白骨化した宿儺の指   作:限界社畜あんたーく 

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来たる12月に向けてヒロアカの小説を書いてたら、投稿メッチャ遅れました。
てなわけで第14話です。



ちなみに投稿者の好きな曲&BGMランキング上位に位置していた『1/6の夢旅人』が『[[BIG]]の力』に負けました。

ちなみに一位は『本物のヒーローとの戦い』です。





第14話 進化

 部屋から飛び出たブレインは、その速度を維持したまま下の階まで続く大穴に飛び出した。

 元はエレベーターを取り付けていたのだが、ソレが取り除かれた結果だ。

 まだ天井からは縄がぶら下がっているようで、それを握ると今いた階より四、五階下のエリアに飛び降りた。

 

「フウ・・・」

 

 息を整えながら、その場に腰を下ろす。

 

 ブレインは先程まで、呪霊と一対一で五分以上に渡り合っていた。

 相手は四本も武器を持ってはいるが、パワーとスピード、そして手数においてはブレインの方が優勢だったためだ。

 しかし、呪霊とブレインとでは、圧倒的に差が開いているものがある。

 

 それはスタミナ。呪霊で言うところの呪力だ。

 

 ブレインのスタミナが100だとすると、呪霊のスタミナ(呪力)は1000越え。しかも疲れと痛みを感じることはないため、呪霊の連撃はほぼほぼ止まることはない。

 しかも、呪霊の剣は一発即死もあり得る一撃。

 長期戦になれば、間違いなく死ぬのはブレインだ、

 

 それを途中で察し、休息と作戦を練るために逃げたということだ。

 

 

「アイツ、マジでキツイな・・・」

 腰に下げていたポーションを口に流し込んだ。

 体中の痛みと疲れが若干薄まり、それまで痺れていた手の感覚が戻って来る。

 

「畜生、こんなことならケチらずもっと買っておくべきだったか?」

 無い物を今言っても仕方はないものの、過去の自分に罵声を飛ばしたい気持ちでいっぱいになる。

 

「・・・今はアレをどうするかだな」

 

 未だ上の階にいる呪霊のことを考える。

 聴覚で居場所を把握してみれば、アレはまだ階段を下りている途中らしい。

 ひとまず安心しつつも、顎に手を当て頭を回転させる。

 

(長期戦は無理だと分かった。やるなら短期戦だが・・・しかしどうする?)

 

 アレを殺すには剣をどうにかする必要がある。

 あの剣は浮遊しているため、ただ弾くだけでは効果は薄い。

 

「間合いを詰め剣を四光連斬で叩き落して、その後に流水加速を用いて・・・それだと難しいか?」

 

 神閃と四光連斬を併用して打つと、どうしても後隙が生まれてしまう。

 それを流水加速でカバーしようと思ったのだが、それだと相手の剣の方が先に立ち直る。

 そうなれば相手を切る前に、自分が切られてしまうだろう。

 

(もし、剣を弾いた後に間髪入れずに本体を切るのであれば・・・)

 

 流水加速では間に合わない。四光連斬+1をしたところで、結局相手の首には届かない。

 剣を捌くと同時に、相手の首を取る。

 それを確実にするには・・・。

 

 

 

「・・・五光連斬か?」

 

 

 

 帝国との戦争の前に行ったガゼフとの模擬戦。

 その後、互いの弱点を補うべく研磨し合った結果、五光連斬自体は使うことが出来るようにはなった。

 しかしブレインの技術に見合わないそれは、四光連斬同様正確な斬撃を放つことが難しい代物。

 しかもそれに神閃を交えるとなれば、当たる以前に体が持つかどうかの問題が発生する。

 それを今この命がかかった場面で試すのは、あまりにリスクが高すぎる。

 

「四光連斬で剣を弾いて、その隙に前に踏み出して・・・」

 

 様々な脳内シュミレーションを行うが、いずれも勝利には届かない。

 

「やはり五光連斬しかないか?しかし撃つとなると・・・」

 

 悩み、悩み、そして悩む。

 

「・・・ん?」

 

 ふと、上の呪霊に意識を向けると、それが自分の真上に立っているのを察した。

 

 その時、嫌な予感が背筋を這っていく。

 

 

「ッ!?」

 

 

 踏み出し、その場から離れる。

 

 瞬間、天井にひびが入ると同時に、呪霊が降りてきた。

 それと同時に、四本の剣が迫って来た。

 

 

「クッ、こうなりゃ行くぞ!!オオオォ!!!!」

 

 雄叫びを上げ、刀を振り上げ走り駆けた。

 迫る剣を弾き、前へ進む。

 しかし剣はすぐに呪霊の元へ戻り、またこちらへ飛ばしてくる。

 

 

 弾き、進む。

 弾き、進む。

 弾き、進む。

 

 

