白骨化した宿儺の指   作:限界社畜あんたーく 

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APEXに脳を浸食された男、スパイダーマッ!

ストーリーは頭の中で作られるのに、それを文字に起こすとなんかしっくりこない現象に苛まれ続けながら書きました。




第19話 呪術の極致

『聞いちゃった聞いちゃった!お宝目当ての結婚式!!』

 

 

 五条が出てから、一体どれほどの時間が経過しただろうか。

 おそらくこれ前見た映画の本数から考えれば、三時間ほど経過しているとは思うが。

 

 

『偽札作りの伯爵の!言うことやること全て噓!!』

 

 

 さて、訓練の方はというと、想定以上に進んでいた。

 

 

「う~ん!久しぶりに見るけど、やっぱりこの映画は何度見てもいいな~!!」

 

「私も数十年ぶりに見たが、やはり何度見ても素晴らしいアニメーション技術だ」

 

「え?アインズさんもこの映画観たことあるの?」

 

「ああ。その時は友人からの勧めで観たんだが、そのせいで一時期・・・いや、この話はよそう」

 

 

 実は一時期、あの怪盗に憧れて職業を盗賊に変えようとしたことがある。

 勿論、本気で変えようとはしたわけではないし、ギルメンから本気の反対を喰らったので未遂で済んだのだが。

 

 

「ええ!?ちょっと気になるんだけどその話!!」

 

「私の数少ない黒歴史だからな。触れられたくないんだ」

 

「だからこそ知りたいんじゃん!!」

 

「駄目だ!例え私の口が裂けてもこの話はしないぞ!!」

 

「・・・でも裂ける口ないじゃん」

 

 

 もはや人形の存在すらも忘れて会話に勤しむ虎杖。

 しかし鼻提灯は破裂する気配は微塵も無く、むしろ先程よりも安定している。

 持っていた才能故か、それとも単に慣れただけか。

 

 

『やい伯爵よく聞け!!大事な指輪は俺が預かった!!』

 

 

 

「・・・なんか指輪が喋るって、アインズさんみたいだよね」

 

「指輪が私の本体じゃないぞ・・・?」

 

「そりゃそうだけど。・・・そういえば宿儺って、さっきから寝てるの?全然声聞こえないけど」

 

『起きているぞ』

 

「あ、起きてたんだ」

 

「結構集中して見ているからな、会話に参加できなくとも無理はない。しかし宿儺よ。君はこの映画が気に入ったのか?いつにも増して真剣な面構えをしているが」

 

『・・・多少、な』

 

「え、なんか意外」

 

 

 

『大事な指輪はこうだ!!』

 

 

 

「パァァーーーーンンッ!!!!」

 

 

 すると突然、ソファーの後ろから五条がやって来た。

 しかも割れんばかりの叫びと共に。

 

 

「うお!?五条先生!?」

 

「なんだ五条悟か」

 

『チッ』

 

 

 虎杖は驚きのあまりソファーから転げ落ちるが、しかし人形が目覚めた様子はない。

 それを見て五条はほうと感心の息を吐く。

 

(早めに出力上げて、さっさと次の段階に持ってた方がいいかもね)

 

 そんなことを考えていると、虎杖が不思議そうに五条を見つめだす。

 

 

「用事は?」

 

 

 そういえば学長のことを忘れていた。

 だがしかし、別にいつものことだしそこまで焦る必要はないだろう。

 脳内で学長にメンゴの念を送った後に、虎杖に向き直る。

 

 

「そんなことより悠仁。出かけるよ」

 

「えぇ?いきなりすぎね?」

 

「物事はなんでもいきなり進むものさ」

 

「それ誰の言葉?」

 

「僕が今考えた言葉。かっこいいでしょ」

 

「いや全然」

 

 

 五条の脳内で即興で浮かんだ言葉だったのだが、それは虎杖の胸には刺さらなかったらしい。

 虎杖は今更ながらテレビを一時停止させると、身体の全体を五条へと向ける。

 

 

「で、何しにいくの?」

 

「簡単に言うと課外授業。それも呪術戦の極致───

 

 

 

 

 

 ───『領域展開』について。それを教えてあげる」

 

 

 

 

 

 ◇■◇■◇

 

 

 

 

 

「なんだアイツ?」

 

 

