白骨化した宿儺の指   作:限界社畜あんたーく 

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ホロウナイトにドハマりして、ウマ娘の育成が全くできない今日この頃。
ちなみに無料十連は今のところ全部爆死中です。


第三章 真の人間
第18話 映画鑑賞?


 死神の連絡指輪(グリムリッパー・コンタクトリング)

『アインズ・ウール・ゴウン』が作られる前の、クランがまだ『ナインズ・オウン・ゴール』だった頃。

 その頃にモモンガが市場で買ったアイテムこそが、この『死神の連絡指輪』である。

 この指輪の効果を簡単に説明するのであれば、

「魔法を使えない者でも伝言(メッセージ)を使えるようになる」

 という、文面だけ見ると意外に強そうなアイテムなのだが。

 

 実はこの指輪。かなりの地雷アイテムである。

 

 

 この指輪の効果だが、実は伝言だけではない。

 その効果こそ、地雷魔法筆頭の《広域化(ワイドアップ)》。

 

 

 広域化は読んで字の如く、周囲の者にも同じ付与(エンチャント)、同じ効果が発揮される、という能力。

 用途としては自分に掛けたバフ効果を周囲の味方に乗せたり、HPを回復させたりすることに使用するのだが。

 

 この魔法はなんと味方だけではなく、一定周囲内にいる敵や関係のない者にも付与される。

 

 

 つまりだ。

 

 この指輪を使用した瞬間、味方との会話が周りに拡散される。

 

 ということである。

 

 

 使い道は無いわけではないが、だとしてもこれを日常的につける者などいるわけもなく。

 更に言えば伝言を習得しているモモンガはコレを自分に付ける必要もなく。

 

 よってこの指輪は、モモンガのアイテムボックスの中で永い間封印されていた。

 

 

 

 

 しかしある日。ある時。

 

 この指は外界に解き放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 尤も、その外界は元とは全く違う世界であったが。

 

 

 

 

 

 

 

 ◇■◇■◇

 

 

 

 

 

 

 

「さて、虎杖。君が呪力を一丁前に扱えるように訓練をするわけだが・・・その前に聞きたいんだけど」

 

「?」

 

「・・・その指輪何?そんなのつけてた記憶無いんだけど?」

 

「俺も聞きたいんだけど、その手に持ってる人形何?」

 

 

 一坪ほどの小さな空間。

 空気中に相当量の埃が待っているところを見るに、恐らく長らく使われていないのだろうと推測できる。

 そんな場所で仲良く並んでいるのは、光沢感のある黒のジャージを着た虎杖と、いつもの恰好をした五条だった。

 手にはクマのようなボクサーの人形が握られており、三角の鼻からは鼻提灯がぶら下がっている。

 

 

「この人形は君の訓練用。で、その指輪は?」

 

「この指輪は・・・」

 

 

 

「私がこうやって喋るための、いわば窓口だ。気にすることは無いぞ」

 

 

 

「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!」

 

 

 突然のアインズの声に本気でビビる五条。

 それと同時に五条の脇腹に向け、人形が全霊のリバーブローをかました。

 勿論それは無下限術式によって止められた。

 

 

「危ない危ない。ビビッて手元が狂っちゃったよ。おかげでほら、リバーブロー決められそうになっちゃった」

 

「いや、決められそうになってる理由は分からないけど・・・」

 

「そのまま喰らっておけばよかっただろうに」

 

「アインズも宿儺に負けず劣らず辛辣だね」

 

「宿儺の方が毒舌だぞ」

 

「僕としては君も大概・・・いや、これ以上は止めておくよ。君ちょっと怖いし」

 

「顔だけだぞ?」

 

 

 きっとこの指輪越しに、アインズは優しい笑顔を浮かべているつもりなのだろう。表情は無いけど

 しかし悲しきかな。

 笑顔で言われれば言われるほど、人は不安に感じるのだ。

 

 

「余計怖いけど」

 

「近所の優しいお兄さんと同じレベルで言ったつもりなのだが・・・」

 

「近所の優しいお兄さんも捉えようによっては怖いけどね。・・・というか僕たち、何の会話してたんだっけ」

 

「虎杖の呪力制御の訓練に関する話だ」

 

