ウマ娘 チーム〈ナルカミ〉とURAファイナルズ!   作:朝界二

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2話「親父」

 俺の親父は、中央で30年以上もウマ娘たちを導いてきたベテラントレーナーだ。

 

 数多くの優駿ウマ娘を育て上げた名門トレーナーの一族、『桐生院家(きりゅういんけ)』に匹敵するほどの知識量と腕前を持っているらしい。

 

 しかし、父親としてはクズ野郎だ。

 

 親父は幼少期の俺にトレーナーとしてのイロハを無理やり教えてきた。

 ウマ娘の長距離による脳の疲労、ダートの足首の重要性、芦毛のウマ娘は走らないは間違いだとか……どうでもいいことばかり教えて、どこか遊びに連れてってくれたことは一度もなかった。

 

 ……いや、レース場に何回か連れてってもらった事はあるか。

 でも、あれを遊びにカウントするのはどうかと思う。

 

 しかもトレセン学園にトレーナー寮があるからか、実家にはほぼ帰って来ず、たまに帰ってきては忘れ物を取りに来たなどとすぐ寮に戻る始末。

 家にいた時間なんて、最長で3日くらいじゃないか?

 

 母さんも母さんだ。

 親父はウマ娘ばっかりに構って、息子である俺や母さんは放置。

 それなのに母さんは『あの人は仕事してる時が1番かっこいいからね』と意味不明なことを。

 

 ……愚痴になってしまった。

 

 まあ、つまり俺の親父はトレーナーの実力はあるも、父親としては最低中の最低ということだ。

 

 だから、親父の最高傑作であるシンボリルドルフが負ければベテラントレーナーとして傷が付くと思ったんだが、結果はこのザマ。

 彼女は今後も勝ち続ける最強のウマ娘へとなるだろう。

 

「……最強、か」

 

 

『――一矢(かずや)、お前のその()は俺と同じ――いや、俺以上のトレーナーになれる素質があるぞ!』

 

『うん、僕もトレーナーになりたい! ううん、絶対になる! 父さん以上の最強トレーナーにっ!!』

 

『ははっ、言うじゃないか! ならいつか、お互い育てたウマ娘でレースさせよう。それでどっちが最強トレーナーの名に相応しいか決めようじゃないか!』

 

 

「……あー、くそ、嫌なこと思い出した」

 

 何が最強トレーナーだ。

 小学生みたいな発言した過去の自分をぶん殴りたくなる。

 まあ、あの時小学生だったけど……。

 

 俺はもう、トレーナーになるつもりはない。

 母さんや周りや親父のせいか、将来はトレーナーだと思っているが、勝手に人の未来を決めないで欲しい。

 

 俺は今の高校生活を無事に過ごして、適当な大学に行き、可愛い彼女でも作って、トレーナーとは全く無縁の生活を送ってやるんだ!

 

 だから――

 

「トレーナーなんて、絶対になるもんか」

 

 

「僕は、シンボリルドルフさんみたいな強くてかっこいいウマ娘になります!」

 

 ――どこかで誰かの声と重なった気がした。

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