泥臭くても勝ちたい   作:Q.うまぴょいとうまだっちの違いを述べよ

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99%の才能と、1%の才能と

 

 

 

 

 

ターフを駆ける。

俺も何度か見た事がある、それでもやはりコイツの走りには何処か惹き付けられる何かがある。

あれから数日が経ったが特に進展はなく、ずるずると行動を起こせずに今はテイオーに駄々をこねられてターフにいる。

 

力強い走りは一歩踏み出すだけで爆発的な加速を生んでいる、正直まともなトレーニングも無しにここまでのバネがあるのは末恐ろしい。

これでもっと身体を作り、走り方を見直せばどうなってしまうのか。

ゾクリと背筋が寒くなる。

 

底が見えない。笑顔でターフを駆けるテイオーの姿が眩しい。

間違いなくテイオーはこれから物凄く伸びる、それを俺が育てられればどれだけ光栄な事だろうか。

でも本当にそれでいいのか?

俺みたいな奴がテイオーのような天才を育てきれるのか?

前までなら自信もあっただろう、けど今はどうしてもテイオーを直視できない。あの底なしの才能に常に俺は身を焼かれ続けている。

 

きっと俺はただのモブで、いい所主人公を助けるお助けキャラ的な立場だろう。

それとも踏み台か。

 

「ねぇねぇ、トレーナー見てた?どうだったボクの走りっ!トレーナーがくれたメニューのおかげでターフを踏みやすくなった様な気がするんだよねぇー」

「.......あぁ、本当に天才だよお前は」

 

眩し過ぎる笑顔から目を背ける様にそう言った。

それにレースじゃなくてこれだ、勿論まだ皇帝とかを相手には出来ないがデビュー前やジュニア級で言えばレース中はもっと速くなる。

この爆発的な加速が出来るバネも恐ろしいが、真に末恐ろしいの勝負感だと思う。

 

この軽やかな身のこなしで行われる位置取りや展開作りには俺も驚かされた。

これをまだ用いる才能だけで行っているのだから、専属が付いて考える力やそれらの才能を磨かれた時を想像するとゾッとする。

それと同時に俺がテイオーではなく別の担当を持った時にテイオーに勝てるのか。

そんな考えが脳内に巡るが直ぐに考えるのをやめた、だってそうだろう。1度もう俺はテイオーに負けている。

それも8馬身差も付けてだ。担当していた娘も決して才能がなかった訳じゃない。ただテイオーがそれ以上に天才的であっただけで。

 

「ねぇってばっ!.......え、トレーナー?何だか顔色が悪いけど大丈夫?」

「.......すまないテイオー。今日は少し調子が悪いみたいだ。また練習見てやるから今日はここまでにしていいか?」

「うん.......ごめんね、全然気が付かなくて」

 

らしくなくいつもぴこぴこと動く耳も、ぶんぶん忙しなく動いている尻尾もしゅんと垂れ下がってしまっている。

あぁ、くそ。別にお前は悪くねぇってのに。

反射的にぽんっと頭に手を乗せ乱暴に撫でる。

うわぁー、髪の毛があああ!と嫌がりながらも俺の手を受け入れているテイオーに言った。

 

「ちんちくりんが変な気を使うな。お前がらしくもなくそんな風になってる方が気が滅入るっての。今回のこれは持病みたいなもんだからお前は悪くねぇよ」

「ちんちくりんって言うなっ!うん、でもありがと。流石はさいきょー無敵、未来の三冠ウマ娘テイオー様のトレーナーだねっ!」

「はいはい。んじゃまた今度な」

「ちょ、ちょっと待ってっ!」

 

歩き出した所を服を掴まれて止まる。

振り返れば落ち込んでいると言うよりは何処か不安そうに俺を見上げるテイオー。

生意気にも服は皺になるほど強く握られていて、もう1つの手は胸の前でキュッと握られている。

そんな風に不安そうにされれば邪険には出来ない、押し潰されそうな自分の心を無視して優しく問い掛ける。

 

「どうした?」

「え、えっとね.......またボクの練習みてくれる?」

「当たり前だ。お前の担当が見付かるまではテイオー様の相手は務めさせて貰うさ」

「そ、そう?ならいいんだけど」

「おう。じゃあ行くわ」

「うん!またね!」

 

名残惜しそうにこっちを見るテイオーを置き去りにして逃げるように俺はターフを離れていく。

懐いてくれているのは有難い、でもどうしてもテイオーの近くにいるとキラキラし過ぎていて自己嫌悪が激しくなる。

今の今までずっと逃げていて、これじゃ何も変わらないって分かってるのに。

 

どうしようもないと頭が理解していて、それを否定するように心が叫んでいる。そして気が付けば学園の外に出ていた。

無性に1人になりたくて河川敷を下り足を投げ出す様に腰掛けた。

 

諦めたくなかった。

たずなさんも言っていたように運が悪かったのかも知れない。いや実際そうだったのだろう。

でも考えれば考える程俺は思うんだ。

あの時こうしていれば、これをやっておけばと。ただの後悔で未練でしかないし過去に起こった事を悔やんでも仕方がない。

それでもそう思わずにはいられなかった。

 

悔しい。でもそれ以上に負けたあの娘の方が悔しかったに違いない。

悔しくて諦めたくなくても、先にゴールしたその背中が余りにも遠過ぎて。

だからどうしようもなかった。

俺は一体こんな女々しく引き摺って何がしたいんだろうか。

 

「.......あの」

 

どれぐらい此処にいただろうか。

不意に後ろから話し掛けられた。

 

 

 

