『ゆりキャン△』   作:ゼルダ・エルリッチ

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『千明とあおいの二人っきりキャンプ』

「あいつら、おっせーなー」

 

 うなぎの寝床こと野クルの部室で、だらけて待っている。いつもなら早々になでしこと犬子の二人がやってくるんだが、今日は全然来ない。

 

 まあ、二人が来たとしても、特にやることないんだけどな。いつも通りにムダ話して、コーヒーでも沸かして飲んで、ダラダラするだけなんだけど。

 

「寒っ!!」

 

 それにしてもこの部室、相変わらず冷えやがるぜ。なんとかせんとなー。

 

 なんてこと考えてたら、

 

 ヴ~~ヴ~~

 

「お?」

 

 スマホが鳴って、見るとなでしこからだった。

 

『ごめん、あきちゃん!! 今日、急に家族で出かけることになっちゃって!!』

 

 ごめんスタンプ満載のメッセージ。なでしこらしいな。

 

『しゃーないな、土産わすれんなよー』

 

 返事を返したらすぐに返信が来る。

 

『分かった!! ごめんね!! また月曜!!』

 

 今日は金曜日。土日に出かけるってことらしい。また浜松のおばあちゃんちか?

 

 そのとき、

 

 がららっ!! 入り口のドアが開いて、犬子が来た。

 

「悪いあき~、遅れてもうたわ~」

 

 いつもの犬子。セリフとは別に、悪びれた様子は無い。まあ、こういうやつだからな。

 

「もう少しで凍結する所だったぜ」

 

 ぶるぶる震えてみる。そこまで寒くはないけど、まあ非難を込めてな。

 

「図書室で本読んどったら、そのままウトウトしてしもーた。リンに起こされてやっと目覚めたわ~」

 

 んなこったろーと思ったぜ。

 

 

 

 

「なでしこ、今日来られねーって」

 

「そうなん?」

 

「家族で出かけんだとよ。うらやましいぜ」

 

「なでしこちゃん家、みんな仲良いしな~」

 

「ウチでもどっか行きたいもんだ」

 

「キャンプなら、よ~行っとるやん」

 

「キャンプはまあ、別腹みたいなもんだからな」

 

「なんやその理屈」

 

 他愛の無いおしゃべりして、ビバーク広げて、ダラダラ。

 

 へきしっ! それにしても冷えやがる。

 

「こんな寒いと、また温泉でも行きてーなー」

 

 こないだ犬子となでしこの三人で行ったキャンプを思い出す。

 

 ほっとけや温泉、良かったな~。温玉あげも旨かった。

 

「温泉いーなー。私もまた行きたいわー」

 

「だよなー」

 

 おんせん♪ いいなあ、おんせん♪

 

 いかん、なんだか、悪魔のささやきが……。

 

「……行くか? 温泉」

 

「え?」

 

「ちょうど土日だしよ、また行っちゃわね? キャンプ」

 

 こないだ行ったばっかだけど、まあ二週連ちゃんでもないし、ありかも。

 

 あとは犬子次第だけど……。

 

「……ええな。ええかも。私も土日は予定ないし、行っちゃおか? キャンプ」

 

 よし、決まったな!

 

「そうこなくっちゃよ! なでしこにゃ悪いが、あたしら二人で、温泉満喫しちゃおうぜ!」

 

「せやせや、なでしこちゃんも家族旅行やし、うちらはうちらで楽しませてもらわなな」

 

「そういうことだ」

 

 ふっひっひ、なでしこのくやしがる顔が楽しみだぜ。

 

 

 

 

 そんでさっそく翌日、山梨市駅に集合! こないだ行ったばっかのルートだし、お手のもんだな。

 

「おーっす、あき~」

 

 あたしの方が先に来たけど、すぐに犬子もやってくる。こういう時には遅れずにやってくるから、現金なやつだぜ。

 

「おう、来たな」

 

