買った俺:ドゥワア ジュウナナカン!!
最初の俺:乙骨くん・・・ちゅき
前半の俺:???????
中盤の俺:お、おう・・・?
後半の俺:(完全燃焼)
最後の俺:続きはどこで読めますか?
三輪の刀を借りたブレインは、加茂の案内を受けながら中京区まで向かう。
だが、流石に歩きでは時間がかかると判断し、加茂の自腹でタクシーに乗ることになった。
窓越しに流れる景色を、まるで満天の星空を見る幼児のようにブレインは見ていた。
その様子を見て、加茂は疑問に思う。
「車に乗るのは初めてなのか?」
「そりゃあな。乗ったこともなけりゃこんなもの見たこともない。あったのは・・・馬車ぐらいだな」
アングラウスは、異世界から来た。
最初は半信半疑ではあったが、今は疑いようもないほどに信じている。
「しかし、魔法も馬もなしに、こんなでけえもんが動くなんてな。これが文明の利器ってやつか」
こんなことを真剣な顔で言われるのだ。
しかも30代そこらのおっさんがだ。
最初こそ、何言ってんだコイツみたいな顔で見ていたのだが、徐々に自分の方がおかしいんじゃないかと錯覚するようになっていった。
そしていつしか、ブレインの言うことに疑問を抱かなくなっていった。
慣れというのは末恐ろしいものだ。
「アングラウスがいた世界は、さぞ不便だったのだな」
ちなみに呼び捨てで呼んでいるのは、本人がそれで構わないと言っていたからだ。
確かに年齢差こそあるが、入学試験を受けている時点で加茂は先輩に当たる立場なので、問題ないと言えば問題はない。
呼ぶ毎に複雑な心境になっていくことさえ除けばだが。
「不便かって言われると・・・まあ不便だったのかもな。俺はそれでも十分満足していたが」
「そういうものなのか?」
「そういうもんなのさ。それに、不便な暮らしも慣れたら楽なもんだぜ?」
「住めば都というやつか。なるほど一理あるな」
異世界でもそういった感性は変わらないらしい。
いや、同じ人間なのだからそれも当然か。
(見た目に反して、割と普通の人間なんだな)
服装や髪型、培った常識が
異世界=野蛮というイメージがあったのだが、それを改める必要があるらしい。
「例えばなんだが、どんなことが不便と感じるんだ?」
「そうだな・・・時折盗賊に襲われる・・・とか?」
前言撤回。
異世界=野蛮のイメージは改めなくてもよさそうだ。
──────
───
─
着いた先は廃ビル。
道路沿いに建っており、向かいにはコンビニエンスストアが建っている。
外観で言えば虎杖と釘崎が少年を助けたモノと似ているが、それよりも若干細く長くなっている。別に捻くれたところもない、ただのどこにでもあるビルだ。
しかし、その中から醸される雰囲気は、この世のモノとは思えぬほどに悍ましい。
「・・・すげえな。こんな世界でも死の匂いがするなんてな」
「死の匂い?ここから中の匂いが分かるのか?」
「いや、感じ取るのは鼻じゃない。
そう言いながら、こめかみのあたりを指で突く。
「幾数の戦場を踏み越えるとな、体が感じ取る前に頭が理解するんだ。『この先は危険』ってな」
「勘、というやつか?」
「似たようなもんだ」
いわゆる危機察知能力というヤツだ。
相手との命を賭した戦いを行うほど、相手の殺意や敵意に対して敏感になっていく。
その感覚に慣れていくと、予期せぬ攻撃にも対処することが出来るようになる。
とはいえ相手の攻撃がすべて察知できるわけではないのだが。
そのうえ、ブレインの危機察知能力は、いざという時に全く効果を発揮しないポンコツ仕様になっている。
(もしあの時、あの女に出会うことを察知していれば、結果はもっと違ったのかもしれないな)
その世界線の場合、クライムとセバスに会えなくなるかもしれないが。
そういう意味では、あの吸血鬼に感謝の念が・・・浮かぶような浮かばないような。
(・・・ところで、なんでカモは動かないんだ?)
