なお、豪速で作ったのでオチはいつも通りです。
長い時間が続くと、必ず沈黙の瞬間が生まれてしまう。
仲がどれだけ良かろうと、その瞬間だけはどうしても険悪な雰囲気になってしまう。
例えばゲーム。
一瞬のロードが挟まったとき、それまでしていた会話が途切れたことはないだろうか。
例えば焼肉。
頼んだ肉が来ないとき、スマホを触ってしまうことはないだろうか。
例えば仕事。
昼休みに入った瞬間、会話よりも食事に夢中になったことはないだろうか。
世の中にはこういった、沈黙の瞬間というのが生まれることがある。
アインズもまた然り。
どれだけ相手との関係が深まろうと、どれだけ相手の心を掌握しようとも、四六時中誰かと一緒にいれば、必ずその瞬間が生まれてしまうのだ。
「・・・・・・・・・・・・」
『・・・・・・・・・・・・』
(・・・・・・気まずいなぁ・・・)
正直な話、アインズは会話がない方がありがたいと思っている。
何故なら余計な演技をする必要がなく、気が楽でいられるからだ。
だが、逆に会話がないと、相手が何を考えているのか分からなくなる。
(『会話が全然盛り上がらない。こいつつまんねぇな』とか、『急に黙りだしたけど、もしかして俺と話すと嫌いなの?』とか、考えている可能性だってないわけじゃない・・・うぅ、精神が磨り減ってく音がする・・・)
どうにかして話題を作らなければ・・・。
(いや、待てよ?たしかアイテムボックスに・・・)
手を入れてから暫くすると、アイテムボックスの中から一つのアイテムを取り出した。
その名も『フェザー・トランプ』。
一見ただのガラスケースに入ったごく普通のトランプのように見えるが、その軽さは54枚合わせてなんと10g。
ギルドメンバーが一部遅れた時などに、気ままに出来るゲームとして、運営が気を利かせて作ってくれたアイテムだ。
その軽さとは裏腹に材質は厚紙よりも固く、しかもガラスケースを二度と叩くとトランプが元に戻るというおまけもついている。
その上全部合わせて10gという軽さなので、アイテムボックスをそこまで圧迫しないという良心的な面もある。
(まぁギルドでは大体他のメンバーが出してくれてたし、あまり使った記憶はないけど・・・でもこの状況なら・・・!)
「宿儺よ」
『ん?どうしたアインズ』
「いや、そのー・・・なんだ、あまりに暇なのでな、少し遊ばないか?」
『・・・・・・』
「・・・・・・」
『・・・別に構わんが?』
心の中で全身全霊のガッツポーズを行った。
二人の間に魔法で机を作り出すと、その上にトランプを並べた。
並べたトランプの内、ジョーカーを一枚抜くと、それをガラスケースの上に置いた。
適当に混ぜ合わせると、それを元の立方体、山の形に揃える。
そしてシャッフル。
骨なのでやりにくいかと思ったがそれほどではなく、むしろ空中でバラけることなくシャッフルを終えることが出来た。
その間宿儺はガラスケースの上に置かれたジョーカーを眺めていた。
『なんだ、この紙は?花札では無さそうだが』
「これはトランプと呼ばれていてな。ハート、ダイヤ、スペード、クローバーの四つのクラスに分けられた1から13が描かれたカードと、ジョーカーと呼ばれる二枚のカードがある」
『はーと、だいや、すぺ・・・よく分からんが、要するに54枚のかーどがあるということか?』
「そういうことだ。そしてこれから行うのは、『ババ抜き』と呼ばれる遊びだ」
『ババ抜き・・・?』
「詳しいことは見れば分かるだろう」
数字が見えないようにカードの山を裏返して、それを宿儺と自分の目の前に交互に投げる。
磨かれた机なのでよく滑るが、力加減が絶妙に調整されていたので、落ちることはなかった。
最後に宿儺の手元にカードを置くと、自分の手元に置かれたカードを手に取り、扇のように広げた。
「まずは、自分の手札に数字が被っているカードがないかを確認する。そしてペア、つまり同じカード同士を見つけたらそれは捨てる」
暫くガードを見つめ、ペアを見つけるとそれを机の中心に投げた。
「自分の手札に数字が被ったカードが見当たらなくなったところで、ゲームスタートだ。ここまではいいか?」
横文字ばかりではあったが、宿儺には伝わったようで、『分かった』といい手元のカードを手に取った。
そして、宿儺はアインズと同じように、扇状にカードを広げた。
『・・・アインズ、申し訳ないんだが』
「ん?どうしたんだ?分からないことがあるのか?」
『・・・数字はどこに書いてあるんだ?』
アラビア数字、つまり1234567890が日本で使われるようになったのは江戸末期。
平安時代を生きていた宿儺にとっては、まだまだ未来の話である。
「・・・・・・ァッ」
深い沈黙の瞬間が、二人の間を笑うように駆け巡ったのだった。
第四話は明日投稿予定。
ちなみにオリジナルストーリーですが、結構長めのを想定してます。