「お、おい、嘘だろ………何だあれ⁉︎」
五人の仮面ライダーとイマジン達は、目の前にいる巨大な化け物に慄いた。
自分の生み出した悪魔と融合したレトは、怪物となってみんなを上から見下ろしている。それほどまでに巨大な体へと変わったのだ。
『死ね、仮面ライダー!』
レトが叫ぶと、体に巻きついていた蛇がみんなに向かって襲いかかってきた。
蛇は仮面ライダー達を薙ぎ倒しながら地面に穴を開けていった。岩は砕けて山が崩れていく。
「ぐっ!ぐあああああぁぁぁぁッ‼︎」
吹き飛ばされたみんなが地面に叩きつけられた。さっきまでとは比べ物にならないほどの破壊力だ。
「オラァッ!このッ、ぐっ!ぐあッ‼︎」
「くっ!ふっ!ぐふっ!」
レンゲルと電王が蛇を払おうとするが、力強い蛇の攻撃を防ぎ切れずに吹き飛ばされる。
『ドングリオーレ!』
「はあぁぁぁぁぁッ‼︎」
「ダイナミックチョップ!」
グリドンとキンタロスが大きく跳び上がって武器を振り下ろす。
しかしそんな攻撃はものともしないと言わんばかりに、蛇によってはたき落とされた。猛禽類のような羽がはためいて、さらに弾き飛ばす。
「ぐふっ!」「がはッ!」
リュウタロスが前に出て、悪魔に向けて銃を構える。
「あったれ〜!」
引き金が引かれて大きな光弾が放たれた。蛇が怯んでいるうちに亡とウラタロスが駆け出した。
彼らの武器が悪魔に届く前に、蛇の目が真っ赤に光った。その瞬間、蛇の口から熱線が吐かれた。
「うぅっ!ぐっ!」
突っ込もうとしたところを熱線で弾き飛ばされて、二人は膝をついてしまう。
ウォズはソウゴを守りながら蛇を薙ぎ払うが、隙を与えない猛攻に怯んだ。
「ウォズ!大丈夫⁉︎」
大きく後退したウォズに、ソウゴが慌てて駆け寄った。みんなもバラバラになるのは危険と判断して集まる。
「ぐはぁっ!………わ、我が魔王………ご無事ですか?」
「何とか、ね………ごめん、加勢できたらいいんだけど、俺の変身能力は奪われたままなんだ」
「となると、ライドウォッチの力も………?」
「うん。たぶん、手に入れたライドウォッチと悪魔の力が融合してあんな力が………このままだとこの星そのものが危険だ」
「んなこと言ったってどうやって倒すんだよ!ハンパな攻撃じゃ倒せないって!」
仮面ライダー達をさらに追い詰めるかのように、彼らに向けて熱線が放たれた。
一撃一撃の破壊力が大きく避けられなかった。辺りの地面と共に吹き飛ばされる。
「ぐっ!常磐 ソウゴ、あなたはあの悪魔と融合していたのでしょう?何か弱点は分かりませんか?」
亡に聞かれて、ソウゴはハッとした。
「そうだ!アイツから分離される時、いくつかライドウォッチが取れたんだ!野上 良太郎!」
ソウゴは懐からライドウォッチを取り出すと電王に渡した。
〈あ、これってまさか………〉
何かに気がついたのか、電王は立ち上がるとライドウォッチを起動させた。
『ウイングフォーム』
起動されたライドウォッチは輝くと宙に浮かんだ。
それと同時に破壊されたエネルギー装置のある方角から、光の玉が飛んできた。それはライドウォッチと融合し、人型となって着地した。
白い白鳥の羽毛を纏ったような姿のイマジン、ジークだ。
「降臨、満を侍して」
「うわぁ!トリさんだ〜!」
「なんや、お前この星にいたんか?」
まさかいるとは思わなかった者の登場に、良太郎とイマジン達は驚いた。試合に参加していた仮面ライダーを全て把握してたわけでは無かったのだ。
「でも何で彼だけ別のライダー扱い?」
〈たぶん僕達と離れていて、一人でも変身出来たからじゃないかな〉
イマジン達は良太郎の考えに頷いた。
「おぉ、お供たち。この私を出迎えてくれるとは、良い心がけだな」
「誰がお供たちだ!テメェはさっさと戻って十字架にでも貼り付けられてろ!」
