白骨化した宿儺の指   作:限界社畜あんたーく 

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本編に入る前に、少し自分語りをさせてください。

なぜか帰ったら、UAとお気に入りがめっちゃ増えてた・・・しかも感想と評価までもらっちゃって。

文字数だけ見るとドラゴンボールの方が多いのに、この差は一体・・・!?

てなわけでメッチャ緊張して書いた宿儺編です。


なお、この宿儺は少しバグっているので、原作ファンの方は注意です。


    宿儺の腹の中 宿儺視点

 1000年だ。

 

 

 

 

 

 

 この何もない空間を、1000年もだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 暇を潰すのも途中で飽きた。

 

 

 

 

 

 

 

 もはや何も、考えたくはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

火球(ファイヤーボール)

 

 

 

 

 

 

 

 

 目の前に、火花が散った。

 遠き日に見た、美しい火花だった。

 たしかに、「■」「開」(フーガ)を使えば炎は生み出せる。

 しかし、それは術式によって作られた、偽りの炎。

 純粋なる光の輝きは、凝り固まった瞼を貫いた。

 

 

 目を開けば、そこには妖怪(あやかし)がいた。

 自分が言うのもなんだが、それはあまりに人と呼べる存在ではなかったのだ。

 

 漆黒のローブに身を包み、金色と輝く蛇が絡まったような杖を持ち、指に幻が如き指輪は九つ揃えている。

 海の外より伝わる、魔法使いという存在に、纏う物だけは酷似していた。

 

 

 問題は、当の本人だ。

 皮も肉も存在しない、ただの白骨が動いているのだ。

 これまでに死者を媒介とする呪術師は見たことがある。

 だがそれは、死者を傀儡として操るに過ぎない。

 だが、アレはどうだ。

 ひとりでに歩き、ひとりでに喋り、ひとりでに炎を起こす。

 

 これを妖怪と言わずして何というか。

 

 

 いや、そもそもだ。

 

 

 そもそもこいつは、何故ここにいるのか。

 

 

 

ここは生得領域。

 

 ここは腹の中。

 

 何人も入ることが出来ぬ、意識のみの空間。

 

 

 

 

『何者だ、貴様』

 

 

 

 

 声は口から勝手に出ていた。

 異形はゆっくりと、こちらへ振り向く。

 

 

 その時

 

 

 圧倒的な威圧感が、全身を蝕む。

 

 振り向くだけでも、そこには重圧な威圧が発生していた。

 足取りから手の動き。振り向くときの速度、そして杖を地に打ち付けるタイミング。

 その全てが、王の貫禄を放っていた。

 

 

 

(気に入らんな)

 

 

 

 心底、その態度が気に入らない。

 自分以外に、威風堂々とした、王たる風格をもつ存在が、あまりにも目障りだった。

 

(貴様のその化けの皮、俺が剥いでやる)

 

 

『火花が散ったと思い見てみれば、骨が歩き喋っているではないか。どうやってここへ来た』

 

 

 煽りを絡めて言葉を投げる。

 この妖怪にとって「骨」と呼ぶことが煽りになるのかは分からないが。

 

 虚空に浮かぶ深紅の光が、射殺すようにこちらを見つめる。

 

 

 

「これは、自己紹介をすべきかな?私の名はアインズ・ウール・ゴウン。ここへは意図してきたわけではない。事故か偶然か、理由すらも分かってはいない」

 

 

 

 貫禄と威厳のある声だった。

 挑発は効かないのか、それとも「骨」を煽りとして認知していないのか。

 いや、それよりも気になることがある。

 

 

(あいんず・うーる・ごうん?)

 

 

 なんとも不可思議な名前をしているものだ。

 それに、意図して入ってきたわけではないだと?

 この俺の腹の中に?