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いつからだろうか、期待するのを辞めたのは。

入学する前はアタシも柄にもなく期待していたと思う。皆の期待を背負ってやってきたトレセン学園。

きっと此処からアタシも主人公とはいかなくてもキラキラした毎日を送れるんじゃないかってそう思っていた。

 

日本ウマ娘トレーニングセンター学園、通称トレセン学園。

此処は中高一貫校であり、ウマ娘教育機関としてはトップの学園だ。

そんな皆の憧れとも言える学園に入学出来た事は少なくとも自信となった。

 

でもそんな現実が甘い訳がないよね。

入学して以降アタシは1着になった試しがない。流石にネイチャさんもこれには身の程を弁えたっていうか。

結局アタシはモブで、周りの皆がキラキラしていて眩しいったらありゃしない。

だからアタシはアタシなりにそれなりって言うか、程々に結果を残せればなって。

 

――本当にそうか?

 

「マーベラス☆」

「.......うん、おはよー」

 

同室のマーベラスサンデーに今日も起こされて起床する。

 

「今日もマーベラスな朝ね!きっといい1日になる筈だわ!」

 

いい加減同室のこの子のコレには慣れてきた。マーベラス?が何なのかはまだ良く分からないけど、決して悪い子とかじゃなくて凄く良い子なんだけどね。

起こし方はともかく朝はいつも起こしてくれるし。

 

マーベラスサンデーのお陰で特に朝は慌てる事もなく準備を整えて出発する。

トレセン学園は全寮制なので、歩いて5分程度で学園には着くのが魅力的だ。

学園着けば暫くして授業、レースに関してやトレーニングも学ぶが本格的な指導はなくてあくまでやっていて損は無い程度の事しか授業では習わない。

あくまでトレーナーに教えられる事がスタートラインだと言える。

でも学園に在籍しているウマ娘が2000弱に対して、トレーナーはその半分もいない。

だから殆どが専属と言うよりはチームに所属して師事を受けるような形だ。

 

トレーナーにスカウトされたりするのはほんのひと握りのウマ娘だけ、それこそ1着になるようなキラキラした主人公のようなウマ娘だ。

 

そう、アタシの様なモブにはトレーナーなんて付く訳がなくて今もチームにも入らず幾つか出た模擬レースも良くて3着。

アタシのような奴は程々にそれなりにやっていくしかないってこと何だろう。

 

――本当にそうか?

 

悔しいに決まっている。

でもそんな風に頑張るのはアタシのキャラじゃなくて、それでもやっぱり練習は辞めれなくて。

ずっと憧れていた。

こんなアタシでもキラキラしたヒロインみたいになれるんじゃないかって。でもトレセン学園に来て分かったのは現実が甘くないって事。

アタシは所詮モブって事だけ。

 

モブなアタシはシンデレラにはなれない。

夢見ていたトレーナーさんとのキラキラした毎日。こんなアタシをキラキラと輝かしてくれるそんな魔法使いみたいなトレーナーさん。

 

遠い、欲しくて堪らない1着が遠い。

ほらそこで走っているトウカイテイオー何かあんなにキラキラした笑顔で走っちゃってさ。

トウカイテイオーは出る模擬レースを尽く1着でゴールしている。

そもそも模擬レースってウマ娘のアピールの場、所謂スカウトされる為にあったりするんだけど何故そんなレースにトウカイテイオーは何度も出走しているのか。

もしかして嫌がらせか?それともあのトウカイテイオーのトレーナーのせいか?

 

それは分からないけれど、アタシには関係ない事か。実際アタシは諦め悪く模擬レースに出てはトウカイテイオーに負けている。

アタシには見向きもしないで一直線にゴールへと走る姿にいっそ清々しい思いだ。

 

――本当にそうか?

 

なわけない。

必死に脚を回して、レースの対策を考えて。

全く見向きもされないで何にも思わない訳ないじゃん。

じゃあ本当に勝てるように努力したのかと言われると自信が無くて。頑張ってない訳じゃない、アタシなりにやれていると思う。

じゃあどうすれば勝てるのか。

そんなのアタシが聞きたい、でも結局練習をやるしかなくて。

 

「うん、ぼちぼち今日もがんばりますかー」

 

学園を離れていつものトレーニング場所である河川敷。

ストレッチでもして早速と思っていると誰かが居るみたいで咄嗟に隠れてしまう。

嘘、まさか今の聞かれてた?

耳で真っ赤になっている事を自覚しながらそっと影からその人を見るけど、どうやら考え事をしているみたいでこっちには気が付いていない。

 

ホッとした。

あんなの聞かれてたら恥ずかしくて死んじゃってたかも。

 

でも困った。

これじゃ此処で練習が出来ない。いや出来なくもないけど、誰かに練習を見られるのは何となく恥ずかしい。

だからじっとその人を見て動いてくれるのを待つ。

 

そしてどれぐらい待っただろう。

結構な時間待ったけどその人は動かない。

でもそのお陰で分かったことが幾つかある。

 

まずその人がトレセン学園のトレーナーである事。

そしてその担当がトウカイテイオーである事。

 

何処かで見た事あるなって思ったがまさかトウカイテイオーのトレーナーがこんな所に居るなんて。

学園でトウカイテイオーとトレーニングしてたと思ったんだけど、何かあったんだろうか。

何処か彼の横顔は消えてしまいそうな程弱々しく、でも不思議なのは瞳だけは力強く何かが燃えているような。

上手く言えないけどそんな矛盾しているような、でも不安定で見てられないそんな姿に。

 

「.......あの」

 

気が付けば声を掛けていた。

 

 

 

 

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