〈モモタロス、落ち着いて。とにかくジーク、力を貸してよ〉
「ふむ、良いであろう。家来のために尽力するのも主君の務め」
「さっきまで気絶してただけなのにすごい態度」
ウラタロスが呆れたように肩をすくめた。他の仮面ライダー達はいきなり現れたジークを呆然と眺めている。
「それと、ウォズにはこれを」
ソウゴはさらに二つのライドウォッチを取り出してウォズに渡した。
「このウォッチを奪った時だけ、一瞬だけどあの悪魔の動きが鈍ったんだ。たぶんこれでレトと悪魔を分離できる」
「我が魔王、ありがとうございます。必ず成し遂げてみせます」
「うん。頼んだよ」
ウォズがウォッチを受け取ると、ソウゴは頷くと怪物から離れて行った。
『お前達の正義なド………この私がケシ去っテヤル‼︎』
悪魔が仮面ライダー達に向かって吠えた。まるで取り込まれてしまったように、その声からレトの声は聞こえない。
「おそらくあの悪魔の力となっているのは、レトの悪意だ。それを引き剥がす必要があるが………問題は彼女の意志が残ってるかどうかだが」
「残ってるでしょ。故郷のためにここまでのことをしたんだ。策士ってのは、しぶといモンだよ」
「たしかに………それもそうか」
グリドンの言葉にウォズは小さく頷いた。
「あの悪魔はレトさんの強い悪意を利用している。だからレトさんは自分の意志でやっているようで、悪魔の力に飲まれかけてるんです」
実際に体験したことのあるレンゲルだからこそ、その辛さは充分に理解できた。
〈止めないと………彼女の時間を進めるためにも〉
「えぇ、それが出来るのは私達だけです」
良太郎に応えた亡の声は、強い意志が込められていた。
「そんじゃ、いっちょ派手に決めてやろうぜ‼︎」
『モモ ウラ キン リュウ』
〈みんな、いくよ!〉
「おぉ!」「うん!」「よっしゃ!」「てんこ盛り〜!」「ふむ」
『クライマックスフォーム』
電王はケータロスのボタンを押すとベルトに取り付けた。五体のイマジンが、みんな良太郎の中に入りアーマーとなる。
全てのイマジンと一体となった姿・仮面ライダー電王 超クライマックスフォーム
「我が魔王の力、返してもらおう」
『ギンガ』『アクション!』
ウォズはギンガミライドウォッチを起動させると、ドライバーに投影させた。
『投影!ファイナリータイム!ギンギンギラギラギャラクシー!宇宙の彼方のファンタジー!ウォズギンガファイナリー!ファイナリー!』
空に浮ぶ星々を身に纏った宇宙そのものを表す姿・仮面ライダーウォズ ギンガファイナリー
「とっておきのスイーツに、酔わせてやるよ」
『ライチ』『ロックオン』
唯一手元に残っていたはずのライチロックシードを装着すると、力強くブレードで切った。
空から輝くアーマーが降ってグリドンの鎧となる。
『カモン! ライチアームズ! ユアザヒーロー!』
不屈の闘志と贖罪の誓いを胸に秘めた姿・仮面ライダーグリドン ライチアームズ
「剣崎さん、嶋さん、光………力を貸してくれ」
レンゲルは雷から受け取った剣崎のラウズアブゾーバーを装着すると、『タイガーアブゾーブ』と『タランチュラエボリューション』のカードを取り出してラウズした。
『アブゾーブクイーン』『エボリューションキング』
「くっ!ぐっ………はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ‼︎」
タランチュラアンデットの力を重厚な鎧に変えた姿・仮面ライダーレンゲル キングフォーム
「今こそ、聖戦の時………!」
『アサルトバレット!』
亡はアタッシュショットガンに装填されていたままになっていたアサルトウルフプログライズキーを起動させた。本来は滅亡迅雷net.が使うべきキーをベルトに装填する。
『フォースライズ レディーゴー!アサルトウルフ!Break Down. No chance of surviving.』
