そういえば姉が呪術沼にハマったそうです。推しは夏油らしい。
なんでえ?(自分は乙骨派)
というわけで21話です。
尚今回は約束通り七海が参上します。
今回はオリジナル設定も少し含まれているので、ウワーヤダヨー!って人はスルーしてもらえると助かります。
早朝。
五条が開いた扉の先には、洞窟のような開けた空間が広がっていた。
奥の壁には寺のようなものが丸ごと埋まっており、それも相まって神秘的とも仏教的とも取れるなんともアンバランスな雰囲気が漂っている。
尤も、その寺(仮)の手前で腕時計を見つめる金髪のリーマン風の男が居り、それも重なり更にカオスチックな雰囲気になっているのだが。
五条は鼻唄交じりに男の横に歩み寄ると、そのままの勢いで男の肩に手を回した。
「じゃじゃーん!脱サラ呪術師の七海くんでーす!」
「その言い方やめてください」
七海と呼ばれた男は嫌そうに五条の手を追い払う。
まるで羽虫を払うかのようだが、現にそう思ってそうなほど鬱陶しそうな顔をしている。
「呪術師って変な奴多いけど、コイツは会社勤めてただけあってしっかりしてるんだよね~」
「他の方もアナタには言われたくないでしょうね」
仲が良いのか悪いのか。特別苛立っているようには見えないが、しかしどことなく七海は五条のことを避けているように見える。
いや、正確に言えば避けているというよりも嫌っていると言ったほうが正しいだろうか。
『脱サラ、か。サラリーマンの方が呪術師よりも安定・安全な暮らしができるんじゃないのか?』
「アインズさん、サラリーマン知ってるんだ」
『あ、ああ。私が元居た世界でもサラリーマンという職業があってな。ある程度の知識は同じだと思うが・・・』
なお元居た世界というのは鈴木悟だった時の世界のことだが、特に説明しない方がいいだろう。
それのせいで虎杖の脳内に浮かぶ異世界像がかなり歪んでいるとは思うが・・・。
(ま、別にいいっしょ)
後先考えないのはいつものことである。
「・・・彼が例の?」
「そ。宿儺の指を取り込んだ虎杖悠仁。そして取り込んだ宿儺に居候してたアインズ。僕も今でも信じられないけど、異世界から来たっぽいよ」
「呪術師である私が言うのもおかしいですが、なんとも非常識な存在ですね」
七海はため息交じりにわざとらしく咳をすると、腕を組んで楽な姿勢に変えた。
「さて、まずは挨拶をしておきますか。初めまして、虎杖君」
「アッハイ、ハジメマシテ」
「そして・・・アインズ・ウール・ゴウンさん、でいいですかね?」
『うむ』
七海が元社会人と聞き、どことなく親近感が沸いていたアインズだが、それをすぐにアインズの不細工な鉄の仮面で覆うと、いつもの若干低めの声を出した。
「私が高専で学び気づいたことは、呪術師はクソということです」
「へ?」
『ん?』
いきなりの爆弾発言に、虎杖は呆気にとられ、アインズは首を曲げた。
三者三様と言うには少し似たり寄ったりな気もしなくはないが、しかし七海はそんなことは気にもせずに言葉を続ける。
「そして一般企業で働き気づいたことは───
──労働はクソということです」
『そうだ、労働はクソだ』
「そうなの!?」
思わず素の声が出てしまう程には、とても濃い言の葉だった。
『・・・と、知り合いの社畜が言っていた』
しかし流石にこのまま行けば虎杖に妙な印象が付けられるかもしれないので、少しだけ修正をする。
「アインズさんの言う知り合いの社畜ってなんかスゲーパワーワード」
確かにアインズの死屍累々といった風貌で実は社畜の知り合いがいるなど、普通は想像できないだろう。
というか、自分でもパワーワード過ぎて若干の違和感を感じたぐらいだ。
(流石にバレたか・・・?)