目線を向ければ、ビルの入口より少し離れた場所に立っていた。
中に入る気はないのだろうか。
そんなことを考えた矢先、加茂の口が開いた。
「行かないのか?」
「どういうことだ?」
「忘れたのか?今回はアングラウス、君一人で中の一級呪霊を制圧しなければいけないんだ」
「・・・あ、そういえばそうだったな」
言われてみればと思い出す。
これは加茂と自分の任務ではなく、ブレインに課せられた試験。
加茂が付いてくる道理はないはずだ。
いや、場合によっては助太刀するかもしれないが、何の理由もなく介入することもないだろう。
(俺一人か。どうしようかね)
さてとブレインは考える。
如何にして、単独でこの魔城を奪還するのかを。
中の構造は分からない。敵の数も一体だけとは限らない。
敵が使う戦術も、特殊能力スキルも魔法も何を使うのか分からない。
逃げるための裏道もあるかもしれないし、人質を持っているかもしれない。
あらゆる戦術。あらゆる状況。あらゆる場面。
一番の最適解を目指して、あらゆる可能性を考える。
『そんなこと、馬鹿な人間が考えても無駄なこと。男なら迷わず突っ込むべきだ』
ふと、あの男の声で今のセリフが再生された。
元はどこかで聞いた英雄譚のセリフだったのだが・・・。
(アイツなら言いそうだな。いやもっと理知的に言うか?)
あの男は見た目に反して、いろんな意味でも器用なところがある。
舌は俺以上に馬鹿だが。
(・・・俺は、幸せ者だな。戦いに向かう前に、こんなことを考えられるなんて)
それもこれも、あの時に歯車が狂ったおかげだ。
絶対にないとは思うが、次にアレに会ったときは、感謝でも告げようかと考える。
(その時には、俺の首が飛んでるかもしれないがな)
自分の首が切られるついでに、あの鋭利な爪も一緒に落とせればいいのだが。
(次は二本同時が目標だな。爪切りは四光連斬で一点を狙う技。その四連撃を二連撃づつに分けて、二つの爪を同時に狙えば・・・)
そんなことを考えていると、後ろにいる加茂から声が掛かった。
(何故、あの男は進まないんだ?)
棒立ちしているブレインの後ろ姿を、加茂は怪訝な目で見る。
怖気着いた、とは考えにくいが・・・。
「どうした?」
「・・・ん?なにがだ?」
ブレインが振り返ると、そこにはオッサンらしい臭い笑みがあった。
(笑っている・・・これから一級呪霊と戦うというのに)
これが戦場慣れした者の余裕なのだろうか。
ブレインが首を傾けるのを見て、現実に引き戻された。
「君が一体何を考えていたのかと思ってな」
「なんだ?俺に心配でもしてくれるのか?」
「いや、心配はしていない」
「即答かよ」
裏を返せば、会って間もないこの男を信用しているということでもあるのだが。
どうやらそれは本人には伝わっていないようで、苦笑いをしている。
「俺が考えてたのは・・・そうだな。爪の切り方についてだ」
(???????)
脳内に宇宙が広がる。
「爪の切り方?」
「爪の切り方だ」
言っている意味が分からない。
これから戦いに行くというのに、何故爪を切ることを考えるのか。
たしかに、呪霊を狩りに向かう際、緊張をほぐすために呪霊とは全く他のことを考える者もいる。
例えば、『帰ったら何がしたいか』『帰ったら何を食べようか』『友人の誕生日プレゼントは何にしようか』・・・等々。
所謂現実逃避というヤツだ。
加茂はあまりしないが、こういった気の紛らわし方をする者を見たことはあった。
しかし、この男が考えているのは、『爪の切り方』だ。
(なんでよりにもよって爪の切り方なんだ?そういう風習でもあるのか?)
木や石を奉るように、異世界では爪を神聖なものとして見ているのだろうか?
いずれにせよ今考えても仕方ないことなので、思考をきっぱりと断ち目線を地面からブレインへ向けた。
「よく分からないがつまり、問題はないということだな?」
「問題はないな。むしろ絶好調だ」
肩を回しながらブレインが答える。
「そうか・・・緊急事態になったら大声で叫んでくれ。私が助けに行く」
「俺が叫ぶときは、勝利の雄叫びだろうがな」
「そうなることを祈っているよ」
ブレインが廃ビル内へ進み始める。
その背中は自信に満ちており、足取りからも強者の余韻が見えていた。
「彼ならあるいは・・・東堂に並ぶ逸材なのかもしれないな」
あの男は頭こそアレだが、実力は術師界隈でも随一。
ソレに並ぶとなれば、次の交流戦は乙骨相手でも期待できるかもしれない。
捕らぬ狸の皮算用とは知っていながらも、なかなかどうして昂ってしまう。
(秤は停学中。二年は四人だけだから、人数合わせで
妄想が捗ると共に、改めて加茂は祈る。
「どうか勝ってくれよ。ブレイン・アングラウス・・・」
(・・・やはり呼び捨てはいけないんじゃないか?)