家族と仲間の意志を身に宿した全身凶器の青き狼・仮面ライダー亡 アサルトウルフ
五人の仮面ライダーは、持てる全ての力を身に纏い並んだ。
『ツブス………カメンライダーァァァッ‼︎』
強化した仮面ライダー達に争うように、悪魔の体から無数の蛇が襲いかかってきた。
「はぁっ!」
ウォズが手をかざすと、強い重力が蛇達を地面に縫いつけた。そのまま捻り潰される。
『ア゛ァァァァッ‼︎』
大きな腕が振り下ろされて、悪魔の爪がウォズを斬り裂こうとする。
しかしウォズが再び手をかざすと悪魔の腕が止まった。手の先から光弾を生み出して悪魔に叩きつける。
『グウゥゥッ!オノレェェェッ‼︎』
蛇の口から無数の熱線が吐かれた。それを見てレンゲルが前に出る。
「くっ!はぁっ!」
集中して放たれた熱線を大きな鉤爪のついた杖・重醒杖キングラウザーで攻撃を弾き飛ばすと、柄から垂れる糸で悪魔を拘束した。
『ガアァァァァッ‼︎ハナセェッ‼︎』
拘束から逃れようと蛇がレンゲルを襲った。
その瞬間、彼の背中から八本の巨大な蜘蛛の脚伸びて、蛇を全て撃退する。
「やぁっ!」
グリドンは跳び上がり、シャインライチソードを振るい悪魔の大きな翼を斬りつける。一凪で悪魔を後退させた。
『グアァァァァァッ‼︎』
怒った悪魔の攻撃にも動じず、前へ突進してシャインライチソードを投げた。大剣の刃が悪魔に深く突き刺さり、再び手元に戻ってくる。
「ふっ!はぁっ!」
亡が身構えると、全身のアーマー各部からマイクロミサイルやマルチロックレーザーが放たれた。悪魔の体に着弾すると同時に大爆発する。
『グゥッ‼︎ギャアァァァッ‼︎フ──ッ!フ──ッ‼︎』
亡の猛攻止むことなく、ミサイルで牽制しながら腕に装備された鋭い爪で弾丸のごどく素早い攻撃を繰り出す。
「いくぜいくぜいくぜぇッ‼︎」
電王はデンガッシャーを構えると、荒々しく蛇を斬り倒し悪魔へと一撃をお見舞いした。
『グアァッ‼︎』
〈ドスコイッ!〉
さらにキンタロスのアーマーがついた左腕が腹に突き刺さった。
『ギャアァァァァァァッ‼︎』
「おい熊公!せっかく俺がカッコよくキメてるんだから邪魔すんなよ!」
〈お前がさっさとやらんからやろ。ちょっと俺に変われや〉
「ふざけんな!テメェが引っ込んでろ!」
〈ちょっとリュウタ、もう少し詰めてよ〉
〈え〜、亀ちゃんが詰めてよ〜〉
〈家臣ども、主人の前で見苦しいぞ〉
「テメェのせいで息苦しいんだよ!」
〈ちょっとみんな!目の前目の前!〉
悪魔の放った拳を避けると、五人は間合いを取った。
『マグネティックストームユートピア!』『ライチオーレ!』『クラブ9』『クラブ8』『クラブ7』『クラブ6』『クラブ5』『ストレートフラッシュ』
「「「はあぁぁぁぁぁぁッ‼︎」」」
亡が生み出した吹雪によって悪魔の足場が崩れた。さらに亡から放たれたミサイルが撃墜する。
グリドンは高速回転しながら、光輝く大剣で向かってくる蛇を薙ぎ払った。
悪魔が怯んだ隙にレンゲルが突進してキングラウザーを振るった。五つのエレメントをくぐり抜けて、三本の鉤爪が悪魔にめり込む。
『グアァァァァァァァァッ‼︎』
「二人とも!」
グリドンの合図でウォズと電王が並んだ。
〈ウォズさん!〉
「あぁ!」
『ワクセイ』『アクション!』
『投影!ファイナリータイム!水金地火木土天海!宇宙にゃこんなにあるんかい!ワクワク!ワクセイ!ギンガワクセイ!』
『ファイナリービヨンドザタイム!』『水金地火木土天海エクスプロージョン』
『フルチャージ』
ウォズはワクセイの姿へと変わると、悪魔の真上の空から無数の流星群が降ってきた。それによって悪魔の身が削られていく。