 アインズの指摘でようやく内容を思い出した五条は、あ~!と思い出したかのような声を上げた。

 

 

 

 

「さて悠仁。言ったとは思うけど、呪術師は皆わずかな感情の火種から呪力を捻出している。逆に感情が高ぶった時とかは呪力の量を調整して無駄遣いしない様にしてるんだ」

 

「それはさっきも聞いたけど・・・そもそも俺は呪力のネンシュツ?の仕方もイマイチだし・・・」

 

「だから、それを()()で学ぶんだよ」

 

 

 人形を近くのソファーに乗せると、懐から20枚以上のDVDを取り出した。

 流石にDVDの全てに見覚えがある訳ではないが、少なくともそれが映画のDVDであることは一目で分かった。

 

 

「・・・映画鑑賞???」

 

「そ。でも勿論、ただ観るわけじゃないよ。さっきのソイツを持った状態で観るんだ」

 

 

 ソファー上で未だに鼻提灯を膨らませている人形。

 

(嫌な予感するけど・・・)

 

 しかし今はよく分からない状況だし、こういうのはやってみないとよく分からないものだ。

 そう思い、試しに人形を持ってみる。

 しかしこれといった変化が訪れることはなく、人形はずっと眠っている。

 その様子を見て高ぶっていた緊張が解れたのか、別の疑問が生まれた。

 

 

「コレ学長が作った呪骸(ヤツ)?」

 

「うん。キモいよね」

 

「俺としてはキモかわなんだけど・・・・・・・・・で、何この時間?全然要領得ないんだけど」

 

「そろそろ分かるよ」

 

 

 五条がそう言ったそばから、虎杖の視界は衝撃と共に突然揺れた。

 

 

「イッデェェ!?」

 

 

 呪骸の右拳が虎杖の顎を綺麗にアッパーカットした結果、視界が揺れたのだと虎杖は気付く。

 しかし、何故アッパーカットされたのかが理解できない。

 

 

「・・・そういえばさっきも殴られかけてたような・・・」

 

 

 それは五条がアインズの声にビビった時。

 

『ビビッて手元が狂っちゃったよ。おかげでほら、リバーブロー決められそうになっちゃった』

 

 

 あの時「手元が狂った」と言っていたが、五条は特にこれといって手を動かしているようには見えなかった。

 つまりあれは───。

 

 

「呪力を流し続けないといけない・・・てこと?」

 

「ピンポンピンポーン!!正確に言うと一定の強さを保った呪力を流し続けないといけない。そうしないと今みたいに殴られるよ」

 

「つまり映画を見ながら呪力を人形に流し続ける・・・言い方を変えれば、感情を揺らがせることなく映画を見ろ、ということか」

 

「そゆこと。しかもここにあるのは、アクションからラブストーリー、ドキドキハラハラから胸糞ドロドロまで選り取り見取り」

 

 

 ちなみに後で聞いたのだが、この映画は五条と家入、伊地知と学長のおすすめの映画を揃えたのだという。

 だからなのか、名作所やマトモそうなのもあれば、ネタに振り切ってる作品もある。

 

 

「まずはその呪骸を持った状態で、映画を一本観通すこと。今は悠仁でも出せる微量の出力でも大丈夫なように設定してるけど、段々要求する出力が高くなるから、気を抜かないようにね」

 

「抜きたくても抜けないな・・・」

 

 

 もう一度両手で人形を挟んでみる。

 すると今度は力み過ぎたのか、人形はすぐに目を覚まし虎杖に殴りかかってきた。

 

 

「まあ慣れるまでガンバ」

 

「んな他人事みたいに・・・」

 

 

 殴られた衝撃で流れた鼻血を拭うと、もう一度人形を挟む。

 今度は上手くいったようで、殴りかかってくることは無かった。

 

 

「・・・なんとかうまくいった・・・」

 

「じゃあ早速映画観よっか」

 

「え?」

 

「ちなみに僕のおすすめはコレ。火星で拾った宇宙人を保護したら乗務員が次々殺されてくヤツ。乗務員は一人は地球に帰還して、一人は宇宙で放浪して、それ以外は全員死ぬ」

 

「なんつうネタバレしてくるんだこの人!?」

 

 

