『ゆりキャン△』   作:ゼルダ・エルリッチ

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注:今回も読み切りのお話ですが、先に1話と2話を読んでおくと話が分かり易いです♪




『千明とあおいのオールスター(-1)キャンプ』

 

「諸君。今日は、我が野クルの次なるキャンプ計画について議論を交わしたい」

 

 いつものように三人で部室に集まって、ダラダラ。だけどそろそろ次のキャンプ計画も立てておこうかということになって、急遽、本日の作戦会議となる。なでしこと恵那もバイト始めたし、なかなか皆で揃ってキャンプっていうのも、難しくなってきたしな。

 

「はいはいっ! 隊長っ!」

 

「何だね? 各務原隊員!」

 

「富士山の見えるキャンプ場がいいですっ!」

 

「またかよ。ホントお前は富士山ばっかだな」

 

 確かこないだもそんなこと言ってたな。クリキャンの時。

 

「でも、富士山は、えーなー。そうなると、富士五湖辺りがええんとちゃう?」

 

「いいけど、結構遠いしな。本栖湖か精進湖ならいいかもだけど」

 

 取りあえず、今回はそんなに遠出はせずに、気軽に、ちゃちゃっと行けるような所がいいんだが。

 

「そんなら、富士山は見えんけど、湖つながりで、なでしこちゃんの行った四尾連湖とかどうや? 良かった言うてたやん」

 

「うん。すっごい良かったよ! 林の奥に湖があって、そのほとりでキャンプして」

 

 四尾連湖か。あたしがなでしこに勧めたトコだけど、そういやまだ行ってなかったな。そこならそんなに遠くもないし。

 

「四尾連湖、いいかもな。確か、リンも一緒だったんだって?」

 

「そうなんだ、二人でミニコンロで焼き肉してねー、えへへへ」 

 

 おい、よだれ垂れてるぞ……。

 

「焼肉かー。そーいやあそこ、専用のバーベキュー棟まであるんだよな。元々、それであたしが薦めたわけだし」

 

 激ウマとの噂のバーベキュー……。いかん。なんか、あたしまで肉に釣られそうだ。

 

「でも、四尾連湖からだと富士山は見えなかったよー、残念」

 

 それはそうだろ。

 

「それは、しゃあないやろ。林間キャンプ場やし」

 

「まあ、そだよねー」

 

 ん……? 富士山に……、バーベキュー……。 

 

 おおっ! 今、ピンと閃いたぜ!

 

「おい、お前ら! 諦めるのはまだ早いぞ!」

 

「なに? あきちゃん」

 

「諦めるって何がや?」

 

「へっへっへ。富士山にバーベキュー、その両方を可能にする究極のキャンプ場がある!」

 

「えっ? ホント!?」

 

「どこや?」

 

 聞いて驚くなよー。

 

「その名も、田貫湖キャンプ場だ!」 

 

「タヌキ? なんやそれ。化かされるんかいな」 

 

「違うわ! 湖の名前だよ! 富士宮市にあるんだが、割かし近いぞ。山、挟むけど」

 

 山を回り込むことになるが、ヘタに山梨の北部に行くよりも全然近い。

 

「あ、それ、前にあきちゃんが言ってたトコだよね?」

 

「そうそう、それだよ。あそこって、バーベキューが結構有名でよ。バーベキュープランっていうのもあって、料金払えば向こうで肉やらなんやら、全部用意してくれるそうだ」

 

「えー、ホンマ? むっちゃ楽やん」

 

「だろー? それに、富士山もバッチリ見えるぞ。今は時期的に無理だけど、季節が合えばダイヤモンド富士とかも拝めるらしい」

 

「ダイヤモンド富士!? きゃー! 私、絶対行きたいです!」

 

 おい、人の話を聞け。

 

「季節が合えばの話だよ。今は無理だっつったろーが」

 

「むぐー」

 

 全く、相変わらずの富士子だぜ。

 

「でも、富士山見えて、バーベキューもできて、最高やないの」

 

「そうそう。しかも、近くに有名な白糸の滝とかもあるから、色々見て回ったりするのもいいと思うぞ。それに……」

 

「それに?」

 

「なんや?」

 

 聞いて驚くなよー。

 

「なんと、キャンプ場の近くに日帰り温泉施設まであるのだ! その名も、ひるぎり温泉、からっ風の湯!」

 

「きゃー! 温泉!」

 

「ええなー、それ♪」

 

 これは……、

 

 決まりだろ!