電王がデンガッシャーを振るうと、刀身が放たれてあらゆる方向から悪魔を攻撃した。最後に縦に一筋の光が走ると、悪魔の翼が斬り落とされた。
「ガアァァァァッ‼︎ア゛ァァァァァァッ‼︎ユルセナイ………キエロ、カメンライダーァァァッ‼︎」
怒り狂ったように悪魔が禍々しい光弾を放った。五人はそれを掻い潜り前へと進む。
ギンガファイナリーへと戻ったウォズが、重力を操り悪魔の動きを鈍らせる。
『グウゥゥゥッ………正義、夢、仮面ライダー………スベテ、ワタシガホロボシテヤル‼︎』
「レトさん!あなたが本当に恨んだのは正義なんかじゃない!誰も助けてくれなかった自分、あなたの運命だ!」
『ダマレ‼︎オマエニ………ナニガワカル‼︎』
叫んだレンゲルに向かって悪魔が熱線を吐いた。蜘蛛の脚と重厚な鎧でそれを防いだ。
「ぐっ!………俺も、昔はこの力に飲まれた事があった。強くはなりたかった………でも何の予兆もなく、自分じゃどうしようもない力を与えられた。それが俺の運命だった」
レンゲルの訴えに、悪魔の動きが少しだけ止まった。
「でもそんな時、俺の周りには俺を助けてくれようとする人達がいた。だからこうして仮面ライダーになれたんだ!一人でダメなら俺達が手を貸します!誰だって、運命とは戦える!」
『………ワタシハ………ヒトリデタタカエル………ソノタメノ、コノチカラダァッ‼︎』
再び暴れ出した悪魔を亡がミサイルで怯ませて、ウォズが重力で抑え込んだ。
「あなたは自分の意志で、こんなことがしたかったわけじゃないはずです!心に生まれた絶望を、悪意を利用されただけです!そんなの、ただの道具と変わらない!」
「君の意志で、君の心の思うままに生きるんだ!過去に囚われずに、今の自分の心に!人生は前にしか進まない。どんなに過去を探しても、今の君の中には今の君の心しかいない!」
『ソンナノ………グッ!………グアァァァァァッ‼︎』
亡とウォズの言葉が届いたのか、悪魔が悶絶した。悪魔とレトが少しではあるが、分離しているようだ。
『ワタシハ、ホロボス………チガウ、助けて、いヤ………グアァッ!アァァァッ!ア゛ァァァァァァッ‼︎』
暴走したかのように悪魔の蛇がウォズの重力を振り切って、熱線を吐きながら暴れ狂った。
グリドンは荒れ狂う蛇をシャインライチソードで防ぐと薙ぎ払った。さらに電王がデンガッシャーで熱線の軌道を変えた。
〈時間は巻き戻せない、いや、巻き戻しちゃいけないんだ!だから、前を見て動くしかないんだよ。どんなに弱くても、前に進んでいくしかない!〉
『モう、遅い!………モウ、ワタシは………引き返セナイ‼︎』
電王の言葉に返されたレトの声は、どこか泣いているようにも聞こえた。
「そんな事ない!たしかに………自分勝手な理由で取り返しのつかないことをして………そのせいで、大切だったはずの人を傷つけることだってある。それはどんなに償っても、償えるものじゃない。けどそれは、過ちを繰り返すことの理由にはならない!」
グリドンは蛇を斬り落としながら悪魔の懐に飛び込んだ。反射的にそれを防ごうとした悪魔の腕と斬り結ぶ。
『それじゃア………ドウすれば………』
「生きていくしかないんだ。罪を一生背負って、自分の身に刻み込んで、これから先も自分の罪と戦うしかない」
「はぁっ!はぁっ!………私は、グッ、うわあぁぁぁぁぁぁぁッ‼︎」
みんなの言葉に悪魔が叫んだ。さっきまで一体となっていた悪魔の声が、レトの声が戻り二重となる。
「レトさんが、戦ってる………自分の心と!」
「えぇ。自分の心で、自分の悪意を倒そうとしている」
「やっぱり、ちゃんと残ってたな。彼女の心」
「それなら、私達のやるべきことは一つだ」
〈助けてあげよう、彼女の心を〉
「当たり前だぜ!」〈もちろん!〉〈やったるで!〉〈よ〜し、やっちゃうぞ〜!〉〈いいであろう〉
その時だった、仮面ライダー達の上から眩い光が降り注いだ。温かく力強い光だ。