 

 

『偶然で俺の生得領域に入り込むものか』

 

「それが事実だ。それに、私とて好きでここに来たわけではないのだ」

 

 

 1000年の間、喋るということさえ片手で数える程度しかしていない宿儺だが、それでも相手が嘘偽りを言っているのかは数度言葉を交えるだけで、察することができる。

 この言葉には、嘘どころがまるで固い意思を感じた。

 

 

『・・・なるほど。偽ってはいないようだな』

 

「こちらも問いたいことがある。君の、貴殿の名は?」

 

 

 名乗るべきか。

 普通であれば、相手が名乗ったのだからこちらも名乗るべきだろう。

 それこそ、相手が王なれば、こちらも呪いの王としての威厳を見せねばならないだろう。

 

 だが、それをプライド(誇り)が許さない。

 

 

 

『骨に語る名はない』

 

 

 

 狭量なものであれば、憤慨して本性を表すだろう。

 そうでなくとも、言葉のどこかしらに不快感または嫌悪感が漂うものだ。

 

 しかし、何事もなかったかのように、その異形───アインズの話は進められる。

 

 

「それは残念。ならば、先ほど言っていた俺の生得領域に入り込む、とは一体どういうことだ?」

 

 

 王としての貫禄、圧倒的な威圧感、そしてこの器のデカさ。

 どうやら狭量だったのは、自分の方だったようだ。

 

 

 

『そのままの意味だ。俺の思想の中、腹の中と言っても差し支えないがな』

 

 

 

 無礼の詫びとは言わないが、正直に答える。

 アインズは顎に手を当て熟考を始めた。

 その様子を黙って見ていると、なにやら芳しい香りが鼻をくすぐった。

 

 香りの正体は葡萄。より正確には、アルコールの香り。

 

(・・・酒か?今までに嗅いだことのない、芳醇でふくよかな香りだ。まさか懐に隠しているのか?)

 久しい酒の香りに、心が踊る。

 一口啜れば口内を優しく包みこみ、二口啜れば喉と心を潤して、三口啜れば胃を濃く焼いてくれる。

 だが、酒はアインズの手中にある。

 

 手に入れる方法を模索する。

 実力を知らぬ相手を、それもこんな妖怪を襲うほど、宿儺は愚かではない。

 どうにかして、平和的に手元にわたる方法はないものか・・・。

(そういえば、こいつはここには意図して来たわけではない、と言っていたな。となれば、今求めているのは情報だろうか)

 つまり、情報を渡す代わりに酒を貰うという、取引を行えばいいのではないか?

 だが、それではある問題が発生する。

 

 

 

 それが、宿儺とアインズの立場、つまり上下関係だ。

 

 

 

 普通に考えれば、対等という立場に納まるだろう。

 だが、この取引が終わった後は、一体どうなるか。

 

 

(情報という形に残らぬ物を渡した俺と、酒という形に残る物を渡したこやつ。どちらが優勢に立てるかは目に見えている)

 

 

 今後のことを見据えれば、対等という立場はとても危ういだろう。

 だが、ここで無理矢理上に立とうとすれば、この取引そのものが消えるかもしれない。

 それだけは避けたいところだ。

 

 

(・・・ならば、こやつが俺に恩義を感じるように会話を流せばいいのではないか?)

 

 

 理想の流れとしては・・・

 1、自分が酒に興味を持っていることを伝える。

 2、相手の口から取引を持ち出させる。

 3,多少取引をごたつかせて、渋々という形で取引を成立させる

 だ。

 

 

(この俺自ら会話の流れを誘導せねばならんのが癪だがな)

 

 そもそも1000年も会話をしていないので、上手くいくとは限らないのだが。

 

 しかし作戦は決まった。

 

 

 

 

『それよりも、だ。貴様の懐に隠しているソレはなんだ?』

 

 

 何気なく、相手に自分が酒のことに気付いている雰囲気を出す。

 

 

「大変貴重なものでな。私が持つ物の中では一番価値がある物だ」

 

 

 これには普通に驚いた。

(つまり、あの手に持つ黄金の杖よりも価値があるというわけか・・・?)

 そこまで高い酒を懐に隠している意味が分からない。可能性があるとすれば貰い物という線だが。

(しかし、情報と比べれば安いものだろう?)

 

 

『そうかそうか。通りで芳しい香りがするわけだ』

 

 

 ここで餌を巻いた。

 餌と言っても単なる感想なのだが、相手からしてみれば『これは取引に使えるチャンスだ!!』と思うだろう。

(さあ、ここまでは完璧だ。あとは食いつくのを待つだけだ)

 唯一気がかりなのは、なぜかアインズは不思議そうに首を曲げたことだけだが。

 

 

 

「・・・私としては、現時点で持っている必要がないので、貴殿に譲っても構わないのだが・・・」

 

 

(骨なのだから、当然だろ)

 

 言い方に少し疑問を感じたが、しかし作戦通り食いついた。

 あまりに予想通りに行き過ぎて、正直笑みが止まらない。

(そこで、貴様はこう言うのだろう?)

