本話は、同性カップルにおける「性」をテーマにしています。
そのため、性表現が強めになっていますのでご注意。
「……春だねぃ」
今日もなでしこと二人、いつもの図書室。陽気が良くなってきたせいか、なでしこは受付カウンターに身体を預けて、以前よりも一層、ぐでーっとだらけている。
まるで、陽だまりに寝そべった大きな犬みたいだ。口から垂れたよだれが、その感じを余計に増幅させていた。
…………
「……ん?」
何だかやけに静かになったと思ったら……、
マジで寝ちまったよ……、全く。
「おい、こんなトコで寝るな」
肩をゆさゆさ揺さぶって、起こそうとする。でも、なでしこは完全に「寝でしこ」モードになっていて、起きる気配は無い。しょうがないやつめ。
…………
…………
誰も居ないよな……。
辺りをキョロキョロ見渡す。室内には、私となでしこだけ。窓の外にも、他の生徒達の姿は無い。
今なら……。
なでしこの口元に、顔を寄せる。そのまま、
ちゅう。
急いで顔を離す。辺りをキョロキョロ見る。よし……、大丈夫。
なでしこのよだれまで、ちゅうしてやったぜ。へっへ。
………
って、何してんだ私……。
これじゃまるで、ヘンタイじゃねーか……。自己嫌悪……。
最近の私は、どうも変だ。なでしこと晴れて恋人同士になれて、それなりに愛情も深めていくことができて、それはいいのだけれど、近頃なんだか日を追う毎に物足りなさを感じていた。
こんなかわええ彼女(私も彼女だけど)もできて、ラブラブだし、不満なんて何もないはずなのに……、何なんだ、この気持ちは。
何かが足りない……。
「ふわあああ……。あー、何か寝ちゃったよー」
十分くらい経って、ようやくなでしこが目を覚ます。さっきのキスも気付いてないくらい、本気で寝ていたらしかった。こちらとしては、醜態を晒さなくて良かったけど。
「マジ寝だったぞ、お前」
「えへへ。いやー、もうすっかり春じゃのぅ」
出たな、田舎のおばあちゃん。
ってか、春でなくても、いつも寝てるけどな。なでしこ。
「それより、そろそろ部活行かなくていいのか?」
すっかり居ついてしまっているので、私の方から促してやる。
「はっ! そうだった! もうこんな時間だー! また怒られちゃう」
それもいつものことだけどな。やれやれ。
「じゃあリンちゃん、またラインするね!」
なでしこが鞄を持って立ち上がる。そして、
「え、と……」
もじもじ、し始める。
…………
「なでしこ、あっち」
私が指差すと、なでしこが「えへへ」と笑って隣の資料室へ向かった。私もそのまま、カウンターから隣の部屋へ移る。
ドアを閉める。窓にはカーテンが掛かっていて、外から部屋の中の様子は全く見えない。
つまり……、
「リンちゃん……」
「なでしこ……」
二人で抱き合う。そしてそのまま……、
ちゅっ……。ちゅう……。ちゅ……。
最近になって始めた、二人だけの秘密の時間……。
いつも一緒に時間を過ごせるわけではないので、せめてこの放課後のお別れの時だけは、ここでキスをして別れようということになった……、のだけれど……。
正直、めっちゃ恥ずい……。これを言い出したのはなでしこの方で、なでしこは結構、積極的な部分があるみたいだった。それに比べると、私の方はまだ奥手。
「じゃ、じゃあ、また明日ね! えへへへ」
「……うん」
最後は、割とあっさり。手を振って、また明日という流れ。
なでしこを見送って、一人、図書室のカウンターに戻る。
くちびるには、まだ、なでしこの熱が色濃く残っていた。
…………
そのまま、考えるのは、やっぱり、なでしことの関係のことで。
手も繋いで、キスもして。
文句ない関係なんだよな、私達。
…………
でも……、
やっぱり私の中で、何かが足りないと思う気持ちが大きくなっているのは事実だった。
今の関係は、言うなればプラトニックな関係と言える。せいぜいキスまでで、それ以上の身体的な発展は無い。
…………
こういうのでいいのだろうか?