「こ、これは………⁉︎」
「このエネルギーは、まさか………ステンノークリスタル?」
「へえ、力貸してくれるってことかよ」
〈すごい。力が、漲ってきた………これなら!〉
「あぁ!」
ウォズはソウゴに渡された二つのライドウォッチを起動させて、ドライバーに装着した。
『リバイ』『バイス』
『アクション!』『ライドウォッチブレイク!』
すると二つのライトウォッチが輝き浮かび上がった。クリスタルのエネルギーと混ざり合って、みんなに悪魔と人を分離する力を与える。
「よし………いこう!」
『ファイナリービヨンドザタイム!』『超銀河エクスプロージョン!』『チャージエンドアップ』『ライチスカッシュ!』『クラブ10』『クラブJ』『クラブQ』『クラブK』『クラブA』『ロイヤルストレートフラッシュ』『マグネティックストームディストピア!』
「「「「「はぁっ!」」」」」
みんなが一斉に跳び上がった。電王は翼を広げて、ウォズは重力で悪魔を縛り付ける。亡がミサイルを放ち、レンゲルとグリドンが武器を投げて楔とする。
そして大きく回転すると、全員が自然と声を揃えた。
〈〈〈〈〈「「「「「ライダーキ──ック‼︎」」」」」〉〉〉〉〉
五人の蹴りは阻もうとした蛇をも砕いて、悪魔の体に突き刺さった。大きな衝撃波が辺りに広がる。
『グウゥゥゥッ‼︎マ、マダダ!マダ、ワタシハオワラナイ‼︎』
それはレトではない。おそらく悪魔そのものの声だろう。ショッカーの意志を持つ悪魔は抵抗しようともがいている。
『ニンゲンガイルカギリ、ワタシハソンザイシツヅケル‼︎ヒトノココロガ、ワタシヲウムノダ‼︎』
たしかに、どんな人間にも悪意がある。それはこれからも変わらず、また新たな闇を作るだろう。
それでも…………
最後の力を振り絞り、全員が吠えた。
『はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!!!』
その瞬間、仮面ライダーの蹴りが悪魔を貫いた。
『グッ‼︎グアァァァァァァァァァァァッ‼︎』
大きな爆発とともに悪魔がバイスタンプと共に砕け散り、霧となって消えていった。
爆発した悪魔から自力で抜け出してきたように、レトが地上へと降ってきた。
着地した仮面ライダー達が、彼女を迎え入れるように受け止めた。
「レトさん!大丈夫⁉︎」
変身を解除したみんなが、彼女の元に集まった。睦月が彼女を揺すって起こす。
こうして触ると、改めて彼女が死んでいることが分かる。それほどまでに冷たい体だ。
レトはゆっくりと目を開けた。
「んっ………わ、私は………」
レトは自分を囲むみんなを見て、小さく息を吐いた。複雑そうな表情で口を開く。
「そっか………みんな、倒したんだね………悪魔を」
「うん。君が戦ってくれたおかげだよ………」
「そう、かな………えへへ」
良太郎が頷くと、レトは照れ臭そうに笑った。
それが合図となったかのように、レトの体がまるで砂のように削れて薄くなっていく。
「なぁッ⁉︎お、おい!お前の体、どうしたんだよ!」
城之内が驚き叫ぶと、レトは消えていく自分の体をぼんやりと眺めた。
まるで分かっていたように落ち着いて笑った。
「え?………あぁ、あの悪魔と、上級契約、したせいかも………悪魔のエネルギーのせいで、細胞が維持、できなくなったんだ………」
「そんな………今すぐ何とかして………!」
自分を抱き起こそうとした亡の手を、レトは優しく包み込んだ。
「いいんだよ………これで。私が死んだあの日から、今日まで………私の時間は、止まったままだった………」
レトはみんなの顔を一人ずつ、ゆっくりと見ていった。
「でも、みんなが動かしてくれた………これで私も、前に進める、よね………」
「もちろん。自分の時間を………自分の心で」