 ロングコートに、もこもこのカラフルマフラー。女子力高めのロングブーツ。それといつもの、おしゃれハンチング帽。

 

 こいつの私服は何度も見てるけど、やっぱおしゃれ感が凄い。スタイルもいいし、顔も綺麗だし、どこぞの読モかよ! とツッコミたくなる。前はあんま意識してなかったけど、最近、なんか差を感じずにはいられなくなってきた。おのれ犬子め! これで無自覚だから余計に腹立つぞ。

 

「どないしたん?」

 

「え?」

 

 ちょっと見過ぎたか。あたしとしたことが、犬子ごときに。こんにゃろーめ。

 

「いや、なんでもねーよ。いこーぜ」

 

「ヘンなあきやなー」

 

 

 

 

「笛吹公園の絶景、また見に行くか? どーする?」

 

 歩き始めて犬子に尋ねる。この間は歩いて行ったら結構な登りで、心が折れかけた。今は、直行バスがあること知ってるけど。

 

「今日はええんやない? それより……」

 

「温泉だな」

 

「正解~」

 

 この寒さだし、ここは温泉直行に限る!

 

 駅からそんなに遠くないし、ここはのんびり歩いていくか。

 

「温玉あげも楽しみやわ~」

 

「うむ、あれはマストだぜ」

 

 想像したら、テンション上がってきた。

 

 待ってろよ、温玉あげ!

 

「でも、笛吹公園の、季節の果物スイーツも激ウマやったな~」

 

「……だな」

 

 いかん、悪魔のささやきが……!

 

 季節のスイーツパフェ、最高だったな……。

 

「って、やっぱ寒っ!」

 

 寒風が後押しする。

 

「やっぱ温泉だ!」

 

「そやな」  

 

 スイーツすまん! 今は温泉があたしを待っている!

 

 

 

 

「温泉着いたー!!」

 

 3キロくらい歩いて、ほっとけや温泉に到着。長い道のりだったが、これでようやく温まれる。待ってろ温泉、今行くぜ!

 

「なつかしーぜ、悪魔の刺客たち」

 

 休憩所のくつろぎスペースに、ストーブ、座布団……。

 

 湯上がりにここでくつろいだ者たちを二度と「起きて」は帰らせない悪魔たちが、大挙して居並んでやがる。

 

「それと、温玉あげやわ~」

 

 飲食スペース指さして犬子がささやく。

 

「待て犬子! あれは温泉の後だ!」

 

 また誘惑に呑まれる所だった。

 

「そ、そやな。んじゃ、早速いこか~」

 

 

 

 

 ほっとけや温泉、あちちの湯。早朝からやってて、日の出も見られる有名な温泉。

何より、甲府盆地を見下ろす絶景のロケーションが最高。富士山眺めながら入れる温泉なんて、言うことなしだな。

 

 まずは脱衣所で服脱いで、それからシャワールームへ。

 

「あき、先行くで~」

 

「もう脱いだのかよ、早……」

 

「ん? どないしたん?」

 

 目の前に、あけっぴろげな姿の犬子が。

 

「いや……、お前なー、もう少し恥らえよ」 

 

 んー? なんなんだ、これ。なでしこと三人で来た時には何にも感じなかったんだが……。

 

 何か、妙に意識しちまうな。

 

 胸……デカいし……。

 

「なんやあきー、裸なんて昔からよー見せ合ってたやん」

 

「そうだけどよ。なんつーか……、もう年頃っつーか、まあいいか……」

 

「ヘンなあきやで、先行くで」

 

「……お、おう」

 

 

 

 

 とにかく、温泉だ! うおー、やっぱ燃えるぜ。

 

 目の前には甲府盆地の絶景。そして富士山! 富士山大好きな、なでしこじゃなくても、これはたまらんな。

 

「ふぇー、やっぱサイコーだな」

 

「生き返るわ~」

 

 冬の温泉、マジサイコー。寒い中歩いて来たから余計に感じる。

 

 こーいうの、マッチポンプって言うんだっけ?