何かこう、恋人同士なんだし、もっと踏み込んでしまってもいいような気も……。
…………
……え?
つまり私って、そういうことを求めているってことなのか……?
なでしこと、そういうことをしたいっていう……。
キス以上の、恋人同士の「身体的」発展……。
…………
ぼふんっ!
想像したら、顔から火を吹いた。
これは……、まずい……。
家に帰って、夜。一人、ベッドに背を預けて床に座り込む。
考えるのはやっぱり、なでしこのことばかり。
今のままで不満は無いはずだし、なでしことは良好な関係を保っているし。これ以上何かを望むのは、高望みしすぎなんだろうか? 贅沢すぎなのかも。でも……。
昼間想像した考えが、再び脳裏に蘇える。
つまり、なでしこと、キス以上のことを……。
…………
男女なら分かり易いけど、女同士のカップルだと、いわゆるそういうことは……、どうしてるんだろう?
ふと、疑問が湧く。
私はこれでも、健全(?)に過ごしてきた方だと思うし、そういったことには全然興味を持ってこなかった。恋愛だとか、そういったものも今まで経験したこともなかった。
それが、なでしこと出会って一変した。
誰かを好きになるという気持ちが、こんなにも心を潤してくれるとは思ってもいなかった。
その気持ちが、私を次のステップに進ませようとしているということなんだろうか?
…………
悶々とした気持ちが溢れてくる。
そのまま、スマホを手に取って検索している自分がいた。
『女同士のカップル 女同士での○○○○』
……すでに恥ずい。
こんなの検索しても、そんなに出てこないだろ。
そう思っていたら……、
「うお! めっちゃ載ってる!」
思わず赤面してしまうようなタイトルの項目が、上から下までズラリと……。
ドキドキと鳴る胸を抑えながら、その内の一つを開く。すると、
(ふわーお♪)
『女性同士だからこそ気づかい合うことができる、愛の営み♪』
『女性同士なら、長くじっくり愛し合えます♪』
『女性同士、もう病み付き♪』
女同士での、R18の画像が次々と……。
……おいマジか。
女同士でも、普通にこういうことやってるんだ……。
知らんかった……。
(検索中)…………
う、うわわ……! こんなことまで……。
(検索中)…………
…………
……おいマジか。
やばい、やばい、やばい、
なんか、めっちゃムラムラしてきた……。
身体の奥が、じんじん、うずく……。
私って、こんなに変態だったのか……。ぐぬぬぬ……。
いや、これが普通なのかも……。ぐぬぬぬ……。
「あ……、そうだ」
急に思い立つ。
大垣と犬山さん……、あの二人はどうしてるんだろう……?
こないだのキャンプの時のアレは、ちょっと成り行きっぽかったけど、普段でもあの二人って、そういうことしてるんだろうか……。犬山さんとかって、割とグイグイ行きそうなタイプにも見えるけど……。
聞いてみようかな……。ちょっと恥ずいけど……。
大垣……は、案外、奥手っぽいし、ここはやっぱり犬山さんの方がいいかも。色々、度胸が据わってそうだし。
翌日、金曜日。早速、学校で犬山さんに話を聞いてみることにする。休み時間になるのを待って、犬山さんのクラスへ。
「なんや、リンちゃんやん。どないしたん? 教室来るなんて珍しな」
「あ、うん……。ちょっと、聞きたいことがあって……」
そのまま二人で階段の踊り場へ。そこで思い切って聞いてみた。
「あのさ、犬山さんと大垣って、普段、その……、身体的な関係って、どうしてるのかな、って思って……」
直接聞くのはさすがに出来ないので、言葉を濁す。だけど……、
「身体的って、要するにセ○○○のこと?」
「うわわわ!」
ストレートだ!