「そっかぁ………やっと分かった。私の、本当に求めていたもの………」
レトが伸ばした手を、みんなが掴んだ。
それを見て、彼女は笑った。彼女の心からの笑みだ。
「結構………簡単に、手に入っちゃった………」
「そうだね………でも、たしかに君が掴み取ったものだよ」
ウラタロスの言葉に、レトは涙を流した。その涙すらも薄れ消えていく。
「私、生きるよ………これまでのこと、これからのこと、全部背負って………生きていく」
「あぁ。お前やったら、きっと楽しい人生が待っとるで」
「………バイバイ」
「………うん。また、いつか………」
その言葉が言い終わる前に、レトの体は消えていった。しかし、みんなには何が言いたかったのか、ちゃんと伝わっている。
みんながさっきまで彼女の手を掴んでいた手を、力強く握りしめた。
「…………負けんじゃねぇぞ」
モモタロスは小さく呟くと、彼女が消えていった空を見上げた。
それと同時にみんなの周りが光に包まれ、それぞれがそれぞれの居場所へと帰っていった。
「よぉ、また来たぜ」
緑が映える小さな丘。そこに立つ小さな墓標に城 茂は来ていた。手には百合の花束を持っている。
茂は墓の前に立つと、手に持っていた花束を墓の前に置いた。
「どうやら、まだ当分そっちに行けそうにないわ。まぁ、あんまし早くそっち行くと、お前に蹴られそうだけど………」
独り言のようにポツリポツリと呟く茂を、涼しい風が優しく包み込んだ。
茂は立ち上がると、墓に背を向ける。
「そんじゃ、また来るな………ユリ子」
カブトローに跨りヘルメットを被ると、墓標を振り返ることなく少しだけ俯いた。
「お前が、悟郎が、人が呼ぶ限り………俺は悪を倒し続ける。だから、安心して眠っててくれ」
睦月が目を開くと、そこは急な坂道だった。この近くに昔睦月がバイトしていたスーパーがあった。
「睦月」
後ろから聞き慣れた、それでいて懐かしい声が聞こえた。咄嗟に後ろを振り向き、目の前にいる人の名前を呟く。
「剣崎、さん………」
「ありがとうな。助かった」
「もう、行っちゃうんですか?」
剣崎 一真はフッと微笑むと、睦月に背を向けて歩き出した。睦月はその背中を追いかけると、彼の腕を掴んだ。
「剣崎さん。俺、戦いますよ。仮面ライダーとして………」
それだけ言って、睦月は持っていたラウズアブゾーバーを剣崎に返した。
「あぁ、今のお前なら、任せられる………みんなによろしくな」
剣崎は再び歩き出した。睦月はその姿をただ見送った。
亡がいた場所はデイブレイクタウンの森の中だった。目を開けると、目の前には三人の仲間、いや、家族がいた。
「滅、迅、雷………」
三人は亡を見て、嬉しそうに微笑んだ。雷はボロボロになっていて、滅と迅が肩を貸している。
「雷、大丈夫ですか?」
「あぁ、見た目ほど酷くねぇよ」
「よく言うよ。自分じゃまともに歩けないのに」
「う、うるせぇよ!言うなって!」
揶揄うような迅の言葉に雷が恥ずかしそうに叫んだ。雷に肩を貸したまま、滅が口を開いた。
「亡、助かった。礼を言う」
「いえ。私も今回、改めて思いました。ヒューマギアの夢と自由を守る。それが私の正義なのだと」
「お前だけじゃない。俺達、滅亡迅雷net.の正義であり夢だ」
滅の言葉に迅と雷が頷いた。四人は拳を突き出し軽くぶつけた。
「「「「滅亡迅雷net.の、意志のままに」」」」
みんなが一人ずつと視線を交わして笑った。
「さてと、それじゃあ社長のところに戻るか。仕事が山積みだからな」
「その前に修復しないとでしょ?ウチに来なよ」
四人は並んで歩いて行った。
その後ろ姿に紫色の戦士が映っていることは知らずに。
「ねぇ、坊や!」
誰かに肩を揺すられて、城之内は目を開けた。
「凰蓮さん」
「どうやら、あなたにまた助けられたみたいね。Merci」
