てなわけで第14話です。
ちなみに投稿者の好きな曲&BGMランキング上位に位置していた『1/6の夢旅人』が『[[BIG]]の力』に負けました。
ちなみに一位は『本物のヒーローとの戦い』です。
部屋から飛び出たブレインは、その速度を維持したまま下の階まで続く大穴に飛び出した。
元はエレベーターを取り付けていたのだが、ソレが取り除かれた結果だ。
まだ天井からは縄がぶら下がっているようで、それを握ると今いた階より四、五階下のエリアに飛び降りた。
「フウ・・・」
息を整えながら、その場に腰を下ろす。
ブレインは先程まで、呪霊と一対一で五分以上に渡り合っていた。
相手は四本も武器を持ってはいるが、パワーとスピード、そして手数においてはブレインの方が優勢だったためだ。
しかし、呪霊とブレインとでは、圧倒的に差が開いているものがある。
それはスタミナ。呪霊で言うところの呪力だ。
ブレインのスタミナが100だとすると、呪霊のスタミナ(呪力)は1000越え。しかも疲れと痛みを感じることはないため、呪霊の連撃はほぼほぼ止まることはない。
しかも、呪霊の剣は一発即死もあり得る一撃。
長期戦になれば、間違いなく死ぬのはブレインだ、
それを途中で察し、休息と作戦を練るために逃げたということだ。
「アイツ、マジでキツイな・・・」
腰に下げていたポーションを口に流し込んだ。
体中の痛みと疲れが若干薄まり、それまで痺れていた手の感覚が戻って来る。
「畜生、こんなことならケチらずもっと買っておくべきだったか?」
無い物を今言っても仕方はないものの、過去の自分に罵声を飛ばしたい気持ちでいっぱいになる。
「・・・今はアレをどうするかだな」
未だ上の階にいる呪霊のことを考える。
聴覚で居場所を把握してみれば、アレはまだ階段を下りている途中らしい。
ひとまず安心しつつも、顎に手を当て頭を回転させる。
(長期戦は無理だと分かった。やるなら短期戦だが・・・しかしどうする?)
アレを殺すには剣をどうにかする必要がある。
あの剣は浮遊しているため、ただ弾くだけでは効果は薄い。
「間合いを詰め剣を四光連斬で叩き落して、その後に流水加速を用いて・・・それだと難しいか?」
神閃と四光連斬を併用して打つと、どうしても後隙が生まれてしまう。
それを流水加速でカバーしようと思ったのだが、それだと相手の剣の方が先に立ち直る。
そうなれば相手を切る前に、自分が切られてしまうだろう。
(もし、剣を弾いた後に間髪入れずに本体を切るのであれば・・・)
流水加速では間に合わない。四光連斬+1をしたところで、結局相手の首には届かない。
剣を捌くと同時に、相手の首を取る。
それを確実にするには・・・。
「・・・五光連斬か?」
帝国との戦争の前に行ったガゼフとの模擬戦。
その後、互いの弱点を補うべく研磨し合った結果、五光連斬自体は使うことが出来るようにはなった。
しかしブレインの技術に見合わないそれは、四光連斬同様正確な斬撃を放つことが難しい代物。
しかもそれに神閃を交えるとなれば、当たる以前に体が持つかどうかの問題が発生する。
それを今この命がかかった場面で試すのは、あまりにリスクが高すぎる。
「四光連斬で剣を弾いて、その隙に前に踏み出して・・・」
様々な脳内シュミレーションを行うが、いずれも勝利には届かない。
「やはり五光連斬しかないか?しかし撃つとなると・・・」
悩み、悩み、そして悩む。
「・・・ん?」
ふと、上の呪霊に意識を向けると、それが自分の真上に立っているのを察した。
その時、嫌な予感が背筋を這っていく。
「ッ!?」
踏み出し、その場から離れる。
瞬間、天井にひびが入ると同時に、呪霊が降りてきた。
それと同時に、四本の剣が迫って来た。
「クッ、こうなりゃ行くぞ!!オオオォ!!!!」
雄叫びを上げ、刀を振り上げ走り駆けた。
迫る剣を弾き、前へ進む。
しかし剣はすぐに呪霊の元へ戻り、またこちらへ飛ばしてくる。
弾き、進む。
弾き、進む。
弾き、進む。
スタミナ的には少々きつくなってきたが、自分の予定通りに進んでいることに、思わず慢心してしまう。
「行けるぜ、今の俺なら・・・!?」
その時、ブレインは、視界に剣が三本しかないことに気付いた。
瞬間、自分に迫る危機を察知し、身を前に投げ出した。
「ッが!!!!」
背中を掠める冷たい感覚。
もし、判断が遅れていたら、そのまま死んでいただろう。
だが、安心するにはまだ早い。
それと共に、三つの剣は螺旋を描いてブレインへと放たれたのだから。
「ッチ!!」
剣で受け止め、しかし吹き飛ばされ、後ろの壁に衝突する。
肺から空気が消え、全身の血が暴れ狂う。
(肋骨、やっちまったか?)