やっぱ犬山さん、すげえ……。
「あー、と、……うん。それ」
私がもじもじしていたので、犬山さんの方も意志を感じ取ったみたいだった。
「あー、そうか。つまり、なでしこちゃんと、ってことやね」
「えと……、うん」
何だかもう、恥ずかしくて死にそうだった。このまま逃げ出したい気分……。
「なんやリンちゃん、そんなことで悩んでたんかいな。そんなん、自分の好きなようにしたらええねん。恋人同士なんやし、お互い気持ちも分かってるやろ。頼んだらええと思うで。なでしこちゃんなら、リンちゃんが望んでくれたら、喜んでくれるはずやし」
おいマジか。
めっちゃ熟練者の発言じゃねーか……。
ってか、大垣、いつもこんなツワモノを相手にしてるのか。なんか、うらやましいというか、同情というか……。
「なでしこにこんなこと頼んで、ホントに大丈夫かな……?」
恐る恐る聞いてみる。失敗して、なでしことの関係がギクシャクしてしまうことだけは避けたかった。
「平気平気♪ そんなん、ガーッと頼んじゃったらええねん。私もいつも、あきにガーッて行ってまうで♪」
…………
大垣の意志はどうなってるんだろうか……、とは思ったけど言わないでおく。
「あ、ありがと。参考になったよ」
取りあえず、こんな所でいいだろう。っていうか、これ以上は無理……。
「なんや、もうええんか? ほんじゃ、頑張ってな、リンちゃん。結果聞かせてや♪」
そう言って、笑顔で去って行ってしまう。
結果と言われましても……。
やっぱ、相談する相手、間違えたかも……。
夜。私はまた一人、自室で座っていた。手にはスマホが握られている。なでしこに電話しようか、迷っている所だった。
そのまま何となく、また検索画面を開いてしまう。
昨日見た、女同士でのやつ……。
…………
……うわ……。おお……!
やっぱりすげえ……。
うおお! こ、これは……!
そのとき、
「リン、ちょっといい?」
びっくううう!!!
死ぬほどびっくりして、思わずスマホを落としてしまう。
部屋の入り口から、母親が顔を覗かせた。ボリューム、ゼロにしといて良かった……。
「な、何?」
ごまかしながら応える。額には汗が、にじんでいた。
「土日、お祖父ちゃん家、行くけど、リンも行く?」
そう言えば、そんなこと言ってたな。ウチの両親は定期的に祖父の家に泊まりに行っていて、逆に祖父の方がウチに泊まりにくることも多かった。
ふと思い付く。これは……、チャンスなんじゃないのか?
つまり、なでしこと……。
「あー、ちょっと、土日は用事があって……。私はいいよ」
「そう? しょうがないわね。じゃあ、お祖父ちゃんには連絡しとくわ」
「うん。ごめん」
…………
なでしこにそういうことをお願いしてみるとしたら、やっぱりその舞台が必要になってくるのであって……、つまり、この土日はそのための絶好の機会と言えた。
まさか学校でそんなことできるわけないし、後はお互いのどっちかの家で、ということになる。この歳で、ホ……、ホテルなんか泊まれないし……。キャンプで、っていうのも無理があった。キャンプ場はそういうことをする所じゃない。それはダメだ。
私がなでしこの家へ行くのもいいけど、なでしこの家族がいるし、あんまりそういうことをするのは気が引けてしまう……。
ここはやっぱり、誰も居ない私の家で、泊まりで……、っていうのがベストだろうと思う。
ってか、犬山さんと大垣は、場所とかそういうの、どうしてるのかな? 聞くの忘れた。
結構普通に、家族の目を盗んで、犬山さん家とかでラブラブしてそうだけど……。
とにかく、このチャンスをなんとかモノにしないと……。
……よし。心も決まった。
後は、電話だ。
頑張れ私。
スマホを握って、なでしこの登録画面を開く。
深呼吸して落ち着いてから、思い切って通話ボタンを押した。
…………
呼び出し音が響く。そして、
『もしもし、リンちゃん?』
なでしこの声が届いた。
「あ……、えと、今晩は」
って、なんでこんな他人行儀な挨拶してるんだ、私。
『今晩はー。ってか、どうしたの?』
「う、うん。ちょっと、話しがしたくて。今、大丈夫?」
『大丈夫だよー。お風呂入って、今、出たトコ』