「師匠………」
仮面ライダーブラーボであり師匠のの凰蓮・ピエール・アルフォンゾの礼に、城之内は軽く頭を下げた。
ふとポケットの中に手を入れてみたが、そこにドングリロックシードは無かった。
おそらくステンノークリスタルの力で、一時的に手元に戻ってきたのだろう。
しかしクリスタルは仮面ライダーの力か、願い事を言わなければ反応はしない。
もしかしたら、その願いをしてくれたのは、自分に仮面ライダーとしての名前をつけてくれた、最高の相棒………
「ありがとう、初瀬ちゃん」
誰に聞かせるでもなく、城之内は小さく感謝を呟いた。
「さてと、それじゃあ早速仕事に戻るわよ!お客様が待ってるわ」
「はい、師匠!」
「おっはよ〜ゲイツ!」
「ッ!おいソウゴ!離れろ暑苦しい!」
「まったく………早くしないと学校遅れるわよ」
「え⁉︎ちょ、待って!ツクヨミ!」
毎日のように賑やかに学校へと向かう三人を、ウォズは遠目から眺めていた。
すると後ろからカメラのシャッターを切る音が聞こえてきた。そして二つの足音も
「門矢 士と海東 大樹か」
「常磐 ソウゴを狙っていた悪魔、ショッカーデットマンの事件は全て解決したみたいだな」
振り向くことなく口を開いたウォズに士が返した。その隣に海東もやってくる。
「残念だよ。そのバトル、僕も参加したかったな。さぞいいお宝が手に入っただろうに」
「お宝、ね………」
ウォズはぼんやりとソウゴ達を眺めた。元の学生としての記憶しかないため、あんな戦いがあったことは覚えていない。
何とも平和で楽しそうな光景だ。
「今はこれで充分だろう。それ以上は………」
ウォズは遥か先まで広がる空を見上げた。
時の中を走るデンライナー。その中はいつものごとく賑やかだった。
「おい小僧!テメェ俺の取っておいたプリン勝手に食ったろ!」
「え〜、知らないよ!自分で食べたんでしょ?」
「んなわけあるか!昨日から取っておいたんだぞ!」
「ボク知らないって!熊ちゃんなんじゃないの?」
「はぁ?おい熊公テメェか?」
「────────」
「おい。おいって!このッ、起きやがれ!」
「ちょっと先輩。静かにしてよ」
「あぁ?んなこと言ったって、ってそれ俺のプリンじゃねぇか‼︎オラ、返しやがれ‼︎」
「おっとヤバい」
「おい待てコラァッ‼︎」
ガヤガヤ騒いでいるイマジン達を眺めながら、良太郎はオーナーに今回の事を話した。
「………というわけでして」
「なるほど。それで通信が途絶えていたんですね。まぁ何事もなくて良かったです」
オーナーはチャーハンを食べる手を止めることなく頷いた。
「何事も、ね………」
「どうかしましたか?」
「いえ、何もないです」
良太郎は報告を終えると近くの席に座った。窓から見える景色を眺める。
結局クリスタルによってみんなの願いが叶うことはなかった。少なくとも見た感じはそうだ。
でも、もしかしたらちゃんと叶ったかもしれない。この事件を通してみんなが思っていた『自分の居場所に帰りたい』という願いが。
『………うん。また、いつか………』
レトの最後の言葉が頭の中に響いた。騒いでいるイマジン達を横目で見て、良太郎は微笑む。
「また、いつか………未来で」
かくして、『仮面ライダー最強バトル』を終えた仮面ライダー達は、各々が自分の居場所へと帰って行きました。
我が魔王も再び『王道』を歩み出し、これで今回の物語は終わりです。
しかし仮面ライダーの歴史がこれからどのような道を歩んでいくのか。それは皆さんの想いが決めていくのです。
これからも続く仮面ライダーの歴史の栄光を願って、この物語を締め括らせていただきます。
それでは皆さん、いつか未来で。
最後まで読んでいただきありがとうございました。これにて終わりです!
評価、感想等ありましたら、ぜひよろしくお願いします。