手で弄ってみるが、特に折れた感覚はない。
心の底から安心しつつも、全身の悲鳴によって喜びは打ち消される。
(どうする・・・動けないことはない。が、さっきのような動きは出来ない)
鈍くなった各関節に渇を入れながら、重い体を持ち上げる。
刀を持つことすら億劫に感じる。
ポーションはない。
この状況を打破する手立てもない。
まさに絶望的。
(カモを呼んだら、きっとコイツに勝てるんだろうな。・・・でもよ)
グッと、指の先に力を入れる。
(──ここで引いたら、俺はクライムに、セバスさんに顔向けできねえよ)
捉えようによっては、ただの我儘になるかもしれない。
人によっては、可哀そうな男と卑下されるかもしれない。
それがどうした。
今のブレインの目的は、自分の実力を持って呪霊を倒すこと。
ガゼフのように、未来に託す思いも無ければ、誰かに捧げる恩義でもない。
あるのは勝利。
あるのは成長。
(死ぬ覚悟なんてさらさらねえ。だが、今日ここで限界を超えられるなら、コイツをこの手で倒せるなら──。
俺は死んでも構わないッ!!!!)
刹那。
その叫びに呼応するように。
それが心中に生まれた。
(・・・なんだこれは?)
初めての感覚だった。
感情の高まりに応じて、炎に油が注がれたように昂っていくこの感覚。
腹の底から煮えたぎるその炎が、体の芯を燃やし始めた。
次第に手足の震えは無くなる。
まるで痛みを感じない。
むしろ体が軽いくらい。
「・・・行ける」
そう断言できる、何かがあった。
心中に宿る蒼炎。それを掴み、全身に滾らせる。
呪霊は虚ろな目を輝かせ、その口に笑みを作る。
と同時に、剣の先がブレインに向いた。
「オマエも、これが最後の戦闘になるって分かったらしいな」
息を薄く吐き、刀を顔の横に添える。
そして、大きく一歩を踏み出した。
「行くぞォ!!!」
「巣ィマ、背ンッ」
迫る剣を弾き、一歩進む。
続く三本の剣を弾き、また一歩進む。
そしてフェイント。背後から迫る剣。
その両刀を躱し、弾き、そして進んだ。
「それはもう見切った」
弾き進み、弾き進み、弾き進み、弾き進み、弾き進み、弾き進み、弾き進み、弾き進み、弾き進み、弾き進み、弾き進み、弾き進み────。
それを繰り返す後に、呪霊は既に目の前にいた。
(チャンスは一度。これに全てを───)
弾き、弾き、弾き、弾き──。
息が切れ、腕も重くなり、視界も暗くなっていく。
弾き、弾き、弾き、弾き、弾き、弾き、弾き、弾き──。
指の先の感覚がなくなり、剣の先が震えだす。
弾き、弾き、弾き、弾き、弾き、弾き、弾き、弾き、弾き、弾き、弾き、弾き──。
その時、一筋の光が見えた。
(───託す!!!!)