「そ、そうなんだ。何か、ごめん」
『何で謝るの? 変なリンちゃんですなぁ』
うへへ、となでしこが笑う。ちょっと、私も気持ちが落ち着いてきた。
「あのさ、なでしこ」
『うん?』
「明日と明後日、なでしこ、都合つくかな?」
『土日? 大丈夫だけど。バイトは今週無いし』
よし。取りあえず、ホッとする。
「そっか。それで、良かったらなんだけど……、ウチに泊まりに来ない? ウチ、土日に両親が出かけるから、誰も居ないんだよ」
『リンちゃんち? いいの? うん! 凄く行きたいよー!』
うー、なでしこ、ホントに良い奴だ。ちょっと噛みしめる。
「良かった。じゃあ、明日の昼ごろ、来られるかな? 迎え、出せなくて悪いけど……」
なでしこの家から私の家までは結構距離あったけど、私の家から車出せないし、ここは来てもらうしかなかった。ちょっと悪いとは思うけど。
『全然大丈夫ですっ! 自転車で、すぐだよー』
すぐ、ってわけにはいかないと思うけど……。でもなでしこなら、体力あるから平気そう。自転車で本栖湖まで来てたし。
「ありがと。じゃあ、待ってる。着替えとかも持ってきてな。お風呂……、とかも入れるように」
『そだね。えへへ、リンちゃん、一緒にお風呂入っちゃう? キャー、エッチー!』
「おい……、家族に聞かれるぞ」
『ハッ! そうでした! えーと……、平気。誰にも聞かれてませんでしたぞ』
全く……。
電話を終える。なんとなく言ったことだったけど、そういえば、お風呂もあったんだった。なでしこと一緒に入るというのも……、ありだな……、うん。
って、いかんいかん。また変なことを考えてしまっていた。
とにかく、明日だ。
なでしこと二人で……。
うおおー、想像したら、何か燃えてきた! 意味分からんけど。
「うおしっ!」
そのまま一人で、バカみたいにガッツポーズを決めている私がいた。
そして翌日。お昼きっかりに、なでしこが来る。大きなリュックを背負って、なんだかそのままキャンプに行くみたいな格好だった。
ってか、自転車でこの荷物運んできたのか……。やっぱなでしこ、体力すげえ……。
「リンちゃん、お昼まだでしょ? 私作るから、一緒に食べよ!」
「え? あ、うん」
そのまま、なでしこが台所に立って、何か作り始める。ごはんは適当に済まそうと考えてたのだけど、なでしこの方は色々食材とか持ってきてくれたらしい。
思わぬご褒美をもらったように、胸が躍る。
なでしこの手料理……。
なんか本当に、カップルって感じだ……。ちょっと恥ずい。
「できましたー!」
しばらくして、食卓の上に様々な料理が並ぶ。……あれ?
なでしこのことだから、キャンプの時のことを想像して、また色々おしゃれなご飯とか作ってくれたのかと思ったのだけど……。
……普通だ。
並んでいたのは、野菜炒めに、きんぴらごぼうに、なでしこが家から持参したお漬物。それと、干物を焼いたものと、ご飯に、みそ汁。
いわゆる、家庭の一般的な食事といった感じだった。
「これはみんな、ウチの定番メニューなんだよ」
なでしこが食卓について、しみじみと言う。
「ウチのご飯の味を、リンちゃんに伝えておきたかったから」
…………
そういうことだったのか……。
「なでしこ……」
胸に熱いものが込み上げてくる……。
食卓に着いて、二人で食べる。
本当に……、美味しい。なんだか涙が出そう……。
「リンちゃんの家のご飯も、私、覚えたい。そこから、二人の新しい味を作っていこうよ」
二人の味……。二人の未来……。
取って付けたような話だけど、なでしことの未来を想像して、胸が逸る。
「……うん。二人の、好きな味で……」
それから、スーパーに買い物行ったり、居間でくつろいだり。本題は夜に切り出そうと思っていたので、まずは、なでしことの何でもない日常を満喫する。
こういうの、本当にいい……。今までは一人で過ごすことが好きな私だったけど、なんていうか、なでしこと一緒にいるのは……、一人とも大勢ともまた違った、心からの安らぎがあった。
それから、お風呂。
正直、お風呂は想定外だった。その先のことばっかり考えてたから……。
…………
