URAファイナルズを制した俺とスぺ。
彼女がおずおずと北海道旅行に行きませんかと聞いてきた。

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ついにうちのチームにスぺが来ました。
スぺ可愛いよスぺ(*´ω`*)


スぺと北海道旅行に行くことになった

「トレーナーさん! 私と、北海道旅行しませんか!?」

 トレーナー室を訪ねてきたスぺが唐突にそんなことを言いだした。何のことはない、帰省についてきてほしい、それだけのことらしい。

 

「あはは……突然すみません。けどずっと思ってたんです。お母ちゃんにトレーナーさんのことを紹介したいって」

「あ、ああ。大事な娘さんをお預かりしている以上、電話でご挨拶はしてあるぞ?」

「え、ええ。それは知ってます。私が電話でいろいろ話しているうちに、お母ちゃんもお会いしてみたいって。実は電車賃ももらってるんです」

 

 URAファイナルズを優勝したスぺには相応の賞金が入っている。それこそサラリーマンが一生かけて稼ぐような額だ。

 そしてトレーナーたる俺にもその一部が還元されている。だから北海道への旅行と言っても懐に響くような話ではない。

 まあお金の話ではなく、礼儀としての話だろう。

 

「ああ、いいぞ。俺の愛バのたっての頼みだ。それに普段頼みごとをしてこないスぺが言ってきたんだ。かなえるのはもうトレーナーとしての義務だろ」

「わああああ! ありがとうございます!」

 スぺはレースに勝ったときのような満面の笑みを見せる。俺が何としてもレースに勝たせたいと思った、俺の大好きなひまわりのような笑顔だ。

 

「え、えと……、恥ずかしいです。そんな……」

「うぇ!?」

「大好きとか……うれしいですけど」

「あ、ああ。すまん。思ったことを口に出す癖は直さんとなあ……」

「い、いえ、いいんです。私もトレーナーさんのこと、大好きですよ」

「あ、ああ。ありがとうな。スぺ」

 この時俺は勘違いをしてしまったことを悔やむことになる。「大好き」と言う言葉のニュアンスの違いに。

 

 それから数日後。有給の申請は滞りなく通り、俺はスぺと二人で電車に揺られていた。

 

「お母ちゃんに会ってもらいたかったんです。私が日本一になれたのは、トレーナーさんのおかげだって」

「いや、スぺが頑張ったからだぞ?」

「それでもです! 私が頑張るのは当たり前のことです! トレーナーさんが私を導いてくれなかったら……」

「まあ、そうかもな。俺たち二人の成果ってことだ」

「そうなんです! ええ、食べ過ぎようとする私を止めてくださって本当に……ありがとう? ございました??」

 なんだかハイライトの消えた目つきで呟くスぺ。

「お、おう。ありがとう?」

 

 などと会話しているうちにとある駅に止まり、意気揚々と電車を降りるスぺ。

 

「あれ? あれれれれれ!?」

「お前、まさか……?」

「うぇ!? トレーナーさん、ここどこなんでしょう?」

「おいいいいいいいいいいいいい!!」

 

 そこで唐突にスぺの電話が鳴りだした。セイウンスカイと表示されている。

「やっほー、そろそろ絶賛迷子中ですかあ?」

「ふええええええええええええ!?」

 スピーカーモードにしている背後からは、セイウンスカイののんびりとした声が聞こえてくる。背後からはキングヘイローのあきれたような声と、笑みを含んだエルコンドルパサーのセリフも聞こえてきた。

「今最短ルートを調べているから、落ち着いて行動してね、スぺちゃん」

 グラスワンダーの一言にグるんぐるんとスぺのパニックを表現していたような尻尾の動きが止まる。

 結局、彼女たちのサポートもあって、搭乗時刻ギリギリではあったが空港にたどり着けた。

 

「ごめんなさいいいいいい」

 ぺしょんと耳をたれさせてしょげるスぺの頭をポンポンと撫でてやる。

「間に合ったからオッケーだ。さあ、行こうか」

「はい! みんなにはお土産をたくさん買って行かないとですね!」

「ああ、そうだな」

「それにお母ちゃんに報告しないと。たくさんのお友達もできたよって」

「うんうん」

「みんなと競い合えたから、私強くなれたよって」

 けなげなことを言うスぺが可愛くて、頭を撫でつつ耳にも指先を滑らせる。

「ひゃんっ!」

「あ、すまん。くすぐったかったか?」

「も、もう。ウマ娘の耳は敏感なんですよ?」

「うん、ごめんな。今後気を付ける」

「そうですね。次からは気を付けてくださいね? あと私以外にしちゃだめですよ?」

 フンスと鼻息荒く告げるスぺの顔は、ちょっと赤くなっていた。

 

「ええええええ……」

「どうした?」

「機内食って楽しみにしてたんですけど、ないって」

「あれは国際線とかの長時間かけて移動するやつだけだなあ」

「…‥トレーナーさん。海外遠征とかどうですかね?」

「おい、まさかとは思うが」

「エルちゃんに聞いてたんですよ。飛行機の機内食がすっごく美味しかったって」

「あ、ああ」

 食い意地が張っているとは思っていたが、まさかそれだけで海外遠征を言い出すとは……。

「あ、でもこんなふうに二人で旅行も良いですね。新婚旅行とか憧れます」

「ああ、そうだな」

 いずれスぺにも良い相手が現れて結婚することになるんだろう。……だが生半可な相手は俺が許さん! ああ、これが娘を嫁に出す父親の気持ちなんだろうか?