 あまりの衝撃に感情が揺らぎ、またもアッパーカットを喰らってしまう。

 流石に虎杖の沸点も限界に達したのか、人形をブンと振ると壁に投げ飛ばした。

 

 

「こんちくしょォオ!!!!」

 

「はいはい、イライラしても呪力は一定ね」

 

「・・・フウ・・・フウ・・・」

 

 

 なんとか怒りを鎮め、手元に人形を戻す虎杖。

 その様子をじっと見守っていた五条の脳裏に、ある悪だくみが浮かんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・あ、言い忘れてたけど。アインズと宿儺は映画のニ作品目から悠仁の思考を乱しに行ってちょ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その瞬間、虎杖の顔面に濃い絶望の色が見えた。

 

 

「五条先生!?なんつうことを!?」

 

 

 

 

 

 

 

『・・・中々興が乗るな。いいだろう』

 

「言われるまでもない」

 

 

 

 

 

 

 

 しかもされたくもない返事が返ってくる始末。

 

 

 

 

「オウ・・・ノー・・・」

 

頑張れ♥頑張れ♥

 

「男に言われても嬉しくねえよ!!」

 

メモリの無駄遣い♥興奮しちゃうじゃないか♥

 

「それはヒソカ!!!」

 

 

 

 そんなこんなで、虎杖の地獄の映画鑑賞(呪力トレーニング)は始まった。

 

 

 

 

 

 

 ◇■◇■◇

 

 

 

 

 

 

 呪術高専東京校にて。

 

 伏黒は木でできたトンファーを、真希は物干し竿のように長い棒を持って模擬戦を行っていた。

 最初の内は五分の戦闘を繰り広げていたのだが、しかし戦闘のテンポは徐々に真希のペースへと変わっていき、そして遂には伏黒の喉元を棒の先端が掠った。

 

 

「・・・やっぱ強いですね」

 

「そりゃあな。だが恵もやるな。最初だけとはいえ私と張り合えたんだからよ」

 

「それ褒めてるんですかね?」

 

「十分褒めてるつもりだぞ」

 

 

 そんな言葉とは裏腹に、真希はめんどくさそうにグルグルと棒を回してストレッチっぽい何かをしている。

 器用だなあと思う半分、ふと気になったことがあった。

 

 

「・・・そういえば、呪具の持ち運びっていつもどうしてるんですか?」

 

「あ?んなもん背中に担ぐに決まってるだろ」

 

「いや、例えばどうしても何本か持っていかないといけないときとかって・・・」

 

「そんときはパンダに持たせる」

 

「荷物持ちは任せとけ!」

 

 

 真希の後ろでガッツポーズを取るパンダ。

 

 

「仲間に持たせる・・・それもありですかね」

 

「なんでそんなこと聞いたんだよ?」

 

「近接で得物を使うのは賛成なんですけど、俺の術式上両手は空けておきたいんです」

 

「印を結ぶ必要があるからか。確かに術式のことを考えたら、近接は素手の方がいいとは思うが・・・」

 

 

 素手で戦闘するとなると、呪力を手の方にも集中させなければいけなくなる。

 

「したら式神召喚分の呪力が枯渇するわな」

 

 なので出来れば呪具を使いたいところではあるのだが。

 

 

「でも呪具を運ぶと両手が塞がる、と。こりゃ無限ループ入ったな」

 

「体内に道具を仕込める呪霊もいるだろ?それ飼えばいいんじゃねえの?」

 

「でもそれレアモンスターじゃん。それに飼いならすの結構大変らしいし」

 

 

 呪具を出し入れできる空間。

 確かにそういうものがあれば結構楽になれそうなのだが。

 

 

 

 

(・・・俺の影に物入れれねえのかな?)