 

 

 

 

「田貫湖に行くとなると、やっぱり車は必要だな。電車じゃ行けんし」

 

 スマホの地図ナビを確認。目指す田貫湖はあたし達のテリトリーの身延線沿線から、山を挟んでちょうど反対側に位置している。山を突っ切っては行けないし、最寄駅からも大分離れているから、どうしても車で行くしかない。

 

 が……。

 

「その点なら、なんとかなるやろー」

 

「だよねぃ」

 

 犬子が不敵に笑って、なでしこも追随。

 

「そうだ、犬山隊員、各務原隊員! 今や我らは、強力な機動力を手にしている!」

 

 それはつまり……、

 

「鳥羽先生を召喚だ!」

 

「そういうこっちゃ。んじゃ早速、職員室行ってみよかー」

 

「おー!」

 

「よし! 行くぞ、お前ら! 我に続け!」

 

 

 

 

 それからなんやかんやと説得して、無事に鳥羽先生を誘い込むことに成功! っていうか、温泉とバーベキューで釣ったら割とイチコロだった。やっぱりバーベキューの破壊力は凄い。酒好きな鳥羽先生を誘うのにはテッパンの武器だな。チョロいぜ、グビ姉♪

 

 ちなみに、人数増えるかもなので、車は先生の妹さんのラフェスタを確保してくれるとのこと。これなら安心。先生のハスラーじゃ、四人までしか乗れんし。

 

「こうなると、やっぱ、しまりんと恵那も誘わんとな」

 

「せや、皆で行くキャンプも、クリキャン以来やしな」

 

「久々のオールメンバーキャンプだね!」

 

 取りあえず、リンは図書室に行けばつかまるので、直接交渉。三人で行こうとしたら、なぜかなでしこが一人で行くと言い出す。

 

「じゃあ、ちゃんと誘い出して来てくれよー」

 

「えへへ、任せて」

 

 よく分からんけど、まあいいか。あとは恵那だが……。

 

 あいつ、神出鬼没だから、学校だと結構つかまらなかったりするんだよな。

 

 まあ、ここはラインしとくか。

 

 

 

 

 そんなこんなで、部室に戻る。しばらくしたら、恵那から返信が来た。 

 

『ごめんねー。私しばらく、土日は都合悪いんだ』『キューン……(ちくわ)』

 

 まじかよー、しゃあねえな。ってか、ちくわでごまかすな。

 

「恵那、しばらく都合悪いんだとよ」

 

 メッセージを犬子に見せる。

 

「えー、ホンマ? 残念やー」

 

「まあ、しゃあないか。急な話だったしな」

 

 話してたら、追加のメッセージが届く。

 

『春頃になったら、また皆でキャンプ行こうね♪』『ワンワン!』

 

 春か。その頃にはまた、皆でどっか行く計画してるだろ。

 

 今は取りあえず、目の前のキャンプ計画だ。 

 

 

 

 

 十五分くらい経って、ようやくなでしこが帰還。

 

「遅かったな。どうだった?」

 

「えへへ、オッケーでーす! リンちゃんも来るって!」

 

「おー、そうか! よくやったぞ、なでしこ」

 

「バーベキューもあるし、やっぱ人数多い方が楽しいしなー」

 

 これで、鳥羽先生も入れて五人か。そんじゃ早速、キャンプ場の予約取っておかないとな。バーベキュープランの予約もしとかないと。

 

「あ、それで、ちょっとだけ確認なんだけど……」

 

「ん? なんだ、なでしこ」

 

 なんか、もじもじしてる。どうした?

 

「テントは、私とリンちゃん、二人で一つ使いたいんだけど……、いいかな?」

 

 テント?

 

「まあ、別にいんじゃね? あたしと犬子は、別にテントあるし」

 

「それと、鳥羽先生はお酒飲むから、自分の一人用テント用意する言うてたで」

 

「そうそう。まあ、酔っ払いと一緒に寝るのは嫌だし、こちらとしては助かるよな」

 

 ってか、こないだは、別の酔っ払いと一夜を過ごすことになったんだがな……。今回は勘弁だぜ、犬子……。(1話参照☆)

 

「そっかー、ありがとう、あきちゃん、あおいちゃん」 

 

 なでしこが胸を撫で下ろす。

 

「構わんけど、でも、何でそんなこと気にすんだ?」

 

 新しいテントでも買ったのか?