などと思う加茂であった。
◇■◇■◇
白く染まった廊下を道沿いに進む。
初夏だというのに、冷たい空気が中に満ちている。
これも呪霊の影響か。はたまた建物の構造故か。
「・・・懐かしいな」
人間の三倍以上もの差がある身長。鋭い爪と歪んだ嘴。赤い眼に金色の翼を携え、ミスリル程度の鎧であれば一撃で屠ることが出来る奇襲攻撃を用いて侵入者を撃退する。
また、その見かけに反して精度の高い隠密能力も持っているため、その奇襲攻撃を避けることは初見では不可能だとも言われている。
ソレと対峙した時の感覚が今、ブレインの肌に刺さっていた。
いつでも殺せるぞと言わんばかりの強い殺気。どこから見られているのか分からない、不可視の鋭い視線。
『これ以上先に来れば、貴様を殺す』
そう暗示するかのように、足を進めるたびに殺気は色濃いものになっていく。
しかし──ブレインは足を止めない。
寧ろ、止めるどころが歩く速度が更に増していた。
(来るなら来い。背後だろうが天井だろうが、今の俺に死角はない)
鞘に収まる刀を右手で握り込む。
──その時。
背後から気配──。
「ッシィ!!!」
擦れるような声と共に、背後の呪霊を横一文字に切り下ろした。
呪霊は切られた瞬間ビクンと痙攣し、しかし何事もなかったようにブレインへ迫る。
その鋭い爪をギラリと輝かせて──。
「すげえな。いい刀とは思っていたが、まさかここまでとはな」
爪が虚空を裂いた。
何が起こったのか分からず、呪霊は身体へ目を落とした。
そこにあったのは虚。
胸から下がバッサリと切り落とされ、上半身のみが虚空へ浮いている状態だった
「切れ味は当然のことながら、薄く硬く美しい。俺が使うにはちょっと軽すぎるが」
呪霊が空中で燃えカスとなったことを確認した後に、名残惜しげに鞘に納めた。
「目的の野郎は・・・まだ多分上だな。それまでにコイツに慣れねえとな」
鞘を叩き、先へ進む。
上の階に目指すまでに、10を超える呪霊を切り捨てた。
どれもブレインの足元にも及ばなかったが、しかし刀の扱いに慣れるには十分だった。
「あとはココだけか」
異様な雰囲気を醸す扉を前に、フウと息を吐く。
そして鞘に手を掛けると、抜くと同時に扉を蹴り飛ばした。
奥にあった蝶番が弾け、扉が床を滑るように水平移動する。
しかし速度を失い始めた途端に扉はバタリと倒れる。
その上に乗るように、ブレインは部屋の中へ身を乗り出した。
敵の姿は確認できないが、鞘に置いた手を動かすことない。
目視、嗅覚、聴覚を利用し辺りを確認した後に、ブレインは足を進めた。
部屋の中は所謂会議室のような作りになっており、部屋の中心にはシートを掛けられた二つの柱のようなものと、その間に埃を被ったソファーが置いてあった。
ブレインは一つの柱に向かい、そのシートを力強く剥いだ。
中にあったのは、厳めしい顔の仁王の木像。
高さは1m70cm程だが、下の土台を考えると本体は1m20cm程だろうか。
(この世界での神だろうか?)