 

「キャンプ場には午後に行くって言ってあるから、ゆっくりしてこーぜ」

 

「悪魔のささやきやわー」

 

「へっへっへ」

 

 こないだは夕方まで寝ちまったから、今回は遅めにくつろいで行く予定。まあ、今回は温泉メインの感が強かったしな。

 

「二人だけだと、なんか落ち着いてまうなー」

 

 犬子が、「はァ~」と溶けそうな顔して言ってくる。

 

「まあ、なでしこがいると騒がしいからな」

 

 そんなこと言ってたら、

 

 犬子が寄ってきた。ん?

 

「なんか、あきと二人だけでお風呂って、小っさい頃思い出すなー」

 

 昔の話か。そういや昔は、犬子の家の風呂にもよく一緒に入ったっけ。

 

「小学生の頃だろ。よくお互いの家泊まってたしな」

 

「そうそう。なんか、楽しかったわー」

 

 まあ、今でも充分、楽しいけどな。

 

 ちょっと心の中で思ってしまった。正直、犬子といるのは楽しい。幼馴染だし。

 

「なんかあき、眼鏡取ると美人やな」

 

 犬子があたしの顔、覗き込んで言ってくる。

 

「お、おい、何だ急に」 

 

 本当に。

 

「あきは、コンタクトにせえへんの? ええと思うで」

 

「コンタクトは、めんどくせーからな。いいよ、眼鏡で」

 

「そっかー、ちょっともったいない思うけどなー」

 

「んなことねーよ」

 

 あたしが色気づいてもしょーがねーだろ。ってか、美人の犬子に言われたくねーよ。

 

「まあええわ。ゆっくりしてこーや」

 

「んだな」

 

 絶景ロケーションの温泉に、犬子。

 

 なんか色々、胸が騒がしいぜ。

 

 

 

 

「んーーーまーーー♪」

 

 温泉の後は、もちろんこれだ! 湯上がりに食ったらあかんやつ。

 

 温玉あげ、一個120円なり。

 

 相変わらず、旨すぎる。なんなんだこれ、玉子揚げただけなのに。

 

 ちょっと長風呂だったから、旨さが余計に染み渡る。 

 

「やっぱあかんなーー、これはあかーんー」

 

 犬子が、満面のだらけフェイスで言ってくる。

 

「あかんあかん♪」

 

 あたしも追随。まあ、これ食ったらやっぱこうなるわな。

 

 そのまま、休憩所に横になる。これはまた、寝ちまいそうだ。

 

 ストーブの熱も、反則。

 

「犬子~、時間になったら起こしてくれ~」

 

「むりや~。あきが起こして~」

 

「むり~」

 

 うーん。スマホの目覚まし、かけといた方がいいな……。

 

 

 

 

「はっ!!」

 

 目が覚めて、慌ててスマホを確認する。

 

「……ホントに寝ちまったよ」

 

 結局、時間まできっちり寝ちまった……。不覚。

 

「あかんて、あか~ん。うふふふ」

 

「おい起きろ」

 

 寝言こいてる犬子を叩き起こす。現在午後二時。

 

 三時までにはキャンプ場入りすると伝えてあるから、まだ間に合うけど。

 

 やっぱり温泉パワー、恐るべし……。

 

「むー、あき、おはよー。もう朝かいな」

 

「寝ぼけんな、キャンプ場行くぞ」

 

 荷物をまとめて立ち上がる。ここからキャンプ場までは1キロぐらいだし、時間までには充分間に合うだろう。

 

「あき、もう1回温泉入らん~?」

 

「今入ったら、今度は確実に起きられんぞ」

 

「せ、せやな」

 

 温泉に後を惹かれる前に、早いとこ出発しちまおう。

 

 と思ってたら、

 

「温玉あげ、揚げたてだよー。買ってってー」

 

 あ、悪魔のささやきが……!