 

「何でって……、それは……」

 

「ん? どうした?」

 

 なんか赤くなってるけど。 

 

「な、なんでもないよー。なんだかこの部屋、暑いねー」

 

「寒いくらいだろ。すきま風ひでえし」

 

「あははは」

 

 

 

 

 それから、帰宅。反対方向のなでしこと別れて、あたしと犬子の二人で一緒に帰る。

 

「今日のなでしこ、なんか変な感じだったな。なんだったんだ?」

 

 なでしこのことを話題に出す。図書室から帰ってからのなでしこは、やっぱり様子が変だった。

 

「あき、鈍感やなー。分からんの?」

 

「へ? 何が?」

 

 鈍感? 何の話だ?

 

「こないだ、恵那ちゃんからお願いされたことあったやろ。忘れたんか?」

 

「恵那? ああ、遊園地に遊びに行くフリしてくれって、頼まれたやつか」

 

 確か、リンとなでしこを仲良くさせたいから、協力してくれって言われたやつ。(2話参照☆)

 

 あれから特に、話を聞いたりもしてなかったんだが。

 

「なでしこちゃん、リンちゃんのことが好きなんよ。それで恵那ちゃんが、気ぃ利かせた、ちゅうこっちゃ。分からんのかいな」

 

 要するに、二人で遊びに行かせて仲良くさせようってことだろ?

 

「っていうか、別にそんなことしなくても、なでしこは普段からリンと仲良いじゃん」

 

 今更、わざわざ回りくどいことせんでも。

 

 それとも、ケンカでもしてたのか? あの二人。

 

「アホ。そういうこっちゃないわ。もー、分からんのならええわ」

 

 犬子がプイと拗ねる。

 

 おいおい、何なんだよ、一体。

 

 

 

 

 そしていよいよ、キャンプの日! 

 

 あたしと犬子は、鳥羽先生との待ち合わせ場所であるゼブラみのぶ店の駐車場に集合。ほどなくして、鳥羽先生を乗せたオレンジ色のラフェスタがやってくる。そして車はそのまま、酒の川本の前へ……。おいおい……。

 

 挨拶もそこそこに、酒屋へ入店。ビールに、日本酒、ワイン。手押しカートの上が、あっという間にアルコールで埋め尽くされていく。

 

「先生、まだ買うんすか……」

 

「だってバーベキューですもの♪ 抜かりないようにしとかないとね♪」

 

「……こりゃ、泥酔必至だな」

 

「……せやな」

 

 

 

 

 それから車は南下して、なでしことリン、二人との待ち合わせ場所である内船駅へ。遠巻きに姿を確認すると、二人もこっちに手を振ってきた。無事、合流。

 

 その後は、52号線に沿ってひたすら南下する。

 

「やっぱ、車、快適すぎるぜ……」(リン)

 

「こないだは、お姉ちゃんの車で一緒に出かけたよね♪」

 

 なでしこのお姉さんか。確か、桜さんだっけ。

 

「なでしこのお姉さんも、旅好きなんだってな。一緒にキャンプとか行かねえの?」

 

 気になって聞いてみる。

 

「お姉ちゃんは、一人旅が好きなんだよ。今日も、長野の方へ出かけるって言ってた」

 

「へえ、姉妹揃ってアウトドア派か」

 

「血は争えんなー」

 

 

 

 

 山を回った所で、469号線に入る。そこから今度は北上して、目的の田貫湖方面へ。

 

 国道から県道に進路を取って、まずは有名な白糸の滝を目指す。ほどなくして、道の途中途中にも案内の看板が現われ始めてきた。逸る気持ちを抑えつつ、車はそのまま、白糸の滝の駐車場に到着。

 

「おー、滝の音、聞こえるな」

 

「ええなあ、滝の音」

 

 車から降りて、犬子と二人で耳を澄ます。まだ見えないけど、林の向こうから滝の音が響いていた。

 

「見て見て! なんか、お店がいっぱいあるよ!」

 

「分かった分かった」

 

 なでしこの方は早速リンを引っ張って、居並ぶ商店通りの方へ走って行ってしまう。駐車場から滝へ続く道に沿って、土産物屋や食べ物屋なんかが軒を連ねていた。まあ観光地だし、こういう店を見ればテンションも上がるというものだけどな。