 視界が暗転すると、そこは木々に囲まれた小さな湖の中心になっていた。

 恐らく五条が高速移動か瞬間移動でもしたのだろうが、それは特に興味はなかった。

 それよりも目を引く存在が一人、虎杖の視界に映っていたからだ。

 

 

「火山のような頭をしているが・・・というより呪霊なのか?マトモに喋っているが・・・」

 

『恐らく山へと向けられた怨念、恐怖、恨みや苦しみにより生まれた呪霊なのだろうな。その募った負の感情が高い分、人と会話が出来る程度には頭も働く』

 

「なるほど。して、この火山頭は強いのか?」

 

『俺の眼が正しければ、小僧の身体を使った今の俺と戦って、五分かそれ以上と言ったところか』

 

「なるほど・・・つまり弱いということか?」

 

『丁度良い玩具になりうるか否かといった具合だな』

 

 

 しかし言葉の割にはあまり面白くなさそうに見える。

 

 

『どうせ小僧に代わったところで、あのクソ術師が領域を用いて火山頭を叩きのめすのがオチだ。無駄に外へ出る必要はなかろう』

 

「そういうことか。そういえば、五条悟の領域展開はよく知らないな」

 

『無下限術式と六眼の使い手だぞ?マトモな領域であるとは思えぬ』

 

「とはいえ五条悟が相当な実力者であることには変わりない。領域の質も中々なのだろうな」

 

 

 そんなことを話していると、火山頭は修羅の形相で印を結び領域を展開した。

 林に囲まれた背景は燃え盛る火山の窟へと変わり、月明かりが映る湖は煮え滾るマグマに覆われる。

 まさしく火山頭に似合う領域。だがしかし、虎杖を除くアインズ、宿儺、五条の三人はそこまでの反応を示すことはない。

 

 

「領域展開。このようにして見るのは初めて・・・いや、二回目か。使用したのは確実に攻撃を与えるためか」

 

『あの術式を無視するには、まあ妥当な手と言える』

 

「うむ。短期戦で確実に轢き殺すという点においても領域は優秀。呪力をかなり消費するデメリットはあるがな」

 

 

 それに領域内に入ると逃げることが容易ではないというのも、この状況にてかなり良い働きをしている。

 あの火山頭の領域・攻撃から逃れるためには、火山頭を祓うか展開れているものより上回る領域を展開するか、火山頭の呪力切れを待つかしか手がない。

 要するに火山頭と正面切って戦うか領域を展開するかの二択しか術がないということだ。

 五条は今虎杖というお荷物を抱えている上に、お得意の無下限術式を使えず、しかも一部方法を除き逃げられない状況にある。

 殺すにはうってつけの状況だろう。

 

 

「とはいえ五条の領域が火山頭を上回れば、それで状況は一転するのだがな」

 

 

 そう言った矢先に、五条は片手で印を結ぶと、領域を展開する。

 

 

 

 

 刹那、背景に映し出されていた火山地帯は純白によって塗り潰される。

 

 純白は辺り一面を包み込むと、黒い光と共に小さな宇宙を形成する。

 宇宙は際限なく広がり、星と銀河の美しき輝きとともに永遠にも等しい世界を作り上げた。

 

 

『・・・面倒な領域だな』

 

「凄まじいとも、美しいとも、恐ろしいともいえるな。成程、これも彼が最強と呼ばれる所以か」

 

『この俺でも対処するのは困難。全く忌々しいな』

 

 

 領域に関する知識に乏しいアインズでさえも、あの領域の危険度は理解できる。

 もしあの領域に閉じ込められれば最後、五条がその領域を解かない限りは逃げることはおろか、その意思さへも生み出すことは出来なくなる。

 あくまでこれは、ユグドラシルにて数多のスキル・魔法を学び見て味わってきたアインズが培ってきた勘によるものだが、恐らく正しいはずだ。

 事実、その領域を今味わっている火山頭は、動くどころがまるで廃人のように思考の色を瞳から消している。

 

 

 

「尤も、私にあの領域が効くかどうかは別だがな」

 

 

 

 独り言が虚空を駆ける最中、火山頭の首は五条の手によってモガれ、領域は閉じた。

 

 

「あとは尋問なり拷問なりして情報を吐かせた後に、生首を祓えば終わりか」

 

『・・・いや?あの呪霊にはまだ希望はあるらしいぞ?」

 

「何?」

 