 

「すいません。1個ずつ下さい」

 

 結局二度喰い……。前回に引き続き、全敗。

 

 

 

 

 腰に根が張る前に出発して、イーストウッドキャンプ場に到着。結局、時間ぎりぎりになってしまった。

 

 チェックインして、予約したサイトへ。サイトは全部で11あるけど、また眺めのいい場所を取れた。ほっとけや温泉も良かったけど、このキャンプ場の眺めも最高だな。

 

「やっぱサイコーやな~」

 

「こないだ見たばっかなのに、また感動しちまうよな」

 

 日が落ちる前に、テントもろもろを設営。作務衣の管理人さんが水持ってきてくれて、薪も運んで、これで準備万端。

 

 薪を束ねて、焚き火。折角なので、ウッドキャンドルのリベンジ。

 

「こないだはいきなり割れてもーて、びっくりしたわ」

 

「んだな。今度はちゃんと針金で巻いたからOKだぜ」

 

 ぱちぱち……、ぱちぱち……。

 

 やっぱ焚き火はいい。

 

「……落ち着くな」

 

「……せやなぁ」

 

 

 

 

 暗くなる前に、ごはん作る。こないだは、なでしこの煮込みカレーだった。あれは旨かった。

 

「じゃーん。今日は牛すじ入り、おでんカレーやー」

 

「おい、まじかよ」

 

 なでしこがいないので今回は犬子に任せたら、犬子家の特製カレーだった。こないだそんな話、してたけど、ホントに出てくるとは。

 

 鍋で煮込んで、手早く完成。早速、試食。

 

「うお、旨っ!」

 

 和風だしが凄い効いてる。牛すじもトロトロになってて、得も言われぬ至福感。

 

 これは、たまらん~。

 

「せやろ、おでんも捨てたもんやないで~」

 

 犬子が勝ち誇ったように胸を張る。

 

「じゃあ今度は、うちの肉じゃがカレーを作ってやろう」

 

「カレーばっかやん」

 

「カレーはキャンプの定番だからな」

 

 二人で笑いながら、晩メシ。 

 

 みんなでわいわい食べるごはんもいいけど、犬子と二人で食べるキャンプ飯も、これはこれで感慨深い。

 

 っていうか、やっぱ二人だけだと……、雰囲気違うな。

 

 なんか色々、犬子の違う所が見えてくる気がして。

 

「どないしたん? またお留守になってるで、あき」

 

「え? いや、カレーが旨くてよ」

 

 何だか変にごまかしてしまった。

 

「まあええわ。じゃあ、次はデザート行こかー。マシュマロ持ってきたでー」

 

「お、いいな。焼こうぜ」

 

 ……犬子のアシストに救われたな。

 

 

 

 

 日が落ちて、辺りもすっかり暗くなった。焚き火を囲んで、二人で温かい飲み物をすする。酒屋のバイト先の先輩から教わった、ホットカクテルだ。ラムシロップが入っているけど、火にかけるからアルコール分は飛んでいる。

 

「これ、うまいな~。なんなん?」

 

「へっへ、いいだろ。教わったんだよ」

 

 温かい飲み物に癒されながら、火を囲んでまったり。

 

 やっぱキャンプといったらこれだろ。 

 

 そのまま、ぐいぐい飲んでたら、

 

「あき~、もう一杯もらうで~」

 

 コンロにかかってたホットカクテルを犬子がおかわりする。犬子も随分気にいったみたいで、こっちもなんとなく嬉しくなる。今度、もっと別なのも教わってこようか。

 

「ん?」 

 

 そんなこと考えながら、なんとなくラムシロップのビンを見たら、

 

「って、おい!」

 

 めちゃくちゃ減ってる! まさかこれ、そのままカップに入れたのか!?