 

 

「こっちにも滝があるよ。滝って、一つじゃないんだね」

 

 道の先に滝があって、ごうごうという激しい水音を轟かせている。看板を見ると、音止(おとどめ)の滝と書いてあった。看板には、滝の名前の由来も書かれている。どれどれ……。

 

「昔、この場所でとある兄弟が父のかたき討ちの相談をしようとしたけど、滝の音がうるさくて相談できなかった。それで神様に嘆いたら、滝が止まって相談ができたそうな。それで、音止の滝と呼ばれるそうになった……。なんのこっちゃ」

 

「ナイスな神様だねぃ」

 

「そういう問題か?」(リン)

 

 

 

 

「お、天気が良ければ、ここから富士山見えるってよ」

 

「ホント!? あきちゃん!」

 

 道の途中に展望台があって、看板が出ていた。でも……。

 

 今日は雲が掛かっていて、富士山は見えない。

 

「OH……」

 

 なでしこが顔を覆って嘆く……。

 

 

 

 

「ふおお! 見て見てみんな! 白糸の滝だよ!」

 

 階段を降りて吊り橋に差し掛かった所で、なでしこが叫ぶ。まあ、言われなくても見えてるから、分かってるんだがな。ってか、色々テンションが忙しい奴だぜ。

 

 そのまま道を進んでいって、白糸の滝の目の前へ。やっぱ近くで見ると、その凄さも一層鮮やかになる。木々の緑に囲まれた岩の間から、白い絹のような流れがいくつも吹き出ていた。

 

「すげえ綺麗な滝だよな」

 

「まさに自然の美やなぁ」

 

 犬子と二人で思わず見とれる。

 

 一方、なでしことリンは、少し離れた所で並んで滝を見ていた。

 

「岩の隙間から流れてるよ、不思議だね」

 

「それと、下の滝つぼ、凄い綺麗だぞ」(リン)

 

「ホントだー! エメラルドみたい!」

 

 会話につられて、あたしも犬子と二人で滝つぼを覗き込む。ほー、確かに凄い。

 

「あそこで泳いだら、寿命伸びそうやな」

 

「その前に怒られるからやめとけ」

 

 

 

 

 マイナスイオンをたっぷり吸収した後は、やっぱり外すことのできない商店巡りへ。なでしことリンは、お土産屋の看板にあったバナバ茶というお茶に惹かれていた。

 

「リンちゃんのお母さん、お茶好きなんだよね。買ってったら?」

 

「そうだな」

 

 熱帯地方のハーブ茶で、ミネラルが豊富とのこと。一方のあたしと犬子は、妙に魅力的なソフトクリーム屋の前へ。

 

「めっちゃ種類あるぞ。これは、行くしかないな」

 

「何にするか迷ってまうなー」

 

 結局、チョコと抹茶を選択して、二人で賞味♪

 

「あー、あきちゃん、あおいちゃん、二人だけでずるい!」

 

 なでしこが気付いて駆け寄ってくる。

 

「めっちゃ旨いでー、なでしこちゃんも買ったらどうや?」

 

「うん! リンちゃんも食べよ!」

 

「分かった分かった」

 

 そんな時、ふと鳥羽先生の姿が見えなくなる。

 

「あれ? 先生どこ行ったんだ?」

 

 さっきまで一緒に居たのに。

 

「あっ、あそこや」

 

 見ると、先生が名物の焼きにじますにかぶりつきながら、ビールも買おうとしていた。慌てて止めに入る。

 

「ダメですよっ、先生! ビール飲んじゃ!」

 

「はっ!? そ、そうでした……。つい、にじますの誘惑がー」

 

 全く、油断も隙もあったもんじゃないな……。

 

 

 

 

 それから、滝の音に後をひかれつつ、出発。キャンプ場に入る前に、今日はもう一か所、回っていく予定だった。それは……。

 

「よーし! 次は温泉だっ!」

 

「いえーい!」

 

 ひるぎり温泉、からっ風の湯! やっぱ冬のキャンプといったら、温泉がセットみたいなものだからな。

 

 施設に到着して、早速受付へ。入浴料払って、そのまま温泉へGO!