 

 

 

 しかし、あまりに順調すぎて、調子に乗ってしまったのも事実だった。

 

 

 

 

「私はある物を求めている。それは」『情報、だろうな』

 

 

 

 アインズが宿儺に向けていた眼光が、更に増した気がした。

(いかん、調子に乗りすぎたか?餌のことに気付かなければいいのだが・・・)

 

 

 だが、口に出した以上、下手に出る訳にはいかない。

 

 

 

『・・・この状況で貴様が求めているものぐらい、大方予想は出来る・・・・・・いいだろう。ソレと引き換えに、俺が知る限りの情報をお前に与えてやる』

 

 

 

(さあ、どうなるか・・・)

 

 

 

 

「そうか・・・!!では早速だが」

 

 

 

 

 釣り上げた。

 

 

 宿儺の完璧な勝利だった。

 

 

 

 宿儺の口角が、有頂天に達する。

(あぁ、もうすぐだ。1000年ぶりの・・・ぉ?)

 だが、アインズがとった行動は、予想とは異なるものだった。

 

 

 

 

『・・・何をしている?』

 

 

 

 アインズは胸の宝玉を取り出して、それを差し出すようなポーズをとっていた。

 まるで、あなたが欲しいものはこれでしょ?みたいな雰囲気を出しながらだ。

 

 

 

 

「貴殿の望みの物を・・・?」

 

 

 

(何か勘違いをしているのか?それとも、これはこやつの作戦か?)

 そこで、これまでの会話を思い返してみた。

 確かに、誤解を生むかもしれない言い方をしていた部分もあった。

 

 

 

 

『・・・私が欲しいのは、その芳しい香りを放つ、酒のことだが?』

 

 

 

 とりあえずはアインズの間違いを訂正する。

 場を和ますためのおふざけの可能性もあるが、念のためだ。

 

 暫くして、アインズからローブが擦れるような音が聞こえた。

 さすがにアインズの声ではないと思うが、アインズが何か考えた結果なのは確かだろう。

 

 

『どうした?』

 

 

 するとアインズは視線を宿儺の方へ戻し、手に持っていた宝玉をさっと元の場所に戻した。

 

 

 

「酒の方か。いやすまん。勘違いだったようだ」

 

 

 

(勘違い・・・だと?)

 言葉が耳に入った瞬間、悲しみと怒りが震えとなって体に現れた。

 

 

『・・・勘違いだと?まさか、持っていないなどというつもりはないだろうな?』

 

 

 常人であれば、ショック死するかもしれないほどの、濃い殺気と怒りの波動。

 それがアインズの全身を叩く。

 

 

 しかしアインズは至って普通。

 むしろ、宿儺の怒りの波動を前に高揚、または興奮したのか、一瞬体が震えただけだった。 

 

 

 

「いやいや。むしろ酒の方なら、酒樽だけ見ても万を超えるほど持っているぞ」

 

 

 

 思わず大きな声が出てしまう。

 

 

『何!?それは本当か!?』

 

 

 しかし、宿儺の心はだんだん暗いものへと変化していく。

 それもそのはずだ。

 今のアインズのどこを見ても、万を超える酒樽など持っているようには見えないのだから。

 

 

(持っている、というのは俺の腹の前に来る前の、外の世界でのことだろう。全く、期待しただけs)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、試しに一本出してみようか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 思考が止まる。

 

 

 

(何?

 

 何といった?

 

 今こいつは何と言った?)

 

 

 

 思考を再稼働させる前に、アインズの手が虚空へと消える。

 まるで肘から先が切り離されたような、まことに不可思議な光景だった。

 

 

『術式・・・いや、領域か?見たところ別の空間に腕の先を送り込んでいるように見えるが』

 

 

 思考力が失われたことにより、思わず考えていたことが口から洩れてしまうう。

 しかしアインズは、それには構わず何かを探していた。

 

(いや、領域という可能性は低いか。領域は中に物を持ち込んだとしても、次に展開するときには別の領域、つまり持ち込んだものがそのまま継続されることは出来ないようにとなっている。では術式か?しかし術式だとしたら、一体どのような術が施されているのか。例えば術式により亜空間を作成し、その中に物を入れ・・・だがそれならば亜空間との接続を維持しなければならんだろうし・・・・・・何が何やら分からんが、まあいい)