 などと悶々としていると、スぺはこてんと俺の肩を枕にすやすやと寝息を立てていた。

「うにゅう……お魚の方でおかわりお願いします!」

 夢の中で機内食をおかわりするスぺに「かわいいやつめ」とつぶやいた。耳がピコンと動いてスぺの顔がにっこりと笑みを形作る。

 ひじ掛けに置いていた腕にスぺが抱き着いてきて、ふにょんとした感触に俺は別の意味で悶々とする羽目になるのだった。

 

「はあああああ……ふるさとの匂いですねえ」

 スぺの実家の最寄り駅に降り立った。

 深呼吸するスぺに倣って俺も大きく息を吸い込む。大自然の香りがした……様な気がした。どちらかと言えば隣にぴったりくっついているスぺの方から何やらいい匂いがして、再び悶々とする。

 

「あ、お母ちゃんだ! お迎えに来てくれたの!」

 普段は軽トラらしいが、二人乗りなので近所の人に別の車を借りてきたのか? ってかあれマイクロバスだよな。

 わらわらと人が降りてきて、そのまま横断幕を広げた。そこには……。

「お帰りなさい! 日本総大将スペシャルウィーク!」

「婚約おめでとう、スぺちゃん!」

 

「わああああああ! 皆さん、ありがとうございます!」

「は、え、ちょ!?」

 1枚目は良い。地元のヒーローが帰ってきたということで。だが2枚目、ありゃなんだ!?

「スぺ……婚約って?」

「え? だって実家に挨拶ってそういうことですよね?」

「い、いや、大体においては違わんけども……」

「うん、セイちゃんから教わったんです。トレーナーさんのことが大好きなら捕まえちゃえって」

 にこにことそう告げてくるスぺ。だが目だけはレース前のようなぎらついた輝きを輝きを放っている。

 

「……はめられた」

「実家に挨拶と家族に紹介って言われて、即答してくれたってことはトレーナーさんもそうってことですよね? それに大好きって言ってくれたし」

「言った、言ったけどな? それは……」

「へえ、そこんとこ詳しくお聞かせ願えますかね?」

 ガシッと肩を組んできた女性。どことなく面差しがスぺに似ている。

「あ、お母ちゃん! ただいま!」

「うん、お帰りスぺ。この方がトレーナーさん?」

「うん! あのね……」

 近所の方が運転してくれることとなり、俺たちは最後列の席に座った。口々にかけられる祝福の言葉は、スぺがレースで大成したことと、二言目には結婚おめでとうの言葉で、スぺははにかみながらその祝福の言葉を受け入れる。

 俺はスぺの母にがっしりとホールドされ、反対側からはスぺが語る二人の思い出とやらを聞かされる。

 

「それでね、お母ちゃん。URAファイナルの決勝のときね、緊張で震えが止まらなくなった私をトレーナーさんがぎゅっとしてくれて……」

「うん、よかったねえ」

「レースで勝った後に二人でお祝いしようって、温泉旅行行ったの。朝まで二人でお話したあの素敵な時間は、絶対に忘れられないよ!」

 この一言に、バスの乗客全ての目線が俺にぶっ刺さった。いや、やましいことはしてませんよ? ほんとうですよ?

 だが彼らの目線はこう語っていた。「うまぴょいしたんですね?」

 

 針のむしろのような時間が過ぎて、スぺの実家に着く。するとスぺのスマホに着信があった。

「あ、セイちゃん。ありがとー、うまく行ったよ!」

 お前の仕業か……セイウンスカイ!

「え、うん、わかったよ。トレーナーさんに代わるね。セイちゃんが代わってほしいそうです」

「ああ、うん」

 

「あ、トレーナーさん。この度はご結婚おめでとうございます!」

「お前、どの口でそんなことを言いやがる……」

「えー、だって、ねえ。スぺちゃんですよ? あの純朴で人を疑うことを知らない田舎娘」

「まあ、そうだな。合ってるけど表現!」

「うひひひ。まあそれは置いといて、そんな子がURAファイナルズ初代チャンピオン。もちろん賞金はがっぽがっぽです。……世の悪い男は放っておきませんよね?」

「……そういうことか」

「それだけじゃありませんよ? 私たちが何回スぺちゃんに恋の悩みと称したのろけを聞かされてきたか……メジロマックイーンが逃げ出す甘さですよ!」

「ええ……えええええ……どんだけ」

「それだけあの子を好きにさせた責任取ってあげてくださいね? ああ、あと逃げたら私たちも協力して地の果てまででも追い詰めますんで、よろしくねー」

 恐ろしい一言を継げて、俺に反論の暇を与えないまま電話が切れた。

 

「えっと……これからも、ずっと私と歩いて行って……くれますか?」

 いまさらだろう。ここまで外堀埋めといてなにを、とも思ったが不安げな眼差しで耳と尻尾がせわしなく動き回るスぺ。

 ああ、もういいや。俺はすべてのタガを解き放った。

 

 その夜は近所の人を招いて宴会だった。

「うちの愛バは世界一だ!」

 スぺを膝の上にのせてぎゅっと抱きしめながら上機嫌に言い放つトレーナーがいたとかなんとか。

 当の愛バは顔を真っ赤にさせて撃沈し、あまりのウザさにご近所総出で酔いつぶしにかかったとかで……次の日目覚めると目の前にはスぺの寝顔があって悲鳴を上げたとさ。めでたしめでたし。




スぺのエンディングを見て思わず書いてしまったやつ(´・ω・`)

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