「でも、確かにアインズさんって友人関係広そうだもんね。社畜の一人や二人いてもおかしくないか」
『えェ・・・??』
杞憂で済んで良いのやら悪いのやら。
兎にも角にも鉄仮面は今のところ破られている様子はないらしい。
「同じクソならより適正のある方を。出戻った理由なんてそんなものです」
『なるほど。確かに合理的ではあるな』
「ですので、というわけではありませんが。私は五条さんと同じ考えではありません。一応、私は五条さんのことを信用しているし信頼していますがね」
「聞いたかい悠仁。これが本来あるべき先輩と後輩の関k
「でも尊敬はしていません」
───あ”ぁ”ん”!?」
その信用と信頼は恐らく五条の人柄に対してであるだろうが、しかし尊敬されていないところを見るに人望は極めて薄そうに見える。
せめてその子供のような性格をどうにかすれば大分マトモになるのではないか。
(まぁどうにかできないからこうなってるんだろうけど・・・)
「上のやり口は嫌いですが、私はあくまで規定側です。・・・話が逸れましたね」
七海は特別姿勢を変えることもなく、視線を虎杖に向ける。
あくまで仕事の一環として組むだけの、まさしく社畜のような瞳をしていた。
「要するに、私もアナタを術師として認めていない」
その言葉に一瞬、虎杖の肩が震える。
「二つの爆弾を抱えていても、己は有用であると。そう示すことに尽力してください」
そう言い切ると、七海は体勢を崩し腰に手を当てた。
虎杖の実力はハッキリ言ってそこまでだ。
接近戦では確かに五条(術式無し)とタメを張れるレベルではあるが、少しでも距離を取られれば魔法以外手段はない。しかも魔法は様々な条件を搔い潜ったうえでようやくマトモな威力になる。
戦闘経験も豊富ではないため、もし今伏黒達とタイマンを張っても勝つ見込みは低いだろう。
しかし、これはあくまで
もし魔法を、もし体術を、もし呪術を。
使いこなせれば。
極められれば。
宿儺をも、いや五条悟をも超える存在になるかもしれない。
(将来、虎杖が呪術界を牽引する存在になる・・・前に死刑されるんだっけ。もしそうなったら・・・まあその時はその時の俺がどうにかしてくれるだろうし)
あやふやなまま将来のことを考えていると、すると虎杖は言葉を紡ぎ始めた。
「俺が弱くて使えないことなんて、ここ最近嫌というほど思い知らされてる。
・・・でも、俺は強くなるよ。強くなきゃ死に方も選べないから
言われなくても認めさせてやっから、もうちょい待ってて」
『虎杖・・・』
これまでは心許なかった虎杖という器が、今ではこうも頼もしく見える。
自分の力に慢心せず、さらなる成長を遂げようとしてくれている。
成長したなあ、と血の繋がりはないものの親のように見てしまう。
「いえ、私ではなく上に言ってください。
というか、ぶっちゃけ私はどうでもいい」
「あ、はい・・・」
『ええ・・・』
なにはともあれ、燃える虎杖と冷めた七海の凸凹コンビが結成されたのであった。
◆□◆□◆
早速七海と向かったのは、人気の無い山奥だった。
舗装されていない曲がりくねった道をホツホツと歩き、木々の根に足を掬われないように注意して進む。
まるで山岳部の活動だが、生憎二人には山を登る技術も知識も無い。無論技術と知識が無くとも術師である二人であれば、体力と筋力と呪力のゴリ押しで進められるので、別に無くても問題はないのだが。
「山を登る時は、背筋を真っ直ぐ伸ばし足を置くスペースをよく考えながら進んでください。君の進み方は無駄に体力を浪費してしまいます」
「へ、へぇ~・・・」
「特別急ぎ用というわけでもありません。ゆっくり自分のペースで進んでください。私も君の速度に合わせますので」
「・・・」
知識が無いが故に、何処と無く子供扱いされているような気がしてままならない状態が暫く続いた。
「ここが件のトンネルです。警戒を怠らずに」
「押忍!・・・にしても凄いなあ・・・」
石レンガには縦横無尽に蔦と苔が。
道はコンクリートではなくぬかるみがありそうな湿った土が。
二人が着いた場所は、まるで岩窟と見間違えるほどに暗く風化した全長30m程のトンネルだった。
ひらひらと天井から舞い降る木の葉は振り子のように揺られ、燦燦と輝く日光は所々のヒビからカーテンのように差し込む。
その風景はまさしく幻想。絵画でしか見たことがないような美の集大成が、これでもかと虎杖の視界を焼いた。
『なんと美しい。是非ともこの光景をブ───友に見てもらいたかった』
「友って・・・あの本に載ってた?」
『ああ、その中の一人でな。彼は自然をこよなく愛していたんだ』
「へえ・・・」
何とも言えぬ空気が漂う中、七海は背負った独特な鉈を抜くと、それを軽く構える。
巻かれている斑点模様の布と、巻くものに対しての無骨な鉈の形。
かなり
(一級術師と言っていたな。かなり強い呪具なのだろうか?)