 

 脱衣所で着替えていたら、

 

「あきー、先行くでー」

 

「……」

 

 目の前に、あけっぴろげな姿の犬子が。またかよ……。

 

 だから、ちょっとは恥らえって。堂々と出てくんな。こないだの犬子とのことがあって、ようやく最近、気持ちも落ち着いてきたっていうのに……。

 

 考えてたら、また心が騒がしくなってくる。今日はなでしこ達も一緒だし、問題ないと思っていたんだが……。

 

 それにしても……。

 

 胸……、デカいな、こいつ……。

 

 いかん。そんなこと考えてたら、犬子の胸から目線が離れない……。あたしは胸フェチでもなんでもねーっつーのに。

 

「なんやあきー。私の胸がそんなに気になるんか?」

 

「なっ!?」

 

 しまった。うっかり見すぎちまった。これは、まずい。

 

「ち、ちげえよ。犬子のが、デカいから、その……」

 

 何だか、言いわけの言葉すら出てこない。

 

「なんや、素直やないなー。見たいなら、そう言えばええのに。ほれほれ」

 

「や、やめろ! グルグル回すな!」

 

 痴女か!

 

「あははは、かわいいやっちゃでー」

 

 そう言って先に行ってしまう。全くこいつは……。

 

「リンちゃん、一緒に行こ♪」

 

「……う、うん」

 

 見ると、リンとなでしこも、二人で手を取りあって浴室へ。全く、仲が良いよな。

 

 ってか、なんかリン、顔赤くなってないか? 

 

 そんなこと考えてたら、鳥羽先生が隣にやってきた。

 

「若いって、素晴らしいことよね♪ うふふふ♪」

 

 なんのこっちゃ?

 

 取り敢えず、胸落ち着かせてから、あたしも温泉入ろう。

 

 犬子とは、ちょっと距離取った方がいいかも……。

 

 

 

 

 なんだかんだで、温泉は最高! すっかり満喫して、湯上がりに売店でフルーツ牛乳を買う。

 

「温泉の後はこれだろ!」

 

 腰に手を当てて、グビグビ飲む。

 

「オヤジかいな」

 

 ふと見ると、ビール買って飲もうとしている鳥羽先生の姿が!

 

「ダメですよっ、先生! ビール飲んじゃ!」

 

「はっ!? そ、そうでした……。つい、湯上がりの誘惑がー」

 

 全く、これだからグビ姉は……。

 

 

 

 

 その後、ついに我らは田貫湖キャンプ場に到着! 人造湖である田貫湖の周りが、キャンプ場として綺麗に整備されている。その一角がバーベキュースペースとして開放されていて、自然の絶景を眺めながらバーベキューを楽しめるので人気だった。

 

 それと……、

 

「ふおおおお!! 富士山だ~!!」

 

「おおー、すげえデカいな!」

 

 白糸の滝では見られなかった富士山が、目の前にデーンとそびえている。まるで、富士山に抱かれているかのような大きさ。これは富士山好きななでしこじゃなくても、感動しちまうってもんだ。

 

「あそこがキャンプサイトみたいだな」(リン)

 

「凄い綺麗なキャンプ場だね!」

 

 湖のほとりに、芝生のキャンプ場が広がっている。そばには炊事棟やトイレなどもあって、どれも本当に綺麗だ。ファミリー層に人気なのも分かる。これなら、小さい子でも安心ってもんだな。

 

 

「やっぱ、湖っていいねぃ」

 

「落ち着くわー」

 

 湖のほとりにウッドデッキスペースがあって、しばし皆で清涼さに包まれる。風で湖面にさざ波が立って、さあさあという心地良い音楽を奏でていた。これは確かに、落ち着くな。

 

「それにしても、なんで田貫湖っていう名前なのかな?」

 

 なでしこが疑問を投げる。それは調べてあるから説明しようとしたら、

 

「それにはな、悲しい物語があんねん」

 

 また犬子が何か言い出しやがった。

 

「昔、人間の男に恋をしたタヌキが、娘の姿に化けて想いを伝えようとしたそうや。せやけど、男は結局、人間の女と結婚してしもうた。悲しんだタヌキの娘は三日三晩泣き続け、その涙が集まって、この湖になったそうや。そしてタヌキの娘は、自らの涙の湖に身を投げて、死んでしまったそうな……」

 

 おい。なんだその作り話は。

 

「う、う……、可哀そうだね……」

 

 おい、なでしこ。真に受けるな。

 

「なでしこ。見て見ろ、犬子の目を」

 

「え?」

 

 犬子がなでしこの方を見て、いつものセリフを放った。

 

「うそやでー」

 

 

 

 

 それはそうと、バーベキューだぜ! 予約した肉類を管理棟で受け取る。

 

 うおおー、これは凄い! 名産の萬玄豚のソーセージにスペアリブ、富士のひるぎり牛と鶏肉、そして地元の野菜に、とどめは富士宮焼きそばまで! 