 

「おい犬子!」

 

「ふぇ~い? なんやあき~、どないした~ん?」 

 

 出来上がってやがる……。

 

 顔が赤いし、目もとろけてるし……。

 

 

 

 

「ばか! これアルコール入ってるんだぞ!」

 

「ふぇ? ガムシロップとちゃうの~? なんかいい香りするし、私これ、気に入ったわ~」

 

 だ、だめだ……。もう収集つかねえ……。

 

 と、とりあえず、テントに運んで寝かしちまうか。

 

 ったく、なんてやつだよ……。

 

「ほれほれ犬子、テント行くぞ」

 

「なんや~、あき~、まだええやん~」

 

「だめだ、お前、酔ってるだろ。寝とけ」

 

「酔ってる~? んなわけないや~ん、おかしなあきやで~。あははは」

 

 めんどくせー!

 

 もうこうなったら、強制的に運ぶしかねーか。

 

「ほれ、つかまれ」

 

 犬子抱えて運ぼうとする。そしたら、

 

「あき……」

 

 ふぇっ?

 

 犬子が、あたしにぎゅって抱きついてきた……。

 

 

 

 

「お、おい、寝ぼけんなって」

 

 慌てて振りほどこうとした、けど、

 

「あき……、大好きやで」

 

 な、な、なにを言いやがるんだ、こいつは。 

 

「お、おい……、冗談やめろって」

 

「ほんまや……、前からずっと、好きやってん……」

 

 ぎゅっ……。

 

 い、犬子の香りが……! やばい。

 

 ど、どうすりゃいいんだ、この状況。

 

 

 

 

 冷静になろうと考えれば考えるほど、頭がこんがらがってくる。

 

 えーと、ここはキャンプ場で、犬子と二人っきりで……。

 

 犬子に抱きつかれてて……。

 

 好きとか言われてる……。

 

 や、やばいやばい。あたしも何だかおかしくなってきた……。

 

 だめだ、冷静になれ。こいつはただ、酒に酔っておかしなことを口走ってるだけなんだ。 

 

「水……、水飲もう。酔いも覚めるだろ」

 

 水を取りに行こうとする、けど、犬子に抱きつかれてて動けない。

 

「私、酔ってなんかないで……。あき……、このまま、ぎゅってしてほしいんや……。私、あきに、ぎゅってしてほしい……」

 

 そ、そんなこと言われてもよ……。こっちも、どうしたらいいのか……。

 

「あ、あたしも、犬子のことは、好きだけど……、でも、こういうのはよ……、もっと、段階踏んでからっつーか、それからだと思うんだよ……」

 

 何を言ってるんだ、あたし? あたしも実は、酔ってるのか?

 

「あき……、眼鏡、外してくれへん……?」 

 

「へ?」

 

「あきは、眼鏡取った方がいいと思うんよ……」

 

 そのまま、眼鏡を外される。眼鏡取ったら視界がぼやけたけど、犬子の顔は物凄く近くにあって、はっきり見えた。

 

「やっぱあき、美人やわ……」

 

 そのまま、犬子が口を寄せてきて……、

 

 私の口に、むちゅっ……、と……。

 

 

 ……え? え? 

 

 

 ええええ~~!!!???

 

 むぐぐぐぐ~~~!!!

 

 や、やっちまった……!!!

 

 犬子と、キス!!!

 

 なんだこれ、なんだこれ、なんだこれ!!

 

 あたしは今、一体どうなってる?

 

 

 

 

 ようやく犬子が離れる。

 

 あたしの方は、放心状態。

 

 何とか我に返ったら、犬子がまた私に顔を寄せてきた。

 

「あき~、もっかい。もっかいしてや~」

 

「ちょ、いい加減に……」

 

 抵抗も空しく、犬子ががばっと覆い被さってくる。そんでまた、

 

 むちゅ~~~!!!