しかし見た目的にはあまり切れ味は無さそうだが。
「帳は下ろさずに行きますよ」
「迅速に済ませろってことか!うっし、早速俺に任せてよ!」
「いえ、二人で慎重に進みます。相手の実力を見定めるのも術師の仕事です」
「お、応・・・」
(なーんか合わねえなあ・・・)
熱血正義系と冷静盤石系。
波長が合わないのはどこの世界でも同じである。
そんなことは気にせずに、七海がトンネル内部に歩みを進める。
虎杖もそれに続くようにして進みだした。
トンネルの中を歩き出してから一分ほど過ぎた頃。
「いましたね」
トンネルの出口に当たる部分に、それはひっそりと立っていた。
『テデデデ・・・あるク』
一言で表すのであれば、テケテケの真逆の存在だろうか。
切断された下半身のような見た目をしたその呪霊は、その断面に当たる部分から不気味な声を上げていた。
ある程度呪霊に慣れてきた虎杖も、流石にその見た目には不気味に思う節があるらしく「相変わらず呪霊ってキモいなぁ・・・」と小言を発している。
「私がこの呪霊の相手をします。虎杖君は後ろのを祓ってください」
「え?後ろ?」
クルリと視線を後ろに向けると、確かに七海の言うとおり呪霊がいた。
しかも今現れた呪霊とはまるで対を為すような、人の上半身を模した呪霊である。
唯一人と違うのは目に当たる部分がカタツムリの触覚のようなもので出来ていることぐらいか。
『ァアしデデデデ・・・ニギギるル』
「なんか・・・アレと合体しそうじゃない?」
「いえ、正確に言えば分かれたのでしょう」
『分かれた?どういうことだ?』
アインズの不思議そうな声を受け、七海は虎杖にも聞こえるよう語るように解説をした。
物体・場所に負の感情が募ると、そこから呪いが生まれる。
だが時として、その呪いが二つに別れるのだという。
例えば認識の違いや印象の違い。
今このトンネルを例に言えば、一つの『トンネル』として見るか、二つの『入り口と出口』として見るか、といった具合である。
昔はこのトンネルを本当の意味で恐怖の対象としていたため、その奥に向かおうとする者はいなかった。
しかし、今は肝試し感覚でトンネルを通ろうとする者がいる。
今は自然の神秘と美を感じ歩み寄ろうとする者がいる。
それが新しく『入り口と出口』の概念をトンネルに定着させたことにより、本来一体であった呪霊が二体に分かれた───ということらしい。
「───ちなみに呪霊の強さですが、分かれても半分になるということはありません」
「え?じゃあ分かれ得じゃん」
『特級呪霊に成り得る存在が分かれたらさぞかし面倒だろうが・・・いや、そもそも特級になる程の負の感情が募る存在が、時代の移ろい程度で認識が変わることは無いか』
「そういうことです。無論例外もあるかもしれませんが、大概分かれる呪霊というのは総じて弱い者たちばかり。つまり───
───軽く捻り潰せる、雑魚ということです」
キッパリそう言い放った七海は、ネクタイを少し緩めながら呪霊へと歩み寄る。
昼飯に向かうサラリーマンのような足取りで。
『テあワせェ』
と、同時に呪霊は七海に駆ける。
獲物ではなく、倒すべき敵であると今さら悟ったようだ。
「私の術式はどんな相手にも強制的に弱点を作り出すことができます。場所は対象の長さを7:3に線分した場所、この比率の点に攻撃を与えることができればクリティカルヒットです」
「・・・へ?」
急に解説を始めた七海。
その様子に上半身の呪霊を相手にしようとしていた虎杖は思わず、後ろを振り返りかけてしまう。
しかし映画鑑賞という特訓の成果か、どうにか振り返ることなく済んだ。
「私より格上の相手にもそれなりにダメージを与えることができますし、呪力の弱い相手であればこのナマクラでも両断できます」
『ム?呪具ではないのか?』
「ええ。呪具ではないただの鉈です。呪力が込められていても、私は術式を使うのでそもそも意味がないので」
『なるほどな。・・・ところで、何故急にこのことを?』
「『手の内を晒す』という
───こんな風に」
近づいてくる呪霊に対し、七海は腰を低く構える。
そして一気にダッ!と駆けた。
見えない速度。音を置き去りにする速度。