 

「お前ら! 早速焼くぞっ!」

 

「ラジャー!」

 

 これは、たまらん~! 名産の肉はどれもジューシーで、一般の牛、豚、鳥とは、一味違う旨さ! なんつーか、まろやかなコクと深みがある。それに、このロケーション! こんな所で肉を焼いたら、ただでさえ旨すぎな肉も、更に三倍は旨くなるってもんだぜ!

 

「むっは~!! おいひふぎるよ~!!」

 

「旨い」 

 

「たまらんわ~」

 

 どーだ! 企画発案者のあたしに感謝してもらわねーとな!

 

 へっへっへ。

 

 と思ってたら、

 

「ぷはーー!! サイコーー!!」

 

 すでにビール三缶空けてる鳥羽先生の姿が……。 

 

「と、飛ばしすぎじゃないですか……、先生……」

 

「いーのいーの♪ 今日はもう運転もしないし♪ さあ、どんどん焼くわよー♪」

 

「こりゃ、ダメだな……」

 

「あたしらの分、肉残るか分からんな……」

 

 

 

 

 そして、夜。サイトに設営したテントに、犬子と二人で寝る。リンとなでしこは、なでしこの希望通り、隣のテントを二人で使っていた。

 

 ちなみに、鳥羽先生は早々に酔い潰れて、撃沈……。午後にはテントで爆睡していた。まあ、こうなるとは分かってたけどな。

 

 

 

 

 真夜中頃になって、ふと目が覚める。ちょっとジュースやらなんやら、水分取り過ぎた。起きてトイレ行こうとしたら、

 

「なんや、あきもトイレかー?」

 

 隣の犬子が声をかけてくる。どうやら犬子も、トイレに行きたくて目が覚めたみたいだ。

 

「おう、じゃあ、一緒に行くか」

 

 テントから出ると、夜の空気が肌をピシッと打ち付けてくる。山に近いこともあって、一層冷えるな。

 

 トイレの場所はテントサイトから道を挟んだ所にあったので、犬子と並んで歩く。その時、少し離れた炊事棟のそばのベンチに、灯りが見えた。どうやら、ランタンの灯りみたいだ。

 

「……? なでしこと、リンか?」

 

「そうみたいやな」

 

 二人が、一緒に同じ毛布にくるまって、ベンチに座ってる。

 

「寝つかれなかったみたいやな」

 

「そうだな。それにしても、仲良いなあいつら」

 

 二人で同じ毛布かよ。なんか、うらやましくもあるくらいだぜ。

 

 まあ、こっちにも気付いてないみたいだし、邪魔することもないだろ。

 

 そう思ってやり過ごそうとした、その時……、

 

「へ?」

 

 リンとなでしこの二人が、おたがいの顔を寄せ合って、

 

 チューを……。

 

「なっ!?」

 

 慌てて、物陰に身を潜めてしまった。

 

 

「お、おいおい……! あいつらって、そうだったのかよ……」

 

 思わず犬子の方を見る。でも犬子は、驚いていないようだった。

 

「やっぱりあき、気付いてなかったんやな。しゃーないやっちゃ」

 

「えっ? 犬子は知ってたのか?」

 

 マジかよ。

 

「当たり前や。だから、恵那ちゃんからもそう言われたやろ」

 

「あれって、そういうことだったのか……」

 

 遊園地に二人だけで行くように仕向けてくれっていう、あれ。

 

 友達として仲良く、じゃなくて、恋人としてくっつけようとしてたのか……。

 

 色々、マジかよ……。

 

 

 

 

 なんとかトイレも済ませて、犬子と二人でテントに戻る。だけど、あたしの方は悶々としてしまって、とても寝付けそうになかった。

 

 それはもちろん、犬子のせいだ。

 

 このあいだ、酔っぱらった犬子とあんなことをしちまった、アレ。そのことをどうしても思い出してしまって、気持ちが浮き足立ってしまう。あれ以来、なるべく考えないようにして、心を落ち着かせようとしてきたってのに……。