 

「!!!!」

 

 ひょ、ひょっとして……。 

 

 今、なんとなく理解できた。

 

 こいつ……、

 

 キス魔か!!?

 

 

 最悪だ~~~!!!

 

 

 

 

 こ~のや~ろ~!! 散々、乙女心を弄びやがって~~!!

 

 顔に水ぶっかけて、酔いを覚ましてやる!!

 

 と思ってたら、

 

「あ~、暑い暑い~! なんかここ、むっちゃ暑いわ~」

 

 犬子が服を脱ぎだした。

 

「おい!!」  

 

 止めようとしたけど、犬子はどんどん脱ぎ散らかしていく。

 

 そのまま、ブラまで……。

 

 む、胸が……!!

 

「気持ちいいわ~。あき、またお風呂入ろな~」

 

「ここは風呂じゃねえ!!」

 

 服着ろ!! 着せようとして近づいたら、

 

「なんやあき~、脱がしたいんか? 大胆やな~。ええよ、かわいがってな~」

 

 そうじゃねえ!!

 

 そうしてたら、犬子があたしの服まで脱がし始めた!

 

 や、やめろ~! ってか、なんて力だ、こいつ。

 

「誰もおらんし、遠慮せんでもええんやで~」

 

「遠慮なんてしてねえ!」

 

 ぎゃああ~~!! 襲われる~~!! 

 

「あきの胸、ちっちゃくてかわいいな~」

 

 お前と比べるな~!! ってか、ブラを返せ~~!!

 

「あき……、好きやで……」

 

 ぎゃあああああ~~~!!!!

 

 

「……あ」

 

 

 …………。

 

 ………。

 

 ……。

 

 

 

 

 

「ずっる~い!! あきちゃん! あおいちゃん! 二人だけでキャンプ行くなんてー!!」

 

 月曜日。部室でなでしこに文句を言われてるあたしがいた。

 

 あの後……、あたしと犬子がどうなったのかは、もはや言いたくない……。

 

 まさに悪夢だ……。

 

「まあまあ、ええやん。なでしこちゃんも、家族旅行楽しんできたんやろ」

 

「それは……、まあ、そうだけど」

 

「ここは、お互い様っちゅうことで、堪忍やで」

 

「むー」

 

 なでしこが口を尖らせる。そんななでしこの頭をぽんぽんして、犬子が笑って言った。

 

「また皆で、キャンプ行こな」

 

 なでしこがにっこり笑って、「そだねー」と応える。

 

「ところで、キャンプどうだった? 話聞かせてよー」

 

 なでしこが食いついてくる。そ、それは聞かないでくれと言おうとしたら、

 

「それが、不思議でな~。なんや私、夜寝る前の記憶が全然ないんよ。気が付いたら、朝になってもーてて。なんや、隣であきがげっそりした顔で座っとったけど、結局なんだったん、あれ?」

 

 それをあたしに聞くな! お前のおかげで一睡もできなかったんだよ! 早々に寝やがって!

 

「えー、なにそれ。あきちゃん、どういうこと? 詳しく教えてよ」

 

 

 絶っ対に、「詳しく」なんて言えねえ!!!

 

 

 ……当分の間、犬子の顔、直視できねえな……。

 

 そんなこと考えてたら、犬子があたしの顔、覗いて言ってくる。

 

「なんやあき、顔赤いで~」

 

「うるせえ!!」

 

 

 

                       終わり♪  

 

 

 

 

 

 

 




『ゆりキャン△』、いかがでしたでしょうか?

1話目は個人的に一番好きな千明と犬子の二人にしてみました。

例によって反響があれば、他のカップリングも書きたいと思っております。


「恵那がリンとなでしこをくっつけようとする話」、とか

「なでしこと綾乃が仲良すぎるので、なでしこ大好きなリンが嫉妬しちゃう話」、とか。


 ふへへ、たまらんですな~。

 ではまた~。
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