呪霊に伸びる七海の軌跡と残像は、呪霊のその横を横切るとともに鉈を振るう。
狙うは呪霊の太もも。より正確に言うのであれば、呪霊の全長から7:3に当たる部分。
本来は切れぬはずの鉈は、ズバッという太い音を鳴らし呪霊を両断した。
「私からは以上です」
汚れを取り払うかのように振るうと、同時に呪霊から青い炎が発される。
見事あの一撃で祓ったようだ。
「すんげ・・・」
『峰内で両断とは。確かに武器の良し悪しはあまり関係がないようだな」
「良し悪しはありますよ。特に鉈は私と相性がいい。持ち運びがしやすく重さも片手で十分回せる程度で、その上刀身が細く強度も高いので弱点を突くのに最適です。尤も、私は割と乱暴使うので強度を高めるべく布を巻いていますがね」
『なるほどな。確かに理には適っているな』
「へー、そうなn」
『コブシデ・・・フムムムっッ!!』
もう一方の呪霊が歪な掛け声と共に飛び込むように襲い掛かってくる。
元々目線は逸らしていなかった虎杖は、その下を掻い潜るように呪霊を避け、鳩尾に向け蹴りを放つ。
体勢も悪く、呪力もあまり込められていなかったからか呪霊は目立った外傷もなく吹き飛んだ。
「余所見は・・・していなかったようですね」
『私と宿儺に随分と鍛えられたからな』
すると虎杖はゆっくりと息を整える。
(魔法はいらないかな)
魔法はあくまで格上に使うべきである。
そう考え、魔法は使わずに呪力を体に巡らせ、そして拳に込める。
「フウウウ・・・よしッ!」
ぬかるんだ地面に思いっきり踏み込むと、辺りに土が舞った。
虎杖はその土が地面に落ち始める前に呪霊に近づき、土が地面に到達する前に拳を抜いた。
ボゴオッッ!!
拳はメリ込み、そして呪霊は風切り音と共にドンと吹き飛ぶ。
人間であれば瀕死レベルの腹部の陥没。
色のない吐瀉物を撒き散らしながらも、しかし呪霊の目には生気が宿っている。
だが、今回は先程の蹴りとは訳が違う。
何故なら、虎杖の拳は───。
ドオバンッッ!!!
まるで見えない何かに殴られたのかのように、呪霊は空中でまた吹き飛び、凹み、そして爆散する。
陥没するほどの一撃を喰らい、更にその許容量を超える一撃を喰らったのだ。
耐える耐えない以前に、そのあまりの所撃により中身が爆ぜたのだ。
無論、そんなオーバーキルを喰らって呪霊が生きているわけもなく、青い炎と共に呪霊は灰と掻き消えた。
「成程、
感心する七海を前に、虎杖はヘヘンと自慢気味に鼻の下を人差し指でを擦る。
「だけど、俺はまだ本気じゃないよ?」
「ええそれは分かっていますとも。実際君の顔は、余裕綽々といった感情がこれ見よがしに滲み出ていますし」
「え?そうなの?」
「はい。・・・ですが、君はまだまだ未熟も未熟。次の任務でもくれぐれも油断をすることなく、そして今以上に更に実力をつけられるよう精進してください」
「応ッ!!」
こうして、七海と向かった初任務は、かなりの余力を見せつつ終始無傷で幕を下ろした。
それから一週間。
特別目立った外傷を負うこともなく、虎杖は着々を呪霊を祓っていった。
時折七海の手助けを借りることもあれば、最初から最後まで一人だけで戦い切ったこともあった。
流石に一週間もブッ続けともなれば虎杖の化け物みたいな体力でも疲れるのか、その日は帰って早々飯を喰って風呂に入って、そしてすぐに寝てしまった。
「・・・んん?」
だが、寝ようとする虎杖はふと、不思議そうな声を上げた。
『どうした、虎杖。眠れないのか?』
「いや・・・なんか胸の奥に違和感?があってさ・・・」
『違和感・・・?』
「・・・そういえば・・・この感覚どっかで・・・・・・」
その感覚は数週間前の、あの初めて魔法を覚えた時の───。
「・・・俺、もしかしてレベルアップした?」
『マジ?』
七海の武器
アレ呪具ではないらしいですね。でもなんであんな独特な黒の斑点がついているんだろう・・・呪霊を祓ってきた結果なのか、それとも本人の趣味なのか・・・。
levelup!!
虎杖強化早くなあい?でもこうしないと未来の脳内設計が所々崩れるんじゃあ
てなわけで第21話でした。
次回は未定。ストックは作らず自分の好きな時に描く派なんですよね。(隙有自語)