 

 

 

 

 ふと、自分の影に触れてみた。

 何の突拍子もない、ただの思い付きだったのだが。

 

 

 

「・・・先輩」

 

「ん?なんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんとかなりそうです」

 

 

 その伏黒の顔は、なんとも悪い笑顔に満ちていた。

 

 

 

 

 

 ◇■◇■◇

 

 

 

 

 

 

『僕には何が何だか・・・マスクも脱げないし!』

 

『悪いが、脱ぐことは出来ん』

 

 

 暗い部屋の中。

 灯るテレビに目を向け、虎杖はその映画の世界へと浸入していく。

 まるで自分が当事者になったかのように、真剣な面でじっくりと。

 

 

『そんな!冗談はやめてください!!』

 

『本当だ』

 

 

 手に汗握る展開。

 熱中しすぎて喉が渇いてしまうほど。

 虎杖は机の上に置いたコーラに手を伸ばし、それを視界の邪魔にならないよう急いで口に流し込む。

 

 

『一生このままですか?』

 

『申し訳ない。そうだ』

 

 

 これからどうなっていくのか。

 どのようにストーリーが展開されるのか。

 その期待に胸を膨らまして───。

 

 

 

 

『意外と面白いではないか』

 

「そ、そうか?」

 

『ああ。先程の獣の生活を映しただけのものに比べれば遥かにな』

 

「それは同感だが・・・それよりも、私は五条が言っていたあの最初に観た映画。アレの方が面白いと思ったのだが」

 

『アレは俺には理解できんな。そもそも空の向こうというのが想像できん』

 

「なら猶更この映画も理解できないと思うんだが・・・」

 

 

 

 指輪と手の甲の会話が、映画の会話の合間を縫って割り込んでくる。

 それが自分としては興味がある話でもあり、ついでに一言モノ申したい気分にもなる。

 そのもどかしい気持ちと、映画の緊迫間との境目で、虎杖は揺れに揺れていた。

 

 そして、その感情の境目で揺れた結果、人形は目覚めた。

 

 人形はその拳を固く握りしめると、コーラを含んだままの頬を思いっきりぶん殴った。

 

 

 

「ブウゥーーーー!!!!!!」

 

 まるで水を吐くフグのように盛大に吐き出す。

 そのまま吹き飛ばされた虎杖は地面を数度バウンドし、その後停止した。

 

 

「コーラ飲んでる時は止めろや!!」

 

「いや、飲むなよ」

 

「だって!宅で映画観るならコーラとポテチは必須じゃん!!」

 

「それはそう」

 

 

 さて、会話も程ほどに、五条は虎杖に手を振った。

 

 

「んじゃ、僕そろそろ行くから」

 

「え?どこに?」

 

「ちょっと用事があってね。だからそんなに悲しまないでくれよ?」

 

「いや、悲しんだつもりはないんだけど・・・」

 

「三本も一緒に映画観たんだよ?文句言わないの!」

 

「だから文句も言ってねえって!用事があるならさっさと行きなよ!」

 

「つれないなあ全く。それじゃほんとに行くからね」

 

 

 廊下の方に足を伸ばす五条。

 しかしその歩みは二秒も経たずに止まった。

 

 

「・・・あっと、そういえばなんだけどさ」

 

「もー、今度は何?」

 

 

 

「君が死んでる時。宿儺から、もしくはアインズから。何か言われた?」

 

 

 

 

 一瞬、虎杖の顔は過去を遡るモノへと変化する。

 だがそれも束の間。すぐに意識を戻すと、虎杖は首を振った。

 

 

 

 

「実は途中からの会話の内容が思い出せなくてさ・・・分かんねえや」

 

 

 

 

 

「・・・そうか」

 

 

 

 

 聞きたいことは聞けたのか。

 それ以上何も言うことなく、五条は去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら本当に忘れているらしいな」

 

『最も本人が忘れていても、その契約は破棄されたことにはならんがな』

 

「それはなんとも悪徳だな。忘れるように決めたのは君だというのに」

 

『契約なんぞ悪徳であってこそだぞ?』

 

「確かに、それは言えているな」

 

 

 

 虎杖に聞こえぬ腹の奥底にて、二人の笑い声は響いた。




広域化
オリジナル魔法。でも正直こんな感じの魔法Web版とかにありそうなんだよなあ・・・と結構ビビってる。

映画について。
五条が言っていたのは、『ライフ』という鬱映画。気になる人は是非。ちなみに投稿者はこの夢を時々見て発狂しそうになる。
虎杖が見ていたのは正真正銘のクソ映画『メタルマン』。ちなみにコレは割と真面目にお勧めする気にはなれない。

てなわけで18話でした。
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