 

 

 

 思考を止めて、目の前で一生懸命何かを探すアインズをボーっと見ていた。

 

 

 

 暫くして、アインズは目当ての物を見つけたのか、腕を引き抜いた。

 

 

 そして、その手の先には、今まで見たことがないような、巨大な酒樽が握られていた。

 それも、宝石や金属糸で周りを装飾された、最高級という言葉では足りぬほどの輝く酒樽だった。

 もちろんこの酒樽は見た目だけでない。

 芳醇な酒の香りが漂い、宿儺の鼻腔を撫で回った。

 酒という概念が覆されるほどの、濃厚な香りだった。

 

 

 

 

『おお・・・おおお!!!!』

 

 

 

 

 感動の再開とは、まさにこのことだろう。

 

 雄叫びに似た息が、口から漏れ出る。

 

 宿儺は人生で初めて、今この瞬間、感動した。

 

 

 

 

「貴殿が求めるのであれば、他にもいろんな酒を提供できると思うが・・・いかがかね?」

 

 

 

 

(まだ他の種類もある・・・だと!?)

 あまりにも自分に好条件すぎる。

 たかが情報を話すだけでここまでの好待遇なのだ。

 

 もはや、語る以外に道は無・・・・

 

 

(いいや!!屈服するのはまだだ!!!)

 

 

 折れそうになるプライドを何とか保つ。

 

 そう、あくまでアインズとは『情報を提供する者』と『酒を献上する者』の明確な上下関係を作らなければならないのだ。

 もし、対等という位置にアインズを置いてしまえば、間違いなく自分がこれまでに築き上げた呪いの王(両面宿儺)としてのプライドが崩れ去ってしまう。

 かといって、ここで上位に立つ立ち回りをすれば、機嫌を損ないこの取引が無くなる可能性もある。

 

 だが屈してしまえば・・・・・・。

 

 

(なんとか・・・なんとか道を・・・・・・上に立つ道を・・・だが対等に立った方が・・・)

 

 

 

 考えに考えを重ね、ある一つの結論に辿り着いた。

 

 

 

 

『・・・酒以外は、つまみはあるか・・・?』

 

 

 

 

(つまみがあるなら対等。なければ俺が上だ!!!)

 子供のような、二択の発想。

 しかし、完全に混乱しきった宿儺には正常に働く知性は残っていなかった。

 

 

 

 

 暫くの静寂が、二人の間を走った。

 

 そして、アインズは口を開いた。

 

 

 

 

 

 

「・・・腐るほどある、と言ったら?」

 

 

 

 

 

 

 もはや、語る言葉はなかった。

 

 

 

 骸の上から見下すことを止め、アインズと対等の位置に立つ。

 そして、手を差し出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『俺の名は両面宿儺。これからよろしく頼む』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ、よろしく頼む」

 

 

 

 

 

 

 

 二人の手が重なり合い、硬く握られた。




オリジナル要素・・・
 1.宿儺の好きなもの
宿儺の好きなことって、食べることらしいですね。漫画は全巻揃えてるんですけど、まだまだ知らないこと多いかったです。

 2.宿儺暴走
千年も暇を潰してたんだし、まあ酒一つでこうなるのも納得だわな。と自分に言い聞かせる。

 3.つまみ
前回で説明した酒同様、つまみも同じくカンストするぐらい持ってます。
ゼル〇のブレ〇イみたく、調理済みの食べ物も持っている設定です。
でも、ここまで足しても『アインズ様ならまあ持ってそうじゃね?』ってなるの凄いですね。

 4.気に入らんな
天上天下唯我独尊の宿儺君。しかし、一度認めた相手に関してはむしろ好意を持つ…かも?(五条悟?知らんな)そのため、最初の方はアインズのことを『偉そうな骸骨野郎』と嫌悪感を持っていますが、中盤で王としての才覚を認めたことで、好意を持つようになりました。

初めて別視点を書いたので、かなり試行錯誤をしました。
一度諦めようとも思いましたが、前回投稿予定って書いちゃったし・・・と渋々書きました。

次回はほのぼのしつつ情報を共有して、アインズ様の方針を決定していきます。


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