 

 その言葉をまるで待ち望んでいたかのように。

 宿儺の言葉を口切りに、虎杖と五条の足元に一輪の花が刺さった。

 

 

 

 

 

 ◇■◇■◇

 

 

 

 

 

「おはなだー!」

 

「ぽわぽわー!」

 

 

 二人でほわほわとした空気に包まれる。

 しかし五条は瞬時に頬を叩き、脳内の意識のスイッチを切り替える。

 

(呪術だよな?戦意が削がれる)

 

 相手の精神に対し作用する呪術はあるにはある。

 だが相手の戦意を一時的に低下させる呪術なぞ見たことも聞いたこともない。

 

(恐らくコイツの仲間か何かか?火山に花畑とはいいセンスしてやがる)

 

 

「げっ!何この蔦!?」

 

 

 虎杖の悲鳴と共に視界から火山頭が消え、その代わりに謎の呪霊が横切る。

 左腕を袋に包み両目から枝のようなものを生やしている呪霊で、その右手には火山頭が握られている。

 

「先生!俺は大丈夫だから、ソイツ追っtいややっぱ無理助けて!!」

 

 手のひら返しが凄すぎるが、見れば確かにドラ〇エに出そうな切株の呪霊が虎杖に攻撃を仕掛けようとしている。

 逃げた呪霊と襲われる虎杖。

 その二つを天秤にかけ───る前に、既に五条の左手は切株へと振られ、見る間もなく木っ端微塵に砕け散っていた。

 あとは呪霊を追うだけだが・・・。

 

 

「・・・へえ?」

 

 

 既に呪霊の気配はなかった。

(気配を消すのが上手い。あの火山頭より不気味じゃん?)

 

 後ろで土下座している虎杖を他所に、あの奇妙な呪霊に思いを馳せる。

 

 

「マトモに喋れる呪霊が二匹。しかもそれが徒党を組んでるとはね。こりゃ楽しくなってきたねえ。悠仁たちにはにはアレに勝てるくらい強くなってもらいたいなあ」

 

「アレに!?」

 

「流石に無理があるんじゃないのか」

 

「ナチュラルに割り込んでくるね。まあいいんだけどさ。別に今すぐってわけじゃないし、それに目標を掲げるなら具体的な方がいいでしょ?」

 

「具体的っていうか、むしろ何が起こってたのかすら理解出来てなかったんだけど」

 

「それだけ次元の違う世界に身を置くことになるということだ。それが認識できただけマシじゃないか」

 

「お、いいこというじゃん」

 

「マジかこの人」

 

 

 つまりこれは、「君結構弱いからね」「これからの修業は結構厳しくなるよ」ということだ。

 実際、五条の顔はさも当然と言いたげに悪戯な笑みを浮かべている。

 

 

「目標掲げたらあとは突っ走るだけ。これから一か月、映画を観て僕と戦ってを繰り返すよ」

 

「先生と!?」

 

「勿論本気じゃないよ。もしかしたら真剣(マジ)になるかもしれないけど」

 

「俺一か月後生きてるかな」

 

「少なくとも生きているとは思うよ。・・・肉体的な意味で」

 

「え?それってど「その後は重めの任務をいくつかこなして、基礎と応用をバッチリ身に着ける。そして交流会でその成果をみんなに見せると」

 

「・・・交流会?」

 

 

 指輪から不思議そうな声が出る。

 

 

「あれ?言ってなかったっけ?姉妹校交流会、京都の高専とコッチ(東京)の高専でガチンコバトルをするんだけど」

 

「聞いてない()

 

「そうだったか。じゃあ帰りに交流会について話しておくか。どうせ暇だし」

 

 

 と、そこで何故か五条の脳裏に靄が掛かる。

 一瞬、何かを忘れているような気がしたが───。

 

 

 

 

「ま、忘れるようなことなら重要なことじゃないでしょ!ハハ!」

 

 

 

 

 余談だが、この後五条は学長にめっちゃ怒られた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 五条との模擬戦を終えた後、映画を観ながらふと虎杖は呟いた。

 

 

 

「アインズさん。ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 

「なんだ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・アインズさんの魔法って、俺にも使えたりしない?」

 

 

 




というわけで、虎杖に上方修正入ります。




次回

「呪術師はクソということです」

『分かる』

「労働はクソということです」

「分かる」
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