようなコミュ障に、初対面との会話なんてできるわけない。
これでめいいっぱいだ。
いやこれでも頑張ったし、少しは成長したのだ。
きっとホームレス初日の俺なら、何も答えることなく顔をそらしどこかに立ち去っていたことだろう。
そんな成長した俺もこれ以上の会話は無理だ。
話しかけてもらってとてもうれしいが、出来れば早く立ち去ってもらえないだろうか。
早くしてくれないと体が震えて……
「そうか。お! そのキーホルダー”さくらちゃん”じゃん、もしかして好きなの?」
「え? そうですけど」
さくらちゃん知ってるの?
そんなにメジャーじゃない同人サークルの、しかも何年も前のゲームに登場したキャラなのに。
もしかして見かけによらずオタクなのかな。
「俺そこのサークル大好きでさ、このの前の最新作も最高だったよ」
オタクだ。
しかも俺と同じサークルが大好きなんて……
「サイコーでしたよね! でも俺としてはなんというか、昔のコア層向けだったころと変わってしまったような気がして少し寂しかったというか、いや別にそれが悪いとは言わないんですけどね。昔だったらここもっと過激だったんだろうなとか、このキャラ昔だったらもっとぶっ飛んでたんだろうなとか思うと。いやまあそれだけ多くの人に見られるようになったというのは、当然喜ぶべきことなんですけど……」
自分でもびっくりするぐらい口がよく回る。
好きなことについて語るなんて、何年ぶりだろう。
リアルでなら、高校を中退して以来初めてかもしれない。
さっきまで重かった体が少し軽くなったような、真っ暗だった心が少し明るくなったような、そんな気がする。
「この後予定とかあるの? もしよかったらファミレスで話さない?」
え?
もっと話したい!
「もちろん! あ、でもお金持ってないのでやっぱり……」
そうだ、俺にファミレスに行く金なんてないんだ……
でももっと話したい。
会話がこんなに楽しいものだって久しく忘れていた。
「そんなのいいよ、おごるおごる。車あっちに止めてあるから、付いて来いよ」
「え、ほんとですか! ありがとうございます」
え?
いいんですか、ほんとに。
この人はなんていい人なんだ。
ひとりベンチに座る俺に声をかけてくれて、見ず知らずの他人にファミレスまでおごってくれるなんて。
俺もなれるならこんな大人になりたかった。
「そうだ自己紹介がまだだったね。松尾涼太だ」
「お、俺は岡田亮です」
松尾涼太さんか……
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