 

 くちびるに、犬子のくちびるの感触が蘇ってくる。

 

 それに、犬子の肌の温もり……、胸の感触……。

 

 や、やばい……。

 

 やばい、やばい……。

 

 今も目の前に犬子がいて、しかも同じテントに二人きりだってのに……。

 

「あき、どないしたん?」

 

 犬子が、いぶかしんで声をかけてくる。いや、どないしたんもなにも……。

 

 言うべきか? リンとなでしこのあんな所見ちゃったら、あたしだって……。

 

 胸がドキドキと騒ぎ出す。その原因が犬子であることに、もはや疑いの余地は無かった。

 

 あたしは、やっぱり……、

 

 犬子のことが……。

 

 

「あのな、犬子……」

 

 意を決して、言葉を吐き出す。

 

「お前、こないだのキャンプでのこと、ホントに何も覚えてないのか?」

 

 探るようにして、言葉を紡ぐ。

 

「キャンプ? ああ、あきがなんか、おかしかったやつやろ?」

 

 おかしかったのはお前の方なんだが……。まあいい。

 

「お前、あたしのリキュール間違って飲んじまって、酔っぱらって、あたしに絡んできたんだよ」

 

「は? リキュール? 何のことや?」

 

 やっぱホントに覚えてねえらしい……。

 

「お前な……、あたしに、キ、キスとか、色んなことを……」

 

「あきにキス? 私が?」

 

「うん……」

 

 言っちまった……! だけど、こんな気持ちを抱えたまま、これ以上あたしに一体どうしろっていうんだ。

 

「そっかー、それであき、ずっとおかしかったんやな」

 

 おい、何なんだ、その普通感は。

 

「お前、よくそんな平然としていられるな……」

 

「だって私、あきのこと好きやもん」

 

「え!?」

 

 今、犬子があたしのこと、好きって言った?

 

 

「お、おい、今、何て?」

 

 聞き間違いか?

 

「二度も言わせんなや。私、あきのこと好きやって言うとるの」

 

 聞き間違いじゃなかった。けど、

 

「好きって、お前……。それは、その、友達としてだろ? あたしが言ってるのは……」

 

「ちゃうわ。私は、あきが、ずっとその気になってくれるの待っとったの!」

 

「は?」

 

「ホンマ、鈍感な奴やな。ホンマに気付いてなかったんかいな」

 

「え? え?」

 

 な、なんだこれ。一体、何がどうなってる?

 

 

 

 混乱していたら、犬子があたしに抱きついてきて……、

 

「あき……、ええか?」

 

「な、何がだよ」 

 

「ちゅう、してもええかって聞いとるの。乙女にこんなこと言わせんなや」

 

「え? え?」

 

 ちゅ、ちゅう? 

 

「えーい、まだるっこしい奴やな」

 

 そのまま、犬子が顔を寄せてくる。そして……、

 

 

 ちゅう……。

 

 あたしの口と犬子の口が、ひとつに合わさった。

 

 

 ま、マジかよ……!?

 

 犬子が、あたしのことを好きだって言って……、

 

 そして、あたしは今、犬子とキスしてる……!? 

 

 

 犬子の香りと、くちびるの味……。

 

 あ……、やばい……、頭がくらくらする……。

 

 

 むっちゅー。キスが続く。

 

 むっちゅー。

 

 むっちゅー。

 

  

 むぐぐぐ!!

 

 長すぎないか!?

 

 

 ダメだ……、意識、飛びそう……。

 

「ぶはっ!」 

 

 思わず口を離してしまった。

 

 

「あ、あのな犬子っ。気持ちは分かったけど、ちょっと強引すぎだろ」

 

 何とか言葉を振り絞る。でも犬子は、あたしをずっと怖い顔で見つめたまま。

 

「やかましわ。私がどんだけ、あきとこういうことしたかったのか、分からんのか。私はずっと、あきとこうなりたかったんやで。この鈍感! 今までの分も、取り返させてもらうからな!」

 

「いや、ちょっと! それは……」

 

 なんか犬子、ちょっとキレ気味だ……。

 

 ってか、それって、あたしのせいなのかよ!

 

「あ、あたしだって、ずっと犬子のことを……」

 

 取り繕おうとしたけれど、今の犬子には、もはや無駄みたいだった。

 

「問答無用やで、あき!」

 

 うわわわわ!!