 スタミナ的には少々きつくなってきたが、自分の予定通りに進んでいることに、思わず慢心してしまう。

 

 

「行けるぜ、今の俺なら・・・!?」

 

 

 その時、ブレインは、視界に剣が三本しかないことに気付いた。

 

 

 

 瞬間、自分に迫る危機を察知し、身を前に投げ出した。

 

 

「ッが!!!!」

 

 

 背中を掠める冷たい感覚。

 もし、判断が遅れていたら、そのまま死んでいただろう。

 だが、安心するにはまだ早い。

 それと共に、三つの剣は螺旋を描いてブレインへと放たれたのだから。

 

「ッチ!!」

 

 剣で受け止め、しかし吹き飛ばされ、後ろの壁に衝突する。

 肺から空気が消え、全身の血が暴れ狂う。

 

(肋骨、やっちまったか?)

 

 手で弄ってみるが、特に折れた感覚はない。

 心の底から安心しつつも、全身の悲鳴によって喜びは打ち消される。

 

(どうする・・・動けないことはない。が、さっきのような動きは出来ない)

 

 鈍くなった各関節に渇を入れながら、重い体を持ち上げる。

 刀を持つことすら億劫に感じる。

 ポーションはない。

 この状況を打破する手立てもない。

 まさに絶望的。

 

(カモを呼んだら、きっとコイツに勝てるんだろうな。・・・でもよ)

 

 グッと、指の先に力を入れる。

 

 

(──ここで引いたら、俺はクライムに、セバスさんに顔向けできねえよ)

 

 

 捉えようによっては、ただの我儘になるかもしれない。

 人によっては、可哀そうな男と卑下されるかもしれない。

 

 それがどうした。

 

 今のブレインの目的は、自分の実力を持って呪霊を倒すこと。

 ガゼフのように、未来に託す思いも無ければ、誰かに捧げる恩義でもない。

 

 あるのは勝利。

 あるのは成長。

 

 

(死ぬ覚悟なんてさらさらねえ。だが、今日ここで限界を超えられるなら、コイツをこの手で倒せるなら──。

 

 

 

 

 

 

俺は死んでも構わないッ!!!!)

 

 

 

 

 

 

 

 刹那。

 

 

 その叫びに呼応するように。

 

 

 それが心中に生まれた。

 

(・・・なんだこれは?)

 

 初めての感覚だった。

 感情の高まりに応じて、炎に油が注がれたように昂っていくこの感覚。

 腹の底から煮えたぎるその炎が、体の芯を燃やし始めた。

 

 次第に手足の震えは無くなる。

 まるで痛みを感じない。

 むしろ体が軽いくらい。

 

「・・・行ける」

 

 そう断言できる、何かがあった。

 

 

 心中に宿る蒼炎。それを掴み、全身に滾らせる。

 

 

 呪霊は虚ろな目を輝かせ、その口に笑みを作る。

 と同時に、剣の先がブレインに向いた。

 

「オマエも、これが最後の戦闘になるって分かったらしいな」

 

 息を薄く吐き、刀を顔の横に添える。

 

 

 そして、大きく一歩を踏み出した。

 

 

「行くぞォ!!!」

 

「巣ィマ、背ンッ」

 

 

 迫る剣を弾き、一歩進む。

 

 続く三本の剣を弾き、また一歩進む。

 

 そしてフェイント。背後から迫る剣。

 その両刀を躱し、弾き、そして進んだ。

 

「それはもう見切った」

 

 弾き進み、弾き進み、弾き進み、弾き進み、弾き進み、弾き進み、弾き進み、弾き進み、弾き進み、弾き進み、弾き進み、弾き進み────。

 それを繰り返す後に、呪霊は既に目の前にいた。

 

(チャンスは一度。これに全てを───)

 

 弾き、弾き、弾き、弾き──。

 

 息が切れ、腕も重くなり、視界も暗くなっていく。

 

 弾き、弾き、弾き、弾き、弾き、弾き、弾き、弾き──。

 

 指の先の感覚がなくなり、剣の先が震えだす。

 

 弾き、弾き、弾き、弾き、弾き、弾き、弾き、弾き、弾き、弾き、弾き、弾き──。

 

 

 

 

 

 

 その時、一筋の光が見えた。

 

 

 

(───託す!!!!)