納刀し、神域を瞬時に展開させる。
既に四本の剣は迫っており、このままいけば0.1秒と経たずに串刺しになる。
その未来を覆す。
重くなる肉体。
それが伸びるような、空間に置いて枯れるような感覚と共に、その技を放つ。
「五光連斬!!!!」
英雄の領域へ。
ブレインはその片足を突っ込んだ。
一撃は迫りくる炎の剣へ。
一撃は弧を描く風の剣へ。
一撃は弾かれた氷の剣へ。
一撃は背の後の雷の剣へ。
一撃は呪霊の肩から腰にかけて。
空気を切り裂き、神の輝きの如き光を残して、五つの斬撃は呪霊へと解き放たれた。
「子ノ多ビ刃…魔こ斗二・・・」
鮮血に似た炎が呪霊の胸から迸る。
それと共に、剣もまたドロドロに溶けていった。
「モゥ氏わ袈・・・語っ坐ィ魔せンでsッ多…」
呪霊がドウと倒れ、燃えカスと化した。
「フウ、フウ、ハア、ハア、ハア・・・」
刀を腰に仕舞い、荒ぶる息を整える。
「勝った・・・のか」
歓喜に満ちると同時に、体が震えはじめる。
安心、緊張、喜び、羨望、畏怖、恐怖・・・。
あらゆる感情が洪水となり、渦と成る。
その激情が全身から放たれたのだ。
「これでまた、オマエに一歩近づけたな」
完成にはいまだ程遠く、まだ足を一歩踏み出しただけに過ぎない。
しかし、その感動と驚きは、今もなお心中を渦巻いていた。
◇■◇■◇
戦いを終えたブレインは、疲労により重くなった体を引きずるように、廃ビルから外へ出た。
蒸し暑い空気と共に、新鮮な空気が肺の中を潤した。
一息ついたところで、あの時に感じた感覚を思い出す。
(胸の中心が燃えた。その熱を体に回したら・・・)
その瞬間だけ、身体能力が飛躍的に上昇した。
アレがクライムのいう「脳のリミッターを解除する」ということなのだろうか。
(でも燃えたのは頭じゃねえよな。本当になんだったんだ?)
新しい武技でも身に付けたのだろうか。それともアレは偶然だったのか。もしくはこの世界特有の──。
「・・・ん?」
目線の先。
向かいのコンビニエンスストアの前に、二人の男が立っていた。
一人は糸目の細い男。
もう一人は顔に傷が入った筋骨隆々の男。
前者は加茂なのだろうが、もう一人は見たことがない。
(着ている服も黒くないし・・・というか、何だあの服は。人の顔が描かれているのか?)
黒髪高身長の女性がプリントされた、パツンパツンのTシャツ。
それを男は喜々として着ていた。
不審者にも見えなくはないが、加茂と話しているところを察するに、恐らくは知り合いなのだろう。
二人ともブレインには気付いていないようで、向かい合って話していた。
(カモは優しいからな。だが、友人は選んだ方がいいんじゃないか?)
青信号で渡ることを知らず、危うく事故になりかけたが、向かいのコンビニへ向かった。
「どうやら、勝ったようだな」
傷だらけのブレインを見て、加茂は一言そう呟いた。
「なんとかな。・・・で、その隣の奴は?」
気になるのはそっちだ。
加茂はうーんと顎に手を当てた後、まあいいかと呟くと手を男に向けた
「
「・・・オイ」
その時、男が加茂の手を退けながららズイと踏み出した。
瞬間、男から放たれる異様な空気。
圧倒的な威圧感と、体の芯が震える感覚。
あのゼロよりも濃厚で、なのに恐怖が沸かない。
自分の体がこの男と戦いたがっているのか。もしくは生理的に受け付けないのか。
異様な感覚と感情が、全身を駆けた。
「俺は三年、東堂葵。オマエのことは加茂から聞いている。ブレイン・アングラウス、だな?」
「・・・そうだが?」
「オマエに聞きたいことがある」
加茂が頭を抑える。
その様子から、初対面の相手には必ずすることなのだろうと察した。
(実力で言えばゼロより上。アイツの刺青の効果を含めても五分かそれ以上か・・・。流石にセバスさんレベルでは無いと思うが)
今のブレインは万全の状態ではない。
万全の状態でも確実に勝てる保証はないが、今戦えば確実に負けるだろう。
「なんだ?」
確実な返答をするために身構えながら、だが素っ気ない態度で聞く。
東堂は満面の笑みを浮かべると、両手を合わせて握り込んだ。
書いてて思ったんですけど、この一級呪霊めっちゃ雑魚じゃね?
というわけで14話でした。
次回、ブレインVS東堂!デュエルスタンバイ!