やっぱ、めっちゃ恥ずい……。キャンプの時に一緒に温泉入ったこともあったけど、その時は、そこまで恥ずかしいというほどでもなかった。だけど、こうして二人だけで、となると……。
「おやおやリンちゃん、顔が赤いですぞー」
「う、うるさいよ」
身体洗って、二人で浴槽へ。
め、目の前に、裸のなでしこが……。
家庭用の風呂に高校生が二人で入ったら、そりゃこの距離になるのは当然で……。
「大丈夫? リンちゃん。本当に顔、真っ赤だよ?」
「へ、平気……」
強がってはみたけれど、私の身体の熱は、もう、ごまかしようもなかった。
なでしこが顔を寄せてくる。そのまま、私のおでこに手を当てて熱を測る。
「やっぱ熱い」
ぼふんっ! 頭から湯気が昇る。
反射的に、私は湯船から逃げ出してしまった。
「ちょ、ちょっと、のぼせたみたいっ。私、先出るよっ」
「あっ、リンちゃん!」
心の中では、「折角の機会なのにー!」と叫び声を上げていた。でも……、これは仕方ない。これは反則。私にだって、心の準備というやつが……。
…………
そして、夜は深まっていって……、
とうとう、その時がやってきた。
夕食が済んで、歯磨いて。
二人で、私の部屋で。
しばらくは、他愛の無い話に興じていた。だけど、だんだんと時間が過ぎて、二人とも、自然とそういうことを意識し始める。
…………
なでしこに、伝えなければ。
頑張って、私の気持ちを。
「あ、あのさ、なでしこ」
勇気を出して、声を掛ける。
「な、なーに? リンちゃん」
なでしこの方も、何だか緊張しているみたい。やっぱ、こんなに雰囲気出してたら、そりゃなでしこの方にも伝わっちゃうか。
めちゃくちゃ恥ずかしくて、心が悲鳴を上げかけていたけれど、頑張って続ける。
「な、なでしこは、その……、二人の仲っていうか、関係っていうか……、もっと深めたいと思ったりしない……?」
我ながら情けないくらいの、遠回しの言葉。私にも犬山さんくらいの勢いがあったら、と思ってしまう。あり過ぎても考えものだけど……。
「う、うん……。私もずっと、リンちゃんと、もっと仲良くなりたいって考えてたよ」
なでしこの方も、私と同じことを思ってくれていたらしい。
これは……、OKってことなんだろうか?
…………
なでしこの顔を見る。なでしこの方も、私を見つめていた。
もう、これ以上の言葉は要らないのだと思った。
なでしこの手に、自分の手を重ねる。
そして、くちびるを重ね合わせる。
「なでしこ……」
「リンちゃん……」
お互いの名を呼び合う。そしてそのまま、お互いの衣服を取り払っていく。
セーター……、ブラウス……、キャミソール……、
ブラジャー……。
お互いの胸が露わになる。凄く恥ずかしい。なでしこも、顔を真っ赤にする。
「あっち行こう」
「うん」
そのまま、ショーツだけを付けた状態で、ベッドへ。
抱き合って、キスをして……。
確か……、サイトだと、お互いの部分を指で撫であって……。
「なでしこ……、触ってもいい?」
「……うん」
ショーツの上から、指でなぞる。
なでしこの熱が、指先に伝わってくる。
「……リンちゃん……、そ、それ……、凄く、いい……」
「なでしこも、私に、やって……」
「う、うん……、こ、こう、かな……?」
「…………う……、なでしこ……」
「リンちゃん……」
…………
…………
「リンちゃん……、私……、凄く、幸せだよ……」
「私も……。なでしこ、愛してる……」
「私も……、大好き……、リンちゃん……」
くちびるを絡ませ続ける。
いつしか、私達の身体を覆うものは何も無くなっていた。
胸と胸が絡まって、肌と肌が絡まって、お互いの部分を絡め合わせて……、私達は、一つの大きな熱のかたまりになっていた。
私となでしこが、文字通り一つになっている……。
心も……、身体も……。
こんなに幸せなことって、他にあるだろうか……。
お互いを求め合う。
そのまま、時間も忘れて、私達は一つになり続けた――
………………
…………
……
朝。ベッドで目覚める。気付けば二人とも、そのまま手を繋いで眠っていた。
「おはよう、リンちゃん」
隣のなでしこが、微笑んで言ってくる。その顔に心から安堵して、そして……、
ぼふんっ!