 

 

 

 納刀し、神域を瞬時に展開させる。

 既に四本の剣は迫っており、このままいけば0.1秒と経たずに串刺しになる。

 

 その未来を覆す。

 

 

 重くなる肉体。

 それが伸びるような、空間に置いて枯れるような感覚と共に、その技を放つ。

 

 

 

 

 

 

「五光連斬!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 英雄の領域へ。

 ブレインはその片足を突っ込んだ。

 

 

 一撃は迫りくる炎の剣へ。

 一撃は弧を描く風の剣へ。

 一撃は弾かれた氷の剣へ。

 一撃は背の後の雷の剣へ。

 

 一撃は呪霊の肩から腰にかけて。

 

 

 空気を切り裂き、神の輝きの如き光を残して、五つの斬撃は呪霊へと解き放たれた。

 

 

 

 

「子ノ多ビ刃…魔こ斗二・・・」

 

 

 

 

 鮮血に似た炎が呪霊の胸から迸る。

 それと共に、剣もまたドロドロに溶けていった。

 

 

 

「モゥ氏わ袈・・・語っ坐ィ魔せンでsッ多…」

 

 

 

 呪霊がドウと倒れ、燃えカスと化した。

 

「フウ、フウ、ハア、ハア、ハア・・・」

 

 刀を腰に仕舞い、荒ぶる息を整える。

 

「勝った・・・のか」

 

 歓喜に満ちると同時に、体が震えはじめる。

 安心、緊張、喜び、羨望、畏怖、恐怖・・・。

 あらゆる感情が洪水となり、渦と成る。

 その激情が全身から放たれたのだ。

 

「これでまた、オマエに一歩近づけたな」

 

 完成にはいまだ程遠く、まだ足を一歩踏み出しただけに過ぎない。

 しかし、その感動と驚きは、今もなお心中を渦巻いていた。

 

 

 

 

 

 ◇■◇■◇

 

 

 

 

 

 戦いを終えたブレインは、疲労により重くなった体を引きずるように、廃ビルから外へ出た。

 蒸し暑い空気と共に、新鮮な空気が肺の中を潤した。

 一息ついたところで、あの時に感じた感覚を思い出す。

 

(胸の中心が燃えた。その熱を体に回したら・・・)

 

 その瞬間だけ、身体能力が飛躍的に上昇した。

 アレがクライムのいう「脳のリミッターを解除する」ということなのだろうか。

(でも燃えたのは頭じゃねえよな。本当になんだったんだ?)

 

 新しい武技でも身に付けたのだろうか。それともアレは偶然だったのか。もしくはこの世界特有の──。

 

 

「・・・ん?」

 

 

 目線の先。

 向かいのコンビニエンスストアの前に、二人の男が立っていた。

 

 一人は糸目の細い男。

 もう一人は顔に傷が入った筋骨隆々の男。

 前者は加茂なのだろうが、もう一人は見たことがない。

(着ている服も黒くないし・・・というか、何だあの服は。人の顔が描かれているのか?)

 黒髪高身長の女性がプリントされた、パツンパツンのTシャツ。

 それを男は喜々として着ていた。

 不審者にも見えなくはないが、加茂と話しているところを察するに、恐らくは知り合いなのだろう。

 二人ともブレインには気付いていないようで、向かい合って話していた。

(カモは優しいからな。だが、友人は選んだ方がいいんじゃないか?)

 

 

 青信号で渡ることを知らず、危うく事故になりかけたが、向かいのコンビニへ向かった。

 

 

 

 

 

「どうやら、勝ったようだな」

 

 傷だらけのブレインを見て、加茂は一言そう呟いた。

 

「なんとかな。・・・で、その隣の奴は?」

 

 気になるのはそっちだ。

 加茂はうーんと顎に手を当てた後、まあいいかと呟くと手を男に向けた

 

()()は私と同じ三年の」

 

「・・・オイ」

 

 

 その時、男が加茂の手を退けながららズイと踏み出した。

 

 瞬間、男から放たれる異様な空気。

 圧倒的な威圧感と、体の芯が震える感覚。

 あのゼロよりも濃厚で、なのに恐怖が沸かない。

 自分の体がこの男と戦いたがっているのか。もしくは生理的に受け付けないのか。

 異様な感覚と感情が、全身を駆けた。

 

 

「俺は三年、東堂葵。オマエのことは加茂から聞いている。ブレイン・アングラウス、だな?」

 

「・・・そうだが?」

 

「オマエに聞きたいことがある」

 

 

 加茂が頭を抑える。

 その様子から、初対面の相手には必ずすることなのだろうと察した。

(実力で言えばゼロより上。アイツの刺青の効果を含めても五分かそれ以上か・・・。流石にセバスさんレベルでは無いと思うが)

 今のブレインは万全の状態ではない。

 万全の状態でも確実に勝てる保証はないが、今戦えば確実に負けるだろう。

 

 

「なんだ?」

 

 

 確実な返答をするために身構えながら、だが素っ気ない態度で聞く。

 

 

 東堂は満面の笑みを浮かべると、両手を合わせて握り込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どんな女が好み(タイプ)だ?」

 

 

 

 

 

 

 

 




書いてて思ったんですけど、この一級呪霊めっちゃ雑魚じゃね?
というわけで14話でした。


次回、ブレインVS東堂!デュエルスタンバイ!


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