 

 むっちゅ~~!!

 

 うぐぐぐ!! ぐ……! ……あ……。

 

 これは、ホントに……。

 

 意識が飛ぶ……。

 

 

 って……、

 

 ……え? 

 

「ちょっと! 犬子、そこは!」

 

 そんな所に手を入れるな~!

 

 百歩譲って胸はいいとしても、そっちは……!

 

 あああ~~!!

 

 

「……あ」 

 

 

 …………。

 

 ………。

 

 ……。

 

 

 

 結局、犬子が満足(?)して寝袋に収まったのは、大分経ってからのことだった。あたしの方は、また朝まで放心状態……。

 

 犬子がこんなにグイグイだったなんて、初めて知ったぜ……。

 

 

 

 

 そして、また月曜。

 

「大垣」

 

「あきちゃんっ」 

 

 学校の廊下で声をかけられる。振り返ると、リンとなでしこだった。こないだのこともあったし、何だか二人のことを見る目も変わっちまうな。ふっ、このリア充どもめ。

 

 そんなことを考えてたら、

 

「あきちゃん、あおいちゃんと両想いになれたんだね♪」

 

「祝福するぜ」

 

 突然の言葉に、思わず目を丸くする。へ!?

 

 な、なんで知ってるんだ!? 

 

 まさか、犬子がバラしたのか? 言うなって言ったのに!

 

「何でそんなこと知ってるんだ!」

 

 追及する。だけど、

 

「だってな、お前……」

 

 リンが言葉を濁す。

 

「そ、そうだよ、あきちゃん……」

 

 え? え?

 

 そして、続く言葉にあたしは愕然とした。

 

「あんだけ騒いでたら、嫌でも聞こえるだろ」

 

「私とリンちゃん、途中からテントに戻ってたんだよ」

 

 

 ええ~~!!?

 

 

 あ、あの時、隣のテントに二人が居たのか!?

 

 二人はまだ、ベンチの方にいると思ってたのに! 近くに他のキャンパーも居なかったし、誰にも聞かれてないのだとばかり思ってた……。

 

 そんなあたしを気遣ってか、リンが控えめに言ってくる。

 

「なんか、あの時には言えなくてさ……。あれからなでしこと話して、これはやっぱり、私達からも気持ちを伝えときたいと思ってな」

 

「うん。私、あきちゃんもあおいちゃんも大好きだし、二人には一杯、幸せになってもらいたいんだよっ」

 

 

 マジかー!!

 

 はっ!? まさか、テントの中まで覗いてたんじゃないだろーな? 

 

 キスまではいいとしても……、その後の、あの行為は……。

 

 

「あきちゃん」

 

 え? 

 

 なでしこが詰め寄ってくる。

 

「好きだったら、やっぱりお互いの仲を深めたいと思うのは自然だし……、私は、応援するよっ!」

 

「うん。自然だな」

 

 こ、こいつら……! 多分、知ってやがる!

 

「じゃあ、そういうことで。犬山さんにもよろしくな」

 

「じゃあね、あきちゃん。また部活で」

 

 こ、これは……。

 

 まずい……。

 

 

 

「なんや、あき、どないしたん?」

 

 しばらくしたら、後ろから犬子がやってきた。

 

「いや……なんでも……」

 

 やっぱ、これは犬子には言えないな……。あの時のこと、リンとなでしこに筒抜けだったなんてことは……。

 

「まあええわ。それより、あき」

 

「え?」

 

 犬子があたしの顔、覗き込みながら言ってくる。

 

「これからも……、よろしくな♪」

 

「……お、おう」

 

 

 …………

 

 まあいいか。今は、犬子のこの笑顔があれば……。

 

 

 犬子と二人、並んで歩く。

 

 その手は、自然と繋がれていた。

 

 そして、心も――

 

 

 ふっ。

 

 愛してるぜ、犬子♪

 

 

 

                     終わり☆

 

 

 




『おまけ』


 皆がキャンプしてた、その頃。
 
 恵那ちゃんと桜さんは長野の温泉に出かけてました♪


「桜さんの胸……、やっぱりおっきいですね♪」

「あら、恵那ちゃんのだって、なかなかのものよ」

「きゃー! 桜さんったらー!」

 …………

「誰も居ないわね……、胸、触ってもいい?」

「はい! 触ってもいいです!」


 ラブラブでした♪ 


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