私の顔が、盛大に火を吹いた。
「お……、おはよ……」
うわー、うわー、
私、とうとうなでしこと……。
昨夜の記憶が蘇えってきて、頭が沸騰する。
「なんか私達、新婚さんみたいだね♪ キャー!」
「そ、それより……、取りあえず、服着よう……」
「そ、そだね。あはは……」
そのまま、なでしこの言葉に思いを馳せる。
結婚か……。
いつか、そういう時が来たら……。
なでしこと、真剣に話をしなければいけないと思う。
今の日本では、同性同士の結婚は認められていない。同性同士のカップルの権利とか、そういったことも、まだまだ未発達。
それ以前に、家族に認めてもらったり、世間に認めてもらったりと、課題は多い。
でも……、
隣のなでしこを見る。なでしこと目が合って、なでしこがニッコリ笑う。
この笑顔のためなら、どんな困難でも乗り越えていける……。
そう思った。
なでしこと、二人一緒なら……。
…………
「朝ごはんにしよっか」
「うんっ! 私、作るね!」
…………
四月、今年も桜が咲いた。
なでしこと二人、その桜を見上げる。
「キレイだね」
「うん」
来年も、その次の年も、
二人で桜を見に行こう。
なでしこと、ずっと一緒に――
春風が、私の頬をくすぐっていく――
終わり☆
『おまけ(その1)』
家に帰って、やっぱりリンちゃんのことが気掛かりな、あおいちゃん。
「リンちゃん、大丈夫かいな。しゃあないわ、やっぱここは、私がお膳立てしてやろか」
トゥルル……(呼び出し音)
『もしもし? あおいちゃん?』
「あ、なでしこちゃん、ごめんな。ちょっと、話したいことがあるんやけど」
『なになに? 急に』
「実はな、今日、リンちゃんに相談されたことがあんねんよ。リンちゃんな、なでしこちゃんと、エッチいことがしたいんやって」
『ぶっ!! な、なんですと!』
「そない驚かんでもええやん。好き同士なら普通のことやろ」
『そ、そうかもしれませんけど……』
「なでしこちゃんも、そういう気持ちがあるんやろ? 隠さんでもええで」
『ま、まあ、無いとは言えませんです……』
「だからなでしこちゃんの方も、リンちゃんの気持ち、汲んでやってな。近いうち、リンちゃんの方からアプローチあると思うから」
『わ、分かった……』
「よっしゃ。じゃ、頑張ってな。応援しとるでー」
『う、うん。なんか、ありがと……』
通話終了。
…………
「ふー。全く、ウブな連中やで、ホンマ」
『おまけ(その2)』
お泊りの日の夜。
お祖父ちゃん家にて、夕食の場面。(大塚さんの良い声でお楽しみ下さい)
「最近どうだい? リンの様子は?」
「相変わらず、我を通してるわ。誰に似たんだか」
「いいじゃないか。あの子には、それが合ってる」
「でも、ちょっと変わってきた所もあるのよ。前は一人でばっかりキャンプしてたけど、近頃、友達と二人で行くことが多くなって。どういう心境の変化かしら」
「二人で、か……、それもいいだろう」
「でもまあ、高校に入って、仲の良い友達もできて。少し安心してるわ。ちょっと心配してたから」
「大丈夫さ、リンなら。強い子だ」
「お父さんの孫ですものね」
「ふっ」
夕食後。
「ちょっと、夕涼みがてら走って来るよ」
「また? 気を付けてよ」
「ああ」
ドロロロロロロロロ (参考:トライアンフ、スラクストン1200R)
「ふん。ひょっとしてリンは、大事なものを見つけたのかもしれないな……。いつか私にも、それを見せてくれるかもしれない――」
ドロロロロロロロロ……
………………
…………
……