しかし映画と漫画を見て久しぶりに書こうと思い投稿しました。
なお、久しぶりすぎてどうやって書けばいいのかよく分からない模様。
「ブラザー、よく似合っているぞ」
「うーん。前の服装の方がいいような・・・」
『印象がまるで違うナ』
「そうか?俺はよく分からないが」
「ブラザーのためにちゃんと鏡を用意しておけ加茂!」
「私のせいなのか?」
「本当にどんな見た目になっているんだ・・・?」
模擬戦から約二週間。
高専の中にある畳が敷かれた広間ではブレインを含む全生徒が輪を作っていた。
中心にいるのは制服を着たブレインだ。
「制服だけ見ると普通なんだが・・・」
『むしろ普通すぎないカ?』
「学ランなのに半袖になってるのが普通なの?」
「こうでもしないと動きづらいからな」
「冬もそれで乗り越えるつもり?だとしたら相当度胸いるわよ?」
ブレインとしては冬に半袖長ズボンでも特に問題はないのだが。
「しかし似合わないわね。そのちょこっと生えた髭でも剃れば、少しは印象も変わるんじゃない?」
「生憎この髭は俺のアイデンティティなんだ」
『アイデンティティならもう少し綺麗に整えたらどうダ?』
確かに正論である。
しかしそもそもの話、自分の髭を剃るという面倒な作業をしたくないがための嘘なので、綺麗に揃えるつもりは毛頭ない。
そんなこんなで会話をダラダラと続けていると、歌姫が襖を引いて広間に入ってきた。
何やら手に風呂敷に包まれた長めの箱のようなものを持っている。
「皆揃ってるわね。・・・それにしても似合わないわね」
「コイツらにも言われたが・・・本当に似合わないのか?」
「早く鏡を用意しろ加茂」
「断固として拒否する」
加茂と東堂が何故か険悪なムードを醸しているが、放置していても取り敢えず爆発することは無いだろうと思い、無視をする。
「さて。これからみんなにこれからの日程やらなんやらを話していきたいところだけど・・・その前にアングラウスさん」
「なんだ?」
ちなみに歌姫にとってブレインは年上ということもあり、他の生徒のように呼び捨てでは呼ばないことにしている。
逆にブレインにとって歌姫は教師という立場にいるので、ブレインもまた歌姫のことをさん付けで呼ぶようにしている。
「コレ、頼まれていた刀よ」
「・・・本当に要望通りなんだな」
歌姫が風呂敷を解き箱を開くと、中から鞘に収まった大太刀がその姿を見せた。
鞘は漆黒の輝きを、鍔は薄い金の輝きを放っており、屋内でもその輝きは目を細めてしまうほど。
「倉庫でずっと埃を被っていた割には綺麗でしょ?厳重に保管されていたから、当然と言えば当然だけど」
「・・・こんな素晴らしい刀を、本当に貰ってもいいのか?」
この刀がどのような歴を辿って来たのかは知らないが、しかしその刀が鍛冶師の丹精が十分すぎるほどに込められた名刀であることは、戦士であるブレインにはそれが一目でわかった。
先程埃を被っていたと言ってはいたが、それでもこれほどの業物を軽々受け取ることは、荒れた人生を送って来たブレインとはいえ少々気が引けてしまう。
「いいわよ。さっきも言ったけど長いこと使われてなかったし。それに使われた方が武器も喜ぶでしょ?」
「武器が喜ぶ・・・まさか呪いが掛かってるとでも言うんじゃないよな?」
「そんなことはないわ。ただの比喩表現よ」
「ならよかった」
呪われた武器に自我が芽生えることは稀にある。
そういう刀なのかと思ったが、どうやら違ったらしい。
「これに呪力を流して、呪力の使い方に慣れるのが今のあなたの目標よ」
「・・・もう一度聞いておくが、本当に受け取ってもいいんだな?」
「いいわよ全然。折ったら弁償してもらうけど」
「・・・・・・」
「冗談よ。そんな険しい顔しないで」
「そりゃ険しい顔もするだろ・・・」
真面目に迷ってしまった自分が恥ずかしいではないか。
「それじゃあ、ありがたく貰っておくぞ」
歌姫から刀を受け取ると、刀の重さを確認しながら丁寧に腰に下げる。
(・・・実際には一か月も経っていないというのに。なんとも久しぶりだな、この感覚は)
まるで元々そこに体の一部があったかのような。
まるで欠けていた体が戻って来たような。
まるで最後のピースが埋まり、パズルが完成したような。
まさしく完全体。
まさしく最終形態。
あるべき姿に回帰した瞬間、ブレインの身体に自然と闘志が宿ってくる。
「・・・随分とお気に召したようだな、ブラザー」
「東堂に言われるのは癪だが、ああ。かなり気に入った」
しばらくその燃え上がるような感覚に、余韻に浸っていると、歌姫がコホンと咳をする。
「さて、ではこれより今後の予定について、といってもいつもとそんなに変わらないけどね」
そう言うと、懐から一枚の紙を取り出した歌姫は、その紙を読み上げ始めた。