勇ましくも雄々しく。
暴れ狂う怒りに身を任せる邪神にも見えるし、冷酷な審判をする断罪者にも見える。
いつぞやの刺青筋肉を思い出すが、それよりも迫力があるように見えた。
フッと笑いシートをソファーにかけると、もう一つの柱へ向かった。
そしてシートを剥ごうと手を伸ばした時。
────憎悪と殺気。
「ングッ!?」
バックステップでその場から回避しようとしたが、鋭い痛みが腹から走った。
腹を押さえながら、眼前の敵に鋭い目を送った。
仁王像とは異なる、悟ったような笑みを浮かべた四つ腕の木像だった。
身長は仁王と同じく1m20cmほど。
蜘蛛のような腕の先端には、それぞれの属性を持った剣を掲げており、それぞれ炎、風、氷、雷を纏っている。
その剣をブンと降りながら、一歩一歩と呪霊が近づいてきた。
(動きが全体的に遅い・・・が)
痛みの走る腹からは、途絶えぬ冷気が放たれている。
あの氷の属性を纏った剣に切られた結果だ。
(一撃でも入るとやべぇな)
さっきの腹のように、掠る程度であれば問題はないだろうが、刀身が身に入ることがあれば重傷は免れないだろう。
最悪、即死もあり得る。
(しかも腕が四本か。こりゃまた厳しいな)
四本の剣を掻い潜りながら相手に攻撃。
これがどれだけ難しいのか分からないほど、ブレインも自惚れてはいない。
「・・・どうしたもんかね」
と言いつつも、ブレインは鞘に手を置くと、腰を低く構える。
武技『神域』
不可視の感知領域を展開すると、薄い空気を口から吐く。
迫る呪霊が領域に入るまで残り──
──三歩。
(『爪切り』を一点ではなく四点に向けて放ち、全ての手を切り落とす。そして本体を神閃で一刈り。流石にここまで上手く行くとは思えないが──)
──二歩。
(──ここでやらなきゃ男じゃねえだろ)
──一歩。
ブレインの肺から、空気が消えた。
───零
「ッカァァあああああアアアア!!!!」
音を置き去りにした四つの斬撃が、呪霊のか細い腕を削り落とした。
思わず呪霊も驚いたのか、数歩後ずさり弱々しい呻き声で鳴いた。
「オ尾汚、垂マ背ンっで死タ・・・」
呪霊よりも速い足取りで、呪霊に近づく。
だが、警戒は怠らず、むしろ先程よりも鋭い眼で呪霊を睨みつけていた。
「隙は見せねえ。ここで殺す」
言葉は通じないと思うが、そう宣言して刀を鞘に納めた。
余裕を見せるのは、勝ちを確信した時だけだ。
相手がまだ動ける状態であれば、一縷の油断も隙も作ってはいけない。
もう一度、神域を展開する。
狙うは首筋。
放つは神閃。
「シィッッ!!」
抜き放たれた一筋の光が、呪霊の首目掛け走る。
だが、それは硬質な音と共に弾かれた。
「何!?」
弾いたものの正体は二本の剣。
風と氷を纏った剣がクロスするように、ブレインの瞬閃を受け止めていた。
(嘘だろ?!アレはただの武器じゃないのか!?)
弾かれた刀を腰に戻す。
それと同時に、神域が迫る何かを感知する。
すぐにその場から離れると、自分がいた場所をクロスするように、光る二本の剣が弧を描いた。
滾る赤と濁った黄色。
恐らく炎と雷の剣だろう。
(俺の神域で感知できたってことは、ソレも体の一部ってことか?)
領域は矢や魔法などの遠距離攻撃は感知できない。
感知するのは相手の動きだけだからだ。
ということはつまり、あの剣は魔法で浮かばしているモノではなく、自分の体の一部ということだ。
空に浮く四本の剣が、まるで呪霊に追従するように周囲を回転し始めた。
「猛シわっ袈ご坐居まァ 背ンッ」
瞬間、剣が一斉にブレインに向け放たれた。
(ここからが本番ってわけか!?クソ!!)
視界を覆うほどの斬撃の嵐が、ブレインを襲った。
オリジナル・・・
1.盗賊(勇者)
死を撒く剣団に入った当時の妄想。抗戦とかあったのかな・・・と今も胸を膨らましている。なお、ブレインの圧勝で幕を下ろす模様。
2.危機察知能力
強者の勘ってやつ。こういうのはステータス的なものではなく、技術のほうがニュアンス的には近いかも。
3.英雄譚
ちなみに英雄譚はそこまで興味なかったが、クライムと付き合い始めたことにより若干の興味がある。ちなみに元ネタは、学生時代にスペースコ〇ラに感銘を受けて書いた黒歴史ノート。今は物置に封印されている。
4.巨大黄金鳥
同じく妄想。モ〇ハンのモンスターとかを考えている学生と同類。
5.呪霊
どこぞの黒い球体が出てくる漫画に居そう(小並感)
なんか個人的に無難な感じになりました。
明日は有給使ってゆっくりしつつ、書き進めていこうと思います。
誤字報告、感想ありがとうございます。