簡潔に言えば、任務が入ってきたらそれに即対応、なければトレーニングに勤しめとのことだった。
ブレインがするのは刀に呪力を通し、刀の呪具化と自分の呪力を高めること。
また任務に関してだが、ブレインは準一級ではあるが、まだ慣れないこともあると思われるので、任務で請け負うのは二級以下の呪霊のみということになった。
「という訳で説明は以上。何か質問ある人いる?」
「・・・東堂に関する説明が特になかったが・・・」
「東堂はフリーよフリー」
「フリー・・・」
理解できたような、理解できないような。
というか理解したくはないのだが。
「それ以外に質問は・・・ないみたいね。それじゃあ各自解散で!」
歌姫がそう言うと、東堂を除く一同はそれぞれのトレーニングへと向かっていった。
「俺は高田ちゃんのライブCDを聞く。ブラザーもどうだ?」
「俺は呪力を流す練習だ」
「そうか。暇が出来たら俺の所へ来い」
東堂はそう言い残すと、足早に寮へと向かっていった。
「・・・一生忙しい方がマシかもしれないな」
割と決意の籠ったの声が誰もいない広間に響いた。
しかし暇というのは思いのほか出来るモノらしく、それから一週間経った頃にはブレインは高専内をブラブラと歩いていた。
「呪力の使い方にはある程度
一見すると矛盾のように聞こえるが、しかしブレインの言うこともあながち間違ってはいない。
武術や戦術において新しい技術を取り入れた際に、まず最初に問題になってくるのは使いどころである。
たとえどんなに強い技術であろうとも、どんなに強い戦術であろうとも、それを使うべき時に使えなければ、それはただ視野を狭めるだけになってしまう。
呪力も同じく、使い方に慣れたとしても使いどころに慣れなければ意味がない。
「実戦経験を積めば掴めそうな気もするが・・・」
だが東堂に挑むのは色んな意味で控えたい。
一度戦った相手だし、自分から絡むと別のアクシデントが起きそうだし。
何より純粋に戦いたくない。
「かといって東堂以外でマトモに近接戦闘が出来る奴は全員任務に向かったしな」
メカ丸と加茂、そして三輪の三人は任務で夜まで帰ってこないことが確定している。
なお三輪はブレインとマトモに戦える実力がない模様。
「・・・今日は呪力を流す方に集中するか」
使うことに慣れたとはいえ、使いこなすには未だ程遠い。
そう思い、ブレインは外へ向かおうとする。
「アングラウスくん、ちょっとええかね?」
廊下の先から顔を出したのは楽巖寺。
顔は皺だらけで表情を読み取ることは難しいが、どことなく疲れているような気がした。
「なんだ?」
「実は頼みがあってじゃな」
どうやらその要件に楽巖寺が疲れた原因があるらしい。
何となく嫌な予感はするが、しかし何も聞かずに「嫌だ」と言う訳にもいかない。
黙ってその言葉の先を促す。
「アングラウスくんは、呪術高専が二つあることは知っているかの?」
「二つ・・・ああ、前に真依からそんなこと聞いたな。たしか・・・トウキョウってとこだったか」
「そこに少し用があっての。本来ならワシと三輪だけでも十分なのじゃが・・・」
「・・・あぁ、もう何となく察した」
最近東堂からはずっと、「東京で高田ちゃんのライブが開かれる!」という話ばかりを聞いていた。
おそらく、というか確実にそれが関わっているのだろう。
「それもあるが・・・それとは別に暴れる可能性がある」
理由は説明してくれないが、とどのつまりブレインに東堂のことを見張っておけとでも言うつもりなのだろう。
「俺は東堂の手綱を握ってる訳じゃないんだが」
「だがこの高専内で東堂のことを制御できるのはたった一人しかおらん」
文章の一部に目を瞑ればそれとなくかっこいいような気もするが、しかし相手は東堂である。
それに、制御しているというかアッチが勝手にブレインのことを同胞認定しているだけだ。
むしろこの手綱を手放せられるのであれば喜んで手放したい。
「だが、悪い話ではないだろう?」
「何がだ?」
「東京には呪具を扱うことを旨とする者がおる。それも認めたくはないが、二級一級に届く程のな」
「・・・何?」
「戦ってみたいじゃろ?実戦はご無沙汰なようじゃしの」
まるで見透かしたかのようにクツクツと笑う。
「加茂もメカ丸もその日は今日と同じく任務。そして三輪はワシと東堂、真依と共に京都。一日高専は暇かもしれんが。
さて、どうする?」
東堂のお守りをするのは面倒だが、東京の呪具使いというのは興味がある。
断る理由はあれど、しかしブレインに断る気は無かった。
「・・・いいぜ。俺も着いていく」
新たなる好敵手を求めて。
新たなる発見を求めて。
ブレインは曇り無き眼で未来を見据えた。
第二章──完。
第二章完。
というわけで次回から虎杖修行編です。